「さて、次は俺の神剣の説明だ。まずはこの倭刀ともブレードとも、ククリやカトラスとも言えない様な刀。
コイツの名は“強欲”永遠神剣と呼ばれる代物の一振りで、現在の俺の相棒だ。今まで話してた奴」
以前からちょくちょくと紹介されているから、もうご存知かもしれないけど、一応自己紹介。永遠神剣が第六位“強欲”と申します。
姿は見えない……けど、サハドさんの手に何かがある。
「コイツ……“強欲”とはレネヴァリーに殺され掛けた時に契約を結んだんだが、とっても得体が知れない神剣でね。
曖昧だけど、やな予感がしてならない。」
本人を目の前にして、物凄いこと言っているよね。
「その1、相手を傷付けた場合、奪うべきモノの存在は6時間……いや今は12時間だな、世界の理から
ひっぺはがされるのだろ。奪う為に、」
「その2、奪った相手の能力を使う事が出来る。奪ったが故に、」
「その3、お前を使うと、やたら悪属性に偏る。当然である為に、」
「その4、命や、物を奪う行為や、暴力を行った時に感じる快感が何時にも増して倍増している。戸惑う位に、」
「“搾取”“強奪”“影響”“高揚”どれもこれもとっても普通では有り得ない程の悪影響を与えている。これを
どうマトモだと証明出来る? なぁ……そう思わないか?」
確かに、ボクの能力はマトモじゃない。……それが
おかしいの? だとしてもどうするの?
「いや、別に…どうもしないが。もう俺とお前は一蓮托生……いや、一心同体と言ってもおかしくない部類にまで、
一体化しているし、どうこう奇麗事言っても馬鹿馬鹿しいだけだしな。」
“強欲”という神剣の声が聞こえてくる……私が意識したからだろう。
「そして、今は__ちゃんの損傷箇所を治癒し、繋げているから話せないが、第五位の“所縁”という神剣が居る。」
「“所縁”は神剣って言う割に、実はテグスワイヤーみたいな、銀色の糸でね。護る力と、絆の強さ……つまりは
“繋がりの力”を象徴しているんだ。」
ボクの時とは随分説明が違うね~どういう事だい?
「そりゃそうだ。“所縁”とお前は違う、だから紹介も同じには出来ない。もちろん……そこの君もだ。」
それで納得
「してくれ。……って言うか、しようよ…ね。」
「……はぁ~~ったく。」
「いい加減、目を開けようよ。表が目を開けられないからって、精神意識体である君まで、瞳を閉じてたら
話が進まない。俺と、その神剣の台詞だけになってしまう。」
ーーそれは……出来ない。
「あのなぁ……外の世界は俺達が治している。それが治っても君がここで目を開けない限り、君の眼は光を
捉えられないんだ。何も今直ぐ無茶な事をさせるんじゃない。先ずはその一歩を歩ませているんだ。」
「目を開けるなんて、精神意識体である君なら簡単なんだよ。それこそ、右クリックで固定して上にドラックしてくつもりで。
そう、ここから⇒ 上へ……(そして、最初からもう一回見る)。」
ーー駄目ッッ!!
「駄目じゃない。君の力だけが君自身を癒すんだ。俺達はその手助けしかできない。」
「………目を開けないと、君の唇を奪うよ。唇と舌で犯しまくるからな。ほらッ」
ーーッッ!!
私が驚いて目を開けてしまうとその目の前には何もありませんでした。
「……やればできるだろ。」
声の方向を向くと、サハドさんが居ました。
けど……そう言ったサハドさんの姿は、人型の黒い影の塊でした。
「あぁ~~そうか。俺の姿を見た事無いから、想像できないんだよな。だからおれが黒い影として見えるんだろ。
大丈夫、その眼で俺の姿を見れば大丈夫だから。だから表の世界の俺をこんなものだと思うなよ~」
ーーそうなんですか?
