神聖サーギオス帝国 ユウソカ 帝国軍、軍事施設内 牢屋

 静かな空間に足音が響き、彼女の居る牢屋の前で止まる。

「珍しい、お客さんね。」

 牢の向こう側には、珍しい組合せのコンビがこちらを見ながらこちらを伺っている。

 一人は、暑がりなのか何だか知らないが、半身裸に帝国の紋章がついた外套を羽織っており、くすんだ金髪に
卑しそうな目をしている為、溝鼠の様な印象を受ける男……、
大陸に名高き軍師訓練士、ソーマ・ル・ソーマ。


 一歩間違えれば、ただの変態である。


 そしてその隣には、負けじと劣らずきわどい格好の、ブラックスピリットも控えていた。

「やぁ…、お久しぶり。」

 その正体は、帝国所属の暗殺部隊隊長、ウルカ・ブラック・スピリット。

 メティスと1、2を争う程の帝国の最強クラスのスピリットである。

「……」

 メティスの挨拶を返す事は無く、ウルカは黙ったままである。

「そう、だんまり。」

ーーまっ、大方、この眼鏡猿が黙れと指示した所…でしょう。

「気分はどうですか?」

「特に問題は無いですね。……まぁ、しいて挙げるのなら、遮光(かげり)に触れたい事ですね。」

 メティスは先程、昂った為か、持ち慣れた物を持って落ち着けたいと思ってた。

「残念ながら。それは叶えられませんね。」

 まぁ、当たり前だ。 誰が(特殊とはいえ)囚人に武器を渡す奴が居るのか?

「そう……それで、何の用でしょう。とても暇潰しに参った様には見えませんので。」

「……話が速くて助かりますね。貴方に聞きたい事があるのですよ。」

 メティスの言葉にソーマはピクリと反応するが、冷静に自分を取り戻し話を続ける。

「今回の件は、粗方報告いたしましたが。」

「確かに、調査書には目を通しました。エトランジェの尋常ではない強さが分かりましたよ、まぁ、大体ですがね。」

エトランジェ殲滅計画。

この計画はデオドガン商業組合の所属となったエトランジェを始末するもので、
自国に潜んでいた巨竜を利用し、それにぶつけさせ、エトランジェを殺すか弱らせる為の作戦である。

第一段階は巨竜の消滅という事によりプランBに移行、

そして同時に行った奇襲作戦で、デオドガン所属の
スピリット二体のスピリットを殺害。

 これにより作戦はプラン変更無しで、第二段階に移ったが、ここから調子が違った。

 敵スピリットの動きが洗練され、更にはエトランジェの合流されてしまい、
サーギオスの被害を増大させる事となり、


遂には、妖精騎士団所属、第2部隊の隊長以下の隊の暴走
により、失敗に終わる。

 それが、サーギオス帝国の史実となった。

 幾ら、彼女達(第2部隊)が生き残ったとしても、「妨害せよと命令された」と証言しても「それは関係無いと」
切り捨てられる。

「それでは、必要無いでしょう。」

 そう……メティス達……スピリットは、トカゲの尻尾切りで、切り捨てられたのだ。

 帝国の敗北は、エトランジェによってではなく、失敗によって負けたのだという。

 腐った政治屋の都合によって……

「いや、間接的ではなくて、自分の耳で幾つか聞きたい事や、気になった事がありましてね。」

ーーあぁ…黙ってても鬱陶しいのに、余計な事を喋ってきて……。

 そう思っても、顔にも言葉でも出さない所が凄いものである。

「例えば……何故、生かされたのでしょうね。」

 ソーマの疑問に、メティスの動きが一種止まる

「仲間は全滅、ボロボロとはいえ、たった一人だけだけの生還者。不思議だと思いませんか?」

 ソーマは行き成り、確信を突いてきた。

 そう、ソーマはエトランジェの戦闘能力を調べる事と、メティスについての疑問を調べようとしていた。

 このまま、メティスとエトランジェの見えないパイプを、見つけ出し引っ掻き回そうとしたが…

「『これ以上、俺の住処を突付く様ならば、その時はその血で代価を支払って貰う。これは警告ではない。
事実だ。』と、この一言を言う為だけに、生かされました。」

 あっさりとメティスは答えた。

「…………成る程、エトランジェの指示、計算通りと言った所ですか。」

 その反応と答え方からして、ソーマはメティスが本当の事を言っており、次に話の大部分はエトランジェが
残した精神攻撃タイプの罠だと察し、自分が僅かながら踊らされたと思い、この場に居ないエトランジェに
毒づいた。

 本当の所は、傷付いて消耗しているメティスを連れて行くのは面倒だし、イシュラーに委ねてみようという、
出たとこ勝負に近い行為なのだが……

 そして、この時、ソーマはある事を見逃した。

 その言葉に、メティスの眉が僅かに反応したのを見ていなかったのだ……。

「それでは次にですが……」





「成る程、」

「……話は変わって自分の個人意見ですが………。」

 ソーマが報告に関して納得している最中に、メティスは口を開き本音を漏らした。

「彼の者には、手を出さないほうが良いと思われますよ。」

「ほう、嘗ては帝国最強と呼ばれたスピリットがどうしたのですか?」

 ソーマは毒づいて、彼女が庇い立てしているのかと勘ぐった見方をしたが、それが違うことはすぐに察せた。

「直に戦った者だからこそ分かるのですよ。彼の者の強さは我々とその部類が違います。」

 その話に、後ろでポーカーフェイスを貫いてたウルカも反応する。

「戦い前はエトランジェといっても、スピリットより力が優れているだけだと思われました。」

 その考えはエトランジェを想像上の推測から判断できくなった、この大陸の人々の殆どの考えである。

「ですから、上からの提示された作戦は完璧で、万全の布陣で彼の者に戦いを挑んだのですが…。」

 そのウルカの反応を、メティスは喜んで見抜き、

「確かに。守護者リバイルとの戦闘直後に圧倒的多数での奇襲。そちらの部隊に横取りされたとはいえ……
確かに磐石な布陣です。もっとも破られて意味の無い布陣となりましたが。」

