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永遠のアセリアAnotherStory
〜もう一人のエトランジェ、もう一つの物語〜

第一話 ”来訪する運命達”



「…愁のことは、お前に任せると言っておいたのに…」
「あなたには、職場という逃げ場があるからいいじゃありませんか!」
「私は家族のために働いているんだぞ!それを逃げ場などと…!」

…愁はベッドの中から両親の罵り合いを聞いていた…いや、「聞かされていた。」
「…(僕がいるから、ケンカしちゃうのかな…僕がいなければ、ママとパパは、仲良くなるのかな…)」
毎日のように続く自問自答…しかし
その答えは…17歳になった今でも、出ることはなかった。





「…いません…すいませ〜ん!」
客の呼びかけにハッとする青年。
彼の名前は、萩原愁。
どこにでもいる、普通の高校二年生である。
「あ、はい!申し訳ございません。今うかがいます!」
手馴れたようにレジを打つ愁。仕事に関しては、よくできる人間のようである。
「ありがとうござました!」
礼儀正しくお辞儀をする愁。すると、客と入れ替わりに、息も絶え絶えに青年が入ってきた。
「はぁ…はぁ…す、すまん!愁、…遅れたかっ!?」
息を整えながら、青年が愁に尋ねる。
「いや、大丈夫だよ悠人君。まだ二分あるしね」
掛け時計を指差しながら、愁はニコニコと答える。悠人は、はぁ〜っと長い息を吐きながら、ゆっくりと更衣室へ足を向けた。




「二人ともご苦労様。今日はあがっていいよ」
店長が二人を労いながら、声をかける。
「「はい(わかりました)」」
「あ〜、高嶺君、ハイこれ。お家で食べてもらって」
「あ…ど、どうも有難うございます…」
「いいっていいって。さぁ、はやいとこあがってくださいな」



「はぁ〜…どうするんだ…コレ」
恨めしげに、菓子パンやらが詰まった紙袋を見つめる悠人。
「あはは。またもらったんだ。」
毎度の事ながら、悠人のこのリアクションが少し楽しい愁であった。
「まったく…それもこれも今日子のせいだ…だいたいアイツは…ブツブツ」
「ま、まぁまぁ。僕も少しもらってあげるからさ。ね?(岬さんかぁ…あの人も苦労するなぁ。悠人君はこれだし…)」
悠人をなだめるように、愁が肩をたたきながら言う。
「…愁、お前ホントいい奴だなぁ〜。」
悠人が確認するように、頷きながら答える。
「そう?僕はそんなに”いい奴”じゃないよ――」
時たま見せる愁の憂いがかった笑顔。悠人は
「(…愁のやつ、何か悩みでもあるんじゃないのか…?)」
と思いつつも、聞くのを躊躇っている自分を、少し腹立たしく思っていた。
神社の前まで来ると
「じゃあ、また明日学校で、悠人君」
「おぅ。また明日な、愁」
二人はここで別れ、各々の帰路へとついた。






朝目が覚めると、愁にはこの2年間、いつもと変わらない光景が広がる。
『仕事にいってきます』
このメモが一枚、机の上に置かれただけの食卓…
愁の母は、愁が高校に入るや否や家事から逃げるように仕事を探して、働きに出るようになった。
料理やその他の家事は完璧といかないものの、ある程度こなせるようになったのは、ごく最近のことである。
愁はいつものように、メモを握りつぶしてゴミ箱に捨てると、朝食の準備を始めた。
そう…いつもと変わらない…日常がまた始まるだけだ…
学校の支度を整える頃には、もう結構な時間になっていた。
「まぁ、大丈夫大丈夫」
鍵をかけると、ゆっくりと自宅を後にした。
…ちなみに、余裕で遅刻したのは言うまでもない。