「今はまだ、想像が付いていないだけなんだから…、気にしない、気にしない。」
確かに、その影は銀色の糸と、黒塗りのグニャグニャな剣を持っていました。
私がサハドさんをイメージ出来ないだけで、本当はちゃんと出来ているのでしょう。
「さて、本題に入るぞ。今から君は、俺の横を通り抜けて……真っ直ぐ歩いて行くんだ。この道を……」
そして、次の瞬間、暗闇の世界は大地を得て、砂の大地と……懐かしいデオドガンの大地と化しました。
「そうそう、イメージの問題だ。ついでに……っと。」
サハドさん(多分)が指を鳴らした(想像)と同時に、私とサハドさんの沿線上に赤い絨毯が引かれました。
「本当は天に昇ってく階段だったら話に……」
はい、それ何か駄目~。
「……ふむ…まぁいい………。さぁ…お行きなさい。」
サハドさんはそう言って道を開けました。
そう、私に進めと言っているのです。
「……ですが、わたしは……。」
「君になら出来る。……何て言ったって、俺が惚れた人だからな。」
困りました、私にそんな期待されても…・・・。
「だから、君には光を取り戻して欲しい。この世界は美しく……そして醜くもあると、再び感じて欲しい。それは
俺の勝手であり、俺の我侭だ、だから……応えてくれ。」
……それは明らかに、サハドさんの勝手……ですが、そんな率直に言われたら、どうしようもありません。
「………ひとつ、聞いていいですか?」
「なんだい?」
「もし、わたしがここを歩いていって、向こう側に辿り着いたら本当に眼は治るんですよね。」
「もちろん、肉体的には治っている。後は精神的なものだが……それを君自身が、そこを歩いていって
治すんだよ……まぁ、イメージ的な作業だから“神経を繋ぐ”を“道を歩いて作る”という事さ……」
「……う~ん」
「抽象的な説明で悪い、だが、こう言うのは苦手なんだ。簡単に言える事は、今まで君はイメージ上、
真っ暗な世界で生きていた、それは君の肉体的にも精神的にも、目が見えない事の現れなんだよ」
「そうですね。もう光を忘れてましたし、」
「だから目が見えないと同時に精神下の世界でも目を閉じてた。いろんな意味で……。だから俺は
君に目を開けさせ、この暗闇の世界に、かりそめの光と景色を与え、恐らくこの上を通れば
君自身が繋がるという、イメージさせられる為の道を作り上げた。」
「肉体はもう、サハドさん達が治してくれたものですね。」
「そ、肉体も治ったという意味を、君に簡単にイメージさせた。後は……いうまでも無いな。」
「……という事は……。私の想い次第。」
「そう、その通り。多分」
それならば、私は想像してみました。
もしも、この世界が私の想像上と言うのなら……
「な、なんじゃこりゃぁぁぁーーーー!!」
私の想像が正しい事がサハドさんによって正されました。
「可愛いですよ。サハドさん」
私は、『サハドさん=エヒグゥ』だと、強く思ったのです。
「いやいや……可愛いって……アンタ。」
そんな戸惑いも、エヒグゥの姿では可愛いだけ……
「それでは行ってきますね。」
覚悟を決める事にしました。
そんな可愛いエヒ……サハドさんの口に軽く押すくらいのキスをした後、私は歩く事にしました。
「これはお礼です。……ですけど、表の世界に出てサハドさんを好きになるかは別ですよ~。
私は好きになれない外見や、苦労生活なんか、真っ平御免ですから~。」
私は浮かれた気分になりながらも、呆然と口を開けてたサハドさんを背に、私は遠き
向こうに向かって、歩いてゆきました。
・
・
・
ふられたね。
「いいや、まだ序盤だ……見えない左に打たれた位で、あっさり引き下がれるかってんだ。」
いや~、女性関係では生粋プレデターの相棒が、狩り逃したって姿はたまんないね~。
「まだ負けてねぇだろうがぁ~!!」
頑張れ~♪ 負けんな~♪ 力の限り生きて犯れ~♪
「こ、この~あまぁ~」
……はぁ…、…契約者さん。
「おう、どうした」
終わりました。これで、この人は目が見えるようになりましたし、他の人間よりも美しく長生き出来ますよ。
「そうか。それなら表の世界に戻るか。」
・
・
・
「何故に、戻れない。」
戻る前に、少し話を致しましょう。
「拒否権は無いようだから、慎ましく参加しよう。」
………まぁいいでしょう。まずは、言っておかなければならない無い事があります。
「どうしたんだい、所縁?」
ボク達の居るこの世界は、とある者達に、色濃く支配されているんだよ。
「ほぅ……成る程な、道理で。」
え!!
何ぃ!?
