「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
男は息を荒らげ目を血走らせながら街中を駆けていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、うくっ……はぁ、はぁ、」
ーー「あぁ……そういえば娘さん。男の人と一緒でしたよ、夜前に。」
「ソサレク! ハァ、ハァ、はぁはぁ、そ~さ~れ~クゥゥゥ!!」
目を血走らせ、何か、ドス黒いものに漲ったまま、怒りに震えて駆けてゆく。
デオドガン フッシザレンドール邸、ユーノラの部屋。
女性特有の柔らかな香りに包まれる部屋の中で、サハドはベットの上で、横になっていたユーノラの顔に乗せてた手を放す。
「はい、これで全てが繋がった。後はゆっくりと光に慣れることだ。」
「え…えぇ……」
目は治ってるというのだが、彼女は流石に不安なのかおっかなびっくりしている。
それでは、わたくしは少し……休み……Zzzz
“所縁”は持てる力を使い果たしたのか、ゆっくりと休眠へと入った。
「細目でゆっくりと……ゆっくりと……、そう、眩しくなったら目を閉じて、最初からやり直して……、」
「は、はぁ……」
その時、サハドは何かを察した。
「俺は、外の空気を吸ってくる。流石に眠いしね。」
「あ、あのぉ……」
「君も来るかい? その杖を使わないで来れたらだけど。」
ユーノラはある判断をした。
それはつまり、 サハドは自分に対して、歩いて来いと意思表示しているのだと。
「待ってて下さいね。」
そう察し、笑みを浮かべながらその場でサハドを見送る。
「あ、あぁ……」
・
・
・
家の外に出ると、背筋を伸ばし身体を休める。
サハドは身体を落ち着けると腰に手をやる、サハドが外に出たのは、ただ単に休む為ではなく、
ユーノラを外に出そうと画策した訳でもない。
「ふっ、ふっ、ふぅ~~、みぃ~つぅ~けぇ~たぁ~~!!」
その理由がやって来た。
「ッッ!!」
ーー来たか……っておいおい。
横へと振り向くと、そこにはフッシ・ザレンドールの姿が………
「真逆…ハァ…ハァ…エトランジェ……が、」
ーー何だ? この“悪霊に取り付かれて依り動かされている”って感じの雰囲気は
「ふしゅるるぅ~はぁ…ハァ……ワシの可愛い……ユーノラに、手を出すとわなぁ~~」
サハドはドス黒いモノに身を包む、フッシに警戒しながら距離をとる。
ーーチッ、ユーノラが覚めようとしている時に限って……
「訂正してくれません? 彼女はまだ純潔ですよ。誓ってもいい。」
まぁ、性行為に関しては18禁どころか、21禁でも済まされない男が年頃の、目の見えない少女の部屋から出てきたのだ。
これで、何も無いと信じる方がどうかしてるといえよう。
「………そうかぁッ、アレか。純潔だけは奪っていないが、実は貴様わぁ、ユーノラの口も、後ろも、
それに飽き足らず、身体中、秘所以外全てを汚したのだな………ゆるさんぞおおぉぉぉぉぉぉぉ。」
「いや、していないが、よくもまぁ話が誇張しているな」
何か血管の弾ける音がした。
「エロランジェなぞ、根絶やしにしてくれるぅっぅぅっぅぅうらぁぁっぁぁぁぁ」
永遠のアセリア
ラスフォルト
第5章、3話、“サハドの悪党だいあり~③”
願望・・・
求めること・・・それはちからとなる。
善き願いでも、悪しき求めでも。
制約・・・
誓うこと・・・それは力を呼ぶ。
そんな誓いでも、それが純粋な想いならば。
織物・・・
時と運命と想いが紡がれた・・・
織り込まれて物語をかたち作っていく。
略奪・・・
強欲であること・・・それはちからそのもの
他者を蹴落としてまで、生に執着するためのこと。
「エロランジェなぞ、根絶やしにしてくれるぅっぅぅっぅぅうらぁぁっぁぁぁぁ」
フッシの振り下ろした斧の衝撃によって地面に大きなひび割れが起き、大地が捲り上がる。
「ワシのっ、ハンマーちゃんからぁっ!! 逃げるなあぁぁぁ!!」
「いや、それ、斧だろうが!!」
「ふしゅるるる……ハァ…ハァ…」
息を荒々しく吐きながら、ギラギラと目を滾らせるフッシ、その姿は人知を一・二回りどころでは
済まされない位に遺脱している、
ーー“強欲”、これ程まで人知を遺脱した奴見た事あるか?
