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永遠のアセリアAnoterStory
〜もう一人のエトランジェ、もう一つの物語〜



第五話〜和解、再会…そして終結〜





〜戦闘終了後、ラキオス城、城内〜
「一体どういう事だ!?なぜ、女狐の所にエトランジェがいる!?諜報部は何をやっていたのだっ!!」
ラキオス王の怒声が城内に響き渡る。
「こうなれば、イースペリアのエトランジェを…」
ラキオス王の怒りは、今まさに頂点である。
「父上、お待ちください」
激昂するラキオス王をその娘、レスティーナ王女が諌める
「父上、今イースペリアを敵に回すのは、得策ではありません」
冷静に述べるレスティーナ。
しかし、ラキオス王は不服そうな顔をしている。
「…何故そう思うのだ?レスティーナよ」
イラつきながらも、落ち着きを取り戻すラキオス王。
「かの女王は支配欲が皆無の輩。そのような臆病者なぞ、いつでも陥落させられます…
 それよりも、今は利用するだけしておく方が有益であると考えます。それに、ヘタに刺激して挟撃されると、厄介ですし」
淡々と語るレスティーナ。
「ふむ…それもそうだな。では奴らにもう少し働いてもらうとするか(まぁ、いざとなれば例の『秘策』を使えばよいか…ふふふ…)」
不適な笑みを浮かべるラキオス王。
レスティーナはその父の顔に、一抹の不安を覚え始めていた…




「…いますか?『影』…」
とある誰もいない個室で、そう呟くレスティーナ。
「……これに」
それに呼応するかのように、1つの気配が現れる。
「ラキオス王に、不穏な動きがあります。エトランジェの身辺に、充分に注意するようにお伝え下さい」
その気配に向かって、言葉を放つレスティーナ。
「…御意。貴公の協力、助言に感謝する…」
そう言うと、気配は消えた。
「……頼みましたよ。メルフィー」
そう呟くと、レスティーナは個室を後にした。



〜夕刻、ラセリオ内スピリット部隊兵舎〜
セリアは窓から夕日を眺めながら、頭の中で、今日の出来事を整理していた。
「……(……アイツのあの顔……殴っておいて、なんで自分が痛そうな顔するのよ…)」
溜め息一つ、セリアの口から零れ落ちる。
ノックの音が部屋に響く。
「……誰?」
ハッとドアの方へ振り返るセリア。
「……俺だ」
男の声が聞こえる。
「『俺さん』なんて方、知りませんけど?」
目一杯の皮肉と…強がりを言葉に込めるセリア
「はぁ……ユートだよ。入っていいか?」
声の主は、疲れたといった感じで答える。
「隊長でしたか…どうぞ」
鍵を外すセリア。
「……てっきり追い返されるのかと思った…」
驚いた表情で、セリアを見つめる悠人。
「…………」
「あ!おいこら!無言でドアを閉めるな〜」
閉じられかけたドアに、足を突っ込む悠人。
「…何か用ですか?隊長」
力を緩めず、質問するセリア。
「とりあえず、ドア開けてくれ〜。足がすっげぇ痛い」
切実な声をあげる悠人。
「………それは命令ですか?」
一瞬動きを止めセリアだったが、なおも力は緩めない。
「違ぇよ!頼んでるんだよ!痛いんだってば!」
そろそろ足の痛みが、限界の悠人。
「……まぁ、いいでしょう。隊長には、借りがありますし」
ゆっくりと、ドアを開けるセリア。
「おぉぉ…マジで痛ぇ……セリア、ちょっとその手、顔から離してみな?」
足をプラプラさせながら、ごく真面目に告げる悠人。
「拒否します」
きっぱりと、即答するセリア。
「いいから見せてみろ」
強引に手を離させる悠人。
「ちょ、ちょっと……」
強引に離された手の向こうにあったのは、赤く腫れた…セリアの頬。
「……ごめんな。本当に…ごめんな」
申し訳なさそうに、セリアの目を見つめる悠人。
「………別に構いません。殴ろうとどうしようと、隊長の勝手ですから」
一瞬、セリアの瞳が揺れるが…あくまで悠人との距離を保つ。
「…そうだな。じゃあ、コレも俺の勝手だ。ほれ」
そう言って、布をセリアの頬に当てる。
「ひゃっ…!!…冷たい…」
当てられた布には…よく冷えた水が滲みこんでいた。
「冷やしとないと、痕が残る。せっかく綺麗な顔してるんだ。勿体無いだろ?」
照れているのだろうか…後ろを向き、頭を掻きながら告げる悠人。
「きれっ…………な、何言ってるんですか!?冗談もほどほどにしてください!!」
冷静に対処しようとするセリア…しかし、顔からは完全に、火が出ている。
「ま、まぁ!とにかくだ!!ちゃんと冷やしとけよ!じゃーな!」
言うが早いか、悠人は一目散に走り去った。
「あ!ちょっと!!…何なのよ…あいつ…」
「……人間の癖に…変なヤツ…」
赤くなった頬に…冷たい布と、窓から入ってくる風が、気持ちよかった。






