聖ヨト暦三二八年 エクの月、緑四つの日 ミスレ樹海、洞窟内部

 レネヴァリーを後に連れ、洞窟をやっと出る。

「やっと光が見えてきたな……大丈夫か?」

「何とか……なってい…ます。」

 サハドとレネヴァリー、互いに、己の身体にガタが来ている。

 レネヴァリーは風をかなり多用した為、マナの消費が激しく、サハドは痛みを、精神で無くそうとも……
“所縁”の力で幾ら外傷を回復しようとも……身体中に衝撃とダメージを喰らって、確実に蓄積しているのである。

「さて……後の問題は……」

 そう落ち着いても、いられない。



 サハド達が今居るのは、帝国領内。

 来る時は敵の案内もあり、襲撃される事も無かったが、敵がおいそれと帰してくれるとは限らない、

 地図上では、ここは僻地で、このまま北に向かうように森を突っ切って砂漠に出れば、上手く行くのかもしれないが……

 それは虫が良すぎる問題である事は、自ずと悟っている。

「ソゥ「「ウネト(主)」」

 入り口に出て間も無く、声が聞こえ影が俊敏に寄ってくる。

 その正体は赤と黒のスピリット……

 それは、ルーファ・レッドスピリットとスフェ・ブラックスピリット、前々回サハドによって轡を噛まされ
捉えられたモノで、サハドの所有物である。

 赤くキューティクルな髪を肩口辺りでカットした小柄な身体のスピリット……ぶっちゃけるのなら、
●0歳と……失礼1●歳位の小●生(しかも平均より下位)程度の印象を受ける娘で。

 その首に、四角く長い鈴(マロリガン特産の工芸品)を付けた首輪を付けサハドの所有物であることを、自ら発しているのが、
ルーファで、前々回サハドが話術と精神攻撃で狩った娘である。



 そしてもう一方は……黒がかった茶色の髪を後ろで束ねて纏めた褐色の肌をしたスピリットで、
前々回の戦いで
レネヴァリーによって捕まったのだが、そこで精神的なものは何もされておらず、元仲間のルーファの変わり様から、
サハドにくってかかってきた事もあり(意味合いを混めた皮肉表現で)、戌扱いされてるようになっている。


 こちらも、負けじと小柄な体格をしており、長物の得物である倭刀
(別名、日本刀)を背負うように………ぶっちゃけ、
背負わされたような印象を見受けられる。

 ……まぁ、小柄なコジロウ・ササキの黒色(2Pカラー)といった所であろう彼女が、スフェである。



「ルーファにスフェか……という事は」

 そんなお子ちゃまの二人だけが傷を付け駆けつけてきた事の意味を、サハドは直ぐに察した。

「他の奴等は?」

「殺されました。洞窟の上から光が立ち上ったと思ったら、相手が攻めてきて。」

ーーやれやれ、今度からは誰が俺の背中を揉むってんだ……畜生。

 殺された二人のスピリットは、入浴時にサハドの背中をよく揉んでくれていたのだ。

 その胸を押し付けての、愛撫の様なマッサージは中々のものだったので、サハドは心底、残念に思った。

「いつの間にかごたごたになって……それで……ごめんなさい。」

 涙目に頭を深く下げルーファは主であるサハドに詫びる。

「ルーファ、それは違う。」

 その行動に待ったをかけたのはスフェで、正論を持ち出してはいたが、はねかえりからの行動だった。

「そうだな。スフェの言うとおりだ、どのみち予想はしてた。」

 恐らく囲みを取る様な態勢で、展開している敵を気配で感じながら、サハドはスフェをあしらいつつルーファ
に言った。

 どのみち俺を生かして返す計算ではないのだろう。

確証は、どれ位前からとってたの?

ーーそうだな……大体、帝国領に入った頃から感じてたな。

 声に出さないが、笑いがこぼれ始めてきた。

ーー尤も、竜と殺りあっている時は意識しなかったがな。



 敵が木々の間から駆け出してくる。


 遂に敵は攻撃を開始し始めた。

「閃光弾を使わないのがせめてもの救いか……」

 状況的に、向こうの世界では完全装備で攻め込んできた馬鹿が良く使っていたので、サハドは何時もの癖で
目を庇う様にしてしまった。

 なにやってんの?

ーーいや、いつもの癖でね、ゴーグルかけてれば大丈夫なんだけど。

「レネヴァリー、ルーファ、スフェ、互いに出来るだけ位置を取って戦え。」

「わかりました。」
「キス(「はい」という意味。)」「キス

 敵スピリットを、竜を殺し、意味合いたる形(剣の部類)に戻った“強欲”で横殴りする。

 剣というより刀の部類なので、峰打ちという気持ちだったのだが、下手なアックス(斧)で殴ったかのように、
そのスピリットの頭蓋骨の形を変えた………何か適度に堅い何かが砕けた音がしたのは気のせいであろう。

ーーしまった……力みすぎた。

 手加減を決めたのだが、加減が外れてしまったのである。

ーーまいったなぁ……疲れてるのか。

 巨龍との戦いでの疲労が祟っての加減のミス……、そうともいえるが他にも理由はあった。

ヒュ~~♪(←誤魔化しによる口笛)

 そう、守護者リバイルの力を取り込み、外内共に“強欲”の力が上がった事と、それを介して
戦闘モードに入った時に現れる、神経の昂りの度合いが上回ってしまっている事が理由なのである。

 ……そう、身蓋無く言うのなら……、筋力上がって(速さは失われていない)、加減できない程、
ハイになってしまったのである……。

既○外予備軍という事なのだ~。









 戦いは続く……戦う者の意志を気遣う事無く……


 敵の第一波(6人)との戦いは未だに余力が残っていたのサハドが敵の青いの一人と、二人の緑を倒し、
レネヴァリー達によって残りの赤と青二人が倒された。


 だが、その勝利の代償は意外と大きいものであり、無事では済まなくなってきていた。


「っ…はぁ…ハァ……どうしたレネヴァリー。立つので精一杯か?」

ーー“所縁”ちゃん、“所縁”ちゃん、後どれ位?

