そう だから 俺は―――


















Intruder
09.lightning sword

















「最終決戦か……」

サモドア城門前でそう呟く

「大丈夫ですか?」
「ん?ああ、傷も大した事無かったし、体調もばっちりだ」
「いえ、そうではなくて……」

言いにくそうにするヒミカに笑いかけた

「大丈夫だって。答えは、出したから」

そんじゃ、と言って振り返って皆を見た

「行くぞ、一気に攻め落として、俺たちが勝つ!!」







場内に突入してから数分、途中現れた敵を仲間に任せ、俺は単身ある場所に向かっていた

「この先に」

ダンッと石畳を踏みしめて立ち止まる
少し開けた場所――広場だろうか――の中央にある噴水の前に、一人の少女が立っていた
ティアだ

「来たね。答えは、出たかな?」
「ああ」

【桎梏】を抜き。構えを下段へ

「俺は、みんな護るために戦う」

闘い、護り、救い、繋ぎとめるために刀をとった
強くなりたいと、願い続けた
その心に、偽りは無い

「仲間も、国も、俺自身も。戦って殺して護ってやる」

そう、護るために殺し続ける
生きるために奪い続ける
この救いのない世界で

「殺した過去も、殺す未来も全部背負って生きていく」

それを聞いたティアが微笑みながら槍を構えた

「みんな護る、か。欲張りだね」
「全くだ」

頭上の光輪が、シールドハイロゥへと変化する

「改めて名乗るよ。バーンライトスピリット隊・隊長、ティア・グリーンスピリット!!生きるか死ぬかの大一番、楽しくいこうよ!!」
「ラキオススピリット隊・副隊長、神凪・真夜だ!!悪いが勝たしてもらうぜ!!」







「このマナの波動……」
「シンヤ様のものです。ですが、これは……」

振り返り、セリアは彼方を見つめる
ナナルゥも同じ方向を向き、いつもと違い、僅かに表情に変化が見える

「あらあら〜、いつも以上じゃないですか〜?」
「ええ、答えが出たって言ってたから」

微笑むハリオンにヒミカが答える
と、前方曲がり角から敵が現れた
各々のハイロゥを展開し、構えを取る

「上司が頑張ってるんだから、こっちも負けてらんないわね。行くわよ、ヒミカ、ハリオン、ナナルゥ!!」
「もちろん!」
「はい〜」
「了解です」

返事と同時に、ナナルゥの魔法によって爆音が響き渡った







「どっっせい!!」

ドゴン!!

刀を持たない左手にオーラを纏わせ、拳を叩きつける
しかし、シールドハイロゥには傷一つつかない

「くっそ、またかよ!かってえ!!」

反撃とばかりに放たれる連撃を“流旋ストリーム”で往なしながら、真夜は【桎梏】の刀身にオーラを纏わせる

「これならどうだ!!」
「っ!!」

“死季・春風桜花”で斬りつけ、花弁を目くらましに後ろへ回り込もうとする
しかし―――

「甘いよ!!」

手にした槍を振り回し、オーラの花弁を吹き飛ばす
更にそれが真夜の動きを封じ、真夜はバックステップで一度距離を置いた

(……桜花も効かないか。厄介だな)

相手を見るとハイロゥには傷一つ付いていない
現時点で一番威力があるのは“春風桜花”だ
それが効かないなら

(多少威力を落としてでも、一撃必殺じゃなく連撃攻めるべきか……)



対するティアは焦っていた

(危ない…もう少しで耐えられないところだった)

迷いが消えただけで此処まで変わるとは
攻撃しようにも回避に特化した戦い方なのか、中々攻撃が当たらない
更に、剣だけでなく打撃も織り交ぜてくる刀技と闘技を組み合わせた捉えどころのない戦闘スタイル
今まで戦ったことの無い相手に、少なからず動揺していた

(ちょっと早いけど、出し惜しみしてる場合じゃない!!)

そう判断すると、マナを神剣に通していく

「行くよシンヤ!これで、決める!!」

突撃から速度を乗せた刺突を繰り出す
考えが纏まり切らぬまま、回避に転じたが、そこで真夜に異変が起きた

「何!?」

完全にかわした筈なのに、頬から血が出る
そこから放たれる連撃も、全て避けているにも関わらず、制服を切り裂き、その下にある肌から血が飛び散った

「どうゆう―――!?」
「遅い!!」

一瞬の油断をつかれ、刺突が命中しそうになる
咄嗟に刀身で体を庇うが、強烈な威力に体が吹き飛び、噴水の中へと落ちていった

「“ソニックストライク”。風を纏った攻撃は、かわしたつもりでも敵に確実に傷を負わせる。まだやるの?」

そう言って噴水の方へ言葉を投げかける
バシャア!と音がし、真夜が立ち上がった

「あーあーあーあー、一張羅がビチョビチョだ!どうしてくれる!?」

吹き出ていたはずの血は収まり、それどころか傷自体が回復していく様にティアは驚愕の表情を浮かべる

「なんで……」
「『来訪者エトランジェ』を、舐めんなよ!」

神剣による自然治癒!
普通のスピリットなら中々直らず、動きが鈍くなったところで止めを刺せばいいだろうが、高位の神剣にはそれが通じない

「そんじゃ今度はこっちの番だ」

そう言うと真夜は【桎梏】を構えた

(原理は“疾空”と同様、集束したマナを一気に爆発させる!!)

刀身を覆うオーラが更に集束し、集束したオーラは今、刀身をほんのりと輝く程度になっている
物理的なインパクトに、オーラをジャストのタイミングで解き放つイメージ!!