「開始直後はウルカも知っているでしょ。」

 会話に参加させた。

 ソーマに、喋って良いのか?と、表情で察するとウルカは会話に参加し始めた。


「……確かに、手前等の隊が攻撃した際は順調でした。」

「ですが、敵スピリット二体……それ等を倒し、もう、二体に逃げられるという失態を犯しましたがね。」

「思えば……、そこから戦闘に違和感を感じました。」

「確か逃げた妖精の二体は、間者からの報告では、元マロリガン所属でしたね。」

「……えぇそうでしたよ。」

 ソーマは自分悪舌をスルーされ少々苛つくが、直に話に参加する

「では、尚更おかしさが際立ちました。あの二体は年相応に瞬発力が高く、こちら側の攻撃を
掻い潜っていました。」

「元から能力が高いのか? そういう情報は、少なからず情報が入って来て自分等スピリットに伝えられる筈です。
ウルカ。そんな話聞いた?」

「いえ、手前は聞いておりません。」

「戦況に影響する情報は伝えられるのなら、ちゃんと、伝えますよ。」

 そう、サーギオスの密偵の質は高く、サーギオスの諜報力は大陸屈指のものである。

「それを知らずに、手前等は上手い具合に、敵に逃げられてしまいました。」

「そして、その結果は、エトランジェとダスカトロン砂漠の鬼子が合流。戦力を立て直され
使えない貴女方の失態へと……」

「手前の指揮する隊は一人を、第二妖精騎士団は全滅という結果に……。」

「そうね。確かにその通り、自分達の隊は敗北した。だから考えなければならない。」

「我等の攻撃を掻い潜り、生還できる程の能力を幼少のスピリットが、普通、お持ちになると思います?
 しかも名も知られていない者がですよ、」

「ほぅ、」

 ソーマの目元が妖しく光る、彼がこの様な目をする時は対外、何か企むか、何か興味を引かれた時に
光るのである。

「あの二人は運が良いとか、才能とか以前に、戦力となるにはまだ経験が足りない年頃です。
幾らエトランジェという強敵とぶつかり、経験した所で、そんなに大きく変わるわけでもありません。」

 常識的に言えば、精神の質は本人の気迫が変われば上がる事はあるが、身体の方は一日、二日で
早々変わる訳ではないのだから。

「ですが…あの二人は……。」

「そう、生き抜いた。しかも、疲労はしながらも第二波の我々の攻撃まで……そう、有得ない。
まず普通の常識なら……。ソーマ訓練士殿、お聞き致しますが。短期間でそこまで強化する方法は
ありますか?」

「……そう…ですね。その気になれば出来るでしょう。もっとも、使い捨て感覚ですが……。」

 その言葉に、メティスは軽くため息を吐きながら肩を落とす。

「その方法では、まず無理ですね。少なくともあの二人は、その様な傾向ではありませんでした。」

「………やはり、噂のエトランジェ、多少は興味が沸いてきましたね。」

「それに、ダスカトロン砂漠の、鬼子。何故、混沌の鬼札とも呼ばれる化け物が、彼の元で平然と
飼い慣らされているのでしょうか?」

 鬼子の種類のタイプは、人間に対して躊躇いを持たない、そして純粋な戦闘能力のポテンシャルが高く、
それ故に自己至上の主義で、他人の言葉に耳を貸さない事が欠点。

 そんな厄介な化物だと仕訳されている。

 とまぁ、はっきり言えば、それは即ち、野生の獣を飼い慣らすより至難の業という事の証明と取れる。

「まぁ…恐らく、鬼子を御しているのはエトランジェの神剣が何らかの影響を与えたからでしょう。」

「確かにそう考えるのが妥当でしょう。誰もがそう思う筈なのですが…………」

「それとも、何か他の要素があるとでも?」

「それは分からないのですが、あのエトランジェと戦った限りでは、神剣自体の強さは、然程ありませんでした。
判断し分類分けするのなら、階位の低い神剣を持ったスピリット程度にしか。」

 そう、メティスは戦いの時に、エトランジェ……サハのマナの流れを感じ取っていた。

 これはある程度の戦闘技能を摘んだ者が、出来る技術の一つで、者によっては相手の神剣を逸早く
察知したり、神剣の気配を消したり、身体に流れる相手のマナの動きを見たりする事ができるのだ。

 メティスの場合は後者のものであり…。

 ウルカとサハドがタイマン戦を行った時に行った行動にも理由があった。

 
彼女はサハドの身体を被っていたマナが異変を起こしたのを察知し、サハドの張っていた罠に気付き、
それを防ぐ為、
二人の間に急に割って入った。

 そういう理由があったからかである。

 
「詳しく言って貰いましょう?」

「はい、……恐らく、階位としてはささやかで、8位、頑張って7位程度でしょう。」

 エトランジェ、サハドの身体から溢れるマナは、とても僅かで、ほんの僅かでしかなかった。

 平均程度のスピリットはマナが色の違う空気のヴェールとなって身体を覆っているのだが、エトランジェ……
サハドの場合は、喉・肩、脇や膝等の関節を薄くまとっている、程度で後は剣程度にしか被っていないのだ。
 それは己の神剣が非力である事の証明であるのだが……

「ほう、そのエトランジェは余程運が無いのでしょう。力の無い剣を選ぶとは、」

「そう、そんな下位の神剣の能力しか無い神剣に、上位の神剣を持つ相手が従うと思いますか?」

「…ツッ!!」

 人間とスピリットの上下関係のイニシアチブもない。神剣による束縛力もない。

 そんな普通の者が、どうやって荒馬……いや、暴れ馬と喩えていいような化け物を従えられるのか?