もぉ少しぃ待ってくださぁい。外は繋ぎましたけど、神経と筋がまだ繋げ終わっていませぇん。

「そう言う……サハドさ…ま…も、庇った傷はいかがですか?」

「多少、中が直っていない。」


 そう、スフェを庇って左腕に大きな怪我を負ってしまったのである。

 その傷も“所縁”によって精一杯の回復を行っている。

ーー“強欲”後何発放てる?

マナは問題ないけど、相棒の精神次第。

ーー成る程。弾薬は心配無用で、銃身を暖めすぎるな、という事か。

喩えとして~よくわからないのですけど……、それはそれでいいのでしょぉう。

 まるで機関銃を任された気分だなと思いつつも、こういう時程、“強欲”の奪う力が頼もしいと思ったことは無い。


 他の神剣ではマナを回復するのには、それなりの時間を要するのだが、“強欲”の場合、八割程度をそのまま
マナとして使用が可能になっているのである。


「そろそろ、レネも休め。」

「従者が……主より…先に、休む……なんて、斬新です……ねぇ」

 軽口をたたき合っていると敵が攻め込んできた。そこから敵の突進を、先に踏み込んで、心臓打ちで止め崩す。

 目と意識が前にいっていたその瞬間、黒い疾風が吹きあれ襲い掛かった。

 それは緑の暴風にはじかれ、次の瞬間、まるで雷鳴の様な甲高い金属音が響く。

チッ…危ない!!」

 金属音が鳴り止んだと同時に、互いの風が一歩後に後ずさり、互いにその姿を現した。

 サハドを護った緑の暴風は、我等がレネヴァリーであり。

 もう片方は………

ーー ……一昔前の消費者金融のCMを思い出した。

 何故なら……

 対する黒い疾風は、まるで競泳用水着やレオタードの様な、身体に密着する軽快な黒装束を身に纏い、腰に身に着けた
アーミーベルトのようなのに防塵布を装着した格好となっている(他の雑魚もこの格好)からだ。


 とまぁ、そんな彼女は、暗殺者特有の鷹の様な鋭い双眼の少女で、その場に巻き上がった風で束ねられてた
灰色の髪の毛が綺麗に舞う。


 殺し合いの最中にこう思うのも何だが、
【黒い装束に黒い翼を広げた灰色の髪の少女、】 対象に【緑の装束に白い翼を広げた緑の髪の少女……】 と、その姿は
堕天使(ルシフェル)天使(アズラエル)の戦いを彷彿させる様で、非常に絵になっていたな、とサハドは感じた。

ーーいいね~いいよぉ~その逆三角!!

