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 In The Dream・・・・・・

「・・・・・・っ、・・・・・・っ、・・・・・・っ!」
 ―――ぼとっ

「あ〜ぁ。 たった三つでそのザマ?」
「う、うるさいっ!」
「別にさ、他のものでもいいじゃない。 あのコにじまんするなら」
「かおりは、これが気にいったって言ってた」
「はいはい。そぉ〜ですか・・・・・・ったく」
「なんだ? 言いたい事があるなら、はっきり言えよ」
「べ〜〜〜つにぃ?」
「なんだよ、そのたいどは!」
「何でもないわよ! うっさいわね!」
「やるかっ!?」
「じょおとぉっ!!」


 ・・・・・・・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・。


「ね、いいかげんに機嫌なおしなさいよ」
「・・・・・・だまれ」
「べつに負けたっていいじゃない。 クラスじゃあんたが一番強いんだし」
「・・・・・・お前のつぎにな」
「む〜〜〜」

「はぁ、やっぱかおりがいなくちゃダメね」
「それだけは同感だ」
「あのコ、いまごろ空の上かぁ。 あ〜、あたしも飛行機のりた〜い」
「ふん、貧乏人め」
「ふんだ。 あぁ、そうだ。 かおりが帰ってきたら、あのコの家に行かない?」
「いやだ」
「・・・・・・なんでよ」
「なんでもだ」

「ひょっとして、あれ? かおりの家に来たあの男の子」
「あぁ・・・・・・あいつ、気にいらない」
「男の『しっと』は見苦しいって、テレビでもいってたわよ」
「そ、そんなんじゃない! あいつは何かが変なんだ! かおりもあいつにおびえてたじゃないか!?」
「ま、な〜んか暗いコだったのはたしかだけどねぇ」
「だろ!?」
「でもそれはほら、なんかワケありだったらしいし? 別に、そんなに神経質になるほどじゃないわよ」
「それでもなぁ・・・・・・!」

「あぁ、もぉ! そんなにぐちるんだったら、本人に言ってやれば良いじゃない!」
「なに?」
「だから! かおりの家に行けば会えるでしょ、その子に?」
「・・・・・・今から、か?」
「バカ。 かおりもいないのに行ったらケンカになるに決まってるじゃない」
「・・・・・・・・・」
「まずはほら、かおりが帰ってきた時のためにとっくんあるのみ。 でしょ?」
「・・・・・・ん」

「あ、でもでも。 これつまんないなら、また探検に行かない?」
「お前、一人でくらに忍び込んでおこられたばっかじゃないか」
「ふん! 『ゆうしゃは、ぐみんのひなんにくっしはしない』のよ!」
「・・・・・・やっぱり、いやだ」
「なんで!? この前だって、けっこう面白そうなもの見つけられたのに!」
「い・や・だ!」
「しゅんのおくびょうもの〜〜〜っ! は?うしろ?うしろがどうしたって・・・・・・」

「・・・・・・じ、じいちゃん? い、いつからそこに居たの?」

「ほ、ほら! あ、あたしたち、とってもしずかに遊んでるのよ!」

「べ、別にまたくらにしのび込みたいなんてことは、まったく・・・・・・」



「え? テレビ?」

「ど、どうしたのよ、じいちゃん。 そんなこわい顔しちゃって」




「ぇ?」




「ひこうきが・・・・・・おちた?」














 永遠のアセリア二次創作            

龍の大地に眠れ

    一章 : 夢幻世界の少女たち

第二話 : 永遠神剣・第五位『追憶』







  首都ラキオス  城門前

 ―――がたん!
 うたた寝をしていた千歳は大きな揺れに、はっと気がついた。
「あ、お姉ちゃん。 おはよ〜!」
 オルファが千歳の顔を覗きこむ。
 千歳は軽くこめかみをほぐして、頭の中のもやもやをぬぐいとった。
 始めて乗った馬車は、以外にも心地よかった。 すこしお尻が痛いが、細かい揺れは長旅の合間に千歳へ心地良い眠りを提供してくれた。
「・・・・・・おはよう、オルファ。 もう、ついたのかしら?」
「うん! さ、お姉ちゃんも降りて、降りて!」
 オルファは千歳の手を引くと、ぴょんと馬車から飛び降りた。 千歳ものろのろとそれに続く。

 タラップを降りた千歳の目に入ったのは、巨大な石造りの門だった。
 首を横に動かしても城壁の終りが見えないことから、この内部はかなりの広さを持った空間である事が容易に知れた。
 その向こうでは何人もの兵士たちが行き来しているのが見える。

「とうちゃ〜〜〜くっ!」

 オルファはわっと両手を広げてみせる。 体一杯で喜びを表現して。
 後から降りてきたヘリオンが御者に何かを渡すと、その男は眉間にしわを寄せて無言で馬車を走らせていった。

「それで、これから、どうする、の?」
 千歳が尋ねると、ヘリオンはあたふたと懐から書簡を取り出してその内容を確認した。
「え、えっと・・・・・・とりあえず、報告を済ませる事が先決ですね」
「報告、ね」
「あ! それ、オルファのお仕事だよ!」
 オルファはそう言ってヘリオンの手から書簡をもぎ取る。ヘリオンは慌てて取り返そうとするが、オルファはその腕をかいくぐり、千歳の腕を取った。
「お姉ちゃん、いっしょに行こ♪ ―――さまに紹介してあげる!」
 そう言うと、オルファはずんずんと城門の中へ入っていく。
 千歳は放って置かれて泣きそうな顔のヘリオンに申し訳ないと頭を下げながら、オルファに引かれるままにされていたのだった。

 あのラースの村でのことは、未だに千歳の頭にこびりついていた。
 目の前の少女が、なんのためらいもなく一人の少女を焼き尽くした瞬間は今でもありありと思い出すことができる。
 それを恐ろしいと思うと同時に、千歳はオルファを責めることなど出来るはずもない事を理解していた。
 あの少女は本気で千歳を殺そうとしていた。 なぜ助かったのかはさっぱり分からないが、あの冷気のような殺意は間違いようも無く本物だった。
 もし、オルファが庇ってくれなければ、千歳は一瞬で串刺しになっていただろう。

 オルファはその小さい体で千歳の事を守ってくれた。
 その事実で少なくとも自分だけは納得しなければならないと千歳は己に言い聞かせ、オルファの手をきゅっと握り返した。


 ※※※


 城内に入った三人は侍女の一人に付き添われて、待合室と思われる一室に通された。
 途中、自分たちを見た兵士たちは、千歳たちのことを避け、あるいはあからさまな侮蔑の表情を隠そうともしなかったことを千歳は苦く思う。
 どうやら今までの諸事情からも見て、この世界ではオルファたちや千歳の地位は限りなく低いものであると考えて間違いないようだ。

 下手な行動を取れば、最悪その場で殺される危険性もある。
 そう考えて、何の力もない自分は極力下手に出たほうがよさそうだと判断した。
 プライドがないわけでもないが、千歳にとっては死と引き換えに出来るほど大したものでもない。

 千歳は壁際に置かれていたいすに座り、ぼんやりとそんな事を考えていた。
 一方のオルファたちは、部屋の中央に置かれたテーブルの上の焼き菓子をほおばっている。
 銀色の皿に山となっていた菓子が半分ほど消えた頃、千歳たちが入ってきたのとは別の扉が開かれた。
「あっ! ―――さま!」
 オルファは口をぬぐって、入室した人物に笑顔を見せた。