いいや、先祖返りならね……それでもここまで理性あるのは初めてだよ。
ーー俺もだ。
「ぐがあぁあぐあがっがぁぁ…っ!!」
フッシが振り下ろした斧を、強欲の柄で防ぐ。
「ユーノラの父親を全力で殺る訳にもいかねぇし……」
確かにそれならば、一瞬でカタがつくのだが、後々の事を考えれば何かと厄介なので
サハドはそれはできないでいた。
折角、彼女が治した目で、初めて見るものが父親の死体なんていうのは、洒落にならないからである。
ーーむしろ、素の木阿弥だ。
そんなサハドの心情を知ってか知らずか、フッシの斧の威力と速度が上がり、その軽快な風切り音を鳴らし
地面を抉る。
「うおぉおを!!……ふぉぉぉあぁっ!!」
ーーおいおい、スピリット並、いやそれ以上の攻撃力じゃねぇか……
サハドの背筋で冷汗が垂れる。
この場はフッシが纏う殺気と狂気によって、人外魔境と化してきている。
消えゆく玉兎に~君を重ねよう……折り合えない縁としても。
「貴様は罪を罰で支払わなければならなあぁいぃ! だ、か、ら、あぁぁ!!死ねええぇぇ、死ぬがいいさあぁぁ!!」
斧の速さも上がってきており、最早、余裕がなくなってくる。
「ググガァ、ああぁぁぁぁ!!」
ーー孤高の華よ~、起きて来てくれ~~あぁ~~~
最早、本気を出すしかないと、そう思った。
その瞬間……
「……眩しい、」
フッシの動き……いや、その場の空気が止まった……。
そこには目を押させながらも、杖に頼らず、自らの足で立ち上がって外に出たユーノラがそこに居た。
「…………」
「…………」
「……父さん。」
フッシの体に渦巻いていた悪意の渦がはれて行き、殺意の塊だった顔が呆気に取られた
顔となり呆然と口を開けている。
「……ゆ、ユーノラ。め、目が……」
「父さん、老けましたね。髭をそんなに生やして、白髪も幾つかあるんじゃないですか?」
震え、おっかなびっくり尋ねるフッシに対して、ユーノラは笑顔で冗談交じりに返す。
「ユッッ………」
目端から涙を流し、フッシはユーノラの奇跡に喜びを上げようとするが……
ユーノラの笑顔はそのままだった……のだが、何かがおかしい?
そう、まるで冷静な……そう……印象を感じられる位の冷えた眼である。
「で、その手に握られているものは何ですか。」
フッシは心臓を鷲掴み去れたかのように硬直する。
音が音なら「ギクリ!!」とでもいうのだろう。
「おぅおぅおぅ……ちが、ちが、」
ーーアレは……アレは……アイツの目だーーー!!!