「それが、気味悪い位に恐ろしいんですよ。だから自分は考えない事にしています。だって考えれば
考える程、深みに嵌ってゆくんですよ、思考の中の、得体の知れない場所へと……。」

「よ、よく考えられますね……。戦闘だけが楽しみの、戦闘狂集団の隊長が。」

 ソーマの僅かに震えた口から、その様な言葉が洩れたが、それは明らかに虚勢と見え、内面では不確かな
恐怖が支配している事を、二人のスピリットは感付いていた。
 
「こんな所に何も無しで閉じ込められてたら、嫌でも考えざる終えなくなりますよ。」

 そう言ったメティスは牢屋の壁に背中と後頭部を預け、声にならない、乾いた笑いを溢す。

「…クッ……それに、そのエトランジェが我々に勝てたのは何故だと思います?」

「先程の話をまとめれば、お前達が侮ったからでしょう?」

 ソーマの様子がおかしくなり、何かに焦りを感じているようである。

「いいえ、エトランジェという事で、警戒心を込めて明らかに逆転できる手段を講じて、待ち構えていました。
それこそ……何度蘇ろうとも殺せる位に。」

「……だとしたら、不思議ですね? 何故負けたのですか?」

 その焦りが、逆にメティスを冷めさせている。

「それが分からないから恐ろしいのですよ。」

「……まぁ、そ…そこまで言うのでしたら……肝にめいじておきましょう。私もまだ死ぬ訳には参りませんし。」

 そう言うとソーマは踵を返し、早足で牢屋を後にしようとする。

「あ、ちょっといいかしら?」

「どうしました?」

 メティスの呼び掛けにソーマは立ち止り、それに連れ立ってウルカも足を止める。

「ちょっとそこのウルカに言いたい事が御座いまして……。」

「て、手前に?」

 いきなり指名され、ウルカも戸惑った。

「えぇ…同じ戦うべき者に、一言。」

「まぁ……いいでしょう。私は先に参ってますので。」

 ソーマは何をする気なのは分からないが何かに追われるように、多少慌てて部屋を出て行ったのであった。

「これで落ち着いて話せますね。」

「メティス殿……手前に出来る事は」

 ウルカとメティス、互いに似たもの同士であるが為に、部隊の違いや所属派閥の違いはあっても
二人は武人であるが故に、妙に馬が合うのである。

 だからこそ、互いの立場と心情が分かり、ウルカは、突然のメティスの要望だろうと、それに
応えようとしメティスの前に立つ

「話だけを聞いてくれれば、それで良いわ。」

「その位でしたら。」

「……ふぅ、……恐らく自分はもう。この先短くは無いでしょう。」

 そう言いながら、パタリと仰向けに倒れ、天井を見上げる

「実験材料となる事が決まりました。……だけど、そう都合良く長く生きられるとは思っていない。」

「メティス殿……」

「戦う事しかない者の末路はそんなものよ。これで、「もう戦う事が出来ない」って言う事しか
悔いが無いしね。」

 

「だから最後に、似た者よしみで忠告してあげるわ。」

「て、手前にですか?」

「えぇ……前々から言おうと思っていたけど、貴女、人の命を奪えないそうじゃない。」

「ツッ………!!」

「別にそれでとやかく言うつもりは無いけど、でも……貴女のソレは正しいと思うのよ。」

「何故でしょうか。手前は暗殺部隊、殺せぬのなら役には立ちません。」

「どうも自分には、貴女が他人を護る為に存在しているとしか思えないのよ、」

「て、手前が、護る……ですか。」

「えぇ、自分には相手のマナの動きが……;自分はオーラフォトンから取って、オーラって読んでいるけど、
それが分かるのだけど、貴女のオーラは普通のとは違うのよ、どう感じても、」

「手前の…ですか。」

「えぇ…貴女の攻撃方法は攻めるタイプだけど、本質は攻めるタイプのモノじゃないわね、どちらかと
言えば守護に近いわ。」

「ですが、手前は多少打たれ弱いのですが、」

「そうね……、恐らくそれは貴女の精神(ココロ)と身体が噛合っていないのが原因だと思う。気持ちと身体が
別々で付いて来ないのよ。それに……」

ーー神剣に制約が掛かっている。

 そう言おうとしたが、何故だか言う必要の無いものだと突然思い、口を止めた。

「それならば、手前はどうすれば、」

「貴女が心から護りたいと想う者を見つける事よ……そうなれば、心構えが少しは違ってくると思う。」

「心から護りたいと想う者……」

「コレだと断言できないけど、言葉とか、その場の勢いとかでは決められないものよ。貴女が無意識の内に
意識し、それに気付くべき者よ。それを探して生きていきなさい。」

「メティス殿……忠告、感謝致します。」

「護るべき者が敵だったらどうにかして生かして、彼の元に下ればいいわ。」

「め、メティス殿、ですが、手前には部下達が……」

「天秤に掛けるのだったら、護る………いや、それは自分で決めるべきね。どちらを護ろうとも貴女の勝手よ。」

「……ありがとうございます。」













永遠のアセリア

ラスフォルト



第5章、4話、“サハドの悪党だいあり~④”