愁は学校につくと鞄をかけて、外を眺めながら、適当に午前中を過ごした。
すると、外で何やら言い争っている声が聞こえた気がした。
なんとなく愁は、その方向へと足を向けてみることにした。
「邪魔だ」
「何っ!」
「邪魔だって言ってるんだよ…!」
目的地につくと、この学園では珍しくない『秋月と高嶺のケンカ』が行われていた。
愁は、悠人と秋月の間に入って悠人を制する。
「悠人君!構っちゃ駄目だよ!」
「離せ!愁!!こいつは…こいつはぁ!」
今にも愁を吹き飛ばさないかという勢いで迫ろうとする悠人
「駄目だって!こんなどうしようもないバカ、相手にしたって意味ないじゃないか!」
悠人が驚きの目を愁に向ける。まさかあの愁から、こんな言葉が出るとは予想もしてなかったのだろう。
「…おい、誰がバカだって?虫ケラの分際で、威勢がいいじゃないか?」
怒りと嘲笑を混ぜた視線を愁に送る瞬。しかし、愁はいつものようにニコニコしながら答える。
「前から言おうと思ってたんだけど…僕、君のことが大嫌いだ。顔見るだけで反吐がでそうだよ」
語りの後半から愁の目は、氷のように澄んでいて、それでいて…冷たかった。
「親の力を盾にしないと、なにもできない奴、つまり君みたいな人間は大嫌いだ――
 悠人君が疫病神なら、君はさしずめ、狂人だよ…。歪んだ人格の君なんかが、悠人君の事をどうこう言う資格は……うっ!」
最後まで言う前に、瞬の拳が愁を捉えた。
「黙れ………黙れ黙れ黙れぇ!!!僕は狂ってなどいない!僕は正しいんだぁ!!……うぐっ!」
愁の拳が瞬の腹へと繰り出された。
「…五月蝿いよ――お前」
さらに、もう一撃入れようとした愁の身体を、誰かが後ろから抑える。
「待て待て!萩原!お前どうしちまったんだ!?ちょっと落ち着け!」
「離してくれ…碧君…頼むよ…こいつ、今のうちに潰すから……ッッッ!?」
悠人の友人碧光陰と、一緒に来ていた悠人のもう一人の友人、岬今日子の平手が愁に炸裂した。
「…ちょっとは落ち着いた?あんたねぇ…いくらなんでもやりすぎだってば!」
「…うん…ごめん。僕、どうかしてたよ」
後悔とも、羞恥とも取れる表情で愁は、俯き加減に呟いた。
瞬は愁を睨み付け、決して離そうとしない。
その後、教師達が騒ぎを聞きつけ、事態は終息へと向かっていった。
ハズだった………








「ど、どういうことなんだ!?」
「嘘っ!?」
「あちゃ〜…」
翌日、悠人達が学校へ行くと掲示板に紙が張り出されてあった

『以下のものを一週間の停学処分とする。
   二年 萩原 愁        
                        以上』

「なんで瞬の奴は載ってないんだ!?元々は、アイツが先に手を出したんだぞ!?」
訳が分からないといった表情で、光陰に言葉を投げかける悠人。
「悠人、秋月の親の事…知らないわけじゃないだろ?」
光陰も納得がいかないのか、眉をひそめながら答える。
「だからって!こんな…こんな!!」
悠人は怒りが収まらないようだ。
「ちょ、ちょっとユウ!!落ち着きなさいって!!」
今日子が必死に悠人をなだめる。
「…あ…あぁ…すまん。取り乱しちまった…」
深呼吸をして今日子にそう返す。
「まぁ、とにかくだ。悠人、萩原の場合、停学中でもバイトに出そうだから…そん時はフォロー頼むぜ」
悠人の肩を叩きながら、光陰がいつものようにふてぶてしく言う。
「あぁ…了解だ」
すこしぎこちない笑顔を浮かべながら、悠人もそれに答える。





「愁が、秋月さんの息子さんを殴ったそうだ。…全く、お前に躾を任しておいたのに…」
「あなただって、愁に少しも構ってあげずに、仕事ばかりを優先して!!」
「なんだと!家族のために働くことが、そんなにいけないことかっ!」
…1階から聞こえる怒声に、愁は後悔と苛立ちと…悲しみを覚えた。
ふと時計を見ると、下校の時間を過ぎて間もない位。
愁は学生服に袖を通し、外出の準備を始めた…。


『少し頭を冷やしてきます。そのままバイトに行くので、心配は要りません   愁』


両親にそう書置きをすると、そっと勝手口から外に出た。


その日は真冬だというのに少し暖かく、コート羽織ると少し暑かった。
愁は公園のベンチに座りながら、空を見上げていた。
「…僕、何やってんだろ……」
呟きながら空を見ては溜め息、10分ほど前から、この繰り返しであった。