フッシは、今はもう居ないが、美人で気立ての良い妻の、滅多に無い怒りの瞬間を思い出していた。
「お父さん、その斧で、誰を傷付けようとしてました?」
フッシの妻であり、ユーノラの母である彼女の怒った時は、その美しい表情で冷酷で残忍に
無常の修羅と化していた逸話がある。
「い、いやこれはな……」
「お父さん、その斧を振り下ろして、誰の脳天をカチ割る気なんですか?」
ーーあ、あれ、ユーノラだよな。
攻められていないサハドまでもが、ちょっと引いていた。
親が親なら、子も子だねぇ~
「脳漿と鮮血が飛び散ったと同時に『ワシの娘に手を出すものは死あるのみ!!』と決め台詞を言おうとした親莫迦は、
お・父・さ・ん・ですか?」
怒っていた。
えぇ、あれは完全に怒っております。
ーーおいおい、実は“強欲”が悪影響与えたとかそんなオチは無いよな。
いやいやいやいやいや
“強欲”は全力で否定する。
隠し事をするなら、多少は胡散臭いと感じるだのが、それをまったく感じない。
「あわわわわわわ!!」
フッシは顎をガクガクと震わせ、恐怖に怯えていた。
目の前に居る、花も喜ぶような笑顔で笑っているユーノラによって……。
「私の目が治ったのも、サハド様のお力のおかげなんですよ。その恩人でもあるサハド様の命を奪おうとするなんて
お父さんは何を考えているのですか?」
「い、いや、ワシはてっきり、お前の……その……。」
「はっきりおっしゃったらどうです?」
ユーノラの弾劾にフッシは完全に圧されている。
「てっきり、誑かされて……その、いやらしい事をされているのかと思ってな…。」
フッシの言葉に何か音がした様な気がする。
いや、実際、ユーノラの笑顔に歪みが……
「お父さん、……怒りますよ。」
その手は一旋風の風みたいだった。
「あぎゃぁぁぁあっぁ~!!」
一瞬の……防ぐ暇も無い合間に、フッシはユーノラに右腕を取られ、簡単に捻られ身体を捻じ曲げられ痛みを訴えている。
ーーありゃぁ……どうみても本気だな。
「らめぇ~らめぇ~……、びゅびっあべっしぃ」
ユーノラの捻っている手は、力の入れ具合も本気だと察する事ができ、捻られて
痛がっているフッシの顔の具合からしても本気で痛がっている事が分かる。
勿論、尋常じゃない位にね。
「あ~ユーノラ。そこらで止めておきな。俺はフッシさん程度にやられる程、弱くないし。その辺りでいいよ」
サハドのその言葉にユーノラの手が止まる、
「まぁ!! いけない。」
慌てて手を離し、フッシから一歩離れると、呼吸を落ち着け改めて、サハド方をオドオドとしながら振り向く。
ーーあぁ…何か、いいなぁ~。
いきなりの女の子らしい仕草に、サハドは先程の事を一旦忘れ、和む。
「そ、そうだ。思えばあの時、あの眼をしたアイツに、この胸に七箇所も傷を付けられたんだ……あぁ…いやぁぁ」
古い傷の痛みを思い出しているのか隅で震えるフッシさん。
この際、無視だ。
「あ、あのぉ……もしかして、サハドさん?」
斧で殺そうとする奴なんぞ。
「今度はどうだい? 俺の顔、黒く隠されていないだろ。勿論、兎みたいな小動物でもない。」
サハドとユーノラの二人しか知らない事を、サハドが言ったので、ユーノラは完全に、目の前に居る男が、
自らの恩人である事を理解した。
「サハドさんですね……。」
ユーノラは左手で、サハドの顔を確かめる様に触れながら、言葉でも確かめる。
「あぁ。」
頬に乗っている手が柔らかいと感じる。
そして、先程まで、浸っていた筈のユーノラの匂いがとても新鮮で堪らない位にいい匂いを発する。
「サハドさん。」
相棒!! 、その手を………
そして、その魔性に入ってしまう様な、美香に気を取られた時は手遅れだった。
「あ、あぁ…。」
ーーお~い、ちょっと?