願望・・・
求めること・・・それはちからとなる。

善き願いでも、悪しき求めでも。

制約・・・
誓うこと・・・それは力を呼ぶ。

そんな誓いでも、それが純粋な想いならば。

織物・・・
時と運命と想いが紡がれた・・・

織り込まれて物語をかたち作っていく。

略奪・・・
強欲であること・・・それはちからそのもの
他者を蹴落としてまで、生に執着するためのこと。









 どうも、フッシ・ザレンドールです。

 デオドガン商業組合でキャラバン隊の隊長をしています。

 肩書きは立派ですが、正確には組合長位の権限しかなく、細かい金の計算や損得勘定は妖怪爺達に
抑えられてます。

 何時もは上と下の連中とで、板挟みに会って苦労していて大変ですが……私には妻の置き土産
である、娘の笑顔を見て慎ましくしていればそれで幸せです。

 あんなに可愛かった娘の眼が見えなくなった時はそれもーう、ショックでしたね。

 少々若気に暴れて、恐れられてました。

 その所為か、娘が嫌煙されてしまって、いや、親としては問題でした。

 やれる事はやってみても結局は本人達の問題なのか進展しませんし。

 下心丸見えの男達をね、人畜無害なユーノラに近づける訳にもいかなくて、結果……一人っきりで……


泣き出した為、10分間、回想停止。


 ……まぁ、幼少期に銀髪のお姉さんに色々と教わった事があるらしく……何で髪の色が……あぁそうか。
向こうが言ってきたんだった。そうだ、そうだ。……と、それ位なんだよな。

 そして、最近。色々と問題を引き込んできたエトランジェのお蔭で、ユーノラの眼が治ったので色々納得できない点があるが、
無事にしめようと思う。



でもね……。



 最近、その娘が自由奔放になった訳なんですよ…………。


 ワシが仕事の手を少し休ませ、居間に移ると、

絡めた指と指の……、温もりだけが~♪ 二人を繋ぐ世界~♪

 ユーノラは鏡台のまえで歌いながら身嗜みを整え、そのまま櫛を置き化粧を済ませた。

あら、……それでは、父さん。」

 そのまま、ワシに気付くが、さっさと手荷物を持ち、軽く挨拶して家を出ようとする。

ーーちと、寂しいのぉ

「あ、あの、ユーノラ?」

「はい?」

 振り向いたその顔はナチュラルメイクを意識して彩られ、それにあった穏やかな服装の姿を着たユーノラは綺麗で、
亡き妻の面影を上手に残してくれているが。

 その姿は、ある男の為だけに向けられている事をワシは知っている。

「ど、何処に行く ……んだい?」

 だが、ワシは娘がそうでない事をささやかな、希望に……。

「もちろん、サハドさんの所ですよ。」

 青春を謳歌している人間特有の笑顔。

 無理だった。

 ふら~り、ふら~り、と娘はまるで浮いた様に歩きながら、家からでてゆく。


ーーあぁ~ユーノラも難儀なのに好くとはな……

「頭が痛い……」

ーーワシに情報提供したグリーンスピリットの事といい、あの女癖の事といい。

「あぁ~ハァ……」

 ワシは、エトランジェなど結局は伝記に伝わる恐ろしい存在ではなく、ただ強い一人の人間だと思っていたし、
エトランジェ………サハド個人の事は、知識、教養、力、見た目も優れているので、普通なら問題が無い。

 否、普通なら婿殿と呼んでも良いだろう。

 が、このエトランジェサハドは……

ーーエロランジェなんだよなぁ~、

 妖精趣味や幼女嗜好なんて関係ない。いい女なら即行けるし、ハーレムという、一夫多妻を推奨するというツワモノ……。

 親としてはとても進められないものだ。

 何故と、以前酒片手に問い詰めたところ(ワシの酒! 断りやがった!!)、そういう文化なんだ
そうだが……。

 俄に信じられない。結婚は男が速くて14歳、女は10歳行けば出来るそうだし、……いや、断食とか言う
恐ろしい事を行える6、7歳の年から一人前の男と女に扱われる(だからと言って大人な並には行動できない。)だとか
スピリットという存在は居ないから関係ないそうだし。

 一夫多妻制は「己の欲を満たす為ではない。自分が愛した女を不幸にしない為に、男が全力で守る為だ」と言っている
……正直。

ーー嘘じゃろうがぁ!!


*基本的に本当です。細かい範囲も地域によっては本当です。*


 そもそも、どんな事も、「すべてが神の御予定にあるから。それに従うまでの事」とぬかしおった。

 *何をしてもそれは運命で、行為を判断する自由意志はどうでもよいことにならんのか? と思うし
「神は悪行も創造するのか?」と言ってやりたい。

 ……いや、それ言ったら激怒して、ワシを殺しかねないからワシは黙ってしまったが…


*そのツッコミは一時期論争にもなったが、アシュアリーという学者によって
「人は行動することによって運命を獲得する」という「獲得理論」で収まっている。*



 ……だが、文化と信仰はワシは譲れぬものだとワシも思っているので、我慢しよう……。


 が、問題はそれだけでない。



「それになぁ……」

 フッシにユーノラとエトランジェが居る場所を教えた(密告)のは鬼子で、その前にエトランジェを必死になって
探していた女達(
スピリット人間にとらわれず)も居たのだ。