〜ほぼ同時刻、ラセリオ内スピリット部隊兵舎別室〜
その頃…イースペリアスピリット部隊の部屋では…険悪な空気が流れていた。
「ウィレル…今日の戦闘はどういうこと?」
リュメルダがウィレルの前に立ち、問い詰める。
「………えっと……その…」
ウィレルは言葉が続かない。
「その辺にしといてやれ。切り抜けた事は、切り抜けたんだ。ゆっくり慣らせていきゃいいだろ?」
シャーリィはウィレルを擁護する。
「いえ!駄目です!隊員一人の戸惑いが、部隊全体の危機になる事だってあります!」
自然と語気が強くなるリュメルダ。
「…………ご、ごめんなさい!!」
そう言うと、ドアへと駆け出すウィレル
「…っと!!…ウィレルちゃん…?(泣いてる…)」
部屋に戻ってきたシュウとシェリムに、ウィレルがぶつかる。
「……すいませんでした!!」
そう言うと、廊下を走り抜けていくウィレル…
「…何があったの?」
シュウはリュメルダに質問する。
「……今日の戦闘についてです」
リュメルダは、ばつが悪そうに答える。
「今日の戦闘…?」
シュウは把握しきれていないようである。
「…わかりませんか?」
リュメルダは聞き返す。
「僕も…今日は自分のことで、精一杯だったから…」
申し訳なさそうに、シュウが答える。
「まぁ…あの子はまだ、戦うことに戸惑いがあるようでしたしね…」
シェリムが、ぼそりと告げる。
「あの子は、戦える力があるんです!それなのに…!」
リュメルダは、少し興奮しているようだ。
「ま、まぁまぁ…落ち着いて?ね?…その時の状況、詳しく教えてくれないかな?」
リュメルダを宥めるシュウ。
「…わかりました…」
少し落ち着いたのだろうか…リュメルダは、落ち着きを取り戻した。



「……という訳です」
数分後、リュメルダの説明を聞き終えたシュウ。
「……なるほどね…。リュメルダちゃんは、今どう思ってる?」
一息つくと、リュメルダに質問するシュウ。
「………少し、きつく言い過ぎました…」
シュンとして、呟くリュメルダ。
「じゃあ、僕が捜してきてあげるから、それまでに心の準備、しておきなよ?」
シュウは椅子から立ち上がりながら、リュメルダに告げる。
「…わかりました」
少し元気になったのか…リュメルダは笑顔で答える。
「よし。じゃあ、行ってきます」
シュウはそう言ってドアに向かって行く。
「あ!シュウ、外でエミィが見回りをしているので、ウィレルを見つけたら、一緒に連れてきて下さい」
シェリムがシュウの背中に告げる。
「ん…了解。ちゃんと連れてくるよ」
そう言ってシュウは、部屋を後にした。



「…あら?シャーリィは…?」
シェリムが周辺を見回す。
「…先ほど、出て行かれましたが…?」
リュメルダがそう告げると、シェリムの顔がピクッと引きつる。
「……まさか、あの子…」
シェリムの不安は…



「…シュウの奴、どうやってウィレルを説得する気だ…?気になる…っと、危ねぇ危ねぇ…見つかるとこだった…」
見事に的中していた。




〜ラセリオ内、大通り〜
「スピリットがウロウロしてんじゃねぇ!邪魔だろうが!!」
一人の兵士の怒鳴り声が響き渡る。
「あの…その…ごめんなさい…」
怒鳴られているのは、ウィレルだった。
「ったく、人間みたいな顔しやがって…」
少し酒も入っているのだろう…兵士はウィレルを睨みつける。
「えっと…その…」
ウィレルは怯えるばかりだ…。
付近を歩いていた町の人間も、今は姿を見せない。
「……人間様のありがたみを、教えてやる…」
不適な笑いを浮かべながら、ウィレルににじり寄る兵士。
「ひっ……」
ウィレルはすくんでしまって、動けない。
「――――何を、教えるって…?え?」
ウィレルには聞き覚えがあるが、兵士には聞き覚えのない…
酷く――冷たい声が聞こえた。
「あぁ?何だぁ?貴様は?」
兵士は、後ろに立っているシュウにガンを飛ばす。
「………誰だっていい。消えろ――――死にたくなかったらな…」
『驚愕』を背中にトン…と突きつける…。
「ひっ………」
一声あげると、兵士は何処へともなく走り去っていく。
「…ふぅ。まったく……大丈夫?ウィレルちゃん?」
シュウはいつもの顔に戻っている。
「ふ…ふぇぇぇぇぇ…ふえぇぇぇぇ…ぐすっ…」
緊張の糸が切れたのか、ウィレルはシュウに抱きつくと…堰を切ったように、泣き出した。
「…よしよし…」
シュウは、ゆっくりと…ウィレルの頭を撫でてあげた。