顔に触れてた手が両手となり、首筋を掴む、離れない、ってか動けない。
「んん~っっ」
サハドの顔を引き寄せ、ユーノラは自分の胸元に寄せる。
ーーあぁぁぁ~~~~!! やばい、やばい、コレとてつもなくヤバ……はぁ~~
「んんっ!!?」
「んなあぁぁあぁあぁ……ユーノラァァ。」
フッシが娘の大胆な行動に、おもわず、横で大きな声を出してしまう。
「あぁ、サハドさん。サハドさん。サハドさん。サハドさぁん。」
頭を……前部がその豊満な胸で押さえられ、後頭部はその両手と両腕に押えられる
ーーちょ、ちょっと、ぅおぉい。
これが世に言う“最も楽園に近い始末方法”である。
え、窒息死させれる地獄じゃないのかって。
いやいや、何気なくこの体勢胸に寄せた女性からしてみれば絶好のポイントで、もし、腕に長針を仕込んでた場合、
胸に埋めた男性……この場合はサハドであるが、その喉の急所を刺す事が容易いからである。
現に、今もサハドは死に近づいている(別の殺りかたで……)。
「ありがとう、光を取り戻して下さって。ありがとう、再び私に父さんと廻り逢わせてくれて。あ…りが……とうぅ……ございます。」
サハドは頭に何かが滴った事に気づいた
「フグッ(なぁ)、ふががががぁぁ(泣いているのか)? 」
「……は…いぃ。」
ーーまいったな…。
ユーノラの見せた弱さに、サハドはもう少し、こうしてもいいと思っていた。
「ファガ…(そう…)…………」
・
・
・
その結果
そのまま数分が経ち、サハドの腕が重力に逆らうのを止め、ぶらりと垂れ下がる。
「お、おぃ、ユーノラ。」
流石に、先程まで、『サハドむっ殺す』の勢いで居たフッシも、サハドの異変に気付き声をかける。
「何ですか? ザレンドール隊長。」
涙の止まったユーノラの眼…いや眼光が、先程のフッシと同じ目をしていた。
それは、『この桃色空間を壊す事は許さない』という強い意思表示の表れである。
「ひぃぃぃ、」
これには歴戦の勇士で、漢の部類に入るフッシも、たじろぎ、大人の…父の威厳どころか、人として参っていた。
世の中例外はあるが、『オカン>男>女>オヤジ』のヒエラルヒーが程好く分かり易くなっている例と言えよう。
流石、オカン。 流石、タイムセールの戦場の猛者。 流石、生ける、現代の英雄。
「外野、五月蝿いですよ。」
(´・ω・`;)
えぇ無力です。
さて、それはさておき、今も現状はサハドの酸素ゲージが下がり赤色の領域へと変わってきている。
「あ、あのぉ、まことに申し上げにくいのですがぁ……」
卑屈者位の態度で帯び終えながらも申し上げようとするフッシ、だが。
「…………」
「!! ひぃぃぃ~」
もはや、言葉など無粋となっている。
このままBAD-END「サハド、腹上死!?」の展開に進みかけた……が……。
「離して、貰いましょうか。人間。」
刃の音が静かに鳴り、ユーノラの目元に刃先が浮かぶ、
「我が主、サハド様の命を閉め落とそうなんて、対したタマねぇ。」
その剣を突きつけた者の正体は緑髪の悪子、レネヴァリーである。
「えっ!? ……きゃっ!」
その言葉でユーノラはサハドを閉め落としている事に気付き慌ててある程度離す。
その様子だけならば、レネヴァリーの剣に恐れて、離したかと思われるのだが、ユーノラを見る限りそうは見えない。
「だ、大丈夫ですかぁ~。サハド様。」
どちらかと言えば自分が、サハドに対して閉め落としていた事に驚いて離したと見られる。
「……ぁ、危うく……魂が飛……ぶ、所だった。」
無酸素呼吸の最大記録でも、ここまでの記録は無かったらしく、サハドの呼吸には落ち着きがなくなっている。
「まったく、下手に人間なんかに手を出すから。このような事になるのですよ。」
そう言うがと同時に、サハドの脇に入り込み、その身体を預ける様に寄せるレネヴァリー、まるで、ユーノラに
自分の男だと見せつけんばかりの行動である。
そのあからさまな行動に仕返すかのように、ユーノラも行動を起こした。
「い、いいえ…、いっ今のは他意の無い過ち。私(わたくし)の間違いです……。ソゥサハド、私に機会を下さい……
貴方の事を、いっぱいいっぱい愛して償いますから。」
上目遣いにおどおどしながらのユーラのプロポーズの言葉と同意義の科白に、みな止まる。
「そして……これは。その“誓い”です。」
それは重ね、少し吸うだけの軽いキスだった。
「!?」
「んなっ!」
「んんだぁぁとぉぉ」
な、なっなななんあなあぁっぁぁ!!
