昔、ハイペリア(地球)

ヨルダンとシリアの国境シリア寄り20Kmの地点


 零下の寒さと冷たい風の中、二人の人間が肩を寄せ合い砂の大地を歩いてゆく。

「シリアの国境の中に入った、これで追手も早々来れない。」

 強い風に突然、ターバンがほどけ黒い髪が砂の大地に露出した。

 そしてそれにより顔の部分を覆っていたターバンは風によって後方に飛ばされる。

「・・・ん・・・ん・・・の・・・か」

 疲労によるものなのか言葉がうまく発しられていないが、何とか聞こえた。

 「日本人なのか?」と、

 青年の顔立ちを見ての事だろう、だが・・・青年はにやけ顔で。

知らん。自分が日本人とは自覚してないよ。日本語は喋れるけどね、“スシ”“テンプラ”“ノーパンシャブシャブ”って・・・・・・」

「・・・・・・か・・・」

 遂には分からなくなってしまったので、

「もういい・・・喋るな、日本のカメラ屋、逃がしてやるんだから。」

 Akを片手に男を背負いながらも砂の大地を一歩一歩進む。

「・・・・・・・・・う」

 “ありがとう”そう聞こえた気がした。

「ふッッ!!」

 男の感謝の言葉に笑みを浮かべる。



そんな彼が見上げた空は十六夜の月。


 その月明かりは、幻想的に空から彼等を優しく照らしていた。





永遠のアセリア

ラスフォルト



序章、非日常の日々




願望・・・
求めること・・・それはちからとなる。

善き願いでも、悪しき求めでも。

制約・・・
誓うこと・・・それは力を呼ぶ。

そんな誓いでも、それが純粋な想いならば。

織物・・・
時と運命と想いが紡がれた・・・

織り込まれて物語をかたち作っていく。

略奪・・・
強欲であること・・・それはちからそのもの
他者を蹴落としてまで、生に執着するためのこと。






現代、ハイペリア(地球)



 朝日が差し込み鳥がさえずりあう爽やかな朝。

『~♪~♪』

 爽快な音楽が部屋の中にいきなり流れ始めた。

『~♪~♪(笛の音)』

 その音楽の音源はベットの横の充電器の上で鳴っていた。

『むら・・・・・・

 歌が流れようとしたその瞬間、音は止められてしまう。

 布団からシャッッっととび出た手により・・・。

「ふぁぁかぁぁぁ」

 あくびをしながら布団から出ると、洗面所に向かい顔を洗ったり、洗面台に置いてあったバタフライ(ナイフ)で髭を剃る。

 彼はそのまま祈りも済ませ、数分で着替えを済ませると家を出た。



 家を出たら戸締りをしアパートの階段を足音を立てずに駆け下りる。

 え、朝食? 朝食は栄養ドリンクと固形食料なので、通学しながらでも済ませられるってえ寸法だ。

 俺は、誰に聞かれたかも分からない質問に答え、朝食を頬張る、

ふぁぇふぁぇ、ホフホフいふぃまふぅか(さてさて、ボチボチ行きますか。)