「誰だって気づくさ、世界地図を見て、周りの状況を色々と見てな。どう考えても歪としか考えられない。」
…………
…………
「おいおい、気づくだろ。自然の摂理無視の存在が居る。大きな大穴に囲まれて歩いては向こう側に行けない。
こんなにも箱庭みたいな世界なんだから、当然だろうが。」
「もうひとつ言うと、全部異世界語なのに、魔法を唱える最後のスペルは必ず邪教語(英語)ときている。
これは嫌味か? 俺に対する挑戦か? 来るなら来やがれーーーー!!」
あ~もう落ち着いて下さい
ドゥドゥ、君の嫌いな国はよ~~~く知っているから気にしない。
「ったく、敵が魔法を放つ為に唱えて、最後にはほざくから、苛々して仕方が無いんだ。敵味方に関わらずな。」
まぁ、契約者さんの憤怒は追々聞くと致しまして、……我々が存在するこの世界には、エターナルという広域的存在が居ます。
「おぉ~話がいきなり飛躍するな~。……で、何か俺とか人間とかの相違点はあるのか?」
まず、時間と空間から解き放たれた種族で、不死ではありませんが、不老ではあります。
「神格化された存在というわけか……」
有体にいうのならそうです。
それと、彼等は決まって第三位以上の高位の神剣を所持しててね。
世界間を通り抜けられる“ワタリ”の能力を持っていて、世界間を好きな様に動き回っている。
「俺が飛ばされた時に、ソレみたいな奴等が居たな……。」
……え~っと、……あぁ…ソイツ等は四部八九、ロウの奴等だね。
しかも黒い刃!? 、法皇!! 、厄介だぁ~厄介だよ。
…うぅんっ。……残念ですが、ここから詳しい話は、わたくしにはぁ、分かりません。
……ふっふ~ん、勝った。
「それはいいから。分かるなら説明してくれ。」
エターナルは基本的に無所属を除いて、秩序……ロウに属するエターナル組織と、混沌……カオスに属するエターナル組織がある。
前者は神剣の意思に忠実に従い、ありとあらゆる世界に破壊をもたらす者達で、後者は神剣の意思に逆らい
世界を護ろうとしている、偽善者達の事を言う。
まぁ、だからといってカオスが善でロウが悪という訳ではないんだよ。
本来、神剣の意思は、その世界が伝える意思を表しているだからこそ、剣はそれに従い、破滅を……生誕を与える。
「つまり、神剣は。」
えぇ……つまりは、世界の意思と、同意義です
「成る程、だから魔剣や聖剣と呼ばれずに神剣と呼ばれていたのか。」
はい……
「クソったれ………………」
え、今なんか言った?
「つまりは、衝動型既知外(ロウ)と、偽善型既知外(カオス)の分類分けされた、永遠ヴァカ者達の
大喧嘩に俺は巻き込まれたということか。」
うわああああーーー!! うわああああぁああーーー!!
ちょ、ちょ、っとまってくださ~い~ぃ~!
「面白………そんなに危険な事なのだな、……これは、覚悟を決めるか。」
相棒、そりゃぁ危ないよ、危ないって~、いろんな意味でさぁ~
まったくです。
「……タウヒード、も六信も全てが…いや、それはソイツ等の考えだ、俺が信じるべき真実ではない。…そうだな、アッラーの意志により現世が存続する限り、啓示に従い、現世の秩序を維持すべく、行ないを正していけばいい。」
何ブツブツ一人事喋ってんだ、相棒は?
さぁ、契約さんにも、貫くべき信念がありますから。幾ら結びついてても、そこは軽々と踏み込む訳にはまいりませんし。
お~ぉ~いい子ぶっちゃって。
ツッ!! ……“強欲”、あなたの様な遠慮知らずとは、いずれ決着を付けなければなりませんね。
おぅおぉ~、やる気なんだ。優等生の堅物君。
…………
…………
「……それで、一体……衝動型既知外は何をする気なんだ?」
あ、帰ってきた。
「で、聞いているんだが。」
あぁ……実はねぇ~、ロウエターナルは、この大陸を舞台に……
・
・
・
「くだらねぇ……なに、その使い古された様な下らないオチは。」
お~い相棒~。今、君は言ってはならないことを言っちゃったよ~流石に僕でも庇い切れないよ。……
そんな……。
「捻くれた人間が見たらツッコミ所満載じゃねぇか。こんな下らないシナリオに、よくもまぁ世界をかけれるよな。」
「素直と単純が一番の理想」って言うじゃない。
「ったく。だからってなぁ……」
システムは……、彼等が作り出したシステムは、この世界をどうであり形成している。
どれだけ強い者でも、この世界に囚われてしまう。
……いや、強ければ強い程、その反発は激しい。今はまだ、本筋が始まってすらいないからまだ穏かだが、その反発は
とんでもないものなんだよ。
いざとなったら、人を捨てる覚悟で無ければならない。
・
・
・
「あぁ……だったら、話にのってやろうじゃないか、その下らないシナリオに。」
えぇ~~、そんな奴等の思惑通りに動くの~ぉ?
「まぁまぁ、ソイツ等はソイツ等で好きにさせてやる、」
いいのですか!!
「構わんさ。俺は俺で、ハーレムという名の千年王国を作らせて貰うしな。」
………
アッハハハハハハハハ!!