だが、その口づけは彼女の信頼が重く篭っているものだった。
ちなみに先程の台詞は、上からサハド、レネヴァリー、フッシの順である。
「わたくし、異性に唇を寄せるのはこれが初めてですから。」
「「「…………」」」
「もちろん、他も全て、手を付けられていません。ですから、いっぱいいっぱい愛してくださいね。」
勿論、この後……というか、この日はこの騒動で1日が終わったのであった。
はい、狩猟完了。
こうして、本当の、本当に、デオドガン紛争は幕を閉じ、平和が訪れたのでした。
めでたし、めでたし。
ーー実際はそう簡単にいかねぇんだけどな。
ーー!! ってぇか終わりじゃねぇぞ。
そして、サハド達が一つの問題を乗り切ったその頃、
神聖サーギオス帝国 ユウソカ帝国軍軍事施設。
そこには、身体を蓑虫のような拘束具に身を包み、スピリットの少女が帝国の軍事部門の決議を、ただ黙って聞いていた。
軍事決議会。
帝国の軍事による、行動、権威、その自律性を維持する為に、その適用と違反に対する処断を行い、軍固有の手続法
によって規定、指示するモノが必要があり。
軍事犯を判決する機関、それ等を含め、軍行動にとって必要で様々な部署があるのが軍事決議会なのである。
まぁ、今回行われているのは、一種の前線における軍部の軍法会議というものである。
「……また、命令系統を著しく混乱させた罪は重く、」
ーーそうしろと、命じたのは、何処の何方でしたっけ?
「決議の決定により、妖精騎士団第2部隊隊長メティス。貴様は隊長の任を剥奪。リーソカにある我が国研究所
メトラ機関への転向を命ずる。」
「……お好きな様に、」
「これにて、議会を閉会する。」
そしてそれは、決議とは名ばかりの、失敗者への弾劾の場所であり。
今ここに立ち、帝国軍の失敗を有耶無耶にする為の矢面にされた彼女、メティスもそうであった。
研究機関への転向というが、早い話、実験によって始末されるということは目に見えている。
ーーたかだか一人のスピリットを始末するのによくもまぁ面倒な事を……。
彼女は作戦に失敗したスピリットがどうなるかは良く知っていた。
処刑されて、マナと還るか、施設に送られ材料として扱われるか、のどちらかだということを。
それは、スピリットの出現率が最も高く、スピリットの保有数が増大な帝国ならではの習慣である。
さて、察しのいい読者、ならば分かると思うが、処刑ほど非効率なものは無いと思うであろう。
確かに、ゲーム永遠のアセリアの話からしてみれば、処刑によって得られるマナの量やエーテル云々を考えて、
損得勘定を行えば損……というか、デキナイネ。
むしろ、瞬との最終決戦の際に、瞬の強力な必殺技、オーラフォトンレイを効率良く捌く為に、
最弱スピリット一体のスピリット一部隊を編成し、特攻させる(相手が何であろうと、瞬は使ってくる為)、生贄戦法の方が
処刑よりも、もっとも効率がいいと言える。
ーーヘリオンがよく出てくれた。
『この男、正に外道。』
それは、置いといて!! スピリットの処刑というのは、精神的な意味合として、存在しているものだと
著者は考えている。
恐怖による兵士の統率は、第二次大戦下のロシア、某……マニアックな話になるから、中略させて貰い、
もう、ざっくばらんに言うが、 「『臆病者には罰を、弱者には暴力を、敗者には死を』…勿論、逆らったらどうなるか分るよね。」