 入ってきたのは、白いドレスを着た千歳とそう歳の変わらない少女だった。 墨色の長い髪を自然に流し、頭上には一対の翼を模した金の冠をかぶっている。
 そして穏やかな紫の瞳には、千歳が他の少女たちに覚えたことのない威厳があった。
「任務、ご苦労様でした。 オルファリル・レッドスピリット。ヘリオン・ブラックスピリット」

 少女はオルファに向けて、静かな労りの声をかける。
 二人はそれぞれにっこりと笑い、頭を下げた。 その様子には、今まであってきた人々の持つ偏見はない。
 次に少女は、やや硬い表情ですっと立ち上がった千歳に目を向けた。
「そして、あなたがエトランジェですね」

 ラナ・レナとムスル・レナ、という言葉はあのラースの一件から千歳の脳内で自然にスピリットとエトランジェ、と言う言葉で認識されていた。
 スピリット、は魂、あるいは妖精。 そしてエトランジェとは異邦者、という意味だったと思う。確かに今の自分には相応しい呼び名だろう。

 千歳はそっと少女の前で片手を胸に当て、片膝をつく。 頭を垂れると、オルファたちの戸惑いの声がかすかに聞こえた。
 地球の慣習がどこまで通じるかは疑問だったが、頭を下げるのは目上の者に対する本能的な行動でもある。 それを踏まえて、これがおそらく無難な所だろう と思っていた。
「はい。 私は、そこに居る、オルファたちに、命を救われた、者です。 おそらくは、あなた方が、ハイペリアと呼ぶ、世界から、来ました」

「結構。 立ちなさい」
 少女の許しの言葉を得て、千歳はその場で立ち上がった。 身長差を意識して見下げる事にならなぬよう、少し腰をかがめるのは忘れなかったが。
「そなたの名は?」
「海野千歳、と、申します。 チトセ、とお呼びを」
 敬語の使い方など分からなかったので、声音を極力神妙にした。

「では、チトセ。 あなたは自分のことをどれだけ分かっていますか?」
 少女の言葉は確認を取る、というよりも千歳に何かを教える前振りとして出されたものだった。
「大した事は、何も。 ただここが、私のいた世界ではなく、オルファたち、そしてあなた方に、恩がある。 という事、だけです」
 前半は本音、後半は単なる世辞だったが、少女はそれをきちんと理解しているようだった。

「よろしい、では私の話をよく聞きなさい」
 少女の言葉に千歳は少し居住まいを正す。
「ラースのことはすでに聞きました。 そなたはオルファリルの戦う姿を見ましたね?」
「はい」
 千歳がわずかに頷くと、少女ははっきりと言った。

「あなたには、彼女たちと共に戦ってもらいます」

 その言葉にやはり、と思う自分と冗談じゃない、と叫びたくなる自分を見つけた。
「・・・・・・私に、人を殺せ、と?」

「そうです」
 少女は平然と言い放ったが、一瞬その瞳が揺れたのを千歳は見逃さなかった。
「私の世界では、人殺しを、禁忌として、いました。 私自身、それをなした事は、一度として、ありません。 失礼ながら、不可能である、と、言わせて、頂 きます」
 千歳の言葉にオルファたちがますます戸惑いの顔をしていたが、千歳はそれに目をやる事は無かった。

「今、このラキオスにはそなたの他に、二人のエトランジェがいます」
 少女が告げた言葉は唐突だった。
 自分のほかにも同じ境遇の人間がいる。 それは十分驚愕に値する事実だったが、少女の次の言葉に千歳は悲鳴を上げそうになった。
「その一人の名は、カオリ、と言います。 あなたはよく知っているでしょう?」
「・・・・・・っ」

 ―――カオリ? まさか、佳織がこの世界に?

 千歳は唇をかんだ。 本当に千歳の知る、高嶺佳織がこの世界に居る?
 はったりと見るには状況が状況だった。 知っている、というのも知らない、と言うのも楽だが、千歳はあえて別の言葉を選んだ。

「そのカオリ、と言う人物は、自分と同じ服を着た、ぼさぼさの髪の、感情の激しい、少女で間違いは、ないでしょうか?」

「いいえ。 彼女はそなたのものとはやや違う服を着た、明るい茶色の髪を伸ばした、背の小さい、穏やかな娘です」
 岬今日子の顔を思い浮かべて言った千歳の言葉は、少女によってあえなく否定された。
「・・・・・・ええ、そうでした。 自分の思い違いです。 たしかにそれは、私の知る佳織に、間違いは、ないでしょう」
 少女はわずかに眉を吊り上げると、硬い声で千歳に言う。
「今は不問としますが、私を試すような真似をする事は二度と許しません」

「・・・・・・これは、失礼を」
 千歳は素直に頭を下げる。 そして、あらためてこの少女への警戒を強めた。
「彼女は現在、我が王城にて暮らしております。 彼女の身の安全は、そなたたちの働き次第です」

 ―――つまりは、佳織の命が惜しければ戦え、ということか。

 千歳は沸きあがる暗い衝動を覚えながら、それを暗い笑みにして表へと逃がした。
「しかしながら、何ゆえ、私がカオリを、知っていると?」
「そなたの知る必要はありません」
 少女はぴしゃりと千歳の疑問を跳ねつけると、オルファたちへと顔を向ける。

「オルファリル、あなたは私の寝室の隣の部屋へ行きなさい。 報告は後にそこで聞きましょう。それまでは、カオリと遊んでいなさい」
「は〜〜〜い♪」
 オルファは片手を高く上げると、千歳の所に近づいてきた。
「お姉ちゃんもいっしょに行く?」
「あ・・・・・・」
「いいえ、彼女は他に用があります。 あなた一人でお行きなさい」
 千歳が何かを言う前に、少女はそれをはっきりと制した。こちらは後で、などという言葉も無かった事から、自分には佳織を会わせるつもりはないのだと見て 間違いなさそうだ。

「そっか〜。 ねぇ、お姉ちゃんはそのカオリって子、知ってるんでしょ?どんな子なの?」
「・・・・・・オルファと同じ、優しい、いい子よ」
「いい子?えへへ、オルファも、いい子?」
「ええ・・・・・・そうだ。佳織に会ったら、あの子に、お手玉を、見せてあげると、いいわ。 あの子も昔、得意だった、から」
「ほんと!? うん、わかった!」
 千歳は頭の中で、今の自分が佳織にできることを必死に考えた。
「ね、オルファ。 佳織にあったら、私が『耐えろ、きっと助ける』って、言っていたと、伝えてくれる?」
 佳織に伝えたい言葉を、千歳は簡単に、短く日本語でまとめた。
「えっと、『タエロ・キット・タスケル』? どういう意味?」
 オルファの無邪気な問いかけに、千歳は優しく笑った。
「元気でね、っていう私の世界の言葉。 お願いできる?」
「うん、分かった! じゃあお姉ちゃん、後でね!」
 多分少女だけは千歳の言葉を嘘だと気づいただろうが、何も言わずにオルファが部屋から出て行くのを黙ってみていた。

「では、チトセ。 私についてきなさい。そなたの永遠神剣を謁見の間にて授けます」
 永遠神剣、おそらくオルファたちの持つ武具をさす言葉。 それでこの少女は自分に人殺しをさせようと言うのだ。
 その事に千歳は一瞬だけ激情を少女に向けてしまった。