 だが、その絵になる光景を崩したのは他ならぬサハドだった。


「!!」

 レネヴァリーの横から飛び出し、サーベル戦闘の要領で右腕で突き刺す。

 それをかわした後、ブラックスピリットは距離をとって攻め込んでくる。

 ブラックスピリットは速度という武器を生かした居合いの
Hit and Away戦法で、根本的なサハドの戦い方と
殆ど被っている。

 手数の多さでの戦いも、速さでも互いに引けを取らない、サハドは神剣魔法の使用を止め、剣での
打ち合いに重点を置いていた。


 そして打ち止める。


「手前の太刀を防いだ者も見事ですが、負傷した左手を庇いきっての片手での剣技、お見事。」

 余裕をもった、面白がる言葉が掛けられる、恐らく相手は戦いを楽しんでいるのだろう。

 強敵を相手にし、満足のゆく戦いに挑めると踏んだのだろう……と。

「そりゃどうも、今日は疲れているから、もう終わりにしない? 見逃してあげるよ。」

「そうは参りません故に……」


 そして……


 また愉しみ合う……


 爽快でリズムに合った剣技に……


 心躍らせ……


 疼く衝動……。









 戦いが硬直し始めて遂に変化が訪れる。


お待たせ致しました。契約者さん、派手にやって構いません。

 左腕の傷が完治し、何も感じていなかった左腕に感覚が蘇る。

 “所縁”の施していた麻酔(神経系を遮断し傷みを脳に届けなかった)の効果なのだろう、いい兆しである。

 背中で庇うように画していた左拳に“所縁”の糸を這わせる。

 ここからが稀代、稀たる悪党の反撃タイムの開始である。

 “所縁”の糸が生み出した急ごしらえのメリケンサックが最大の罠……後は哀れな鴉が飛び込んで来るのを
待つばかり。



 そんなサハドの企みは……



 甲高い金属音が鳴り響く

 横から現れた予想外の乱入者によって邪魔された。

「「ウルカ隊長!!」」

 敵の雑魚が一斉に灰色の髪の敵スピリットに声を掛ける。

「……止めなさい。暗殺部隊が、礼儀も何も知らないのかしか?」

 相手同士で剣が交わり火花を散したかと思うと、互いに後ろに下がる。

ーークソったれ、邪魔された。

 黒髪の短い髪に、何かを見据えた様なきりっとした眼、まぁ何とも洗練されたようなしなやかな肢体、
そんな、磨きをかけた抜き身の刀の様な少女は……

 倭刀の形をした永遠真剣を片手に持ち、中段の構えで味方?を警戒したままの状態で睨みを利かせる。


ムッ!? あれは黒漆太刀拵の、お仲間……階位も出来も、中々の業物だね。



ーー惜しいな、暗殺部隊と同じ格好をしてくれれば、身体のラインが分るんだが……。

はぁ~

 サハドと“強欲”、互いに相手を褒めていたが……その内容は程違っていた。

「今この場でも、少しの感謝の念があるのなら、今すぐこんな情けない事は止めたら?」

「しかし、メティス殿、」

 そんな二人をほおっておいて、サーギオス側では緊迫した情況が続く。

「命令だけを聞くばかりの人形に、どだい無理な話よね。でもね貴方達と違って、私は恩知らずじゃないわ。」

ーーほぉ…分かっているじゃないか。

 メティスと呼ばれた者の側の人間なのか、多数のスピリットが周りを囲むかの如く展開する。

「手前は、命をおびておりますので……」

「なら、エトランジェと私を相手にしてみる自身がおありなのね。」

 サハドもその言葉に同じて、腰を落とした状態で剣を構える、今まで負傷していた左腕が回復したので、
左腕も刀に添える、これで相手は驚くだろう。

 今までが演技だったのかそれとも……と、相手の動揺を誘って、色々考えさせれるのだから。

「……わかりました。それでは手前達は引きますが、この話は報告させていただきます。」

「まぁ、いいでしょう。」

 ウルカ隊長と呼ばれたブラックスピリットが返事すると、その返事に納得したのか帝国の暗殺部隊は引き上げてゆく。

 そして、この場にはサハド達4人と、メティス隊の6人が対峙していた……

「それでは、初めましてエトランジェ様。お噂はかねがね…自分の名はメティス・ブラックスピリットと申します。」


 ふと、彼女の背中に担いでいる倭刀に目がゆく…、彼女の刀は、刀で言う鍔が無く、刃の部分が規定サイズより長くなっており、
その長めのリーチの長さを、無意識に警戒してしまう。

ーースフェを相手にしているのとは訳が違うな。

 身体の大きさに対比しない刀の組み合わせを見てそう思った。

 元々、スフェの持つ神剣は通常サイズで、スフェが小さいからそう見えているだけなのだ。

 神剣での大きさも……、スピリット単体の質でも……、多きに差が出ている。


「また別の名を。この剣と同じく、“遮光(かげり)と呼ばれております。」

「あっそう。」

 絵になる光景をサハドはあっさりと一刀両断する、そのばには唖然とした、沈黙が訪れる。

 その沈黙を修繕するようにサハドは喋り始める。

「……そうか。まぁ、君の生い立ちなんて知る由も無いんで、そんな通り名知らないし、興味は無い。
だが、話の解る奴が居て助かったよ。」

 サハドは意外な助けに対して、感謝した。

「話が解る。とは?」

 邪魔したのは兎も角、良い時間稼ぎにはなったのは事実なのだから……。

「こっちが竜を倒してやったのに、礼を言うどころか、始末屋を寄越すんだ、困った事この上ない。」

「そうですね。恩知らずにも困り果てましたね。」

 あっさりと肯定された。

 それも、他人行儀を含ませて……。



「……まぁ、いいや。結局、殺り合うんだろ?」


 沈黙が肯定を意味する……いや、彼女の沈黙にはそれを感じなかったが。


「隠すなよ。どうせ上の奴から言われてたんだろ。『あの暗殺部隊に手柄をやるな』とか。」

 上に報告されると言われて動じなかったと言う事は、“想定内の事”か、“正義感に駆られての暴走”なのだが、
少なくとも、他の奴等の態度といい、後者ではない事は容易に想像が付く。

「そう思えても仕方が無いですけど。」

「だろうな。お前は兎も角、後ろの連中は殺気立っているぞ。」

 やんわりと変化させるが、早い話…メティスの隠そうとする演技力は見事だが、部下の方はまだまだと
言う事であるのはサハドは見抜いていた。

「これはこれは、部下共が粗相を」

 演技力の低さを気にしない程度で誤るメティス。

 ……サハドはその気風の良さを気に入った。

「どのみち殺る気なら気にせんさ。」

 楽しそうに逆手で刀を握るサハドを見て、メティスは刀を腰から抜くと、構える。


 互いに気に入り合い……、


 互いに剣で応える事になった……。


「それでは私の身を守る為と、興味の為に死んで頂きたい。」

 刀が下段の構えになると殺気が収束され……迫る。



 メティスは気合とともに刀を薙ぐ、それを“所縁”の糸で巻きつかれた左手の拳で弾くが、すぐさま
斬りつけられた。

「コッチは死にかけだっていうのに……ったく。」

 視線でレネヴァリー達に合図する。

 コイツとはタイマンで殺らせろ、他はお前たちに任せる…と。

 その意図に納得したのかレネヴァリーは後に下がる。

 丁度良く、他のスピリットと戦う事になったのだから、安泰といえよう。


ーーこれでいい。野暮な事は嫌いでね。

勝算は?

