永遠のアセリアAnother Story
〜もう一人のエトランジェ、もう一つの物語〜
第6話〜ひと時の休息、護りたいモノ〜
〜イースペリア・ラキオス間、国境付近〜
「悠人君達…大丈夫かな…」
シュウが、歩いてきた街道を振り返る。帰路についてこのかた、幾度となく繰り返された仕草。
舗装されていない街道に、真新しい6人分の足跡が残っている。
「…気にするな、とは言いません。しかし、今は彼らの力を信じましょう…」
シェリムのピッグテールが、静かに揺れる。
足音と、風で草が揺れる音だけが、6人の耳に入る。
「………うん。そうだね……」
シェリムの言葉に頷くシュウだが、不安の色は顔から消えていない。
「まぁ、そう簡単にやられる奴らじゃねぇさ♪」
シャーリィが、束ねていた髪留めを外しながら告げる。
赤い髪が、風に乗って揺れた。
「…シャーリィ様!気を抜きすぎです!」
国境付近まで来ても、警戒を怠らないリュメルダ。
その整った顔から、緊張は消えていない。
「わかったわかった、ほどよく緊張はしておくさ♪」
『陽炎』を肩に背負いながら、笑顔で答えるシャーリィ。
時折吹く風に、シャーリィの深紅の髪が、気持ちよさそうに乗る。
「………し、静かですね………戦争してるってこと……その……忘れそうなくらいに…で、でも…私達は…
戦争をしていて…えとえと……」
ウィレルの言うとおり、静かだった。
聞こえるのは風の音、それに揺れる木々のざわめき…動物達の小さな声…
「そうですね……静かです……とても………」
仮面を被ったまま、エミリオンが同意する。
美しく長い髪も、今は彼女の仮面の中に納まっている。
「とにかく、当初の目的は完遂したんだし、さっさと帰ろうぜ〜?」
勢いよく背伸びをしながら、シャーリィが告げる。
「……そうだね。帰ろっか…(悠人君……大丈夫…だよね)」
布を巻いた『驚愕』を腰につるすと、シュウは再び歩み始める。
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(数時間後、イースペリア謁見の間)
「―――以上が、作戦報告になります。メルフィオネアさん」
報告書を読み上げるシュウ。
この半月程で、シュウの読み書きはめきめきと上達していた。
難しい言い回しや、専門用語はまだ無理だが、ある程度の読解は難なくこなさせていた。
「ん、了解。貴方達、お疲れ様……お給料の方は、後で届けさせるから、宿舎でゆっくりと休みなさい」
他の文官達の報告書にサインしながら、メルフィオネアが告げる。
妖艶な唇が、優しく動く。
「そうそう…しばらく、第1部隊に任務は無いから、次の指示があるまでゆっくりしてなさいな」
聖母とも傾国の美女とも取れる笑みを、うっすらと浮かべる。
身体を動かす度に、その豊満な胸が重そうに揺れる。
「了解しました。それでは、失礼します………皆、行こうか」
シュウは一礼すると、他のメンバーを促す。
しかし、その顔はどこか冴えない。
スピリット達は、シュウの変化の理由を知っていた。
求めのユート―――ラキオスのエトランジェの身を案じているのだ。
そして第一部隊は、メルフィオネアに一礼すると、シュウの背中を追いかけるように、謁見会場を後にした。
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(イースペリア、メルフィオネアの自室)
「………ふぅ」
公務を一旦終えたメルフィオネアは、自室に戻って一息ついていた。
装飾品を外し、椅子に鎮座する。
そして、あの青年…自分の国を支えてくれている存在の一人である青年の状況を、憂いていた。
「シュウ………」
いつもなら、あのような仕草をすれば、すぐに下を向いてしまうような青年だった。
だが、今回はまるで、ここではないどこか遠くを見ているようだった。
「…………陛下」
天井に気配が現れる。
聞きなれた低い声が、ぼそりと聞こえる。
頭を瞬時に切り替えるメルフィオネア。
国家を背負う者として、立ち止まることは―――許されない。
「首尾は?」