という言葉の意味が最も分かりやすいと思う。
つまりは、恐怖による存在が前線の兵を突き動かしているという事だと言える。
味方に残酷な殺し方されるより、自決覚悟で戦った方がマシだと、そう煽られ、普通に戦うよりよりも気の持ち様が
違ってくる。
素からスピリットは人間に逆らえないという教えの上に基づいているのだから、直に極限の状況に追い込まれ、
スピリットの精神を神剣に飲み込まさせる誘発剤にもなり、その成功する確率を上げ、精神を神剣に呑ませ、
殺戮兵器に仕上げやすい事が理由であろう。
もう一つにこの世界で輪廻思想に似た考えが蔓延しているのが理由と思われる。
スピリットが死ねば、魂とマナが台地に還り、永遠神剣“再生”の下に戻った後、再びスピリットとして生まれるのでは
ないのか、そして、発見率が高い我が国(帝国)はよりそれの恩赦を受けやすいと思われている。
ならば、下手な雑魚を生かすより、いっそ殺して、より強力なスピリットが来るのを促そうという考えが大きい
そんな考えの中に、時は金なりと、無駄な時間を費やす事が嫌いな人間がいれば尚更である(ネーッア?)。
とある考えの中に、帝国領の上空を覆っている暗い雲の原因は、“誓い”の所為ではなく、
スピリットを多く処刑してしまったからではないからと言う考えがある(上空には怨念が集っている説)。
とまぁ、処刑について長々と語ったが、話を元に戻そう。
「実験材料が、ささやかな配慮ですか。」
座らされていたメティスが立たされ、決議の場を出る時にメティスはそう呟いた。
そう、本来ならば、そこら辺の雑魚スピリットならば直に、処刑されてもおかしくないが、メティスは妖精騎士団のスピリット隊を
従えてた程の実力の持ち主であり、その実績を惜しまれ、多少は恩赦が授けられたのだろう。
最も、実験材料という、考えによっては悲惨な場所に送られる事になったのだから、普通は喜べるものではない。
何故なら、実験の成果によって生き延びられるというが、果たしてそれが幸せかどうかは分からないし、その確立も元々から
低いのは当たり前だからだ。
尚且つ、世の中、自分の身体を勝手に弄くられるより、痛みも無く、死んだ方がマシだと思う者が多い故だろう。
「だまって歩け。」
ーーこれも……我が身の未熟さ……
「いや…恐らく、エトランジェの強さでしょう」
メティスは静かに、護送される。
彼女の顔は、これから堕ちる者とは思えない程、とても穏やかだった。
ある程度の道を究め、潔さがある者は、死せる境地にあっても、うろたえたり、生には固執していない。
自殺願望もない、別段、頭がおかしいわけでもない。
それが“武人”というものなのである。
もし、何かの固執があるというのならば……
ーーもう一度……あの人と戦いたかった。
メティスは自分の人生を振り返り、ある結論を出した。
ただ只管に鍛え上げてきた時も、弱い敵を屠った時も、功を上げ多小はもてはやされた時も、あれ程の昂りは無かったと。
ただ、あの者との命のやり取りだけが唯一の最高の昂り。
ーー「いい声だ。もっと鳴いてくれてもいいぞ」
ーー……あ”ぁ゛ぁ~~違う、違うぅ、そこじゃない~。
頭を横に振り、思考をクリアにし改めて思い出す。
ーー「うっぁ、メティス…お前の締め付け…は、最高だな。」
ーー……あ~。違う、違う、違う、違うぅ~っっ!!