ーー厄介な事、満載なのに。

 絶対、修羅場になる事は目に見えている。

ーーいや、なるな。

 だが、強く言えないのだ。

ーーワシには、娘の眼が怖い事と、弱みがあるのでな……。



 フッシの失点は迂闊にサハドを殺そうとして目撃され、ユーノラに負い目を作ってしまった事だろう。






デオドガン、サハドの住む借家

 そろそろ、昼時、台所からいい匂いが漂い、食欲を促すような調理の音が聞こえる、そんなひと時。

 軽く扉を叩く音が部屋に響く、


『すみませ~ん』


 ドアの叩く音に続いてその声が聞こえた途端に、居間に居たルーファ、レネヴァリーは逸早く反応し、
出来るだけ気配を消し、レネヴァリーはサハドの居る部屋に向かい音の出るものを、素早く、
出ないように細工する。

 女二人の意図は言うまでもなく通じた。

 スフェ、ルーファの二人がどうにかして泥棒猫(ユーノラ)を追い返し、レネヴァリーが何かにつけてサハドを
部屋から出さないで、サハドとユーノラをそのまま鉢合わせないようにすると言う事である。

「誰か……」

ーーッッ!

「……モガッッ! ………」

 その二人の努力をブチ壊しにしかねないスフェの口をルーファが素早く塞ぐ。

「しぃ~静かにだよ

何をする。

 ルーファはそのままスフェを連れ部屋の隅に行き、しゃがむ。

メッ!! ダメだよスフェちゃん、あの女を上がらせちゃぁ、

何故だ?

折角のお休みだよ、なのに、どうしてわたし達にとって邪魔な者を家に上げなきゃいけないのぉ。ソゥ・ウネト(主様)との時間を
とられちゃうじゃぁん~


 空気の分からないスフェにルーファは悶々としながら教える、

『あのぉ~すみませぇ~ん、サぁ~ハぁ~ド~さぁ~ん~ いらっしゃいませんか~』

いや、だからと言って無視しては……

折角、朝から色々して貰えると思ったのに、訓練しているんだよ。なのにお昼の時間までとられちゃったら大変だよぉ

 二人のヒソヒソ話を他所に、
その背後では相変わらず、扉が叩かれ、彼女の声が聞こえる

『さぁ~はぁ~どぉ~~♪ さぁ~ん~♪』

 一歩間違えば借金取りみたいである事は黙っておこう。

いや、夜だけで十分だと思う……

何言ってるのかな? スフェちゃん!!

イタイイタイイタイイタイイタイ

 ルーファの抓りがスフェの手を襲う。

『開けてくださ~い、お~い、開けてくれるだけでいいんですよ~』

『………………』 



 そして、サハドの方に行ったレネヴァリーはと言うと。

「あ、あのぉ~サハド様~」

 水平になる様に横に置かれた剣の上に、一部の隙無く立っているサハドを恐る恐る呼ぶレネヴァリー

 恐ろしい事に、サハドは剣の上に素足で立っており、バランス感覚以前の問題で構成された方法で
何かの訓練をしていた。

 しかも、器用にポケットの中に手を入れ、俯きながら目を閉じている。

「…………」

 サハドは何も言わず集中しているのでレネヴァリーは、何とかなっている事に安堵の息を吐く。

「ふぃ~」

ーーよかった~何も小細工していないのなら、レネは攻められる事はありませんし。

「…………それで、どうした? 来客を知らせに来たのに、言わない気か?」

 不意の言葉に、レネヴァリーは肝を潰される想いを味わう。

「さ…サハド様!!?」

「……時間か。丁度いい、そろそろ降りよう。」

 サハドの視線が、向こうから持ってきていた腕時計に目が行くと、何かに納得しサハドは剣の上から降りる。

 恐らく、時間をみて判断したのだろう。

「さて、彼女は待つ女か、行く女か……」

「あ、あの……」

「まぁ、気持ちは分からんでも無いが、間が悪かったという事だ。」

 サハドはレネヴァリーの気持ちを察してるのか、頭を撫でて、部屋を出る。



話は居間に戻り、

『………………』 

 声がしなくなり、ドアを叩く音もしないのでルーファもスフェも落ち着けると思ったが……


 次の瞬間、


 扉から「ガキョッッ」と、音が鳴ったと思ったら、いきなり扉が開く。

「な、何で!?」
「えぇーー!!」

「やっぱり誰か居ましたね。ダメですよ、居留守は。」

 そこには手に付いた埃を両手を払いながら部屋に入ってきた、威風堂々たるユーノラの姿があった。

ーーど、どうやって!!

「あぁ、ちょっと力入れて回しましたら……開きました。」

 ちなみに、この家の扉の鍵は、一昔前のアパートやボロアパートにある、外からは鍵で、中は捻る場所の先端に
ボタンが付いており、それを押して鍵を外す型なのだが……。

 これが、とっても衝撃に弱く、壊しやすいのだ!!