そのままの体勢で、天井の人物に話しかける。
「上々です。かのエトランジェへの会見も、時間の問題かと…」
ただ、淡々と言葉を紡ぐ影。
覆面から覗く瞳は、さながら梟のようでもあった。
「上出来よ。バーンライトとの戦争も終盤……今月中には会見できるでしょうね」
まるで悪戯っ子のような笑みを浮かべる、メルフィオネア。
その真意は、彼女自身しか知りえない。
「では……引き続き―――」
「いえ、影。貴方はオーバーワークよ。短いけど、休暇を取っておいたわ。たまには娘と奥さんにも、顔を出してあげなさいな」
影の言葉を遮って、メルフィオネアが告げる。
「………感謝します」
素直に従う影。
心なしか、目元が緩んでいるようにも見える。
そして、気配が消える。
「うふふ……別に気にしなくてもいいのに…こっちが感謝したいくらいなのにね」
事実影は、密偵や計略、情報収集等に大いに役立っている。
影がいなければ、敵の戦略に合わせた布陣など、到底無理だろう。
「ラキオスの頭は取った……あとはダーツィだけど……サルドバルドの動きも気になるわね……」
片肘を突き、指で机を叩くメルフィオネア。
サルドバルドが、極秘裏に軍備を増強している可能性があるという情報が入ったのは、つい数日前だった。
「裏が取れないうちは、思い切った行動はとれない………
いざとなったらヒヒジジイか、レスティーナちゃんに頑張ってもらうしかないか…」
チェス(もどき)の駒を手に取る。
そして、中央にそっと、その駒を進める。
「最悪こちらに来たとしたら…後手の強み……教えてやろうじゃない」
進めた駒で、近くの駒を倒すと、そのままメルフィオネアは、再び公務へと赴いた。
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(同時刻、イースペリア、スピリット宿舎、シュウの自室)
シュウは自室に戻っても、未だ不安の色は顔から消えていなかった。
「…………………」
窓から、外を見る。緑の木々が風に揺れ、木の葉が日差しを浴びて、乱反射している。
―――――――君が他人の心配なんて―――――――
―――――――偉くなったもんだよね―――――
―――――――――――結局、その心配という名の虚言も――――
(…違う………)
――――――――――――自分の為だって事、気がついてるんでしょ?―――――――
(違う…違う違う!!)
―――――――――――――――――素直になりなよ―――――――
―――――――――――――――――自分を認めて欲しいから、心配してるって――――――
シュウの頭に、暗い声が響き渡る。
「っ!!(…僕は………)」
頭を抱え、ブンブンと左右に振る。
頭に響く声を、振り払うかのように………。
「……マスター……?」
『驚愕』が、シュウを心配するかのように、淡く輝き始める。
淡い光は、シュウを優しく包み、慈愛の輝きにも見える。
「………大丈夫だよ……『驚愕』……うん……僕は……大丈夫………大丈夫だから……」
ぎこちない笑みを浮かべ、シュウは手元に『驚愕』を引き寄せる。
その笑みは………どこか自嘲的だった。
「…………あまり……抱え込まないで……ね……マスター…」
「うん………ありがと」
ぎこちなさが消えて、安らぎの顔がシュウに浮かぶ。
「―――――お〜い!いるなら開けろよ〜!!」
静寂を破るかのように、けたたましい声が聞こえる。
シュウがよく知る、赤い髪の女の子の声のようだった。
「ん…………どうしたの?シャーリ…」
「どうしたの?――じゃねぇよ!いるならさっさと出て来いよ〜。……心配するだろ…」
ドアを開けるや否や、シャーリィは怒鳴り散らしたかと思うと、最後には萎れるようにそっぽを向いてしまった。
「………ありがとう。……それで、用件は?」
シュウはにっこりと微笑むと、シャーリィを促した。
「っと!!そうだった。……今から皆で買い物行くんだけど、お前も行かないか?つーか、来い♪」
言うが早いか、シャーリィはシュウをむんずと掴み、歩き始める。
先ほどのしおらしさは、すでにない。