 腕時計の表示は“07:15”それを確認し、いつもの時間だと言う事を納得すると自転車に跨り目的地に向かって疾走する。



 ちなみに俺の名はサハド・・・・・・木崎佐杷(きさき さは)  色々と込み入った事情を抱える帰国子女の高校三年生だ。



十分後

 目的地の裏門に到着し、制服の襟を正しながら支給された鍵を使い中に入る。

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「おはよう御座います。瞬お坊ちゃま」

 依頼人の一人に何時も通りに挨拶をする。

「あぁ・・・お前か、いつも通りだな。」

 目の前に居る少年の名は秋月 瞬、俺の依頼人の嫡子、俺の依頼の護衛対象である。

「無駄話もアレですのでさっさと参りましょう。」

 俺がこの国に永住して職を受け始めた仕事の頃からの縁で、瞬とは結構長い付き合いになっている。

「僕に指図するな。」

 知らない人間から見れば、高慢で人を見下しがちに見る様なエリート思想の最低野朗にも見えるが。

「これは失礼。」

 海原千山の修羅場を潜って嫌って程、人を見てきた俺からしてみれば、瞬はカワイイものである。

 回りから・・・・・・・・・こんな事を露見しなくてもいいだろう。

 彼の事情を語るのもアレなんで簡単に、見も蓋も無く言ってしまえば、この子は普段からギスギスしているけど
本当は心の優しい子なんです、のタイプの奴だ。

ーーこれで美女だったら、ナイスツンデレなんだがな・・・。

「調子のいい奴め。」

 瞬と連れ立って屋敷を出ようとした、その時。

「佐杷さん。」

 一人の使用人に呼び止められる。

 何の用かと振り向えってみれば、そこには包みに包まれた物を手渡ししてきた。

「お、お昼のぉお、お弁当を作りましたので、召し上がっつぇ下さい」

 声が上がって変になっている。

 まぁ…、受け取らないのもアレなので頂くことにした。

「ありがとう、美味しく頂きますよ。」

 鞄の中に丁寧に入れると微笑んでその場を後にする、相手は顔を赤らめている事は言うまでも無いだろう

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 屋敷から学校まで、二人は徒歩で通っていた。

「佐杷・・・お前は、よくよく人に好かれているな、」

 瞬ちゃんが登校途中に、ふと口を開いた。

 先程の事と俺の対人関係についての事だろう、まぁ・・・・・・先程の事が切欠だろう。

 そんな問い掛けにあっさりと答える。

「射精・・・・・・処世術だよ。瞬ちゃんもさ、愛想良くしていたら結構うまく行くと思うよ。」

「僕には、佳織だけが居ればいいのさ。」

「その佳織ちゃんにも上手く使えば応用は可能ですけど。」

 佐杷が佳織ちゃんと言ったと同時に瞬の態度が一変する。

「佐杷!!、馴れ馴れしく佳織の名前を呼ぶな。」

 瞬ちゃんにとってどうもふれちゃぁいけない所だが、あしらい方を知っているので平然と俺は答えた。

「いやいや、論点はそこじゃないから。ついでに苗字で言ってたら余計なのが一人出て来ることになるし。」

「・・・・・・クッ」

「まぁ・・・ぶっちゃけ話、コレくれた人の名前を知らないんですけどね。」

 弁当の入った箱を右手で持ち、先程、お弁当箱を手渡したメイドの顔を浮かべる。

「ふんっ・・・僕にとってはどうでもいいけどね。」

「まぁ・・・たかだか2.3回程度、肌を重ねた程度で覚えられる訳、無いんだけどね。」

 そんな調子で瞬ちゃんと話して、気付いてみれば学校の校門前まで来ていた。

「そんじゃぁ~…瞬ちゃん、また後で~」

 屋敷の中では業務上、瞬お坊ちゃまと呼ぶが、半ば私用となる、学校や外では瞬ちゃんと呼んでいる。

「あぁ…さっさと行けよ!!」

 瞬ちゃんと別れた後、靴を履き替え教室に向かう。

「おはようございます。」

「おはよ~」


 挨拶をされては返し、

「先輩、おはよう御座います。」

「あぁ…おはよう。」

 入った時から、女子生徒に挨拶されまくっているという事には気にしないで…。

「木崎さん、おはよう」

「おはよう御座います。」

 正直な話、実年齢21の男が、18と年齢偽って学校に通うのにもいい加減飽き飽きしてきた。

「せんぱぁ~~い、こんなに早く先輩に逢えるなんて。美保かんげきですぅぅ」

「ハハッッ、おはよう、美保ちゃん」

 そこらへんの事情は多くは語らない、………だって………面倒臭いんだもん。

「あぁ~ん、もっと一緒に居たいですよ~」

「ハハッ、その前に授業があるからそれは出来ないんだよね。」

「う~ん、残念ですけど。先輩、また後で~」


 兎も角、大人の事情って奴だ。

「走ったら危ないよ~」

 教室の中に入ればまた、同じ様に挨拶をしてくる。

「木崎さん、おはよう」


「さはよ~(佐杷おはようの意味。)」

「おはようございます。」

 席に座ると鞄を開け今日の授業を確認する。

「あ…ッッ!!」

 最悪だ……よりによって古典と現国がありやがる。

ーーあぁ…我が神(アッラー)よ、イシュラーにしてはちと厳しくありません?