「それで、サ・ハ・ド・さ・ん・は?」

「あぁ……そ、それは……」

「待たせたね。部屋に上がってくれれば良かったのに。玄関とは律儀だな」

「いいえ、そう無断に上がるものでは無いですので、」

「とりあえず、上がってくれ。狭い借家だが……」

「お失礼致します。んっっ」

 部屋に入った途端にサハドに唇を寄せ、啄み程度の挨拶をするユーノラ、それを舌を入れるディープで
返すサハド、熱々の光景である。

そして、サハドとユーノラが用意された敷き布に座ったと同時に、不機嫌そうな顔をしてレネヴァリーは出て行った。

ーー……拙いな。

 サハドは何かを察し、

「ちょっと、ユーノラはここで待っててくれ、」

 どうにかする為に立ち上がった。







あぁ……気分は最悪だ。

今日もレネとサハド様の愛の巣に余計な女が舞い込んで来やがった。

まったく、指揮官の娘といえど図々しいにもほどがある。

まだサハド様に、気まぐれで助けられた時は、それだけだったから歯を食いしばって耐えたのに
今では、押しかけてきてサハド様を独り占めしやがる……。

やっぱり、殺そうか……

いや、だが、サハド様は今、あの女の毒牙にがっちり咥えられている。

下手に殺せばサハド様が悲しまれる。慈悲深いサハド様にそんな事をさせてはいけない。

「ったく。あの肉ダルマ使えないわね。」

目論見も外れたし……まぁ、
流石サハド様という事かしら。


ならば、まずは手始めに、あの女をどうにかしよう。


1:適当な男に襲わせる……いやいや、これはリスクが高い。

失敗してゲロられるとレネに足が付くし……なにより、下手に同情をかわれてはどうしようもない。

2:毒を盛っては…………駄目か、サハド様が絶対に気付きますわね。

あぁッッ!! ……色々とややこしく考えてたら苛々してきた。

もぅ、忌々し…………そうだ! そうだ、そうだ、その手があった。流石レネ、冴えてる~。

そうとなったら、行動に移しましょう。まずは、協力者を作り上げましょうか……。



「あ、あのぉ~レネヴァリィさん。」

丁度いい所に、青い雑魚が寄ってきた。

コイツ等と数人を仲間にして……。

「何かしら? どうでもいい話だったら先にレネの話を聞きなさい。」

「い、いぇ・・・重要だと……」

何を言っている? 雑魚のくせに……先に始末しようかしら?


「…………」

「じ、実は…ぁ~、」

レネの言葉に怯えて答えようとする青い雑魚……鬱陶しい。 いいから早くしろ。


「サッ…サハド様から…言伝で……」

「! それを早く言いなさい。」

いけない、いけないそれは重要だわ。


「はッ……はい、で……でっ…は言います。はい、『レネヴァリー、余計な事を企む位なら、自分を磨いとけ……
後は……余計な事は言わないからな。』との事で……ひぃぃぃ!!」

何で、ばれるの!!

「あぁんもぅ、サハド様、敏感すぎです。」

 確かに、レネの事を良く分かってくださるのは嬉しいのですが、余計な事まで気付いて下さらなくっていいのにぃ……

「あ、後。『追伸、磨けたらおいで。その時は可愛がってやるから。……あぁ、無性にお前の耳を、甘噛みしながら
舌で弄って味わいたくなってきた。そこも磨いて待ってろ』と、おっしゃってましたぁ~」

本当! 本当に? いっやぁぁったぁぁぁ~~!!

どうしよう。まずは洗顔して、耳は濡れタオルで……あぁんっっ!! サハド様ぁ~!!




 クックックッとレネヴァリーの歯の奥から笑いが込上げ。

「あ~っ、ハッハッハッはぁぁっぁぁぁぁぁ!!」

 怖い位にレネヴァリーは上機嫌となったのであった。



結局、レネヴァリーは、この日と僅かな間は、何も出来なかった……。






結論

サハド様が居る限り、無理!!







話はサハドとユーノラに戻り。


「待たせたね。」

 そう、済まなそうにサハドはユーノラの前に座る。

 他のスピリット達はどういう訳か部屋から退避していた。

 恐らく、邪魔にならない為にだろう。

「いえいえ、それよりも何をしに?」

「ユーノラに害になりそうな芽が、顔を出しかけたんでね。摘んできた。」

 ユーノラの質問にサハドはあっさりと答える。

 サハドはユーノラに隠し事は出来ないととっくの等に察しているので、ユーノラに答えられる範囲で
本当の事を言ったのだった。

「ありがとうございますサハド様。助かりました。」

 ユーノラはそれが嘘でない事を、その優れた洞察力で察し、感謝の印と言わんばかりに
半腰で立ち上がると、サハドの顎に両手を当て頬に唇を寄せる。

「ユーノラの、その顔を見られるなら。別に構わんさ。」

 それに返すように、サハドはユーノラの頬にキスをする。


 流石、サハド。


 女殺しで、生粋のプレデターなのは、伊達ではない。


 彼にとって、『彼女が空の鍋を何度も何度も掻き回している』という事は、無縁の話なのだろう………。



 互いに甘い一時に浸り、軽いキスやペッティング等の応酬が繰り返されてゆく。

ちなみに、今回は……どう攻めているんだっけ?