「え!?あ、ちょっ……(強引だなぁ…まぁ、シャーリィらしいかな…)」
最初は混乱したシュウだったが、太陽のように微笑むシャーリィを見て、抵抗するのをやめた。
どうやら彼女の笑顔には、他人を落ち着かせる効能があるらしかった。
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(数時間後、イースペリア城下町)
「シュウ様、あの……その…今日は本当に…有難うございます♪」
「いや、約束したしね。楽しい?」
「は、はいっ!!それはもう!夢みたいです!!」
「あはは。ならよかった」
シュウは仲間と街へ繰り出すと、かねてより約束していたウィレルとのデートを楽しんでいた。
ウィレルはシュウの腕をガッシリとロックし、とても幸せな顔を浮かべている。
シャーリィやシェリム達も気になるのか、: 一定の距離を保って付いて行っている。
「ところでウィレルちゃん、そのいつも付けている髪飾りは?」
シュウは視線の先にある、ウィレルの髪飾りを見つめながら質問した。
地味ではないが大人しい色使い……ウィレルにはぴったりの色彩だった。
「あっ…これですか?……えっと……これは、陛下がくれ物で……その…私の宝物です…」
ウィレルは飾りを髪から外すと、両手で包み込むようにして、胸に抱いた。
どこまでも優しく、邪気のない笑みを浮かべながら。
「そっか……メルフィオネアさんが……」
シュウは空を見つめながら、ゆっくりと呟いた。
空は何処までも青く、煙のような雲が一筋、ゆっくりと流れていった。
「ところで、シュウ様…さっき、鍛冶屋に行かれてましたけど……どうなさったんですか?」
ウィレルは髪飾りを付け直すと、思い出したように言葉を発し、シュウの顔を見つめる。
「あぁ、あれね…えっと…秘密……かな?」
シュウは布に巻かれた『驚愕』に、一瞬目をやると、悪戯っぽく答える。
「えと……あの……き、気になっちゃうんですけど…」
ウィレルの顔が、徐々にシュウに近づいていく。
まだあどけない顔をしているが、その顔には、『女』が滲み出ていた。
しかし、一瞬にして、その顔は影を潜める。
女性の魔力とは、かくも凄まじいものである。
「――――な〜にしてるのかなぁ?ウィレルちゃ〜ん?」
もちろん、シャーリィ達が『抜け駆け』を許すはずも無く、タイミング良く飛び出してくる。
ガシっとウィレルの肩を掴み、にっこりと笑顔を浮かべる……しかし……
シャーリィの長い髪で隠れてはいるが、その額には、確かに青筋が立っていた。
「はわわわ!?あの……その……」
ウィレルは突然肩を掴まれて、オドオドしている。
「「シュウ(様)?鼻の下が伸びてますよ?」」
「えぇ!?い、嫌だなぁ…あ、あはははは…」
シェリムとリュメルダに笑顔で指摘されたシュウだったが
背中には、嫌な汗が伝っていた。
シェリムとリュメルダの背中が、陽炎のように揺らいでいるようにも見える。
「……………」
エミィはそのやりとりを、少し遠巻きから眺めていた。
その顔には、僅かながら…笑みが毀れたようにも見えた。
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「あの……お兄ちゃん、エトランジェ様なの?」
そんなやり取りをしていると、一人の少女が近づいてきた。
手に、花の冠を携えて―――
「え?…うん。そうだけど……?」
シュウは少女の方へ向き直ると、少女の目の高さまで、腰を下ろした。
ウィレルやリュメルダよりも幼く、小学校低学年ほどの少女だった。
「あぁ♪やっぱりそうだ♪はいこれ♪いつもご苦労様です。私達の為に、どうもありがと♪」
少女は花のように笑うと、シュウの頭に、手に持った花の冠を乗せた。
「………ありがとう……僕なんかが何をできるかわからないけど……必要とされてるなら、それに答えるつもりだよ」
「うん!じゃあ、ママが待ってるから、またね!エトランジェ様!」
少女は、シュウの笑みを見届けると、街の雑踏の中へと駆け出していった。
シェリム達もまた、暖かい気持ちに包まれていた――――