 しかも小テストであった。



昼休み

 チャイムの音が鳴り、生徒達が各自、各々に様々な行動をとる中、佐杷は朝に貰った弁当の
クロワッサンサンドに手を付けていた。

ーー豚肉が出てこないのは、嬉しい配慮だ。

 クラスの女子と他愛の無い話をしていると、

「し、失礼しま~す。」

 下級生の女子が勢いよく入ってきた。

「佐杷先輩~!! たいへんですぅぅ」

「…ングッッ……どうした!!」

 頬張っていたものを慌てて飲み込むと慌ててきた彼女に対応する。

「私の教室前で、あの高嶺兄と秋月さんが……」

 その文章だけで説明は充分だった。

「わかった。皆さんすみませんが、ちょっと出かけますので後を宜しくお願い致します。」

ーー畜生、後、6つも、残っているんだぞ~

「お勤めご苦労様~」

「頑張って下さい。」

 弁当箱のクロワッサンサンドを名残惜しく見て、クラスの女子の声援をバックに出掛け…

「……あ、そうそう、そのサンドイッチ、お詫び代わりにどうぞ食べてください。折角の手作りなんで。」

 教室を出た時にお弁当の残りの処理を任された女子からの喜声が聞こえた。

ーー俺の手作りじゃないのに………。



 そう言って目的の場所に辿りついた時には何時爆発してもおかしくないくらいに緊張が高まって
いたところであった。

 冷静に状況を見てみると。

 まぁ…碧と、岬がそれを上手く抑えており、瞬ちゃんも言葉で相手を煽っている状況なので、
最悪の事態は避けられそうである。


ーーまぁ、俺の出る幕じゃ無いか……。


 見ているだけで何も係わりを持ちたくないという野次馬から一歩離れた所で、瞬ちゃんを待って
みる事にした。



 高嶺悠人と秋月瞬、彼等の抗争の話はこの学校の周知の事実となっているのは言うまでも無い。


 何時時だろうと、何処だろうと、2人が出会えば即喧嘩と言った仲の悪さ、いつもの事ながら
“よくやる”と佐杷自身いつもそう考えていた。

 尤も原因を探ってみれば喧嘩の原因はとある少女を取り合ったモノであるからしょうも無い事
この上ない。

ーー家族を束縛する必要も、女性を無理矢理手に入れようとする執念もいらんと思うがねぇ~。

 佐杷からしてみれば家族は支えあうものであり、一方的に養おうとする考えはおかしいとしか思えなかった。

 聞いた話だと受けられるべき生活補償とやらを勝手に受けずして育てているのも不思議としか思えない。



 そして、無理矢理手に入れようとする瞬の執着心にも不思議としか思えなかった。

ーー相手の気持ちを考えて身を引いてやるという気は無いのかね。

 事、人関係にしては得るべきして恵まれている佐杷にとってだからこそかもしれないが。

 そうこう考えていると瞬が目の前を通過しようとしていた。

「いよう。瞬ちゃん。」

「悪いが、今はお前とも話す気分じやない。」

 かなり機嫌が悪い様である。

「分った。」

 このような気分の時の瞬ちゃんは厄介かつ他人の聞く耳を持たない、何をしても無駄の状態なのだ。

 だったら・・・・・・関わらなで、置いといた方が得策というものだ。



 その後


 午後の授業を終わらせると俺は、その足で街の繁華街にある雑ビルの一つに入ってゆく

 少々古ぼけた扉を開けると、その部屋・・・事務所の主に声を掛ける。

「“ボス”~“ボス”~・・・・・・居ないのか? ボスケテ~」

「うっせ~なぁ~、居るよ、ったぁく。今、ようやく眠れそうだったのに・・・・・・」

 机の向こう側からにゅっとボサボサ頭の30代男性が出てくる。

「いつもの、受け取られる義務を貰いに来たぞ~」

「んんっ、あぁ・・・“偽イス(偽イスラム教徒の略)”か・・・・・・今出す。」

「俺はちゃんとイスラム教徒だ。」

「女性関係に関しては教義に反してるじゃぁねぇかよ。」

 引き出しを引いてある物を探しているが中々見つからない様で苦戦している。

「・・・・・・・・・;;」

 表情は無表情で平然としているが内心は焦っていた。

「大体、“助手”にまで手を出しているだろ、お前は。」

「・・・・・・そう言えばその“助手”さんは?」

 慌てて話をそらす佐杷。

「実家に帰っている。親戚関係の事情だとか。」

 俺はこの、ちょっとした仕事に勤めており、本名を知られない為なのか分らないが、関係者全員が名前で呼び合うのではなく、ニックネームで呼び合っている、

 例えば、この事務所の所長である彼は、“ボス”と呼ばれ、俺は“イスラム”もしくは“偽イス”と呼ばれている。“助手”と呼ばれている彼女は事務仕事専門のスタッフである女性だ。