爽やか路線で攻略し、一気に落城させる気ですね。

あぁ~ん、相変わらずながら凄いテクだよねぇ~ハァ~。

本当に・…ハァ~。


 “強欲”と“所縁”、二体の神剣も、やきもち焼きを通り越して、話の種になってきているようである。

 まぁその余裕が、どこから来るのかは分からないが……。

流石に、人の心を見透かせる様な二人ですからね。

本当……速いよね~、疑心暗鬼って言葉を端っから通り越してるし。

 “強欲” も“所縁”も二人のデレ具合に少々、飽き飽きしながら聞いている。

 まぁ、そうだろう。一人身の女性達の住む部屋の隣から、喘ぎ声とミシミシと軋みが聞こえてきていると同じぐらいに
覚めてしまう状況なのだから。

AAにするなら。こんな

  ('A`('-`('д`('_` )
  ノ ノノ ノノ ノ) ノ|
  「「 「「 「 「 「 「

 感じだろう(何で二人増えている? ってツッコミは無しで。)。

 そりゃ、覚める。ってか本当に
その余裕が、どこから来るのか……。


そう、こう、している合間に二人の動きが15禁ではすまない動きになってきた。


「ユーノラ、もっと声上げてもいいぞ、」


 手が胸と腰から、下へと変わってゆき、サハドは尻を撫でながら、たわわな胸を弄り、キスを続ける。

「さ、さはぁ…ど…さぁ」


 そして、前の下腹部に手が伸びたその時、ユーノラの手がそれを遮る。

「い~やぁ~だぁ~。」

 ちょっとした拒否の言葉、サハドは何時もの他愛ない駆け引きと思い、手を這わせるが、

 次の瞬間、異変が起きる。

「はがぁっ!! ッッ……イタタタタタタタタ!!! 抓りは……抓りはぁぁぁぁっぁあ!!!」

 下腹部に触れかけた手が、ユーノラの指によって捻られる。

 しかも、ちょっと強めに。

「な名奈々なんあなななllねおをあんざ、kfn何でだぁぁぁっっっあぁうぁぅあぁぁぁっぁあ」

「駄目ですよ。えぇ……駄目です。」

 そして、手を離してもらえたが、訳が分からなくなる。

 流石にこれには混乱するサハド、
以前の、“昔兄貴分だった男が、久々に会ったら、モロッコ行って女になっていた”
の心境を遥かに飛び越している。


 第三者がみればこう思うだろう「え、何で俺撃つのー!?」と、

「……なあ、……本当に、俺の事好きなんだよね?」

  サハドは抓られた箇所を、摩りながら聞く、少々自身に弱気になりながら、

「大好きです。……この醜くも儚く美しい世界で……唯一。」

 即答です。

 ってか決め台詞をほざきました。

「だ、だが…なっなぁ……何で? 何故にぃ?」

 余りの慌てようにユーノラはサハドにある事を確認する。

「……あれ? えぇ~っと、言ってませんでした?」

「な、何を?」

 サハドは記憶の引き出しを開け必死に探す。

 だが、サハドはユーノラが自分の事を拒絶するまでの理由が見つからない。

 逆に、針の筵に座らされているみたいに落ち着かない。

「……本当に分からないみたいですね。」

 ユーノラはサハドの不安を察知し、首を横に傾け顎に手をやる。

「私、いえ、この辺りの当たり前の風習ですけど、結婚するまで……結婚初夜まで、操を貫きたいと
思っているのです。」

「……はいっぃぃ!!」

えッ!!
ナニィ!!


神剣達の反応は速かった。

ヽ(゚Д゚)ノ          
  ( ヽ(゚A゚ )ノ('∀`(゚∀゚ )ノ
  | |ノ ノ└  )V  /
   「 「  「 「 「 「



大絶賛!! まるで昼ドラの、ちょっと問題あるほんわか家族物ドラマから一転、修羅場&愛憎劇のドラマと一転したと
同意義なのだ。

これには“強欲”も“所縁”も喜んだ!!



「ですから、結婚するまでは。幾ら将来誓うサハド様でも純潔は散らせません。乙女たる者。喩え、
人生の伴侶と決めた者でもその儀が済むまでは、純潔で居なければならないのですから。」

「はいぃぃぃ~~~!! えっと…あぁ……うぅ~ん。………!! …
けっこん~~っ?!

「あぁ……いいですね、結婚。サハド様を朝まどろみに浮かれながら起こして、サハド様の密着した手解きで
朝食を作り二人っきりで食べ合う。そしてお見送り……あぁ…」

「本当に?」

「そうですよ。だって、二人は相思相愛なのですから。悪戯に無駄な時間を過ごす訳には参りません。」

「……まぁ、冷静になっても、その考えは間違っていないが、自信満々に言われると照れる以前に、
ちぃっと警戒してしまうぞ。」

まぁ、確かにストー○ーが言いそうな科白ですね。

そのまま、拉致監禁。首輪を付けられ鎖に繋がれ……徐々に相棒はココロ壊れてゆく……


ーーあぁ…頭痛い。

「まぁまぁ、愛する者同士が互いに清いままで付き合い、その想いを儀で名が結びついた時に、
解放し求め合う。そういうのを結婚って言うんじゃありませんか?」

「う、う~ん、正論……か、……まぁ、結構ですな。」

 サハドは自分が四六時中やっている事を攻められて、否定も出来ないし肯定も出来ないので、
相手の想像に任せる様な言葉で流す。

「結婚してから家に帰って、壊れてもいい位に、じっくり、いっぱい、愛を交わしましょう! 恥かしいですけど

 そう言って、ユーノラはサハドの耳に口を寄せると、

いっぱいして下さいね。出来る限り何でもします。飲みますし、舐めますし、気絶しそうになったって頑張りますよ!

ーーあぁ……何だ、この原理主義は。

 テレと同時に少々寒い気配を感じる。

ーー……うん、気のせいだ。俺も疑り深くなったな……予定外な事言われたからだもんな。

「キスもしましょう! たくさんたくさん、一晩中夜伽していましょうね。旦那様。」

 ぱぁ~っと白い野花が開花した様なその笑顔に、サハドも毒気を抜かれたのであった。






 まぁ、アレだ。

 ある世界は目の見えない人には親切じゃないんだ。

 点字というものが無いし、盲導犬も居ない。障害を持つとみんな腫物を扱う様な感じで接するんだ。

 少なくとも、立派な家族が居て、後はギブアンドテイクで介抱して貰える数少ない人、それ以外は、
みんな不幸になっちゃう世界なんだ。

 姥捨て山ならぬ、○○○捨て山(物凄い差別になるので伏せます。)がある位なんだ!!