―――――ただ一人を除いては――――
「…………?シュウ?どうしましたか?」
エミリオンは、自分の顔を驚いた表情で見つめるシュウに、声をかける。
「どうしたのって……エミィさん……(なんで君は―――――――――泣いてるんだ?)」
エミリオンの顔、いつも通り感情が薄い……しかし
その顔から、後から後から、涙がこぼれていた。
「っ!?シュウ…城に戻りましょう。…………さぁ、エミィ…こっちです」
シェリムは顔が一瞬強張ると、短くそう告げて、エミィの肩を抱きながら城へと歩みを進めた。
「………わかったよ。皆、とりあえず戻ろう………(『驚愕』……エミィさんは一体…?)」
「(私にも………分からない………シェリムやシャーリィは……何か…知ってる…みたいだけど)」
そう言われて、シュウはシャーリィへと目を向けた。
あのシャーリィから、笑顔が消えていた。
むしろ、少し顔色が悪いくらいだった……
「――――シャー………」
「さぁ!皆行くぞ?…遅れた奴は晩飯抜きかもなぁ♪」
声をかけようとするシュウを振り払うかのように、シャーリィは笑顔でそう告げると、シェリム達の方へと駆け出していった。
「あぅ…ま、待ってくださいよぅ〜」
「シュウ様、先に行きますので、シュウ様もお早めに。それでは」
リュメルダとウィレルも、シャーリィの影を追いかけていく。
二人はシャーリィの変化には、気がつかなかったらしい。
「………聞いてみるしか……ないのかな……」
シュウは覚悟を決めると、ゆっくりと城へ歩き始めた。
雑踏から聞こえる音が、どこか遠く感じられるシュウだった………
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(深夜、イースペリア、スピリット兵舎、ダイニング)
「――――エミィさんの過去に、何があったの?」
ウィレルとリュメルダ、エミリオンが床についたのを見計らって
シュウはシェリムとシャーリィに問いただした。
「っ!?……シュウ、どこでその話を?」
シェリムが驚きの表情を、一瞬だけ浮かべる。
お茶を口に運び、深呼吸をすると、真剣な表情で、シュウを見つめる。
「いや……今日の出来事…その辺が関係してるんじゃないかって……」
シュウは少し気押されていたが、凛とした態度で答えた。
すると、シャーリィが椅子に腰掛けながら語り始めた。
「前に大きな戦いがあったんだよ――――」
「シャーリィ!?」
シェリムが驚きながら、シャーリィを咎める。
「――いいんだよ。隠してても、いずれバレる。それに……シュウに隠し事、したくないからな♪」
そう言って頭をかくシャーリィ。
しかし、その顔には、曇りの色が滲み出ていた。
「俺は当時、デオドガンの傭兵だった。
イースペリアは不意を突かれ、ランサは孤立無援の状態だった。
なんとかして町へたどりついた時に見たのは――――――酷い光景だったよ。
敵か味方か…軍人か民間人かも分からない人の死体や、スピリットのマナ……
生物の焼ける臭いと、血の臭いが混ざり合った悪臭……どこからか聞こえるうめき声…
ああいう感じなんだろうな―――バルガ・ロアーは……」
シャーリィの言葉に、シュウは息を呑んだ。
想像ができない。
そんな惨状は、テレビの中でしか見た事が無く、自分には関係のない事―――
そんな考えが、音を立てて崩れていった。
「でも………それとエミィさんとどう関係が……?」
シュウはお茶を飲み干し、気持ちを落ち着かせると、シャーリィに疑問を投げかけた。
「エミィさ……その時、あそこの防衛任務を任されてたんだよ。
自分の部隊率いて、ダーツィとにらみ合いを続けてた。
襲撃を喰らった日の昼も、難なく敵を退けたハズだったらしい………。
アイツは………その惨状に、一人で立ってたよ………
女の子の死体と、それを庇っていたらしい…今にも消えそうなスピリットの隣でな………。
エミィの片手には………『花の冠』が、握られてたんだってさ。
多分アイツ……責任感じてるんじゃないかな?自分の部下を死なせてしまった……ってね。
