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    「ああ、またこの夢か」

俺は、暗い意識の中で同じ夢をみる

2度目の両親を亡くした時の夢を・・・。



        バアちゃんの家でそれを聞いた時、僕は理解できなかった、

        いや、理解をしたくなかったんだ。

            「お父さん達が乗っていた飛行機が墜落したって」

        僕はバアちゃんと一緒に病院へと急いだ。

        そこで、冷たくなった義理の両親と会い、看護婦さんから

        重体で手術中の義妹のことを聞いた。

        僕は佳織の居る手術室まで走っていった。何度か転んだが、そんな事はまったく気にならなかった

        「もう、僕をひとりにしないで」

 

永遠戦争 -Eternal war-
序章 第1話

 

 

        本当の両親を亡くした僕を受け入れてくれた家族。家族を失う恐怖が怖かった。

        だから僕は手術室の前の廊下で義妹、佳織の無事をひたすら祈った。




挿絵協力 四宝 紫月 様

 

            「誰でもいい。僕の命と引き換えだっていい。

             なんでもするだから、だから、誰か佳織を助けて。」

            「僕のせいで、みんなが居なくなるのはもういやなんだ。」

              どれだけ同じことを願ったんだろう。

            「・・・ちか・・と・・わ・・の」


        そうあの時に頭に直接響く声が聞こえた気がする

        何を言っていたのか、いまでは幻聴だったのか

        本当に聞こえていたのかさえあやふやだが。

        あの後、祈りが届いたのか義妹の佳織は一命を取り留めた。

        飛行機事故で後遺症も無く助かったことは奇跡といえる。

        しかし、佳織は入院している間、感情をあらわさず、まるで人形のような状態だった。

        両親を亡くしたショックだろうと病院の先生は言っていた。

 

        そして、退院の日。自宅の前

            「あれって高嶺さん家の悠人くんと佳織ちゃん。

             まだ小さいのに両親を亡くしちゃって可哀想に、」

            「そうねぇ、まだ幼いのに」

            「悠人くんもこれで2度目だしねえ。」

            「え、そうなんですの。」

            「ええ、確か、悠人くんって高嶺さんとこに来た養子らしいわよ。

             本当の両親は交通事故死らしいんだけど

             悠人くんは、一緒にいなかったから助かったんだって」

            「へぇー悪運だけは強いんだ。」

 

        3人のおばさん達が好き勝手なことを言っている。

        確かに僕は悪運が強い、その悪運の煽りで周りの人を不幸にするのかな

        僕のせいで、みんな不幸になっていくの?

            「お兄ちゃんの悪口言わないで!」

        事故以来今まで一言もしゃべらなかった佳織が

        怒ってる。今まで、義理の両親が生きている時だって

        人見知りして僕にあまり話し掛けなかった佳織が僕のために怒ってくれた。

            「お兄ちゃん、早く家に入ろう」

            「あ、ああ」

        佳織は勢い良く玄関に駆け込んでいった。

        僕は戸惑いながらも佳織の後についていく。

        だが玄関の入ったところで佳織は立ち止まっていた。

            「佳織、どうした」

            「お兄ちゃん、お母さんやお父さんいなくなっちゃった。

             ・・・ひっく・・・・ひっく・・うっ・・・うわぁぁぁーーーん」

            「佳織」

        家に帰ってきたことで両親を亡くしたことを実感してしまったのだろう。

 

あの時の俺は、どうする事も出来ずにただ見ていた。

何も出来なかったんだ。

そして俺はあの時、泣きじゃくる佳織を見て二度と佳織を悲しませない。と誓ったんだ。


    「・・・ちゃ・・」

ん?

声が聞こえる。

そうだ、いつも夢はここで終わる。

そして、いつも疑問に思う、佳織の無事を祈っていた時に聞こえたあの声はなんだったんだろうか?

やはり、幻聴なのだろうか。それとも・・・・

ばかばかしい、考えても答えなんてでない。それよりも平凡な日常を。

あの時と違って声は聞こえないけれど、俺はそう願った。

 

    「・・ちゃん」

女の子の声

そして身体が揺すられている。

    「お兄ちゃん」

佳織か

もう朝か、まだ眠いな・・・。

    「お兄ちゃん起きてよ。早く起きないと遅刻だよ」

布団の隙間から冷たい空気が入ってくる。

    「お兄ちゃん、もうすぐ今日ちゃんと碧先輩が来るよ。」

ガラッ

佳織が窓を開けている。そこから冷たい空気が入ってくる。 

起きなければならないのだが、俺の身体は、惰眠を貪りたいと要求してくる

本当に寒い。低血圧気味で寝起きが悪いっていうのに、これでは布団から抜け出す気力など湧こうはずもない。

    「佳織、もう少しだけぇー。寒いのは苦手なんだよ」

    「寒いのが苦手なのは知ってるよ。でも時間が無いんだよ」

急いでいるようには聞こえない声で起こしてくれるのが義妹の佳織。

茶色のロングヘヤーにまんまるメガネ。少し大人し過ぎる気もするが

大事な義妹だ。

ピンポーン、

    「あ、今日ちゃん達来たよ。早く起きてよ」

佳織が布団をポンポンと叩く。

そのたたき具合が心地よくさらに眠気が強くなる

    「うぅーもう少し、もう少しだけ」

    「ダメだよ。起きてよー。」

睡眠の欲望と起きなければならないという理性が戦うが

今日は、睡眠の欲望の方が強いようだ。

ピンポーン

    「あ、はーい。すぐ、行きまーす。

     お兄ちゃんちゃんと起きてね」

バタ、バタ、バタ


静かになった。学校行くまであと少しぐらい時間はあるだろう。

たぶん、

    「きょ、今日ちゃん! いまお兄ちゃん起きるところなの

     だから大丈夫だよ?ホントに大丈夫だよ〜」

    「んなわけないでしょ〜!

     もう佳織ちゃんってば悠なんて庇う必要ないの!」

    「ガツーンとやらないと起きないんだから。あのネボスケは」

 



    「・・・うるさい」

今、何時だろう。

眠たい目を少し開けて携帯電話の時間を見る。

・・・・8時10分っ ってまずい、マジで起きなければ。

時間を見て眠気が吹っ飛び、急いでベッドから起き上がりすばやくパジャマを脱ぐ。

    「さってと、バッシ〜ッと叩き起こさないとね!」

ガチャッ

    「悠、おっは・・・・・・よ・・・・・。」

    「えっ」

いきなりドアが開かれた。ちなみに俺はトランクス一枚。

    「きゃーーーーーーー、悠のヘンタイぃぃーーー」

ご自慢のハリセンの一撃! 今日子は普通の男よりも力があるためハリセンといえどもかなりの威力。

俺の意識を奪うには十分すぎる一撃だった。

    「きゅーー」

バタッ

・・・・・

・・・

・・




(続く)


皆さん、おひさしぶりです。管理人の七野珀翠です。友人の紫月さんの協力の下、再び永遠のアセリアのSSに挑戦したいと思います。
前回のSSは、永遠のアセリア本編が色濃く残っていましたが、今回は私の想像(妄想)を前面に出して作成していこうと考えておりますので、色々とツッコミどころがあるかもしれませんが、ご了承ください。
更新は気長に待っていただけると嬉しいです。また、感想などもお待ちしております。

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