ーー俺とアイツは今の情況でほぼ互角だ。

駄目じゃん。

 今までの俺を考えて、“強欲”は呆れた。

 まぁ……確実に、勝利を手繰り寄せている様な男が、博打紛いの事をするというのだ、呆れても無理は無いが……

ーーふっ……“強欲”と“所縁”。もっと自分を誇ったらどうだ?

いや…ですから……

ーー俺にはこんなに頼もしい二人が居るのに、負けるかよ。

…… ……

 呆然としているので、恐らく、俺に見惚れているのだろう……勿論、俺は、自分の神剣達を口説く為に、
自殺行為を選んだ訳ではない。

それでは……勝った時は貴方自身……全てを頂きます。
「お前の体も心も、
その果実の様な唇も……」

 互いに剣を抜き向かい合う。

その命も、身体もマナも全て……
そのたゆまぬ乳房…、分泌液と肉壁によって奏でる蜜壷も……」

 その緊張した面持ちを漂わせたまま。

「できる物なら……な。」
殺さずにやるのには慣れておりますが……。

 ザッ、っと物音がしたその瞬間、互いの身体が掻き消える。

 そして、それと同時に黒き刀身の刃が サハドの“強欲”の刀身を弾き飛ばした。

拙い、神剣との意識の同化が噛合っている。

ーーヤバッッ

 瞬時に力を解放し瞬発能力を極限まで高め、メティスの二撃目を回避する。

「しまっ……どらぁぁぁ」

  だが、回避したのだが、膝が笑ってしまった為、地面に膝を付いてしまい、危うく命を失いかける。



 闇が訪れようとしているミスレ樹海で、戦い……否、闘争と呼ぶに相応しい殺し合いが続く。



 “強欲”を地面に突き刺したと同時に右手の掌をメティスに向ける。

散炎光!!」

 サハドから放たれた炎の光線が空中で拡散し、散弾銃の弾の特性に似た動きで敵に襲い掛かる。


 何故使えるのだというのなら、この前に殺った奴の力が取り込まれサハドの技となったのであると答えよう。


 尤も単発での威力は光線時より衰えている為、シールドに防がれる事は明白だった。


 が、メティスはその様な対処はせず、意外な方法でそれを回避する。


 彼女は高く跳躍し、袖に仕込んでいたサハドに向け投剣(神剣ではない)を投げつける。

 その速さは銃弾クラスの速さで、常人ならば……いや下手なスピリットでも死を呼び寄せられてしまう。

ーー懐かしいな。俺もやったっけ、投剣。

 サハドも経験者たる所以で、メティスの攻撃のタイミングを見計らい回避し、駄目なものは打ち落とした。



ーー攻撃が当たらない……。見事な捌き方だ……。

「流石はエトランジェ殿、」



ーー情況を上手く生かした攻撃方法だ、面白い。

「メティスもだな。これ程仲間に欲しいと思ったことは無いよ。」



 互いに頬を緩めて戦い合う。



 アサシン(メティス)とプレデター(サハド)の戦いは熾烈を極めた。


 力量が上である筈のサハドは、先に戦った守護者リバイルとの戦いと、ウルカ隊との戦いの疲れが
身体を蝕んでおり、メティスの狙いによって消費量の差で力量を縮められていたのだが。


 サハドはメティスの戦いを、その技量でカバーし、殆ど無に返していた。

「メティスとか言ったな。中々の…技量だな、……もっとも、強い奴との長期戦に慣れてないだろ。」

ーー半端に強すぎるのもそれまた難点か……。

「このッッ!!」

 サハドに核心を突かれ、メティスはやや大振りな太刀筋を見せる。

「こっちは慣れているんでな。力の抜きどころを心得ているのさ。」

 それこそ、サハドの狙っていた事である。

 サハドは相手を巧みに誘発させ、労費を促せている


「もらったぁぁぁ………んな!!

 サハドが攻め込もうとしたその瞬間、サハドは“強欲”を落としてしまう。



ーー!! もらった!!

 メティスにとって最大の好機……かと思われたその瞬間。


 意外な事が起きた。


 不意に、放たれたサハドの蹴りが、メティスの腹に突き刺さる。

 衝撃が全身を貫き、メティスは飛ばされ背中から地面に倒れ込んだ。

「ウガッッ……」

 そして彼女が起き上がろうとしたその時。彼女のこめかみに、“強欲”の刀身が突きつけられる。

「お前の負けだ。」

 一瞬だった。

 サハドが“強欲”を落とした瞬間、メティスは落ちた“強欲”に目をやり、それに隙を取られ蹴られたのだ。


 無論、それがサハドが意図的に作り出した隙で、メティスがその隙に、付け込まれる様な隙を作り出してしまい、
それをサハドが付いたのは言うまでも無い。



 …まぁ、あれだ。実戦経験の差が生み出した勝利って奴だ。






永遠のアセリア

ラスフォルト



第5章、1話、“サハドの悪党だいあり~①”




願望・・・
求めること・・・それはちからとなる。

善き願いでも、悪しき求めでも。

制約・・・
誓うこと・・・それは力を呼ぶ。

そんな誓いでも、それが純粋な想いならば。

織物・・・
時と運命と想いが紡がれた・・・

織り込まれて物語をかたち作っていく。

略奪・・・
強欲であること・・・それはちからそのもの
他者を蹴落としてまで、生に執着するためのこと。






   






