言葉を交わしたい者は 剣を握るべきではない
気持ちが伝わらなかった時 最後に剣を交えてしまうからだ














Intruder
04.cross sword with















「ほう、エトランジェがわざわざこちらに来てくれるとは!やはり天はこのラキオスに味方しているらしい!!」

声がでかい……
悠人に連れられてこの謁見の間に来て、最初に見たのがこの王座に座るオッサンだった
違うだろ?普通こういうのは可愛い娘が王女様とかで、実は結構あか抜けてて、「私のことは名前で呼んで頂戴」とか言ってくれるもんだろ?
それが何でこんなむさ苦しいオッサンなんだ……
まあ隣に立ってる娘は可愛いからいいけどさ

「はっ。東の大国ラキオスに聡明で思慮深い王がいると聞きましたので、この度このラキオスにはせ参じた次第です」

これはヨーティアから教えられた口上だ
曰く「大抵の凡人はおだてときゃ喜ぶもんさ」らしい
その証拠に髭(今決めたあだ名。我ながら捻りがない)はニヤニヤと嬉しそうに笑っている

(よく言うよな)
(サルもおだてりゃ何とやらだ)

小声で悠人と会話をする
そこで髭がまた喋りだした

「そうだな…どうせエトランジェが二人も揃ったのだ。一度戦ってみてはどうだ?」
「な!?」

隣の悠人が驚いて顔を上げる

「そんなこと―――!!」
「できないと言うのか?」

ギリッと悠人が歯軋りをする
まあ仕方ないか。こいつは高嶺妹を人質に取られてるからな

「いいぜ、やろう」
「真夜!?」
「別に殺しあえて言ってる訳じゃねえだろ?新たなエトランジェの実力をその目で判断し、この俺の立場を決めようと思ってるんだろ。そうでしょう?ラキオス王」
「ん?あ、ああ……」

こいつ何も考えてなかったな……
溜息を一つついて、【桎梏】を抜刀する

「しょうがない、か」
「まあ気楽に行こうぜ」

悠人も腰に差した大剣【求め】を抜く
そして構えるとオーラを生み出した
構えが荒いっつうか、素人くさいな……
こっちにはイオみたいな訓練師はいないのか
対する俺は【桎梏】を下段で構え、腰を落とす
そして足元にマナを集め、爆発させた







「“疾空アクセル!!”」

(速い!!)

悠人は瞬時に加速する真夜を、反射神経で回避
後ろに回った真夜に片手を離した【求め】を薙ぐように振る

「おおおぉぉぉ!!」
「なろ!“流旋ストリーム”!!」

剣がぶつかり合う瞬間、クンッと刀身を水平にずらせ、悠人の懐にもぐりこむ
そして小声で悠人に喋りかけた

(今から吹っ飛ぶから上手く合わせろ)
(あ?)

返事を待たず、大きく後ろに吹き飛んだように跳ぶ
そして真夜は受身を取りながら地面に倒れた
そのままクルンと一回転し、立ち上がり刀を構える

「そこまで!!」

そこで少女の声が響き渡った







「お父様。彼のエトランジェ、今すぐにでも戦闘に参加させるだけの戦力はあるかと」
「そ、そうだな。ではエトランジェ、貴様をスピリット隊副隊長に任命しよう!!」

ちゃんと見えてたのか、あの髭は……
途中から明らかに目で追えてなかったが
ま、いいか

「ありがとうございます。この神凪 真夜、必ずや王の期待にお応えしましょう」
「うむ、任せたぞ」

あ、最後だけ王様みたいだったな(注:王様です)
そして立ち上がり悠人と一緒に謁見の間から出ようとした時

「エトランジェ・シンヤ」

後ろから隣に立っていた少女、レスティーナが声をかけてきた
先程とは違い、その顔には笑みが浮かんでいる

「演技なら、もう少し上手くやることです」
「……了解です」

ばれてたか……







城を出ると、そこには一人のスピリットが立っていた
ブラウンの髪に緑の瞳を持つメイド服の女性

「エスペリア!」

と、隣に立っていた悠人がその女性に呼びかける

「お帰りなさいませ。どうでしたか?」
「ああ、真夜は副隊長に、だってさ」
「……そうですか」

チラリとこちらを見てくる
まあどこから来たかもよく分からないエトランジェだ
警戒するのも無理はない、か
エスペリアと呼ばれた女性はこちらを向くと一礼した

「ラキオススピリット隊。永遠神剣第六位【献身】のエスペリアです」
「ああ、【桎梏】の神凪 真夜だ。よろしく」

そうして自己紹介をした後、三人で並んで詰め所があるという場所に歩きだした

「しっかし真夜は強いな。いや、強いって言うより戦いなれてるっていう感じだ」
「まあな。ある人に指南受けてたから」
「誰だ?」
「秘密だと言っておこう」

それもかよ、と悠人が悪態を付く
そして今度は溜息を吐いた

「俺なんか、この前訓練始めたばっかだしなあ。バカ剣の干渉もあるし……」
「干渉?」
「【マナをよこせ】ってな。真夜はそう言うのないのか?」
「ああ、俺は…そもそも話しかけても来ないしなぁ」

その一言に悠人とエスペリアが驚きの表情を浮かべる

「ほ、本当ですかシンヤ様?」
「ああ」
「い、一度もか?」
「しつこいな…ねえよ一回も」

これはヨーティアの所にいた時分かった事だ
イオも驚いていたし、ヨーティアは理由を見つけようとしていたが、結局分からずじまいだった
「神剣だけココに置いていけ」といわれた時は、全力否定したが(殺す気か)

「まあ戦闘には支障ねえし、そもそも俺はこれが普通だと思ってたから問題ねえだろ」
「いや、まあそうだろうけど……」
「それより」

話が長くなりそうだったので方向を変える

「俺はどこに住むんだ?やっぱ悠人のいる詰め所か?」

その疑問にエスペリアが答えてくれる

「いえ、シンヤ様には第二詰所に行ってもらいます」
「そっか」

悠人は例の干渉もあるだろうし、異世界の人間を二人も置くのはやっぱ抵抗があるのだろうか
そんな事を考えていると前方に一つの家屋が見えてきた

「さて、どうなることやら」









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<後書き>

第四話「交わる刃」
ほとんど戦闘がないのは作者の力不足です、ごめんなさい……
語らない剣【桎梏】ですが、何故なんでしょう
いや、考えてますよ?
だからそんな目で見るなーー!!


次回「introduce myself (自己紹介をしよう)」

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