「ラセリオに向かう?」
「ああ」

机に広げられた地図を指しながら答える

「リーザリオを攻めた時点で、敵の数が少なかった。まるでこちらに攻めてきて欲しいみたいに」
「確かに……でも、そんなことしてどうするんだ?」
「ここだ」

そう言ってバーライトの首都「サモドア」と、ラセリオとの間の道を指す

「敵はココを開くつもりじゃないか?エトランジェを引きつけるだけ引きつけて、一気にラキオスを攻め落とす」
「なるほどな」

まあもしかしたらだが、と付け加えた

「俺と、後数人を引き連れてラセリオに向かい、今度加入するナナルゥとセリアとで迎え撃つ。てのが俺の提案なんだが」
「俺は構わないよ。エスペリアは?」

悠人がそう言うと傍にいたエスペリアが頷いた

「はい、問題はないかと」
「じゃあ決まりだな。でも、大丈夫か、真夜?」
「……ああ」

今日の戦闘がフラッシュバックする
始めて人を殺した感触が、いまだに手にこびりついて離れない
悠人とエスペリアは気付いているだろうか
この作戦は、もしかしたら俺が戦わなくてもいいようにと取ったものだと……

「大丈夫…大丈夫だ」

















Intruder
08.reason to fight against 2 ^what do you fight for ?^
















「とっ言う訳で、俺とヒミカ、ハリオンでラセリオに向かいセリア、ナナルゥと現地合流する」
「え〜、ネリーたちはぁ!?」
「人数配分上、お前らはこっちで待機だな。バランス考えると本当はお前ら二人を分けたいんだが、嫌だろ?」
「う、うん……」「そりゃそうだけどさ…むぅ〜〜」

シアーは納得、ネリーはまだ少し不満そうだが仕方ない

「ですがシンヤ様」

そう言ってヒミカが一歩前に出る

「なんだ?」
「こちらの部隊は後から入るブルースピリットはセリア一人です。
ここはやはりネリーかシアーを連れて行くべきだと思うのですが」
「まあ、そうしたいのは山々だけどな。こいつらを分けるのは可哀想だろ?」
「シンヤ様、私達スピリットは道具です。ですからそのような―――」
「ヒミカ」

少し声のトーンを下げて話を遮る

「悪いが、俺はお前らを道具としては見れない。今度同じこと言ったらマジで怒るぞ」

それと、と付け加え

「元々敵が来るかどうかも分からない状態だ。そこに二人も詠唱破錠の使えるブルースピリットを置く事はできないだろ?」

ヒミカ、ハリオンだって元は一人で行くつもりだったのをエスペリアが言って付けさせたのだ
それを聞いてヒミカが慌てて一礼する

「も、申し訳ありません。出すぎた真似を」
「いいって」

堅いやつだな、と苦笑いする
それじゃ、出発するか――と言って立てかけた【桎梏】に手を伸ばそうとした時、誰かが服の裾を掴んだ
振り向くとその先には

「シアー?」
「……だいじょうぶ?」

いつもネリーの後ろに隠れていたシアーが心配そうな目でこちらを見てくる
まいったな、こんな小さな娘にまで心配されるとは
そんなに態度に出ているだろうか……

「大丈夫だ」
「あっ……」

片膝をついてシアーを抱きしめ、少しでも安心するように背中をポンポンっと叩いてやる

「また、サモドアで会おうな?」
「……うん」

よし、と立ち上がり頭を撫でてやる
そして今度こそ刀を取った

「そんじゃ、行くぞ!!」







三日後・・・

「やっぱ道を開放したか」
「予想的中ですね〜」

駆けながらハリオンが答える
現在俺たちがいるのはラセリオの手前
敵はサモドアを出たところだ
前方には門が立っており、そこには二人の少女がいる
セリアとナナルゥだ

「間に合ったな」
「敵影は未だありません。明日には接触するかと」

そっか、と言うとセリアが前に出てきた

「残念でしたね、敵が来てしまって。聞いていますよ?最初に殺してから、一人も殺していないそうですね」
「セリア!!」

ヒミカが叱咤するが、俺はそれを遮った

「……いいんだ、その通りだから」

そう言って一人門の中へと入っていった
……分かってるんだ……このままじゃ…駄目だって

「……なによ、ちょっとぐらい言い返しなさいよ」







翌朝・・・

「来たか……」
「殲滅しますか?」
「いや、ブルースピリットも見える。ナナルゥは指示があるまで待機しておいてくれ」
「了解」

敵の数は…5か
少数精鋭ってことか、それともまだ後ろから攻めてくるのか
取りあえず今は考えてる時じゃないな

「みんな、行くぞ!ココを落とされるわけにはいかねえんだ!!」

先頭を切って駆け出し、相手を分析する
隊長格は…あのグリーンスピリットか!!
【桎梏】を抜刀して下段に構えると、相手も立ち止まり手にした槍を構えた

「エトランジェ、だよね?」
「ああ、第四位【桎梏】。神凪 真夜」
「バーンライトスピリット隊・隊長。ティア・グリーンスピリット。この道通してもらうよ」
「嫌だね!!」

オーラを纏い、斬りかかる
しかしそれはティアのシールドハイロゥによって遮られた

「効かない効かないそんな攻撃!!」
「んなろ!」

突き出された槍を飛び上がって回避し、着地の瞬間“疾空アクセル”を発動する
相手との距離はおよそ2m
相手はこちらが高速で移動しているかのように見えるはずだ

「っはや―――!」
「もらった!!」

そして相手の背後に回りこみ、振り下ろそうとした時

「―――!!」

腕が止まる、刀は敵の首筋で止まったままだ
何やってんだ、動け、動けよ!!

「……殺さないの?いや、殺せないの?」

クルリとティアが振り返るのに、こちらの体は未だ畏縮したまま
そして――

「ガッ!!」

まともに石突での打撃に体が折れる
片膝をついて倒れる俺に、ティアが口を開いた

「何を迷うの、何を恐れるの?君は少なくとも戦うと決めて戦場に出たんじゃないの?」

ずきりと、ティアの言葉に胸が痛む

「何で君は戦うの?」

なん…で……?

「君の仲間のため?君自身のため?それとも君の国のため?」

一息

「君が僕を殺せないのは、本当に戦う理由が見出せてないからだよ。戦う覚悟はしてたのかもしれない。でも、殺す覚悟ができてないんだ」

だから、とティアは更に言う

「その心に答えを出して、それで剣を振るうか決めなきゃ。それができなきゃ、今度は僕が君を、殺すよ?」

そこまで言ってティアはこちらから視線を外した

「作戦は失敗!!サモドアに帰還し、篭城作戦に移行する!!」

そう叫ぶと、先程まで戦っていた四人のスピリットは戦闘を切り上げ、次々とサモドアの方向へ走っていく
それを見る俺に、もう一度ティアはこちらを振り向いた

「待ってるよ。それまでに答えを出してね」










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<後書き>

第八話「戦う理由 弐〜何のために戦うの?〜」でした
戦闘も話の内容もあっさり風味でした
一体真夜はどんな答えを出すのでしょうか?

次回「rightning sword」
 

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