世界が酷くつまらなかった

始業式早々べらべら喋る校長の話も

クラスに溶け込もうと話題を振っているクラスメートたちも

自分のクラブの紹介を楽しげにしている担任も

まるで世界に色が無いようだった

そう


「あなたが神凪君?」


こいつに会うまでは










before「Intruder」

PAST
〜spring〜

You change my world











「ねえ」
「……」

「ねえねえ」
「………」

「ねえねえねえねえねえねえ―――」
「んだよ、うるせえなあ」
「あ、やっと振り向いた!」

思い切り睨んでやってるというのに、ニコニコしながらこちらを見ている
始業式が終わった帰り道、朝教室でいきなり俺に話しかけてきたこの女は、ずっとこんな感じでずっと後ろを付いて来ている

「なんだよ、用があるならさっさと言え。無いなら呼び止めるな」
「神凪君ってこれからどうするの?」

えらくいきなりな質問だが答えてこいつが納得するなら言ってやろう

「帰んだよ」

あの誰もいない家にな

「えぇ〜〜〜〜!!」

それを聞くなりいかにも「私不満です」といった表情になる
何なんだこいつは……

「健全な中学三年生が始業式が終わった直後すぐ帰宅〜?」
「んなの俺の勝手だろ。じゃあな」

そう言って再び歩き出そうとすると、腕を急に掴まれものすごい力で引っ張られる

「お、おい!なんだよ!?」
「いいから、付いて来て!!」








それから俺はこいつに色々なところに付いて行かされた

商店街
「見て見てあれ!」
「いいからはしゃぐな。周りの目が痛い」

ゲームセンター
「どぅおりゃーーー!!」
「何だその見た目に反した異様な強さは…」

ペットショップ
「いいなー欲しいなー。ウーパールーパー…」
「微妙に古!!」

etc,etc…







「だから、何なんだよ一体…」

喫茶店でやっと一息入れたところで俺はそいつに聞いてみる
なんだかんだで結局こいつに付き合ってしまった

「ふぇ、ふぁふぃふぁ?」
「とりあえず食ってから喋れ」

そして見ていて気持ち悪くなってくる巨大なパフェを食べ終わると

「何のこと?」

殴ってやろうか……

「いきなり人のこと連れ回して、一体お前は何がしたいんだっつってんだよ」

するとそいつは目をパチクリさせて、さも当然のように返してきた

「だって、せっかく友達になったんだもん。どうせなら何かして遊びたいなあって思ったんだけど」

友・達?

「誰が友達だって?」
「へ?シン君だけど」
「シン君!?なんだそのあだ名は!」
「え〜、いいじゃん可愛いのに〜。大体いつもそんな仏頂面だとストレスで死んじゃうよ?」
「この顔の原因は主にお前だけどな」

だめだ、完璧こいつのペースになってやがる……
頭を抱えていると向かいの席に座っていたあいつが急にシュンとしだす

「いや、だったかな。私と友達になるの」
「は?」

急にそんなこと言われても困るが、しぼんでいるあいつの顔を見ると罪悪感が沸いてくる。

友達なんて言葉は久しぶりに聞いた気がした。
いつからだろうか?他人と距離をとるようになったのは。
そしてどうだ、神凪真夜。お前は今日楽しくなかったなんて言えるか?

「…しょうがねえなあ」
「ふぇ?」
「こうなったらお前にとことん付き合ってやるよ。今度は何処に行く気だ?」
「あ、うん!えっとえっと…」

急にあたふたし出すこいつに自然と笑みがこぼれる。
笑ったのも久しぶりな気がした

「そういやさ」
「ん、なあに?」
「お前の名前、まだ聞いてなかったんだが」
「あ゛……」










春、桜舞い散る季節

彼女に、雨宮 姫花に会ったその日から

無色の世界に色が付いた気がした













「デラックスジャンボパフェとコ−ヒーで2600円になりまーす!」

「…シン君」
「何だ?」
「割り勘ね」
「明らかに俺が損してると思うのは気のせいか?」







<後書き>
幕間「過去〜春篇〜」でした。まだ真夜が悠人と会う前のお話です。
彼女、雨宮 姫花は今の真夜の人格を作り上げた人物です。彼女がどうして真夜に接触したかは話が進むに連れ分かっていきます。
全篇四話で構成するつもりですが、書いててこの二人の掛け合いは楽しいので外伝で書いたりするかもしれません(ぇー
なお、悠人たちとは違う中学に通っています。
ここでプロフィール紹介


雨宮 姫花 (あまみや ひめか)

hair:black
eye:brown

真夜のクラスメートである中学三年生。
友達からは「ヒメ」の愛称で呼ばれている。
小柄で童顔、長い髪を先のところで一つに纏めてあり、その愛らしい容貌からファンクラブがあるほどの人気である。
ファンクラブbP1の中島君が真夜と姫花が商店街で歩いているのを発見。
後に校庭でファンクラブ一同V.S.真夜で行われた「桜の乱」はあまりにも有名


神凪 真夜
中学三年生になったばかりの過去の真夜。
他人と必要以上にコミュニケーションをとろうとせず、大抵一人でいる。
又、喧嘩はめっぽう強く「金目の悪魔」と呼ばれるほど有名である。
「桜の乱」時も97対1の圧倒的な人数差にも関わらずほぼ無傷だったつわもの。(実際は近くにいたbS5の山崎君を身代わりにして早々逃げた)


改訂版なのに内容が全く変わっていないのは気にしないで下さい(汗

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