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 プロローグ

 

???

 

 

扉しかない、コンクーリートで出来た広い室内。そこは火の手が上がっていた。火を放っているのは機械のようなガラクタ。

そして、一人の少年が壁際に座り込み、俯いていた。

爆音が響く。少年に炎が迫る。

だが、炎は少年を避けるかのように分かれた。

「ねえ、なんでそんなに悲しそうなの?」

少年は顔を上げる。そこには碧の長い髪をした、自分同じくらいのと少女が立っていた。

少年の顔を見た少女は、やるせない顔をする。

「なんで…そんな綺麗な目をしながら、泣いてるの…?」

興味が失せたように再び俯く。

「守りたいものが…無くなった…」

少年の口から搾り出すような声が出る。

「俺が…守らなきゃいけなかったのに、全部消えた…」

そこまで言って少年が頭を振る。

「ちがう…おれが…けした…。まもらなきゃ、いけないもの…全部」

「自分の…手…で?」

こくんと、少年が頷く。

「そうしなきゃいけないって、わかってた…でも」

「それじゃぁ…」

少女が少年の言葉を遮る

「もう一度、守りたいものを作ってみない?」

「え…?」

その言葉に少年は驚き、顔を上げ、少女を見る。

少女は微笑む。

「だから、もう一度さ、守りたいもの、作ってみない?」

「無理だよ…そんなの…」

そう言って自分の手を見る。その手は血で濡れていた。

手だけではない。顔も、服も、血で汚れていた。

「こんな血塗れの手で、そんなこと」

「出来るよ」

また少女が遮る

「君がその気になれば」

「こんな…おれでも…?」

「うん!」

少女が少年の手を取って引き上げる。

「ほら行こ!」

「行くって何処へ?」

「君に行ってほしい世界があるんだ」

「行ってほしい、「世界」?」

少年は違和感を覚えた。だが、少女は笑顔を見せるだけだった。

そして、一方の手を虚空にかざす

「門よ!開け!」

少女の言葉に二人は青い光に包まれた。

少年はそこで意識を失った…

 

西暦2010年12月18日

夕刻 神社

 

夕方の神社。そこに一人の巫女が厳しい顔をして立っていた。

「時深」

少女が巫女に話しかける。

時深と呼ばれた巫女はそのままの顔で少女に向く

「貴女、何のつもりですか?」

「……」

問い詰める時深に少女は黙ったまま。

「今回の件、関わらないと自分で言ったはずですが」

「……」

「何故あんな、不確定要素を…!」

「時深」

「何ですか…?」

時深は少女の顔を訝しげに見る。

少女の顔には哀しみの色が見えた

「その事は謝るよ。でもね」

少女が俯きながら言う

「あの子のこと、放っておけないんだ」

「そんな事言って!もし彼が彼らの下についたらどうするんです!」

「そうなった時はあたしが殺す」

「美凪…?」

美凪と呼ばれた少女の目には先ほどとは違い、決意の色があった。

「それでね、迷惑ついでで悪いんだけど…」

「何です?」

「彼がカオスについた時は、彼のこと……お願い!」

そう言って頭を下げる美凪を時深は驚愕と困惑が混じった顔で見る。

「みな…ぎ…?」

「あたしにはこれしか出来ないから…」

頭を上げた美凪の目に迷いは無かった。

時深は溜息をつく。

「わかりました。貴女がそこまで言うのであれば、それで」

「ありがとう」

美凪の顔に安堵が宿る。時深は少し困った顔で聞く。

「ですが、彼の神剣は?」

「それは私が用意する。大丈夫だよ」

「そうですか」

すると今度は、可笑しな顔をする。

「それにしても、中立の立場にある貴女が、カオスの者に頭を下げるとは…」

「それだけ…何とかしたいんだ…。彼のこと」

「そうですか…」

「うん…ん?」

美凪が何かに気づく。すると右に2,3歩ほど歩く。

「如何しました?」

美凪は応えず、しゃがみ込むと何かを拾い上げる。

「何これ?」

時深が見に来る。それは20立方cmほどの鉄製の何かだった。

「何かの機械…みたいですね」

「だよね…。なんでこんな所に落ちてるんだろ?」

「さぁ…。それに…壊れているみたいですね…」

時深の言う通り、その鉄くずは所々で、バチ、バチッという音を出していた。

それを見て美凪が考え込む。

「うーん…とりあえずこれ、私が持つよ」

「わかりました。それでは私はこれで失礼します」

「うん、『時果』によろしくね」

「ええ、それでは」

そういって時深は神社の奥へ消えていった。

「あ、そういえば…」

美凪が何かに気づいたように呟く

「名前…聞いてなかったなぁ………?」

そう言って、壊れた機械を見ていると何かの文字が見えた。

「裏に何か書いてある…」

そこには何かのコードナンバーと「akito・takamiya」という名前が記されていた。

「タカミヤアキト君……か」

美凪が見上げた空には雲ひとつ無い星空があった…

 

 

 

 

 

 

あとがき

お初にお目にかかります。このSSの著者、菜雲敬と申します。

初めてのSSですので、おかしな所があるかもしれませんが、

あまり気にしないでいただけると個人的には幸いかと…。

とりあえず、オリキャラ二名のご登場です。

明人は既に設定にて記載されているので、そちらの方をご覧ください。

美凪のほうはかなり後になりますね。彼女は「アレ」ですから。

ともあれ、まだまだ拙い文章ではありますが、これからも精進してまいります。

それでは、これからの明人の活躍にご期待ください。

また、アドバイス等がありましたら、よろしくお願いします。

 

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