 メティスは自分につきつけられた刀よりも、その刀をつきつけている男を目を逸らさずに見つめる。

「……殺さないのですか?」

「そうしたらどうする……」

 メティスがそう真直ぐに問い質すと、サハドは質問で切り返してくる。

「…………」

 メティスの覚悟した沈黙が、サハドのツボを突いた様で…サハドは笑いながら“強欲”を腰に携える。

「ここまでいい女を殺れるかよ。…別の意味で犯るけどね。」

「……ふッ…ハッハッハッ、参りました。自分は、本来ならここで朽ち果てる命。どうぞエトランジェ様の
お好きな様に……。」



 そう潔い…、メティスは戦う者の、敬意の払い方を知っているのだ。

 その潔さにサハドは好感を持った。

「そうさせて貰うよ。お~いレネヴァリ~~」

「何でしょうか!? サ・ハ・ド・様!!」

 不機嫌そうにレネヴァリー、明らかに不完全燃焼といった感じで燻っている。

ーー中途半端に勝っちまってるしな…俺の言う事なんざ素直に聞かないかな?


 メティスは目を疑った。

 そこには、至る所に傷を付けながらも、生き残っている幼いスピリット二人と、
余裕の表情でこちらを不快そうに見ている鬼子、

ーーな、なんて事!?

 最強クラスと言われた、帝国妖精騎士団の一角である、自分達の隊と戦って殆ど無事なのだから、



 まぁ……、それも無理は無い。

 大なり小なりサハドと肉体的繋がりによって、魔力を得た者達なのだ……、力が上がっても、何等、不思議ではない。


 その中で、特に上がったのは持久力(笑)で、彼女達にとって、この位の戦闘よりも、サハドとのまぐわいの方が
よっぽど重労働なのだ!!



「あ~なんか、セクハラ言われてるような気が……まぁいいか。それで?」

 妙に? 不満そうだったが、話しは聞くという態度である。

「俺と、お前と、一緒にメティスを責めるぞ。青姦だ、複数青姦。」

「し、しかたがありませんね。サハド様がそうお望みでしたら。」

 嫌々声だが、その昂った声と満足気な女の顔が、悦びを表していた。

「ルーファ、スフェの二人は休みながらも周りを警戒していろ。」

「承知」「……わかりました。」



 両手の指をワキワキと動かし、期待を膨らませるサハド、レネヴァリーはメティスの背後を突き、捕まえている。

「さぁ~て、二・三人位、孕ます気持ちでやってやるよ。」

「そうなったらレネが、遠慮なく腹を蹴って差し上げますから、流産して下さいね。」

 耳元で、そう呟くレネヴァリー、間違いなく本気である。

「駄目だろ。」

 サハドはレネヴァリーの言葉に制止を促す。

 当然で……。

「半分は俺の子だから、生かせよ」

 ……はなかった。

「じゃぁ、男の子だったらレネの理想を具現化させる為に育てていいですか?」

 サハドがメティスの横から近付き、身体を抑えるのを見届けると、レネヴァリーは左横によってゆく

「やれるのならやってみな。」

ーーそこで生き残れなかったら、俺のガキじゃねぇ!!

「ちなみに女なら…」

「ソーサレク!! ソーサレク!!」

 サハドが「どうする?」と言う前に右手をブンブンと振りながら、レネヴァリーは答える。

 と言うか、どうやって抑えているんだ?

ーー殺すコールですか。

 殺る気満々である。

 というか、止める気なら、「サハド様でも許しませんよ。」と全身全霊で表している。

「とまぁ、後の事は置いて置いて。」

「そうですね。」

 サハドとレネヴァリーはメティスの左右に陣取る

「愉しませてくれ。」

 そして、その言葉の後、メティスは自分の現状に気付く。

「え!! い、いつのまに半裸に? 」


「何、言っているんだ、いままで脱がさせていたのだがな、」

 いや、それだけではない。

 頬はほんのり赤く、欲情の色に染まり、身体は震えた。

 そして、自分に起きている情況に理解がつかないでいる。

 そう、サハドは彼女の服を僅かずつ脱がすと同時に、タッチスキンシップ(撫でる、弱く揉む、指で押す)程度
だが、確実に巧みに責めていた。

「あ~無理ですって、サハド様の脱がしの業は神業の部類なんですから。この女も簡単には気付きませんよぉ」

 実際横に居て話していたレネヴァリーも気付かない程の凄腕のテクである。

うんうん、匠の業だね~。ボクも早く身体が欲しいな~

「ちょ、ちょっとぉぉ、どこ触って…」

 スカートを脱がすと共に、上手い具合に太股と尻を撫でた。

 喘ぎに混じって、困った声を上げるメティスなど軽くあしらって責め続けるサハド。


「好きにしても言いといったのは、メティスだろ。」

 もう片方の腕で、胸と脇の辺りを撫で、指で加減を付ける様に押し、吐息の様な感覚を耳元に味あわせる。 

いぃなぁぁ……

 もう、捕食は始まっていたのであった。









 終えた余韻で、呆然としているメティス、そんな彼女にサハドは何かすると、地面に横たわせた。

「栓はこれで良し。これで後、孕むか孕まないかは、アラーの導き次第っと、」

「……はぁ、はぁ、はぁぁ~、んっと本気でやる気ですか? サハド様。」

 主立って攻められていないレネヴァリーでも肩で息をし、ふらふらしているというのだ、
メティスの疲労は伺うまでも無い位である。

「レネヴァリーにもいつも出しているだろ。」

「そ、それはそうですけど~」

 すがる様な目で見た後、拗ねる。

「同じ道に導いただけさ、それもレネヴァリーのかなり後方だ。」

 自分の立場の高さを理解すると、嬉しそうに微笑むレネヴァリー。

「ルーファ、スフェ、」

 そして、最近、その道を歩み始めた少女達を呼ぶ、

「こちらに、」
「……」

 先程までの光景を見て、ルーファは中てられながらも、サハドの命に従って強欲と荷物を預かっていた。

 そして、その横で腰を落として黙っているのはスフェで、つい昨日、
サハドに『絶頂を迎えたくても
迎えられない』という“”枷”を染み込まされている為、“その手”に過敏に反応し、中てられ、激しく悶えている。

