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第一話〜召喚〜

 

 

???

洞窟内

 

ピチョン

「うっ……」

うつ伏せに倒れていた少年の手に水滴が落ちる。

それで気付いたのか、少年――明人が起き上がる。

「ここは…洞窟…?」

辺りを見回すと、なにも舗装されていない、自然に出来た洞窟だとわかる。

「ん…?」

背後から黒い光が差し込んできた。後ろをふり向くと…。

「な!?」

そこには闇のように黒い巨大な龍が鎮座していた。

「“目が覚めたようだな”」

「え…?」

龍が口を開くが、その言葉は明人にとって聞き慣れない言葉だった。

「“ふむ…”」

龍の頭が少し動く。そして、目線は明人の傍らにいつの間にかある、装飾の施された槍に注がれていた。

「この槍、いつの間に…。これがどうか……!?」

そう言いながら槍を手に持つと、体の調子が良くなった。

良くなったどころの話ではない。それまで出せなかった力が出せるような感覚に陥った。

「!?何だ、この槍!?」

同時に気づく。咄嗟に喋った言葉が別の言語になっていた。

「それは永遠神剣と呼ばれる自我を持つ剣。」

「永遠神剣……」

龍の言葉を繰り返しながら立ち上がる。

龍の言葉を自然に理解できるようになったが、その事を気にしていなかった。

「ん?剣といわれても、これは槍…」

「剣と呼ばれているが、あくまで総称に過ぎん。」

《つうわけで、あんまり気にしないで頂戴♪》

「はぁ?」

今度は槍の方から声が聞こえてきた。

《あたしは永遠神剣第四位『希望』。あんたは?》

「俺は隆宮明人…えっと…?」

おそるおそると龍の方を向く。

「我が名はクロウズシオン、この地の門番なり。異界の小さき者、アキトよ」

「では、クロウズシオン殿。なぜ俺がここに?」

「覚えておらぬか?汝は中立の永遠者の手により、この地へ運ばれたのだ」

「中立の……永遠者……?」

首を傾げる明人。

《確か…ミナギって子だったかな?あたし、あの子に頼まれてあんたの所に来たんだ。》

「それって、あの時の?」

《うーん。わかんないけど、多分》

「あの娘、我が護る門を無理やり抉じ開け、汝を送り込みおったわ。」

そういって愉快そうに笑うクロウズシオン。

それがどれほど凄い事か、大よそ理解できたのか、明人も苦笑を浮かべる。

「ところで、永遠者とは?」

「いまの汝には詮無き事よ」

即答で返ってきた。

この時のクロウズシオンの目は鋭かった。まるで追求を許さないと言わんが如くに…

その後、明人はこの世界について、話を聞いた。

この世界で戦乱が巻き起ころうとしている事。

異世界から来るエトランジェと呼ばれる者たちのこと

戦乱の中心にある四神剣と呼ばれる四つの神剣とその契約者の事。

自分がイレギュラーなる存在だという事。

神剣と共に現れるスピリットという戦闘種族の事。

そして、永遠神剣という存在の事。

「さて、アキトよ。もう夜が深い。今はこの地で眠るが良い。」

一通り話し終えたからか、それ以上話す事が無いようにいう。

《うん、それがいいね》

クロウズシオンの言葉に賛成する『希望』

「よろしいのですか?」

「明日より汝も運命の歯車となる。ならば、英気を養うが必然であろう?」

《ほら、こう言ってんだから、遠慮する事ないよ!》

「第四位『希望』よ、契約は良いのか」

《あ”》

『希望』が絶句する

「契約?ああ、さっきの話にあった…」

《うーん、どうする?明日にする?》

「いや、今やっておこう。そんなに時間が掛かるわけじゃないだろ?」

《わかった。それじゃあ、意識をあたしに集中して。》

明人は『希望』を水平にして、両手の平と親指ではさむ様に構え、目を瞑る。

そして、言われたとおり、自分の意識を『希望』に集中させる。

すると、『希望』から、何かが流れ込んでくる。

それは精神…心のようなものに感じた。

キイィーン

しばらくして、甲高い音とともに、周囲の気配はもとより、各色のマナもより強く感じられるようになった。

《はい、終了〜!》

「凄いなこれは…。向こうに居た時とは比べ物にならない…」

それほどまでの力が漲っている。

「確かに、これではなぁ…」

普通の人がスピリットやエトランジェを恐れるのも判る。

《あ、そうそう》

「ん?」

《この世界での文字は自分で学んでね。 あたしらはそこまで万能じゃないから》

「わかった。 勉学は好きだから、構わないよ。

それじゃ、寝ようか」

《うん!》

 

 

翌日

目を覚ますとそこは見慣れない洞窟だった。

「ああ……そうか…」

明人は昨日のことを思い出す。

辺りを見回すが、クロウズシオンの姿が見えなかった。

「クロウズシオン殿、ありがとうございました」

明人はそう言って頭を下げた後、外へ出て行った。

すると、漆黒のローブを羽織った青年が洞窟の奥から出てくる。

「異界の小さき者、アキト。思念の力を持つものよ

汝の未来に幸あれ」

青年の声はクロウズシオンのものだった。

 

「さて、どこへ行く?」

晴れやかな空の下、明人は『希望』に聞く。

《真っ先の四神剣に会いたかったらラキオスだね》

「だけど、俺はあまりいいように扱われたくはないな」

《じゃあ、イースペリアかな? あそこの女王はいい人だよ

スピリットに理解があるし》

「そうか、じゃあ近場だからイースペリアに向かおう」

《オッケー!》

行き先を決めた明人はその方向へ歩いていく。

悠人が召喚されてから約二ヶ月。

リクディウムの魔龍、門番サードガラハムが討たれてから二日後のことだった。

 

 

 

 

 

あとがき

 

どうも、菜雲敬です。

第一話です。魔龍の一体が登場しました。

原作にも登場していますので、知っている人は知っているでしょう。

次はイースペリアに入ります。

他の方のSSを読むと、実は結構多いんですよね、イースペリア行きのオリジナルキャラ(汗)。

他の方々に習って、という訳ではありませんが明人もイースペリアに向かいます。

それでは、また次回に。

 

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