「くぅ・・・・・・っ!?」

 その途端、千歳の心臓が急に痛んだ。 額には脂汗が浮かび、体温が見る見るうちに下がる。
「チ、チトセ様っ!」
 ヘリオンが慌てて崩れ落ちそうになる千歳の体を支えてくれた。
「っ・・・・・・あ・・・・・・ヘリ、オン?」
「心を落ち着けなさい、チトセ」
 少女の声に、千歳は我に返る。

「エトランジェは王の血に連なる者に逆らう事はできません。 覚えておきなさい」
 冷ややかな少女の言葉を聞きながら、千歳はヘリオンの腕から離れた。
 ―――なるほど、仕掛けは万端ってワケ?
 千歳は息を整えながら苦々しく微笑む。
 少女は千歳の顔色を見、ふいとヘリオンに呼びかける。

「ヘリオン、あなたはここでもうしばらく待っていなさい。 この者の謁見が済んだ後、第一詰め所へ案内させます」
「は、はいっ!」
「では、そなたはこちらへ」
「・・・・・・はい」
 千歳はどっと疲れを感じた体を引きずりながら少女の後に続く。
 ふと、自分は目の前の少女の名前を知らない事に気がついた。
「失礼ながら、あなたのことを、私はなんと、お呼びすれば、よいのでしょうか?」
 また、『知る必要はない』と言われる事を覚悟していたが、少女は以外にも返事を返してくれた。

「私の名は、レスティーナ・ダィ・ラキオス。 レスティーナ殿下、と呼びなさい」
「御意」

 千歳はそう言って、いつか出し抜いてみせるべき少女に向け一際深く頭を下げた。


 ラキオス城  謁見の間

 千歳は巨大な広間に連れてこられていた。
 周囲には取り巻くようにして文官たちらしい制服の男たちがずらりと並んでいる。 その全員が全員、千歳に向けて無遠慮な視線を投げかけていた。
 それを不快に思いながらも、千歳は黙って片膝をつき頭を下げている。

「エトランジェよ、面を上げるがいい」

 その声に、千歳は黙って顔を上げた。
 目の前の階段に連なる玉座には、大量の髭をたくわえた恰幅のいい初老の男が座っていた。 その隣には、千歳を連れて来たレスティーナの顔もある。

「ふむ。 お前は真に、ハイペリアから来た者なのか?」
 王は千歳の顔をじろじろと、舐めるように見た。
 千歳は吐き気すら覚えながらも、感情を含めぬ声を出した。

「私は、この世界の人間では、ありません。 それだけは、たしかな事」
 そして、ひたと王の細い目を見つめ返して言葉を続ける。
「もし、陛下がそのように思われるのならば、きっと、そうなのでしょう」
 へりくだった千歳の物言いに、王はにやりと笑った。
「なるほど。 どうやらお前は、あの狂犬よりそこそこ頭がよいと見える」

 周囲の臣下たちが揃って卑屈な笑い声を漏らした。
 狂犬、というのはおそらく千歳と佳織以外の、もう一人のエトランジェの事だろう。 なんとなく嫌な予感がよぎったが、取り敢えずその疑問を頭の片隅に追 いやる。

「して。 レスティーナから、既にお前たちの役割は聞いておろうな」
「はい」
「では、お前は我がラキオスの為に剣を振るうか?」

 本音は『佳織を人質に捕っておいてなにをほざく、この古狸!』と罵りながらも、千歳は自慢のポーカーフェイスで平然と言った。
「・・・・・・無論。 聞けば陛下は、私の友人である、佳織を保護して、下さっていると。 彼女の恩人は、私の恩人。私にできる、ことならば、いかように も、御命令くださいませ」

 周囲の文官たちから、どよめきが起こった。
 勘のいいものならば、千歳が遠まわしな非難をしている時についたのであろう。 しかし、その声音から見て彼らは千年の言葉を鵜呑みにしているようだっ た。
「なかなか、見上げた心がけじゃ。 良いじゃろう・・・・・・レスティーナ!」
 王の声に一つ頷いて、レスティーナが声をあげる。
「はい、父様・・・・・・。 この者の永遠神剣をここに!」

 背後から進み出てきた男たちが、千歳の目の前に台座を運んできた。
 それに置かれていたのは千歳の予想通り、間違いも無く剣だった。

 それは、柄、鍔、そして鞘、そのすべてが漆黒に染まった両刃剣だった。
 その鍔は分厚く、鞘と一体となったような形をし、装飾品もかくやというような見事な彫刻がなされていた。 三つ、埋め込まれた乳白色の宝玉が美しい煌め きを放っている。
 そして千歳は剣の美しさに心奪われるよりも、その剣に不思議な懐かしさを抱いた。

 ―――これって・・・・・・デジャ・ビュ?

「何をしている? 永遠神剣を取るがよい、エトランジェよ」
 しばし目の前の剣に見ほれていた千歳に、王の声がかかる。 千歳は唇をきゅっと引き締めると、台座の上の剣を手に取った。
「これは・・・・・・!」
 その瞬間、千歳の脳裏に始めてこの世界で見た始まりの風景がフラッシュバックする。


 ―――ふと、利き腕でもある左腕の感覚を意識すると、自分の指が何かを握っている事に気がついた。 ぶ厚く、またすべらかな感触、しっくりと手に馴染む 重さ。 そんな印象を抱かせるものだったが、その正体を知ることは出来なかった―――


 今、千歳が手に持っているものの感触は、間違えようも無くこの剣の鞘のものだった。
 あの時は半ば意識が朦朧としていたにも関わらず、断言する事ができる。
「一体、この剣は何なの・・・・・・?」
 そっと柄の表面を撫でると、千歳の掌が暖かく火照った。
 玉座から、やや興奮した王の声が聞こえた。


「さあ・・・・・・伝説に無き『五本目』の神剣の力、見せてみるがよい」


「ヒミカよ!神剣を持ち、これへ!」
 再びレスティーナが口を開いた。
 その言葉に応じて、背後の門から一人の少女が現われる。

 短い髪をわずかに揺らしながら謁見の間に入ってきた少女は、千歳の良く知る制服を着ていた。 その色はオルファと同じ燃えるような赤。髪と、その瞳も同 色だ。
 そして言うまでも無く、彼女の手には剣が握られていた。 形状はオルファと同じ双剣。しかし、彼女の持つそれは先端が尖り、千歳の知るそれよりも大振り だった。

 赤い少女と千歳の周囲から、人々は後方へと下がっていく。 その顔には皆、にやにやとした笑いを貼り付けていた。

「腕試し・・・・・・あるいは見世物、ということね」

 どちらかと言うと後者だろう、と千歳は思った。
 千歳の知る限り、自分と彼女たちスピリットとの間には埋めようのない、絶対的な体力差がある。
「・・・・・・ライオンと戦わされたコロッセウムの奴隷の気持ちが分かるわ」
 千歳はそうぼやきながら振り返り、足を開いて半身になった。

 少女は千歳が構えたのを見ると、十メートルは離れた場所で立ち止まり、双剣を水平に構える。 その表情は硬かったが、それはラースで見た少女のそれとは 違い、むしろ自分のしていることに大きな呵責を覚えているようだった。
 意志の強そうな目をしかめ、緊張した面持ちで少女は千歳に話しかけた。

「エトランジェ様。 わたしはラキオス・スピリット隊、『赤光』のヒミカです。 あなたのお相手をします。 剣を抜いてください」

「・・・・・・手加減してくれると、嬉しいわ」
 冗談交じりで千歳が唇を曲げると、ヒミカはかすかに悲しそうに笑った。
 おそらく千歳がよほど弱いと思われない限り、この場で殺されることはないだろう。 だが、あまりにも彼女に不覚を取ろうものなら、それも怪しい。

 ならば、全力で生き残るまで。

 千歳がゆっくりと剣の柄に手を伸ばす。 それを見たヒミカは双剣を中腰に構えたまま突進して来た。
 その速度は千歳が見ていたスピリットたちの中では遅い方だったが、人間レベルで見れば十二分に脅威に値した。

「はあああああああぁぁぁっ!」

「っ!」

 その気合に応じて、千歳は鞘と柄を掴んで一気に剣を引き抜いた!