 まるで性質の悪い花粉症といえる。


「そろそろ出るぞ、メティスが戦うから僅かながらに包囲網はとけてるだろ、その隙を付くぞ、」

 服を着なおしたサハドは、そのまま立ち上がるとふらふらしているレネヴァリーを抱き上げる

「あ、あの……ソゥ…ウネト、これは着ないんですか?」

 ルーファは大きめの防塵布をサハドにさしだし聞く。

「メティス……その女にだ、被せておいてやれ」

「え?」

 ルーファが驚くのも無理はない。

 普通は敵に施しなどしないのだから。

「ルーファ。」

「は、はい~ぃ~。」

 サハドに名前を呼ばれ、ルーファはすぐさまに、実行に移した。

 彼女は分かっていた。

 普段は穏やかだが、最高である自分の主が、逆らったら怖いと言うことに………。






「それでは、メティス。また会おう。」

 その言葉を最後に、その場から人の気配が完全に消えた。

「負け……ね……。」

 ただ、呆然と星空を見上げている彼女を除いて……。






 マロリガン商業組合とサーギオス帝国との休戦協定の締結によって
デオドガン紛争は終結を迎えた。
これによりデオドガンもマロリガンとの戦闘を打ち止めにした。

 そして…これにより、街をあげての勝利の宴が三日間執り行われた。



 誰もが、喜びを分ち合う中……

 サハド達は……。



「あれ、主様は~?」

「……いない」

 サハドの物と戌である、ルーファ・スフェの幼少コンビは沢山の料理の山を抱え、周りを見回し、探す。



 別の所では、レネヴァリーが舌打ちをかます。

「……居ないわね……チッ、神剣の気配まで断っている。」

 彼女は、蒸留酒が入れられた酒壺を、肩で担ぎながら、街の高い場所に立ってい探していた。



 そして、当の本人は。

 酒を飲まされたり、豚肉料理を食わされたら、サハドの存在として終わりなので、上手い具合に
匠の技を駆使し、お茶と摘んだ料理を持って一人で楽しんでいた。

「何を飲んでいるんですか?」

 そんな俺の横に誰かが来て質問してくる。

ーー服装はコッチのだから……バレはしないだろ。

 そう思ったのと女性だというので、安心して答える。

「イスィーイス(お茶)。…酒は教えの為に飲めないからコレをポッド口で貰ってきた。食べ物は鶏肉の……何か?」

 そう、サハドが心奉するイスラムの立戒の教えには、豚肉を食する事も、酒を飲む事も禁止されているのである。

「そうですか………。」

 後半の延びで何がしたいかを察し、ポッドを掴むと空いていたコップに注ぎ手渡しする。

「ほら、こっちに座って飲みな。」

ーー偶にはいいか。

「あ、どうも。」

 言葉に甘えて女性は俺の隣りの茣蓙に座る。

めでたい日に感謝し

「めでたい日に……」

 この地方の乾杯の仕方で乾杯すると、同じ方向を見ながら茶を飲む。

ーーしかしどこかで……。

ーー会いましたような~


 互いに頭の違和感に悩ませ……。

……………!!

「「あッ」」

 同時に気付く。

ーー盲目のお嬢さん!!

ーー不思議な雰囲気の人。

「「この前の」」

 見事にハモった。

コイツ等、

二人とも見事に間が抜けてましたわね


「「…………」」



「以前、名乗りませんでしたので、名乗ります。サハド・ザジル・ハミードと言います。
よければ、サハドとお呼び下さい」

「わたしの名はユノーラ・ザレンドールといいます。ユーノラと呼んで下さって結構ですよ。」

「よろしく。」

「こちらこそ。」


………


「あれ?」

ーー……………………ちょっと待って!!?

「なぁ…今、君なんて」

「あれ? 聞こえませんでした?」

「いや、そうじゃなくてちょっと確認。ユーノラって言った後になんて言ったの?」

「呼んで下さって、結構ですよ…と、」

「いや、それのちょっと前。」

「あぁ……成る程、改めまして…ユーノラ・ザレンドールと申します。」

「!?」


!!?
!??



「ご想像付いたと思いますけど、わたし、フッシ・ザレンドールの娘です。」

………………

あぁ……あの茶ム○ク

もの凄い適当


…………
……



Σ (;´・ω・`)!!



、な

「そんなに父と似ていません?」

ーー有り得ない…絶対にありえない……って言うか、遺伝子受け継いでないでしょ。

「あぁ…フッシさんは、荒々しい顔と印象だからね。」

 美女と野獣もビックリである。

ハケサス……あっ…うん……あれでも父は、穏かでひょうきんなのですけど……。」

ーーあのオッサン娘の目の前で何、皮被っているんだ?