その記憶……じゃないな……感覚を、体が覚えてたんだろう…それで、泣いたんじゃないのかな」
シュウとシェリムは、黙って聞き入っていた……。
月がゆっくりと、雲の隙間から顔を覗かせる。
「そんなことが………」
シュウの頭の中で、いくつの謎が解け、新たな謎が生まれた。
エミィの過去……
『焦燥』の真意―――
「これで話は終わり♪あんまり気分のいい話じゃねぇだろ?んじゃ、俺は寝るからな〜♪」
シャーリィは、最後には笑顔を見せ、自室へと戻っていった。
しかし、その足取りは、どこか不自然だった。
シェリムは何か迷っているように見えたが、意を決したように、シュウに語りかけた。
「シュウ……」
「……ん?何?シェリム」
「シャーリィも――――あの子も、あの戦いで……
父親のような存在だった人を……亡くしてるんです……」
シェリムの言葉に、シュウは言葉を失った。
自責の念が、シュウに押し寄せる。
「―――行ってあげて下さい。シュウ………」
シェリムの言葉を聴くと、ごめん、と呟いて、シュウは駆け出した。
「(僕は……愚かだ……!!)」
シュウはシャーリィの部屋まで来ると、ノックを忘れて、部屋へと飛び込んだ。
「っ!?し、シュウ!?」
そして、強く…強く、シャーリィを抱きしめた。
飾り気の無い、質素な部屋だった。
でも、シュウの瞳に、その風景が映ることはなかった。
「ごめん……ごめん……辛かったでしょ…?……ごめん」
シャーリィの目は…真っ赤だった。
スピリットだからというわけではなく……
悲しみの涙で、真っ赤に染まっていた――――
「ごめん……シャーリィ………」
シュウは、優しくシャーリィの頭を撫でてやった。
シャーリィにとっては……そこまでが限界だった。
「………っ……名前も教えて貰ってなかったんだ………俺は…名前をもらったのに……
あの人の………自分の恩人の名前も教えてもらえなかったんだ……!!
何で死んじゃうんだよぉ………まだまだ……知りたい事とか…教えて貰いたい事が…
たくさん……たくさんあったのにぃ……………」
そこまで言うと、シャーリィはシュウの胸で、子供のように泣きじゃくった。
今まで溜めていた悲しみを、全て吐き出すかのように―――
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「シュウ……ありがとな……これで俺……明日からまた……笑えるよ」
一通り泣き終えると、シャーリィは、シュウが見た中でも一番の笑顔を浮かべた。
それは、夏の大地に咲き誇る、向日葵にも見えた。
「そんな……僕のせいで……」
シュウが否定しようとすると、シャーリィは、静かに首を横に振った。
「いいんだよ……いつか話そうと思ってたんだから。ありがとな…シュウ」
今までの明るい笑みではなく、今度は優しい微笑みを浮かべるシャーリィ。
そこに、控えめなノックの音が木霊した。
とっさに二人は、慌てて距離を取る。
「シュウ………よろしいですか?」
ノックの主は、どうやらシェリムの様だった。
シャーリィは、すこし残念そうな顔をしている。
「シェリム?……大丈夫だよ」
シュウはドア越しだったのを幸運に感じた。
何故なら、今の彼の顔は、火を噴いたように真っ赤に染まっていたからだった。
「急な伝令だったのですが、お伝えしておきます。
――――明朝、『求め』のユートがイースペリアに入場します。
案内役を仰せ付かっているので、よろしくお願いします」
シェリムの言葉に、シュウの瞳が激しく揺れる。
「っ!?(悠人君が……とうとう…イースペリアに来る……)」
『求め』のユート……
後に、龍の魂同盟を一つに纏めし勇者が―――
―――――明日の朝、イースペリアへと入城する…………
〜7話に続く〜
〜あとがき〜
長らくお待たせしました〜!!
え?待ってない?ソウデスカOTL
さてさて、やっとこさ更新できました(汗
次回、やっとこさ視点が悠人に変わります〜
ラキオススピリットの一部も登場予定です。
鋭意執筆中です。
どうぞご期待ください♪
感想、指摘、クレームは随時募集中です。
お気軽にど〜ぞ〜♪
右端