 ・・・・・・いや、引き抜こうと、した。

 だが。





「んなっ!?」
 こんな時だと言うのに、思わず間抜けな声を出してしまった。


 ―――ぬっ、抜けないっ!?


 剣は止め金のようなものがまったくないにも関わらず、鍔と鞘とがわずかな隙間も離れることは無かった。
 つい、手元を覗き込んでしまい、あわてて顔を戻した時にはすでに剣が間近まで迫っている。

「ぐっ!」
 千歳はとっさに、鞘と柄を握ったままヒミカの太刀筋に剣を振り下ろした。

 ―――ぎいいぃぃん!
 鈍い音と共に何とかヒミカの剣を受け止める。
 だが同時に、千歳の腕には衝撃で酷い痺れが走った。
 しかし、ヒミカの攻撃は止まらない。 彼女は初撃が受け着られたことを知るとすぐさまその体を反転させ、反対の刃で袈裟懸けに千歳を狙った。

「たぁっ!」
「ちっ!」

 ―――きぃん!

 舌打ちを一つ、そして千歳は痺れる腕を張ってもう一撃をなんとか止めることができた。
 だが攻撃を受けきった瞬間に、千歳はその気の緩みにつけこまれることになってしまう。
 唐突に、ヒミカの姿が視界から消える。それほどまでに深くしゃがみこんだのだと一拍置いて理解した。
 彼女の双剣は大きな弧を描いて千歳のふくらはぎを狙う。 草薙、という千歳が道場で学んだ技によく似ていた。
 千歳は一瞬判断に迷ったが、この世界に来てから強化された自分の身体能力に賭けた。

「はっ!」
 気合一声、千歳はなんと剣を地面に突き立てて、その柄の上で逆立ちを取った。
 一拍置いて、軸となった鞘を強い力で弾き飛ばされる。 その反動を使って空中に一回転した千歳は、そのまま下のヒミカの頭を思い切り蹴り飛ばした。
「あうっ!?」

 ヒミカの悲鳴を耳に、大きくその場を飛び離れた千歳は再び剣の柄に手をかけ、必死になって引っ張る。

「なん、で!ぬけないのよ、これ!?」

 千歳の焦りの言葉は、もはや悲鳴に近い。
 それを見た男たちが面白い見世物だと笑う。

 千歳の心は燃え盛る怒りを、絶対零度の視線に変えた。


 ―――キ・サ・マ・ラ、ダ・マ・レ


 そんな意思を込め、睨み殺すとばかりに殺気を叩きつける千歳に、二人を囲む人々の輪が更に広がる。
 しかし、千歳の持つ剣の鍔と鞘の隙間は一ミリたりとも開くことはない。

 体勢を立て直したヒミカも流石に変に思ったのか、困った顔で玉座脇に立つレスティーナへと顔を向けた。
 レスティーナは頭痛でもするのかこめかみを押さえていたが、ヒミカの視線に気がつくと黙って首を縦に振る。

 ―――キィイィィィン
 耳に覚えがある音と共にヒミカの頭上に光輪が現れ、二つの球となってその周囲に浮かんだ。
 やばい、と千歳は思う。
 理屈は分からないが、あれは間違いなくオルファたちが本気を出した時の姿だ。 奇跡的に補えていた力の差が、また一気に開いてしまったのだ。

 ―――ほんっと。この世界に来てから、随分とよく死に掛けるわね。

 千歳は苦々しくそう思った。 しかし、前二回のピンチを救ってくれたオルファはここにはいない。 そして、千歳の手には自分の力となる力があ る・・・・・・はず。



 ―――私がやらなくちゃ、いけないのよ!



 ―――こんな所で、死ねないんだから・・・・・・っ!



 絶望的な実力差に恐怖で屈しそうになりながらも、千歳は強く念じた。
 自分の手でこの場を切り抜けなくてはならないのだと。

 そして、その意志に、千歳の永遠神剣は反応を示した。


 ―――・・・・・・・・・。―――

「!?」
 千歳は突然感じたおかしな感覚に身震いした。
 まるで動かなかったラジオが、突然電源が入ったような感じだった。

 ―――我が、力・・・・・・契、約・・・・・・―――

「なに?」
 千歳の戸惑いの声に、脳裏に聞こえる声が徐々にはっきりとしだした。

 ―――汝、我が力を、欲する・・・・・・か?―――

「・・・・・・ちから?」
 その声は男性的だったが、色々な声が混じり、まるでしゃがれた老人の声のような響きを持っていた。

 ―――儂は、永遠神剣・第五位『追憶』―――

 ―――契約せし者に、如何に我が力を求めるかを試す者―――

 落ち着いたその声に、千歳は焦っていた心までもが冷静さを取り戻していくのを感じた。
 ちらりと手元の剣に視線を向ける。
「・・・・・・ひょっとして、あなた、この剣?」

 ―――いかにも―――

「そ・・・・・・やっぱり」
 ハードカバーの戦記物を読んでいたら、突然メルヘンな挿絵が飛び出してきたような気分になった。
 そんな不謹慎な千歳の考えを放って、『追憶』はその言葉を重ねる。

 ―――汝は強き願望と誓約を心の内に持つ―――

 ―――それらを己が意志で貫く者こそ、我が主に相応しい―――

 ―――儂を振るい、運命を開くか。 儂を捨て、宿命に散るか―――


―――汝は如何される?―――


「・・・・・・・・・」
 千歳はしばらく沈黙した。
 目の前には再びこちらに迫ろうとするヒミカの姿。
 まったく後はない状況であるにも関わらず、千歳の口は静かに言葉を紡いだ。


「ダメね」


 ―――・・・・・・・・・?―――
 『追憶』の困惑する気配が伝わってきた。

「私が、あなたを、振るんじゃないわ」
 千歳の唇がきゅっと吊り上った。


「私が、私の剣を振る。 認められるのは、それだけよ」


 ―――・・・・・・・・・。―――


 しばしの沈黙が両者の間に流れる。
 と、『追憶』の声が頭の中で爆発した。
 怒ったのかと最初は思ったが、それが大笑であることに気がつくのにさほどの時間は要らなかった。

 ―――見事!その意思や、よし!―――

 ―――汝を我が主と認める―――

 ―――さあ、主殿。 我が力・・・・・・いや、己が力、存分に振るわれよ!―――


 ―――キイイイィィィン!

 千歳の周囲に銀色の粒子が湧き上がった。
 煌めく燐光は千歳の体にまとわり、淡い光芒となって謁見の間をすべて包み込んだ。

「なっ、何が・・・・・・?」
 王の動揺した声が聞こえる。
 レスティーナは驚きに目を見開き、ヒミカは怖れさえはらんだ眼差しで千歳を見ていた。
 しかし、千歳が光の中心から一歩も動かないことに気がつくと、ヒミカは勇気を振り絞って双剣を振りかぶった。
「イッ、ヤアアアアアァァッ!」

 双剣の刃が真っ赤な炎をまとう。
 赤きマナの力。そんな言葉が頭の中によぎった。
 あれを直接受ければ腕が焼き焦げる。知らないはずの知識は、今の千歳にとっては常識だった。

 対処は簡単。
 片腕を前へと突き出し、念じる。
 周囲に飛び交う粒子が、一瞬にして千歳の前方に集結した。

「障壁よ」

 ―――がぎいいいぃぃぃん!