ーーっていうか微妙に本音洩らした?

 娘を全力で溺愛するフッシの姿が目に浮かぶようで…とても不気味である。

「もしかして、父の知り合いですか?」

「あぁ…乳の尻合いだ。」

……?
……プッッ


「そうですか。…もしかして……貴方がエトランジェさん?」

「俺はよく知らんが、そう呼ばれている事がある。」

 手掴みで鶏肉の料理をほうばる、どうや辛味が効いた照り焼きのようである。

「やっぱり、」

 彼女の言葉を聞く為に茶を煽り、半分位残っていた茶を飲み干す。 

 中途半端にした状態で聞くのも何だなと思ったので……。

「父が最近話してました『異世界から面白い奴がやって来た』って色々と……」

ーー俺は話しの種にされてたのか……。

「どんな話をしていた。」

「文句も言わずに、自分の為にならないのに、この街の為に戦ってくれたり、奢る事無く
礼儀正しくて優しいって。それでも厳しい時には特に厳しい所はある……まるで、この砂漠みたいだって。」

ーーあのオッサン、娘に聞かせる話だからと言ってオブラートに包みすぎだろ。

「……あ、でも、希に勝手にやりすぎなのが、たまに傷って言ってました。」

まぁ……ねぇ。
勝手に捕らえたスピリット犯ってりゃ世話ないね~


 街の喧騒を耳にしながら、互いにミライド湖に写る月の輝きを見ていた(尤も、ユーノラには見えてないのだが……)。

「いい香だな。気分が落ち着く」


「え、」

「ユーノラから香ってきている。」


 ふと、何気なく、そう言うとユーノラは顔を赤くしつつ自分の肩や掌を軽く嗅ぐ。

「すんすん……あぁ…*ネイレーン*シナニィですね。」

「俺の居た世界の…バラって花の香に良く似ているな。」

 軽く納得気味に頷いた横で、ユーノラは更に頬を染める。



 また話を続ける。


「……そういえば…俺ってそんなに雰囲気が不思議か?」

「あ、…はい、他の人とは一線を越えていますよ。」

「おぉ~ぅ~」

「例えるなら~、大きい光と真っ黒な闇が対峙している場所みたいな感じです。」

なぬッ!?
まぁまぁ!!

「そう考えると、父と同じ見方になりますね。エトランジェさん、砂漠みたいですよ。」

「……複雑だな……」

「くすくす。」

「それにしても、ユーノラは感覚が研ぎ澄まされているな。中々身に付くものではないから流石だ。」

「ふふっ、これでもとっても頑張ったんですよ。」

 ユーノラは自慢げに胸に手を置き答える。

 その姿から自身というものが満ち溢れていた。

「ほぅ…聞かせてくれないか?」

「いいですよ。」

 そして、それを聞くのは当たり前の事なので興味深く聞く。

「前にも言ったとおり、私は昔……この辺りを襲った流行病で、高熱を煩わせてしまいました。」

 その病がどんな物なのか想像は付かないが、ユーノラの表情からして厄介な物だったと想像できる。

「色々と苦しんでたのを今でも覚えています。そして、熱が引いて、峠を越したと思ったその時には……
……目が見えなくなっていました。」

「目が見えるって、とっても強い刺激だったんですよ。目が見えてた時にはそれに頼って
気にしませんでしたけど、目が見えなくなると他の感覚が研ぎ澄まされていって」

「それで、一人で歩き回れるまでになったか。」

 ユーノラは頷き、肯定する。

「もっとも、他の人の印象が分かりやすくなるんですよ。」

 人の心拍数、動作、発汗性、吐息、……それ等様々に含めたものを感じて、どう察せれるか…というものだろう。

「嫌な奴居たら大変だったろ。」

「ですね……。」

「なぁユーノラ。怖いと…感じたことは?」

「それはありますけど……怖がって何もしないで居たら、どんどんだめになってしまうので…何事も挑戦しています。
……楽しみたいですから♪」

「どうです? 経験に基く情報を記憶して正解に導ける。それが、今まで頑張った私が、身に付けた力です。」

 眩しい。

 世の中に正しいモノなんて、自分と神(アラー)以外ないのだが……今それに、もう一つ追加された。

「……そうか。」

 ふと、俺はユーノラに何かしてあげたいと思った。

 少し前に言った通り、同情しているつもりは無い。

 …まぁ例えるならば……例える必要も無いだろう。ただの気紛れという奴だ。

手篭めにしようとしているに一票。
……何も考え無しと言うのも…。


ーーコイツ等……。

 兎にも角にも、どうにかしよう……。

ーー“所縁”……お前の力に“癒し”ってあったよな。

はい、ありますよ~。

ーーそれで、治すってもどれ位のことが出来るんだ。

そうですね……診れて、繋げられて、塞げて…。

ーー大体は出来るという事か……

えぇ…まぁ。

 それなら……………



ーー所縁。

何です?

ーーこの世界で、導きってどう言うんだ?

リレイランス って言います。

ーー……それなら。

「いい言葉を教えてあげる。」

 やろうとする事を頭の中で組上げると、ユーノラに語りかける。

「いい言葉ですか?」

……?
??