多少、自己嫌悪に陥る。
「だから! 黙って歩け!!」
兵士の怒声が響いた。
メティスは背中を蹴られふらつきながらも歩いてゆく。
ーー失敗、失敗……。
どうも、蹴られた事よりも、自分の未熟さがショックだった様だ。
その後、私はユウソカの牢屋に入れられた。
どうやら一旦ここに入れられてから、リーソカに移されるとの事で……どうやら実験体になる前の、幾ばかりの猶予の時だろう。
ーー別段、どうでも良いのだけど。
だが、牢屋に入れられ、静かになると、心に余裕ができ色々な事を考えれた。
同じ隊で戦った部下達の事を……
ーー未熟な隊長で済みませんでした。もう少し、器用にやれてれば……でも、もうすぐ逝きます。
居はしない部下達に形だけの償いを済ませると別の事に考えを寄せようとする、
ふと、そんな自分の腕を見て、各所を揉む。
昔の思い出を……
ーーあんなに細かった腕も…、弱々しかった自分も…、気付いてみればここまで来ていたか。
弱々しく、唯只管に力を求め嘆き、傷つきながらも前を歩んだ日々。
ーーそういえばあの剣聖に……挑めませんでしたね……。
「まったくをもって惜しい事に・・・・・・」
あの時は、何かと仕事があったので、結局は機会が無かったのである。
己を鍛え、ただ只管に磨き上げた日々、
そして、そう感傷に浸り、懐かしむ事をしていて、呆然としていた中に……ある事が過った。
血反吐を吐き、もがき苦しむ日々も…、
自らが全力を振るい、ぶつかり合う事を……
その命を賭け、闘ってる時が喜びの日々だのだと。
あぁ……戦いたい。
己が命を、魂を揺るがし、梳り落ちてゆく様な戦いを……
世界全てを、賭けてでも闘っていたい!!
幾ら、上手くなろうとも、発揮できる場が無ければ、それは無意味だ。
だがもう、その機会は訪れない。
それだけが……それだけが、ただひたすらに口惜しい。
彼女はその悔しさからか、掌を強く握り、悔しさに床に拳を何度も打ち付ける。
手には血が滲み、見るからに痛みを感じられる。
それでも、彼女の心からはこの悔しいという想いは打ち消えない。
ーーそれでも駄目なら……。
殴る手を止め、「それならばいっその事」とでも感じたのか、顎を後ろに引き一気に、壁に頭をぶつけようとした。
その勢いは素早く、壁にでもぶつけようとするものなら、大怪我を負い、場合によっては死ぬかもしれなかった。
駄目!!
だが……何故か、ぶつける寸前でメティスは止まった。
ーー!!
再び顎を引き、勢いをつけたが、身体が再びそれを止めた。
自分の身体の意外な動きに、メティスは驚きを隠せないでいる。
「な、何故……」
彼女が戸惑うのも無理は無い、それはあたかも何かの強制力のようであるのだから。
そして、ふと気付く。
ーーて、手が……。
悪戯に傷付けていた手が、何時の間にか自然治癒し、傷付ける前の姿に戻っているのだ。
「ば、莫迦な……」
・
・
・
手を見続け、驚いていたメティスも、時間が経過し、冷静になる。
ーーまず、考えられるのは自己回復能力、かつ自決行動への強制的セーフティー。
メティスは、牢屋内で行える限りの事を試した。
自分で自分の首を強く絞めたり、爪で皮膚を傷付けたり、はては天井ぎりぎりまで跳躍し、頭から床に落ちようとした。
その度に身体が反応を起こし、自身を助けたのだ。
首を一定以上絞めていると腕に力を入れられなくなったり、傷ついた場所が回復したり、天井ぎりぎりまで跳躍し、
そこからから頭から落ちた時は、両腕が無意識に反応し、床へのクッションとなり程好く着地したのだ。
この事からメティスはある程度の状況を推測する。
ーー恐らく、他者から強制的な“守護”を与えられたと言う事か……。