 千歳の言葉に応じて、光は華のように広がってヒミカの一撃を止める。
 正体不明な力に気圧されて、ヒミカはさっと後ろへと飛びのいた。

 その一拍後、花弁が散るように銀色の障壁は跡形も無く消え去ってしまう。 千歳は自分の腕をじっと見た。

「これが、私の力・・・・・・?」

 ―――いかにも―――

 誇らしそうな『追憶』の言葉が聞こえる。
 千歳はぎゅっとその手を握り、『追憶』の鞘を握った。
 全身に力がみなぎっている。今ならば、おそらく全力を出したスピリットにも引けは取らない自信があった。

「いけるかもね・・・・・・これなら」

 二人が離れても、未だ静止の声はかかっていない。 つまり、戦闘はまだ終わっていないと見たほうがよさそうだ。
 千歳は三度目の抜刀の姿勢を見せた。
「一気に決めるわ。 一先ず、剣を抜かせてくれない?」

 千歳の至極当然の言葉に、『追憶』はしばしの沈黙する。
 依然として、千歳の腕はぴくりとも前に進まない。

「・・・・・・なに、どうしたの? はやくしてよ」

 『追憶』は何かを苦悩するかのようなイメージを千歳に送ってきた。


 ―――それは、できん―――


「・・・・・・・・・」


 ―――・・・・・・・・・。―――


「・・・・・・ぁん?」


 ガラの悪い声で、千歳はぎろりと『追憶』を睨みつけた。

「できん、ってなによ?」

 ―――主殿の言葉とあれど。 できん、と言うものはできん―――

「ちょっと、何よそれ。 あんた、私の奴隷なんでしょ?」

 ―――どっ・・・・・・!? 主殿、永遠神剣を何と心得ておるのじゃ!―――

「知らないわよ、そんなの!」

 お互い悲鳴のような叫びの応酬。 内容が凄まじく情けないのが悲しすぎる。
 唯一の救いは、千歳は日本語で文句を言っているので、この場の誰にもその意味を知られないことがくらいのものか。

 ヒミカはじっと攻撃に備えていたが、急に一人漫才を始めた千歳に業を煮やしたのか片腕を千歳に向けて突き出した。

「マナよ、火球となりて敵を焼き払えっ!」

「・・・・・・っ!」
 その腕に、嫌と言うほど見覚えのある炎の形を成していくのを感じ、千歳は馬鹿げた言い争いを中断した。

 ―――どうする!?

 避ける、却下。周囲に被害が広がりかねない。 どれだけヤな奴ばかりでも、見殺しは嫌だった。
 受け止める、却下。 少し位は手加減しているかもしれないが、この歳でローストチキンになるのは嫌。
 結論―――。

 千歳は無言のままに、『追憶』の鞘を垂直に構えた。 意識を集中し、先ほどの障壁を張った感覚を思い出す。
 このおかしな剣は性格こそ抜けているが、自分に仇なすものではない。 そして、先ほどの一撃をしのぐのを手伝ってくれたように、この剣が自分に力を貸す ものであ るということだけは自然と信じることができた。


 ―――そう。 我が力は決して強大ではないが、主殿の願いに必要な力を授けることは可能―――

 『追憶』の言葉を聞きながら、千歳は自分の五感に新たな感覚が加わるのが分かった。

 ―――だがそれを如何に使うかは、主殿しだい―――

 わずかに吹き込む風、千歳を取り巻く人々の脈動、空気中の元素までもが千歳の手に取るように知覚できる。


 ―――己が眼で見極められよ。 己の真に欲するものを!―――


 そして、千歳は感じ取った。 ヒミカの掌に踊る、燃え盛る赤きマナの波動を。

「ファイアボールッ!」

 ヒミカの手から解き放たれ、一直線に火の玉が千歳を焼き尽くそうと迫る。

 まさしくその刹那、『追憶』の切っ先から不可視の糸が無数に宙へと放たれた。
 千歳の視界にのみ映る糸は、床を這い、宙に躍り、蛇の如くうねりながらヒミカの放った炎を絡め取っていく。

「この場に集いしマナへと告げる」

 片言ではない、流暢なこの世界の言葉が千歳の唇から放たれる。
 それに従って千歳の糸に動きを封じられていく炎は、徐々にその理を変質されていった。
 新たなる支配者の声を聞きた猛るマナは、その強制に屈しその主を変える。

「真なる覇者の声を聞き、我が言霊とくだれ」

 ヒミカが目を見開く。 今や、彼女の放った火球は完全に彼女の制御を離れていた。
 千歳は『追憶』を横に振り下ろす。
 そして、声高く魔の言霊に最後の一節を綴った。


「ワードリバースッ!」


 無数の糸と同化した火球はその勢いを強め、軌道を外れて高く宙へと飛び上がっていく。
 そして放物線を描き、千歳の念じた場所へと向かう。 正しく、術を放った状態で動けないヒミカの足元へ。

 ―――ぼうっ!
「きゃあっ!」
 近くに落ちた火球の放つ熱波に、ヒミカは後方へ弾き飛ばされた。 それでも、その手からは未だに双剣が握られている。

 ―――叩き落す!

 千歳は素早く『追憶』の柄を握り、一直線に走り出した。
 足は滑るように、千歳を高速でヒミカへ送り出してくれる。 千歳はかつてない高揚感のままに、『追憶』を振り上げた。
 狙いは一つ、神剣を握るヒミカの利き腕。

「はあああああぁっ!」
 千歳の気合に、レスティーナの叫びが重なった。

「アセリアッ!」


 ―――がきいいいいぃん!


「・・・・・・っ!」
 千歳の振り下ろした『追憶』は、狙いの一歩手前で突如現われた一人の少女に完全に受け止めていた。

 ふわり、と一拍の間をおいて青い髪が風に揺れる。
 千歳が後ろに退くと、少女は油断無くネリーたちの持っていた物と似た大振りの両刃剣を構えた。 かちゃり、と白い鎧が音を立てる。

 ―――この娘、強い・・・・・・!