 俺のやろうとする事は“強欲”“所縁”も、大体だが予測は付いてはいるのだが、今のサハドの行動は予測がつかない。

「あぁスリーレだ………*ワ、リレイランス、アラーセィン……」

「アッラーってどう言う意味ですか?」

 ユーノラが質問してくる。

 無理も無い、“コチラ”の世界にはアッラーという言葉の単語はないのだから。

  少々、不快感を募らせたが……


「俺の住んでた世界の唯一の神さ、どんな苦境だろうと、教えを導いて下さる。どこぞの十字架のペテン師や、
パンチパーマの放任主義の邪神より立派な神様さ。」

「後は、アッラーフ・アクバルかな…この世界の言葉じゃないが確実だ。」

「……神様…か…この世界にはいないでしょうね。」

 どうやら、人生に嘆いて、神を信じる事も叶わないのだろう……

ーーやはり……


………。

ーー“所縁”も何かしたいと、思ったね。もし手段があるなら教えてくれ。多少の犠牲は承知で。

…おい、…ちょっ…おま……

あります。彼女の眼の神経を新たに創り上げ、繋げます。


ーー良かった。偶には手出ししないで単純に人に好かれたかったんだ。

それでは、手を貸してあげましょう♪

チッ、気紛れかよ……


「そうかもな。」

 彼女は俺の相槌に塞込んでしまう。

「……だがな、アラーは慈悲深い。必死になって願ってみな。」

「………」

「騙されないと思って、やってみな。」

「ワ、リレイランス、アッラーセィン………クフォーイス」

「いいだろう。」

 彼女は驚き慌ててサハドの方を振り向く。

「アラーは君の願いに答えて、俺を遣わしたみたいだ。」

「え!?」

「一晩、寝所を共にさせて貰うよ。閉じた眼を治すのは時間が掛かるんだ。」

 まだ、困惑しているユーノラを落ち着かせる為に、頭を撫で、微笑みながら口を開いた。

「君の眼を治してあげる。」






 奇跡はそこにありました。








あとがき
やったぁぁぁぁぁ~~~~~データーが生きていた~~~~!!!」と、
帰ってきたPCをこの手に抱きながら、涙に震えるぬへです
*(参考映像、PCの前で発狂して喜ぶ、某盟主を想像してください)*

いやぁ~修理期間中は、「こんなポンコツ作るお前等、東○の怠慢なんだぞ!!」と怒り狂っていましたよ。
*(参考映像、艦橋の端末を使って激怒している、某盟主を想像してください)*

とまぁ、GW前更新に間に合わなかったんですが気にしません。
とりあえず一週間故障しないことを切に願っておくとします……それでは~~。


今話製作終了日、4月28日 容量96KB

単語紹介

*ネイレーン 香りっていう言葉の意味、臭いor匂いとは意味が違うのかは不明?

*シナニィ バラの香りに似た香草 今回はその草を特殊な方法で炒ってそれを
磨り潰した物に液体と調合してエッセンスにした物として登場させた。
 話として、ユーノラの部屋の香水として使用してたのが、身体に付いてたという事に
してある。

*ワ、リレイランス、アッラーセィン
 アッラー(神)の導きを…というの意味、聖ヨト語の言葉で使用、多分こんな読み方ですよね?



人物紹介、

メティス・ブラックスピリット CV:海原 エレナ

通り名 闇夜の遮光

容姿
 黒色の髪に黒色の瞳と、点綴的なブラックスピリット
スポーツカットの髪型、ウイングハイロウの色は白。

身長:165
体重:42
B、87W59、H88



備考
 サーギオス帝国軍、妖精騎士団所属、第2部隊隊長。
精神が神剣に飲み込まれて無機質になってしまうスピリット達の中で、彼女は
精神を飲み込まれる事なく、その実力で今の立場を築きあげていた。
 実力と名も共に帝国ではウルカよりも上だったが、サハドに敗北した事が、
後々の彼女の転落人生の始まりである。

……デ○ルサター……ごめんなさい。



ルーファ・レッドスピリット、

役職ってか…立場?
【サハドの所有物】

容姿
 髪型はショートカットの点綴的レッドスピリット
身長:140cm
体重:34Kg
B67、W55、H70


備考 前々回、デオドガン部隊の砲撃を生き残ったレッドスピリットの少女(見た目年齢1○歳)。
元、マロリガン共和国のスピリットだが、サハドに精神操作をされてしまい、
所有物である事をこの上ない悦びに感じており、サハドに見限られる時は死んだも同然と認識しサハドに仕える。
後に出切るロリっ娘三人娘(三バカ)の一角
対火属性の魔抵抗は群を見張るものがある。




スフェ・ブラックスピリット

役職ってか…立場?
【サハドの戌】

容姿
 黒髪に赤眼というブラック珍しい特徴で、髪型はウェーブの掛かったセミロング。
ウイングハイロウの色は白
身長:142cm
体重:37Kg
B71、W57、H73

備考 前々回、デオドガン部隊の砲撃を生き残り、そこをレネヴァリーに捕らえられた
ブラックスピリットの少女(見た目年齢○0歳)。
元、マロリガン共和国のスピリットだが、特に仲の良かったルーファがサハドの物
となった事が不思議に思い真相を探る為に
他のスピリット達と違って、ルーファとスフェの二人はサハドから貰った首輪を着用している。
これは、所属出身関係無く、サハドの物になった事を証明する証としてある。
抵抗ばかり続け、サハドに絶頂を迎えたくても迎えられないという枷の魔術を施された彼女は
今も、欲望の鎌首と戦っている。
後に出切るロリっ娘三人娘(三バカ)の一角
現在、調教中。