 そんな世界で比較的マシな生活してたって、満足な教育は受けられない。

 簡単な勉強は出来ても、世間勉強も、倫理感も、学び鍛えられる事は出来ないんだ。


 だって、殆ど教えても無駄だし。


 だから比較的マシであろうと、そんなユーノラも、眼が見えなくなった時の、純粋な子供時代で
倫理観が止まってたって不思議じゃ無いんだ。

 確かに人と接しても、人の心が読めては、不快感を与える、悪い感情の人と知り合っても
完全に拒絶できるし、優しい人と接しても人の黒い感情を遠慮無く教えれる人は少ない。

 それも理由だろう。

 人は人と結びつきによって、善しも悪しきも学ぶものなのである。

 それが、良い意味か、悪い意味かユーノラは人の結びつきが少なかったから、純粋なまま成長してしまった
訳なのだ。





 そして、これにはサハドも思考停止してしまうのも無理は無い。

 サハド自身これほどまでに、成長して立派になった純粋な人と、接した事が無いのだから。


 だからといって止まって居る訳にもいかないので歩みだす。

「……そうか。失礼。ちょっと気を抜かれてしまった。」

「もう…、気をつけて下さい。」

 改めて気を引き締め、彼女の求めるモノに応える為にも、自分の求めるモノを提示する。

「あ、あぁ……ではユーノラ。」

 人生を賭けた愛の交渉が……

「はい。」

 サハドの答えに、ユーノラは大金である賞金を賭けた4択クイズ番組で、司会者の回答を待つ
回答者の様な面持ちの緊張した面持ちで答えを待つ。

今、始まる。

「結婚するというなら、結婚しても良い……」

 ユーノラは満面の笑みを浮かべ、この世の春を祝った。

「が、後で結婚して問題が起きる前に、これだけは認めてもらわんと困る。」

 そこでピクリと止まり、ユーノラは「な~んだ」と言わんばかりのテンションで質問する。

「はぁ……、条件ですか? あ! ッッ、浮気なんて致しませんよ。一途なんですから。」

 ユーノラは自分の軽さを疑ったのかと思い不機嫌ながらも答える。

「まぁ、それもあるが。俺はな、一夫多妻制の出来る国の人間で、……意味分かるよな。だからユーノラ、
俺と結婚する場合、第二夫人として生きてゆく事になのだが。」

 ただ沈黙しかないユーノラ、その沈黙の表情が困惑でなく疑問系の表情だったので聞く事にした。

「一夫多妻制って分かるか?」

 ただ、横に首を振るユーノラ、それにサハドは説明する。

「俺の育った国ではな、結婚しても更に、妻を娶る事が出来るんだ。妻が何人居てもいいって事だ」

 サハドの言葉に、ユーノラの頭の中は困惑より驚きが支配していた。

 だからそこに、サハドは覚悟を決め、ユーノラの手を握り、命掛けで踏み込んだ!!

「だから……もし、結婚しても第二夫人で、俺が第三・第四の夫人を作っても文句言わないで、お前に
俺以外の男を愛さない、って事が納得出来るなら。俺の妻になってくれ!!  ユーノラ  




パッと手が離れた。その瞬間……


()┌┛)д゚)・∵.

  前+下K=ヤ○ザキック











乙女の怒り……もとい足が炸裂した。













続く。





















あとがき


どうも、頼まれ事によって暇が少なくなったぬへです(金も少なくなったからファーストフードで飯食いながら文章打てない。)。

こんかいは、強気っす! 強気っす! のノリでお送りしました。

女は度胸! 女は愛嬌……愛狂!

って感じです。

ちなみにメティスの辺りの話はノリが悪いので駄文となってしまいましたがお気にせず。

 今回はホンマにユーノラの強気攻めと、レネヴァリー嫉妬、SHIT!! がメインです。(←暴走発言)

 忙しくて多く語れねぇ~~!!


単語&人物紹介

・ソーマ(略)
 変態以外に何かある? 頑張っても中盤の中途半端な敵以外、ホンマに印象が少なくなってきました。
 ホントにキモイ格好ですね……変態趣………だからか! ウルカがあの格好なのは!!

・サハドの謎?
敵から見れば、サハドの隠しダマを多く抱えた戦闘力は様々な憶測を呼び、混乱を
呼び寄せてしまうんですね。
見えない敵はホンマに脅威!! って事ですね。
これで【ラスフォルト サハドの謎】なんてやったら、むっちゃくちゃ難易度の高いゲームが出来そう。
ゲーム開始⇒イントロ流れつつ移動⇒敵の攻撃が掠りゲームオーバー。
なんだこりゃ。

・イスラーム&ムスリム文化の話、
ホンマに苦労して調べましたので、8割は本当です。

・『あのぉ~すみませぇ~ん、サぁ~ハぁ~ド~さぁ~ん~ いらっしゃいませんか~』
この後に「返済日とっくに過ぎてますよ~」と繋げても可笑しくない事は目に見えているでしょう。
ぬへはそんなシャッキンナイヨ。

・前+下K ヤ○ザキック

乙女の怒りです。

それ以上はユーノラさんに口止めされておりますので……まぁ……



(´・ω・`).。oO(何か見ちゃいけない作業車を見たような)