「いや……だとしても腑に落ちない。……なぜ、ここまでに強制力が……。」
ーー ………そうか。この“守護”は、私を守る“盾”じゃない、殺さない為の“檻”と言うことか……。
もし自分の身を“護る”というのなら、自ら死ぬ事なら関せず何も起きない筈なのだ。
それが、自らの意を反し、守るのだ。
……いや、守るとは生温い、最早、執着心めいた庇護と言える。
ーー何故…このようなものが……。
そして、メティスはふと気付いた。
ーー「栓はこれで良し。これで後、孕むか孕まないかは、アラーの導き次第っと、」
ある男の言葉がメティスの頭を支配する。
「そうだ。あの時、下腹部に何か魔力を容れ込められた。」
呆れた。
“子供を孕ませれるか”という、一興味の為に、人を強制力の檻へと放り込んだのだ。
強く、立派な姿に、まるで“御伽噺にでも出てきそうな人だ”と思ってたが、実は案外子供の様な事をするのだから。
「いや、端からそうだったわね」
何をするにも無駄だと悟り、壁に背を預け、休む事にした。
・
・
・
そして、リーソカの研究所に移される前日。
牢屋に閉じ込められていたメティスの前に意外な人物が訪れる。
「あら、珍しいお客様ね。」
あとがき
「ジェイソンVSフッシ 灼熱の戦い!!」そんなのを想像しちゃいそうなノリでやってしまいました。
あぁ~この親子怖ぇぇぇぇ~ (
゚д゚) ざわ…… ざわ…… ざわ…… って怯えた方も居るでしょう。
でもまぁ、冷静に見てみれば何処にでも居る普通の家族を描いたつもりなんですが……。
えッ、…居ないって? ……居ると思うんやけどなぁ~?
今回、ユーノラがやっぱり凶悪萌えキャラとなってしまいましたが、サハド達は悪影響を与えていない事を先に申しておきます。
そして、敗北し、いきなり罪人クラスまで転落しちゃったメティス。
次回は誰と会うのでしょう?
サハド「アキラが手を出すようなら、殺りに行くか。」
所縁「あらあら、端っから、棲む世界が違いますわ。契約者さん。」
強欲「本人(Wilpha-Rang )が見てるからってさぁ、悪乗りはいけないって。」
サハド「D’VAってなんだ?」
強欲「振り向かない事さ~♪」
所縁「ふぅ…熱でもあるのかしら?」
サハド「おいおい、ボケもツッコミも無しは、下手な暴力より酷いと思わんか。」
強欲「それが、外道が外道と呼ばれる所以なんだよ。」
ーーまぁ、この研究機関に関わる話で人造永遠神剣を出してみようと企んでるから、あながち完全否定できないんだよなぁ。
↑
Byぬへ
所縁「まったく……この馬鹿剣、それでは、今日はここまでにしましょう。」
勝手に終わらせてますよ、コイツ等。
まぁ、終えておきます。
説明?
エロランジェ
エトランジェの最終形態(w)この形態になったら、18禁指定の存在と扱われ、その未満の人達には存在がモザイクで
見えるそうな……
と妄想してましたが、本当は。
Wilpha-RangさんSS【人と剣の幻想詩】二章からの引用「セクハラエトランジェ」の進化版で(むしろ、って感じで書かれてる)
その存在がうろちょろしてたら周りの女は懐妊しそうな可能性を秘めてるエロイ、エトランジェの事。
あれ?上記で合ってるような……。
下手すると親御さん達がヤットコ持ってきて○○○を捻じ切るというお話が……
サハド「ありがたい話を聞かせてやろう。 相手が生理の最中のエ○チは女にとって拷問そのものだ。そんな時に
無理やりエッ○するもんなら、よっぽど女が浮かれていない限り、好きな男でも殺意を抱かれるからな、止めておけ。」
武人
「言葉など無粋」な人達。まぁぬへもそう思っているので。これ以上言葉は要らないでしょう。