「いっくぜぇ!!」

疾空アクセル”で一気にトップスピードに乗り、直進する
対するティアは防御に徹するためにシールドを展開した

「ぶち抜け!“死季・夏日連衝”!!」

一撃!
“春風桜花”に比べ威力は劣るものの、瞬間的に解き放つオーラが威力を後押しする
追い打つをかけるよう二撃三撃、四撃目でティアのシールドは砕け散った

「じゃあな」
「うん」

二人の姿を覆うように一際まばゆい光を放つ
その光が収まると、その中央には刀を突き立てられたティアと、柄を握り締めた真夜が立っていた

「あーあ……負け…ちゃった」
「すまない」
「何で…謝るの?覚悟は出来て……たんでしょ?」
「……今日だけは、弱音吐かしてくれよ」
「しょうがないなあ……これからは…駄目だからね」

そう言って微笑むと、真夜をゆっくりと抱きしめる

「……頑張ってね」
「ああ。また会おう」
「うん―――」

そこまで言ってティアはマナの霧へと還っていった







「シンヤ様!!」
「……セリアか。そっちはどうだ?」

しばらくその場でボーっとしていると、セリアが駆け寄ってきた
見る限り大した外傷も無い

「敵はほぼ壊滅しました。……勝ったんですね?」
「当ったり前だろ!」

グッ!と親指を上げてサムズアップすると、とたんにセリアの顔が真っ赤になる

「あ?どうしガハァ!!」
「何考えてるんですかこんな所で!?」
「い、いや待て。何で殴られてんだ俺は……」
「そ、それは……とにかく!!今後そのような真似をなされたら【再生】に還しますから!!」

えー、つまりサムズアップはこっちでは違う意味で、今度やったら即刻死刑かよ
おっかねぇ……
このままだとなんとなく気まずいので、話を変えてみる

「そういや、他の三人は?」
「……他の皆と合流しています。もう直ぐこっちに来るかと」

取りあえず滅茶苦茶睨むな
そっか、と立ち上がると、突如後ろから声がした
見間違いない、ネリシア姉妹だ

「シンヤ様ーー!!」
「さま〜」
「お、お前らも無事だったガフゥ!!」

あまりの嬉しさに(そう思いたい)あろう事かハイロゥを使って全力で抱きついてきた

「み、鳩尾……」
「大丈夫だった?シンヤ様」
「大丈夫ぅ?」
「なんつーか、今が一番やばいかな……」

そこまで言って膝をつく

「わ!だ、大丈夫!?」
「ば、バルガロアーが見える…ん、あれ誰だ?鎌を持ってるみたいだが…まさかあれが死神?」
「だ、だめだよシンヤ様!行っちゃだめーー!!!」







その後ハリオンの治療で一命をとりとめた俺は悠人達と合流するため東側へと歩いていった

「東も制圧完了か。悠人は?」
「えっと、アセリアが一人で突っ込んで行っちゃって、それを追いかけて行っちゃったの」

シアーが答える

「お、いたいた」
「俺は、アセリアの手だって、剣を握るためにあるんじゃないと俺は思う」

そんな悠人の声が聞こえてきた







「俺たちはこの世界の人の言う通り戦い、たくさんの殺し合いをしてきてる。そんな俺たちがこんな事望んじゃいけないのかもしれないけど…俺はアセリアに死んで欲しくないんだ」

握る手はつよく

「エスペリアも、オルファも、他のみんなも…死んで欲しくないと思ってる」

そして優しく

「戦うために、殺すために生まれて…死ぬために生きるなんて…そんなの哀しすぎるだろ?」

できるだけこの気持ちが伝わるように

「だから、簡単に命を捨てるようなことはやめてくれ」

俺の“想い”が伝わるように

「俺たちは生き延びようぜ。この先に何があっても、どんなことがあっても」
「ん……」

握り返すアセリアの手が、篭手ごしなのに温かく感じる

「わかった。ユートがそう言うなら、私は生きてみる」

少しだけ、感じられたアセリアの心が嬉しかった








「戯言です……」

そう言ってセリアがはき捨てるように言う

「シンヤ様はどう思いますか?私達に、戦う以外の理由などあるのでしょうか?」

そうヒミカが聞いてくる
いつの間にか皆がこちらを見ていた

「……できるできないを論じるのに意味はないだろ。やるかやらないかだ、動かなきゃ何も始まらないだろ」

そう言って隣にいる双子の頭を撫でる

「そうだな……お前らが変えようと思って行動すれば、きっとこの世界も変わるさ。」

俺が俺の世界を変えれたように、この娘たちもきっと変えられる
この娘たちは、俺よりずっと強くて、ずっと優しいのだから


この日、バーンライトは落ち、一人の死者も出さないままラキオスは勝利した










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<後書き>

第九話「輝く剣」
改訂版では早い段階で「戦う覚悟」というのを取り上げました
これは作者が引っ張っていた割に真夜が戸惑う無く戦っていたので
「ああ、これじゃ駄目だなorz」
と思い考えたもの
批判もあるかもしれませんが後悔はしてません
というか作者に力量が無いのが問題なのですが(ぇー

戦闘パートは、以前「敵に個性が無い」と言われて色々考えた結果こうなりました
一対一の戦闘は書きやすいという本音もありますが(汗
ティアは正直生きて仲間に……というのも考えましたがそれじゃ今回のテーマに合わんだろうと、この結果に
【再生】へ還り、やがて真夜と、今度は仲間として出会えるといいですね

あとは新技「死季・夏日連衝」の説明を


夏日連衝(かじつれんしょう)

攻撃力は「死季」の中でも低いですが、それを補う余りある攻撃回数が魅力といえる、計五連撃を叩き込む剣技です。
刀身に集束させたオーラを斬戟の瞬間開放することで、斬り付けた瞬間刀身が日に反射したかのように輝きます

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