 他にも何人か居るがそれは置いておこう。

 考えをやめると同時に目の前にA4サイズの封筒が置かれる。

「ほれ、今月の支払い金額だ。助手が正確に仕上げたものだから間違いなんて無いからな。」

「それは知っていますよ。」

 早い話給料明細を受け取りに来ただけなのだが、さっさと帰らずにボスの反対側で近くのイスに腰掛ける。

「なぁ・・・イスラム。お前さんが、日本人になってどれ位経った?」

「かれこれ5.6年位かな? 義理の父親と母親を得て、勉学と仕事に励んでここまで来れました。」

「そうか・・・」

「そんな特殊な事情の所為で、三つ年上の男が三つ年下の連中と学び舎に通っている変な状況ですけどね。」

「だけど、下手な教育機関で日本語を習ったりするよりかは・・・」

「まだマシ、という訳ですか。」

「あぁ・・・」

 些細な世間話を終えて立ち上がりそのまま帰ろうとした、その時。

「今週は、まだ何も仕事が入っていないんで、引き続きお坊ちゃんの仕事を続けててくれ。」

「はい。」

「それと、“イスラム”。」

「何ですか?」

「お前は日本人なんだから・・・・・・・・・。」

 “ボス”の言葉を止めるように俺は言った。

「いいえ、私はこんな国の人間じゃありませんよ。」

 “ボス”の何か言いたそうな雰囲気に耐えられず、そのまま俺は逃げる様に事務所を出る。


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 暫く経って、繁華街の空気に身を任せていると自然と心が落ち着いてきた。

 俺は、一呼吸して気分を落ち着け、頭を別のチャンネルに切り替える。

ーーそう言えば買い置きの飲み物が切れていたな・・・・・・良し、買いに行くか。



 この時、彼はまだ知らなかった。

 日常的に行ったこの行動が、彼を激動の運命に再び引きずり込むという事に・・・・・・。



次回に続く。



あとがき

皆々様、始めまして、ぬへと申します。

 兎にも角にも、ラスフォルトをご拝見して頂き、実に感謝の言葉も御座いません。
このまま続くかもしれない物語を宜しくお願い足します。

 そして、悠人ファンで悠人視点で物語が続くのが好きな皆様、この物語は秋月 瞬の友人?
である主人公メインの話になってしまうのでお許し下さい。

 そして、少々、ご拝見して頂いているアナタ(貴方or貴女)と、主人公の価値観の違いに
戸惑われたり、疑問に感じてしまう事が起きたり、非常識だと思う事が起るかもしれませんが
ご寛容の程をお願い致します。

以上です。



あ、そうそう、この物語は続きますが、最後に軽く主人公の設定を書いておきます。

【オリジナルキャラクター】

木崎 佐杷 (きさき さは)
本名、サハド・ザジル・ハミード

容姿、
身長175~185cm前後の身長
体格はしっかりしており、身体能力は優秀
髪はボサボサではあるが必要以上に伸ばしていない

備考
 黒髪に黒い瞳、人種的には完全に日本人なのだが、本人曰く、「俺は日本人じゃない。」と、
イスラム圏の人間だと主張。
肌の色は日焼けしていてて黒いのだが、あくまで日本人が日焼けしたという程度でしか黒
くない。
育ちが日本ではないので、日本人の価値観とは大きく違い、佐杷自身が我慢している為、今までこれといった問題は起きていない、が、違うと言う事はそれなりに問題がある。
 そしてその価値観の違いで、最たる事は人の生死の価値観に関して、大分かけ離れているという事であろう。

永遠神剣
 永遠神剣:第?位『??』
彼が持つ予定の永遠神剣は今はまだ紹介しておきません。

それでは今回はここまで。それでは皆様、次回に乞うご期待。