「……戦うのが怖いの?」
ひと段落して、泣き止んだウィレルに、シュウが尋ねる。
「いえ…その……斬られたら…い、痛いじゃないですか…その…あ、相手も…痛いんだろうなぁって…考えたら…その…」
語尾になるに連れて、ウィレルのトーンは下がっていく。
「…優しいんだね。君は」
シュウは、あざ笑うでも…怒るでもなく、ただ、優しく微笑んでいた。
「え…あの…その…ゴニョゴニョ…」
ウィレルは真っ赤になっている。
「シュウ様は…どうして…その…戦ってるんですか…?」
シュウの顔を覗きこむウィレル。
「僕は…頼ってくれる人がいるから…僕を必要としてくる人がいる、僕が戦えば…悲しみにくれる人が、少しでも減るなら…
 そう思って、戦ってる…」
シュウは真剣な顔で、言葉を紡ぐ。
「…私も……頑張り…ます…」
そう言うウィレルだったが、声は震えていた。
「…今度、気晴らしにどこかへ行く?」
シュウは思いついたように、ウィレルに告げる。
「え…えぇぇぇぇ!?」
ウィレルは完全に「ゆでだこ」状態である。
「え…?どうしたの!?」
シュウはあたふたしている。
「その…ふ、二人で行きたい…です」
ウィレルも何気に爆弾を投下する。
「え!?ふ、二人っきり…?」
シュウの顔もまた、赤みが増す。
「…だ、ダメ…ですか?」
上目遣いで…しかも涙目のウィレル。
「…いいよ。行こうか…(こ、断れない…)」
シュウは、ウィレルの顔に少しドキッとしながら答える。




「…なるほどねぇ…」
茂みから、一部始終を見ていたシャーリィ…
「……いいんじゃないでしょうか…?」
…あ〜んど、エミィ。
「ふむ…あ♪そうだ♪」
小悪魔のような笑みを浮かべるシャーリィ…



「♪〜」
ウィレルは至福の中に旅立っていた…
「あははは…」
シュウは、乾いた笑いを浮かべていた。
「よう♪大将♪」
シャーリィが後ろから声を掛ける。
「………こんばんは」
エミィも続く。
「いぃ!?な、何カナ?二人トモ…?」
シュウの声は、見事に裏返った。
「ずるいな〜♪オレもデートしたいなぁ〜♪」
シャーリィが、からかうように言う。
「…デートしたいなぁ…」
エミィもそれに続く…かなりの棒読みだが…
「…わかった。二人にも時間を作るよ」
シュウは、もう諦めたようだ。
「やりぃ♪忘れるんじゃないぞ?」
シャーリィは非常に嬉しそうだ。
「……やったー」
エミィも喜んで…いるのだろうか…?
「じゃあ三人とも、帰ろうか…ウィレルちゃん、くっつきっぱなしなんですけど…(汗」
「♪〜〜」
ウィレルには聞こえていないようだ…。
「うし♪帰ろうぜ〜♪」
空いているシュウの腕に、シャーリィが張り付く。
「…もう、どうにでもしてよ…」
シュウ…完全に諦めた模様。
「行きますよ…?」
エミィはスタスタと、先に歩いていく。
…その後、デートの約束がシェリムとリュメルダにも露呈し(シャーリィが『わざと』バラした)
休みには、交代でデートする事になったシュウであった…。






〜翌日、ラセリオ攻防戦〜
「ファイアーボール!!消し飛べぇぇ!!」
シャーリィの放った神剣魔法が、4人目のスピリットをマナの霧へと変えていく。
「シュウ、ユート様!そちらの方はどうですか!?」
シェリムが最後の一体にトドメを刺しながら、尋ねる。
「こっちも終わったよ!」
シュウがそう告げると、ウィレルの『暗礁』が敵の身体を突き抜ける…。
「…ご、ごめんなさい…」
ウィレルはそう呟いて、相手の胸から『暗礁』を引き抜く。
「でりゃぁぁぁぁ!!」
悠人の『求め』が、相手を切り捨てたのも、ほぼ同時だった。
「…こちらも終了です。シェリムさん」
ナナルゥが告げる。
「…これで、今回の攻撃は終了ですね…」
リュメルダが辺りを見回しながら、告げる。






………その後、ラセリオ攻防戦は、イースペリアの援軍の助力もあり
圧倒的な防衛力で、ラキオス、イースペリア連合軍の勝利に終わった。



〜第6話に続く〜



どうも。右端です。
これまたグダグダになってしまいましたねOTL
次回は、戦闘はちょっとお休みして日常の描写になります。
どうぞ、ご期待下さい♪
なお、クレーム、指摘、感想は随時募集しております^^
それでは、次のSSでお会いしましょう♪

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