 『追憶』もまた、目の前の青い少女に警戒を告げていた。
 アクアマリンを思わせる瞳は、感情をうかがわせない無機質な表情と相まって非常に恐ろしく思えた。

「そこまで! 双方、剣をおさめなさい!」

 少女が攻撃に出ようとその重心をわずかに落としたその時、玉座からレスティーナの声がかかった。
 その声にぴくりと肩を揺らすと、青の少女は腰のホルダーに剣を納める。 千歳もそれにならって剣の柄から手をはなし、鍔に近い鞘を片手で握った。
 大したダメージも無かったらしいヒミカも、少女の後ろでよろよろと起き上がっていた。

「いかがでしょう、父様。 この者も間違いなく、永遠神剣に選ばれし者です」
「う・・・・・・む」

 冷静に告げるレスティーナに、王はわずかに呻いてみせた。 その額には汗が伝っている。
「ましてや、始めて握った永遠神剣で神剣魔法を扱うなど前代未聞。 この者の力、必ずやラキオスの役に立つでしょう」
「ああ、それに異論はない・・・・・・が、確かにこの者にも制約はかかっておるのだな?」
「はい。 間違いなく」

 王はぎろりと警戒するように千歳の顔を見た。
「エトランジェよ。 剣の声は聞いたか?」
「・・・・・・はい」
 再び王に膝を突き、千歳は答える。
「その名を、何と言うのだ?」
「永遠神剣・第五位『追憶』。 剣は自らそう申しておりました」
 千歳は意識しなくても、自然に彼らの言葉を聞くことができた。 おそらくは、これも『追憶』のおかげなのだろう。

「これよりそなたは、スピリットたちと共に行動せよ。 委細はそなたの寝所となる、第一詰め所のスピリットに聞くがよい。 アセリア!」
「・・・・・・ん」

 レスティーナの言葉に、青き少女は短く返事をした。
「ヒミカを第二詰め所まで運びなさい」
「―――コク」
 今度は無言で首を縦に振ると、少女はヒミカに肩を貸す。
 千歳は少しヒミカの具合が心配だったが、去っていく彼女らの足取りを見る限りでは別状はなさそうだった。

「そなたも下がりなさい、明日からは訓練に加わるように」

「・・・・・・御意」
 千歳はそう言うと頭を垂れ、極力早く謁見の間を後にする。
 彼女が退室する間、もはや文官たちは誰一人として口を利くことはなかった。


 ※※※


 国王はしばらくの間千歳の背中を見ていたが、やがて大きく息を吐き出した。

「五本目の神剣、か・・・・・・」

 レスティーナはわずかに目を伏せて父王に告げる。
「伝説に伝えられたエトランジェの神剣は、確かに四本。 されば、あの神剣は彼女自身に魅かれて、共にこのラキオスへ導かれたのではないかと」
「ふ・・・・・・いずれにせよ聖ヨトの血の制約がある限り、あのエトランジェもわしの駒となるのみじゃ」
 王は髭の中で笑いをかみ殺していた。

「このラキオスに、神剣を携えた二人のエトランジェが現われた。 これはまさしく、天がこの国こそ覇権を握るにふさわしい国であると認めたと言うことに他 ならん」
「・・・・・・・・・」
 レスティーナはそっと、物憂げな瞳でため息を吐く。 が、己の思想に酔う王はそれに気づくことはない。

「『龍の魂』同盟。 その本来あるべき姿に戻る日も近いか・・・・・・」

 ラキオス王の呟きは虚しく、また泡沫のように広大な広間に消えていった。


 ラキオス  スピリットの館

 その館は、城門の一つに通じる道から外れた森の中にあった。 やや広めの敷地のぽつんと経っていたそれは、ラースにあったスピリットたちの館と同じ印象 を受けた。 千歳は、今ならばなぜこのような場所に彼女たちの屋敷があるのかを理解することができた。

 ここまでの案内をしてくれたヘリオンは、半刻ばかりでどっと疲れた顔をして帰って来た千歳を心配そうに見ている。
「チ、チトセ様。 本当に大丈夫なんですかぁ?」
「・・・・・・ええ。 大したことはないわ」

 ―――なんでか知らないけど、旧友の佳織は人質にとられてて。

 ―――なんでか知らないけど、知らないやつらには間抜けなザマを嘲笑われて。

 ―――なんでか知らないけど、とんでもない駄剣をつかまされただけのことよ・・・・・・!


 ―――主殿。よもや、その『ダケン』というのは、儂のことではあるまいの?―――
「あんた以外のどこに、そんなものがいるっていうの!」
「ひっ、ひぇぇぇぇ!?」

 千歳と『追憶』のボケツッコミは彼女たち以外に聞こえるものもなく、結果千歳は不本意この上ないことに傍目から見ると唐突にプッツンするアブナイ女に なっていた。
「あ、ごめんなさい、へリオン。 これがさっきからうるさく・・・・・・てっ!」
 
 ―――べきっ

 そう言うと、千歳は手ごろな木の幹に『追憶』を打ちつけた。
 痛そうなイメージと、ぶつぶつと抗議する声を強制的にシャットアウトし、千歳は『追憶』が黙るまで黒塗りの鞘を尖った石に何度も殴りつける。
 だがむしろ、ヘリオンの怖がっている視線の方が千歳には痛かった。

「あ、あの、チトセ様の永遠神剣は自我があるほど強力なのですか?」
「え?」
 ヘリオンのおずおずとした声に、千歳は思わず振り返る。
「それはどういう意味?」
「あ、えっと、あの、その・・・・・・」
 しどろもどろになるハリオンに、慌てて千歳は眉間のしわをなおした。
「ごめんなさい、あなたを困らせるつもりはなかったの。 許してくれる?」
「え? あ、は、はい! もちろんですっ!」
 かすかな笑みを見せると、ハリオンもほっとしたようにこくこくと頷いた。

 以後、『追憶』の言葉を強制的に無視した千歳は、何とか無事に館の玄関先までたどり着くことができた。
 へリオンがノッカーに手を伸ばして扉を鳴らすと、奥から誰かが走り来るのが聞こえた。

 ―――がちゃり

 出てきたのは、緑色のメイド服らしい洋装に身を包んだ茶色い髪の少女だった。 歳はハリオンと同じぐらいだろうか、千歳よりは年上に見える。
 落ち着いた翠の双眸が、ヘリオンの姿を見てわずか見開かれた。
「まぁ、ヘリオン! いつ戻っていたのですか?」
「つ、ついさっきです。 あの、王女様にこの方の案内を命じられて・・・・・・」
 そう言って千歳の方を見たヘリオンに続いて、少女の瞳が千歳に向けられた。 少女はにっこりと上品な笑みを浮かべて、千歳に一礼する。

「お初にお目にかかります。 私、ラキオス・スピリット隊のエスペリア・グリ−ンスピリットと申します。 以後、お見知りおき下さいませ」
 礼儀正しいエスペリアに、千歳も挨拶を返す。
「始めまして。 私の名前は海野千歳。 チトセ、と呼んでくれると嬉しいわ。 何でもこの国のエトランジェ、らしいわね」
 最後の一言は皮肉っぽい響き混じりに、肩をすくめてみせた。

 エスペリアはそっと口元に手を当てて困ったような顔をする。
「ではチトセ様、とお呼びしますね。 私の事はどうぞエスペリアとお呼び下さい」
「分かったわ、エスペリアさん」
「いいえ、どうぞ呼び捨てにして下さい! さん、なんて言われたら私、困ってしまいます」
「そう? そんなに言うのなら、そうするわ」
 素直に千歳が頷くと、エスペリアも安心したような顔になった。

「じゃ、じゃあ私、ここで失礼させていただきますっ!」
 突然、ヘリオンはそう言うとすすす、と後ろに下がる。 エスペリアは慌てたようにそれを引き止めた。
「まあ、今日はこちらで休んでいったらどうですか? 第二詰め所も、今は人が少ないでしょう?」
「いえ。ほ、他にも仕事があるんです。 で、ですから、チトセ様。 エスペリア様。 きょ、今日はこれで・・・・・・さようならっ!」

 そう言い残すと、ヘリオンは小動物のようなスピードでさっさと行ってしまった。 断じて先ほどからの千歳の奇行のせいではない・・・・・・と、思いた い。
「・・・・・・行っちゃった」
「・・・・・・はい、行っちゃいましたね」
 困ったように、千歳とエスペリアは顔を見合わせた。
「どうぞ、中にお入りください。 今、お茶をお入れしますから」
「そう? それでは、頂こうかしら」
 千歳は後でそれを凄まじく後悔するとも知らず、エスペリアの誘いにあっさりと乗ってしまった。