「まぁ、向こうが干渉してくるというなら話は別だがな………」
ま、そんな所だと思ったよ。
……そうですね。
「そうと決まれば、行動に移るか。ラキオスとマロリガン、サーギオスの主だった配役に手を出したり
大部分のシナリオに看破しそうだと思われなければ奴等は干渉して来ないだろうし、そこを突く。」
えぇ、彼等は恐らく、シナリオの本筋を書き換える恐れがあるものから排除、抹殺してゆくのでしょうから、
契約者さんの考えは正解に近いでしょう。
「まずは、デオドガンを足場に土台を固めるとするか。そして、二・三年後の勝負の年に水面下、
水面上の両方で駆け巡る。」
だね。
「足場を固めたら、まずはどこに行こうか? マロリガンか…サーギオスか…いや、イースペリアに
行ってみるというのも悪くは無いな。」
……それでは、私達の話はこれで終わりです。
「…………なあ。こっちも……一つ、いいか?」
えぇ、いいですよ。
ボクもいいよ。
「前もって言っておく、俺達は契約を結び、俺は“強欲”と“所縁”の為に、マナを集めている。」
えぇ……目的は違えども……
「“強欲”には、失われた力を回復する為に……」
…………
「“所縁”には、己が意思を、想いを、正し貫きたいが故に……」
…………
「俺は、俺の愉しみが故に行動している……俺等は契約だとかそんなのを無視してだ。」
……おいおい、
…契約者さん!!
「何故なら、お前達を剣としてではなく、女だと見ているからだ。だから多少の厄介事も引き受けられる。
だがな、俺にも尊重すべきものがある。」
女?
「冗談は抜きだ。………………“強欲”、“所縁”、多少の能力と特殊能力を、発揮する事しか出来ない神剣を下位。
強力な能力と特殊能力を発揮し、第一線を戦える神剣で、ようやく中位。それのどこまでお前達は上れるのか知らん
……だから聞いておく、……お前等はどれ位の階位になったら人を象る事が出来るんだ?
その為に、俺は神格化された存在にならなきゃならんのか教えて欲しい。」
…………
……コイツはどうだか知らないけど、ボクはもっとマナを集めれば出来るよ。
「ほう……それなら、俺は後どれ位戦えばいい? どれ位殺せばいい? どれ位犯せばいい? どれ位狂えばいい?
俺は、お前たちの実り始めた果実の様な唇を恋焦がれればいい? お前たちの熟れた果樹の様な乳房を……
喰らいつきたくなる様な引き締まり洗練された肉付きの肌を……どれ位耐えればいい?
粘液としめつけによって奏でる襞の感覚とその奥にある純潔の膜、子宮の母胎の待望を
どう抑えればいい? 今このように喋り想像するだけでも、俺の琴線に触れ、俺の身体を、脊髄を、
心を、ゆっくりと撫でるこの衝動をどう抑えればいい?」
…………
……参ったな。 ボクが人間体になるには相当のマナとそれ相応の依代が必要だしね~
「俺も今、参っている。異世界に飛ばされるのも、戦いの日々に身を投じるのも、構わない。それがイシュラーなんだから。
それも、アッラーの定義を否定するような奴等が居るだとか、実は世界の真実は唯一神ではなかったや、
そういう事実は、苦渋を舐めつつも、我慢しよう。」
「だがな、魂の廻りから外され、永遠という魂の牢獄にぶち込まれるのは我慢出来ない。」
「何故なら、名誉が汚されず気高き魂はアッラーの元に召される。それが、アッラーに身を捧げた
戦士とというもで、だから、それを行い、永遠者になる事は、今まで俺が作り上げられてきた名誉が、
魂が、変えられ……自ら汚して……アッラーの元に届けられないのは我慢出来ない。」
「そして、アッラーに仕えるもの全ては、その名誉を汚される事も、汚す事も、自ら貶める事はしない。
だから、もし、お前達を人型にする為には人を捨てなければならないというのなら、おれは力を求めはしない。」
………契約者さん
…チッ、強情だね……。
「どうとでも言え、何が起ころうとも……俺は決して人を辞めるつもりは無い、例え、どんないい女でも、アッラーでも、
俺の名誉は俺だけのものだ、決定権などはくれてやらんからな。」
「“強欲”、“所縁”、それだけは覚えててくれ。サハド・ザジル・ハミードの全ては俺だけのものだ。もっとも死ねばどうかは知らん。」
安心して下さい、私の能力の範疇ではエターナルには出来ません。この剣はどうか知りませんけど。
…………
「まぁ、ならいいか。」
では、参りましょうか。
「あ、そうそう。本人が聞いていないからって。彼女の中(精神世界)で俺等の事を話すもんじゃねぇと思うがな……。」
治してやるんだ。場所位、提供してもらわないと。
それに、ここならば絶対に彼の者達に聞かれる事はありませんでしたから。
「まぁ、言い訳ならどうとでもなると思うけどな。………さぁて、起こしますか。…眠り姫を。」
・
・
・
そして……気高き者の物語を語る、語り部が、目を覚ます。
あとがき(上記で使用した技術を使ってください……)