 だがそれも無理は無く、今の彼女にはとてもではないがこの館に潜む、ある意味最も苦手な相手の存在を知るよしはなかったのだ。


  スピリットの館  広間

 エスペリアの淹れたお茶は、とてもよい味がした。
 ミントに似た清涼感と、果実の味がしたお茶は、疲労のたまった千歳の体にしみるようにその疲れを癒してくれた。
 千歳がそっと口元からティーカップを下ろすと、給仕のように傍に立っていたエスペリアが控えめに千歳に尋ねる。

「お口に合いましたか?」
「ええ、とってもおいしいわ」
「そうですか。 それはようございました」
「できればもう一杯いただける? ・・・・・・あ、でもその前にエスペリアも座ってくれないかしら。 このままだと、少し落ち着かないもの」
 千歳の言葉に少し目を見開くと、エスペリアは目元を和らげた。
「それは申し訳ありません、チトセ様。 それでは、私も失礼させていただきますね」
 そう言って千歳の隣に座ると、エスペリアはカップに新しいお茶を注いでくれた。 千歳は軽く礼を言ってそれを干すと、やや神妙な顔になってエスペリアの 瞳を見る。

「―――さて、それでは話を聞かせてもらえる?」

 レスティーナはこの屋敷の者に委細を聞けといった。それは正にエスペリアの事なのだろう。
 そして千歳の想像通り、エスペリアはぎゅっと唇をかむんで小さく頷いた。
「・・・・・・かしこまりました。 でも、何からお話しましょう?」
「レスティーナ殿下からは、端的なことしか聞いてないわ。 ・・・・・・そうね。今、私に彼らが何を求めているのか、簡単に説明してくれない?」

 千歳の言葉に、エスペリアはしばし思案する様子を見せる。
「ではまず、チトセ様はこの世界の方ではないことはお分かりですね?」
「ええ、ハイペリアから来たエトランジェ。 そうなんでしょ」
「はい。 この世界では、エトランジェ様は非常に強力な能力を持っていると伝えられているのです」
「・・・・・・ちょっと待ってくれない? 確かに、私はこの世界に来て身体能力が上がっているわ。 けど、それを差し引いてもスピリットのあなたたちの方 が強いと思うのだけど」
 実際、先のヒミカとの腕試しに勝つ事ができたのも、終始彼女が手加減をしてくれたおかげだと断言する事ができた。 最初の一撃は千歳の素手に耐えられる ように力を抜いていたし、最後の魔法にしてもオルファが使ったそれに比べればマッチのようなものだ。

「それは、チトセ様がお会いになられたスピリットたちが皆、永遠神剣を使いこなしていたからでしょう」
 千歳はちらりとテーブルの足に立てかけた『追憶』に目をやった。
「私たちスピリットは生まれた時から永遠神剣を握っています。 失礼ながら、神剣との結びつきはチトセ様よりも強いのです」
「つまり、その永遠神剣との結びつきが強さを左右するという事?」
 エスペリアは千歳の言葉に深く頷いた。

「しかし、エトランジェ様の持つ永遠神剣は私たちのものよりも格段に強力ななものが多いとされています」
 実際の力はどうあれ、その潜在能力は上回っているという事か。
「その力をもって、陛下はチトセ様にラキオスの敵を討てとお考えなのでしょう」
「この国は・・・・・・戦争をしているの?」
 千歳の問いは重かった。 確かに地球でも紛争、抗争などは各地である。 しかし、それを間近に感じたことはなかった。
 エスペリアも沈んだ目をして、それでも首を横に振ってくれた。
「いいえ・・・・・・ですが、今はまだ、という位のものです。 おそらく、近い内に戦乱は必ず起こります」

「・・・・・・・・・」

 千歳はエスペリアから目をそらし、じっと紅茶の水面を見つめる。 コップに添えた手がわずかに振るえ、千歳の悲しみに赤い波紋がゆらめいた。
「話を、続けてもよろしいでしょうか?」
「・・・・・・そうね、お願い」
「現在、ラキオスはマナ限界を間近に迎えています。 新たなマナを得るためにも、敵対国であるバーンライト王国に宣戦布告するでしょう」
「マナ限界?」
 エスペリアの言葉に首をかしげる千歳。 このあたりはラースの館での癖が抜けていない。

「あ、申し訳ありません。 マナ、というのはこの世界のエネルギーです。 空気中のマナをエーテルに変換することで、私たちは便利な生活を営んでおりま す」
「この世界の電力ね」
「デンリョク?」
「あ、なんでもないわ。 話を続けて」
 どうやら、汎言語状態でも知識のない言葉は通訳されないようだ。
「はい。そのマナが、今のラキオスには足りないのです。 今現在は各地でスピリット隊の者たちが奮闘しておりますが、近い折にそれも限界を迎えるでしょ う」
 滅びる前に略奪しろ、という事か。
 実にシンプル。 吐き気がするぐらいに。

 千歳は心境を変える為に、あえてまったく違う話題を出した。
「ところで、あなたたちのことがスピリットと呼ばれていることはラースで知ったわ。 けど、あなたたちは私にとって、見た目は普通の人間とまったく変わら ないように見えるんだけど?」
「そのことなら・・・・・・」
 エスペリアはそっと翡翠色の瞳に指をさした。
「私たちは、人々にはない『色』をもっています。 緑を含め、青、赤、黒の四つの色を持っているので、スピリットであることはだれからでも知ることができ るのです」
 青き色を持つものはブルースピリットと呼ばれ、同様にその色を示す言葉が名前の上に抱かれる事になる。 という事を千歳はエスペリアに教えてもらった。

「それと・・・・・・もし、違ったらごめんなさい。 この世界でエトランジェが軽く見られているのは、何となく分かるわ」
 異端者は何時の時代にも軽視され、迫害された。それは理解できる。
「けれどその私たち以上に、あなたたちスピリットは、人間たちに迫害されているように見えるのだけれど、違う?」
 人々の生活から遠く引き離された住居。 恐れをはらんだ村人の目。侮蔑を隠さない兵士たちの顔。
 そのすべてが、彼女たちの境遇を示唆していた。

 エスペリアはぎゅっと白いエプロンを握りしめ、陰のある目を伏せる。 そして千歳の目を見つめて、柔らかい顔で言った。
「私たちは、人の為に剣を振るいます」
 口元に浮かぶ笑顔は先ほどから変わりなかったが、千歳にはそれが諦めに歪んだ口元を隠しているように見える。
「人々の生活を守るために、マナの塵となるまで戦い続ける。 それが、私たちの使命です」

 マナの塵と消える。
 その言葉に、千歳はラースで見取った少女の最期の姿が浮かんだ。
 一滴の血も残さずに消えた彼女。あの、腕から失われていく喪失感が未だに体が覚えている。

 あんな風になるまで、自分たちを侮蔑する人間の為に命を奪い続ける?

 千歳はエスペリアの言葉がとても悲しかった。
 しかし、そう割り切ってしまうだけのことが彼女にはあったのだろうと思うと、面と向かって非難する事などできなかった。

「・・・・・・ラースの館でね」
 千歳はネリーたちの姿を思った。
「お別れの日、お世話になったお礼に私の世界の遊び道具をあげたの」
 エスペリアは、急に変わった話題に戸惑っているようだ。
「みんな、楽しそうだったわ。 綺麗な笑顔で笑ってて」
 小さく笑って、千歳はエスペリアに言った。

「あんなに綺麗な目をした子たちに戦うだけの運命しかないなんて、きっと悲しいわ」
 エスペリアの目にわずかに光るものが浮かんだ。 しかしそれが流れることなく、すぐにエスペリアはしゃんとした顔で辛そうに微笑んだ。
「そう、思っていただけるだけでも・・・・・・あの子たちは幸せでしょう」
 千歳はそっと冷めてしまったお茶を喉に流し込む。 温度を失ってしまった紅茶は、同じ味なのに酷く苦かった。


「たっ、だいま〜〜〜っ!」

 ―――ばあんっ!


 聞き覚えのある明るい声がして、千歳とエスペリアは廊下を見た。
 上品さを欠いた足音で、広間の前を誰かが走り抜けるのが分かった。

「オルファッ!」
 エスペリアは怒った声を出したが、足音は止まる様子もなくどんどん遠ざかっていく。
「もう・・・・・・あの子ったら! 申し訳ありません、チトセ様。 少々席を外させていただきますね」
「いいえ、私も行くわ。 あの子には少し聞きたいことがあるから」
 そっと笑いをかみ殺して、千歳はエスペリアに続いて席を立った。 オルファの話を聞けば、城にいるのが佳織か否かの信憑性も明らかになるだろう。
 二人が廊下に出ると、どこかのドアが閉まる音が聞こえる。

「どこに行ったんだと思う?」
「おそらく、浴場でしょう・・・・・・はぁ、あの子ももう少し落ち着きを持ってくれればいいのに」
「ふふっ、オルファはオルファらしいほうがいいわ。 あの子のおかげで、私も随分と助けられたもの」
 千歳の言葉に、エスペリアはくすりと笑ってくれた。
「そうかもしれませんね・・・・・・チトセ様も、お風呂に入られますか? 夕食の用意はすぐに整いますので」
「ええ、それなら先に頂こうかしら」
 別世界であっても、すぐに入れる風呂があるというのは良い事だ。 今日一日色々な事がありすぎたから、皆風呂でさっぱりとしてしまう方が良いだろう。

 エスペリアが半開きになっていた扉を開けると、床にばらばらとそこら中に赤いドレスが投げ出されていた。
「ああ、もう! あの子ったら!」
 エスペリアはぷんぷんと腰をかがめてドレスを拾い集める。 千歳もそれを手伝いながら、ラースの館での日々を思いだした。
「そういえば、いつもネリーとどちらが先に湯船に入るのかを競争してたわね」
「本当に、まったく・・・・・・」
 しわしわになってしまったドレスを悲しそうに見て、エスペリアはほうとため息をつく。 そして、きゅっと眉を逆立てると更に奥へ続くドアを開けた。

「オルファッ!」
 エスペリアの声が湯気の中で反響する。
「あ、エスペリアお姉ちゃん! お姉ちゃんも、いっしょに入ろうよ〜〜〜!」
「いいえ、私は後から・・・・・・ぁ!?」
 オルファのまったく反省のない楽しそうな笑い声が聞こえ、千歳もそれを嗜めようとエスペリアの肩越しに浴場を見て・・・・・・凍りついた。


「・・・・・・迂闊だったわ」


 喉の奥の奥から搾り出されるのは、愚かな自分への呪詛。

 ―――既にラキオスには二人のエトランジェがいる。
 ―――その一人は佳織。
 ―――もう一人は『狂犬』。

 少し頭を働かせれば、すぐにでも分かったであろうに。


「・・・・・・なんで。 あんたがここに居るワケ、高嶺?」


 千歳の格別に冷たい声に、腰まで湯船につかっていた佳織の義兄、高嶺悠人の顔色がさっと変わった。
「おま・・・・・・っ、海野!? お、お前こそ、なんでここに・・・・・・」
 あたふたとした驚愕の声。 しかし、しどろもどろの悠人の代わりにかけられた声は、千歳の予想をはるかに超えるものだった。


「ママ〜〜〜♪」


「!?」
「!?」
 すっぽんぽんのオルファが悠人の背中から千歳に手を振る。
 悠人の顎がかくんと落ち、千歳は寄りかかっていた戸口からずり落ちそうになってしまう。

 ―――な、なにが・・・・・・?

 千歳はあの純真なオルファに、このわずかな間に一体何が起こってしまったのか全く理解する事ができなかった。
 ちらりとエスペリアを見るが、湯あたりしたように真っ赤になった彼女は到底援軍がつとまりそうにない。
「ママもいっしょにはいろ〜〜〜」
 オルファの視線の先にあるのが間違いなく自分であるのを確信し、千歳の全思考回路はすべて活動を緊急停止してしまった。

 後に残ったのは。

 馬鹿みたいに口を開けて湯につかる悠人と、戸口でずり落ちかけた間抜けな格好の千歳と、顔を真っ赤に染めたエスペリアと。


「えへへへ〜〜〜っ♪」


 本当に、楽しそうに笑うオルファリルだけであった。





・・・・・・To Be Continued



【ステータス情報】

 海野千歳  永遠神剣:第五位『追憶』    ハイロゥ : −
              クラス:エトランジェ     所属国家:ラキオス王国
         
※アタックスキル※

黒牙一閃の儀T Lv.1  行動:2/最大:6 変動【敵】
対HP効果: 100  属性:物理  アタック.T    T.S.L.16
『追憶』の鞘で敵を 打ち据える。はっきり言ってその威力は低い。


※ディフェンススキル※

オーラフォトンフラワーT Lv.1  行動:2/最大:8  変動【敵】
対HP効果: 300 属性:物理  ディフェンス.T  T.S.L.16
花弁のように組み合 わさった精霊光を前方に展開する。
相手の攻撃を受ける度に、散った精霊光が術者の抵抗力を高める。



※サポートスキル※

ワードリバースT Lv.1  行動:1/最大:4 割込【敵】
対HP効果: 25%   属性: −  インタラプト.T T.S.L. 6
敵のサポートスキル の力を上乗せし、効果範囲を逆転させる特殊スキル。
アンチブルースキルには効果がない。






【後書き】


 これでやっと原作に合流しました。

 それにしても、レスティーナは格好いいキャラクターですが匙加減が難しいですね。 この分だと、はたして大天才様がおとなしく書かせてもらえるかがとて も 心配になってきます。
 今回の主人公のお相手はヒミカでしたが、始めの内は彼女かセリア、もしくはファーレーンの誰かにとても頭を痛めていました。 他の二人には別のイベント をいれやすかったので、最終的にヒミカに決まりましたが。

 オリジナル永遠神剣『追憶』ですが、イメージ的には中国映画『HERO』に出て来る剣ですね。 抜けませんが(汗)。
 余談ですが。作者はあの主人公ウーミン役をしていた俳優さんの出演した映画『ワンス・アポンナ・タイム・イン・チャイナ』のファンでした。 あの凛とし た立ち居振る舞いは見習いたいものです。

 さて、話がそれましたが次回予告です。
 はたしてオルファに何があったのか? 悠人と千歳ははたして互いを仲間と認められるのか?
 そして、複雑な心境の千歳をよそに、スピリット隊に下る所属国家不明のスピリットの討伐令が下る・・・・・・。
 相反する二人のエトランジェを迎えたスピリット隊の命運は、はたしてどうなるのか?

 次回作をお待ちください。



NIL      


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