「……いちゃん。…兄ちゃん!兄ちゃんってば!」
ふと、愁の横から声が聞こえる。
「うわっ!?…ん…こほん…どうしたんだい?」
突然現れた少年は、愁の顔を見ながらニコニコとしている。
「なぁ兄ちゃん、なんでそんなむっずかしい顔してんのさ?」
吸い込まれるような瞳を向けてくる少年の目を愁もまた、じっと見返した。
「…父さんと母さんがケンカしちゃってね…でも、原因は僕が作ってて…だから…
 (初対面の子に、なんで僕、こんな話してるんだろ…)」
戸惑いながらも、紡がれていく言葉…少年は頬杖をつきながらも、真面目に聞いているようだった。
「まぁ兄ちゃん、悩めるときは、思いっきり悩んでおきなよ。その内にさ、自分なりの答えがでるんじゃない?」
ニカッと笑いながら、少年は愁に語り掛ける。
「一体君はいくつなんだよ…でも…そうだね…うん、とことんまで悩んでみるよ。向き合ってみる事にする」
微笑みながら、愁は少年に回答する。
「兄ちゃん、今良い顔してるよ。んじゃ、俺はこれで。また会うかもしれないけどね〜。んじゃね〜」
少年はベンチを飛び越えて、愁の後方へと走り去った
「あ!ちょっと!君のなま…ってあれ?もういないや…足速いなぁ」
愁が振り向いた時、少年の姿はもうなかった…
ふと、腕時計の時間に目をやる。
「っと、そろそろバイト行かなきゃな。…思いっきり悩め…か…」
愁は、少年の言葉を思い返しながら、バイト先へと歩みを向けた。



「ありがとうございました〜!…はぁ…」
悠人はバイトに来てからこっち、少し元気がないように愁には見えた。
「どうしたの?悠人君、なんか疲れてるみたいだけど…」
「いや…次の小テストの成績如何で、掃除レギュラー確定なんだよぉ〜。」
両手で頭を抱えながら、悠人が告げる。
「くすっ…なら僕が教えようか?碧君みたいにできないかもしれないけ…」
「本当かっ!?いやぁ〜マジ助かる!…でも…愁の家とかいいのか?」
不意に悠人が聞き返す。
「……電話、しておくよ…」
「そ、そうか…」
妙な静寂が辺りを包む。
「…あ!そ、そうだ!愁!マジですまん!お前、停学にさせちまって…」
たまりかねた悠人が、思い出したかのように愁に謝罪する。
「そ、そんな…頭上げてよ。あれは僕がやっちゃったんだし、悠人君は気にしなくていいよ」
あたふたとしながら、愁が答える。
「でもなぁ…俺が、巻き込んだようなもんだし…」
「あれは、僕があそこに行ったのが悪かったんだよ。悠人君のせいじゃないよ」
「…わかった。って、なんか俺の方が励まされてるな」
悠人の苦笑いつられて愁も笑顔になり、二人でくすくすと笑いあう。



「高嶺君、萩原君、少し早いけど、もう上がっていいよ。昨日は頑張ってくれたしね」
店長がモップをかけている愁とレジに立っていた悠人に声をかける。
たしかに終了まではまだ20分ほどある。
「「ありがとうございます(はい)」」
二人は店長に一礼して今の仕事を切り上げると更衣室へと向かった。
「んじゃ、親に連絡してくるから、先に外に出てるよ」
先に着替えを終えた愁が、鞄から携帯電話を取り出しながら、まだバイトの制服の悠人に話しかけた。
「おう。すぐ行くから待っててくれ」
服を脱ぎながら、愁に声をかける悠人。
愁は手を振って答えながら、自宅への電話を始めた。
「もしもし?あ、母さん?…うん。大丈夫。…うん。今日は、悠人君の家に泊まるから…
 違うよ。勉強教えてって言われたの。…うん。わかった。明日はバイトもないから、皆が学校に行ったらすぐ戻るよ。
 …うん。じゃね。…はい」
用件を述べて携帯を切る。空を見上げながら悠人を待つ。今日の月は、少し大きく見える…
「よっ!昼間の兄ちゃんじゃん」
「君は…昼間の…」
聞き覚えのある声に、愁は振り向く。見覚えのある顔、見覚えのある容姿…
昼間の少年だった。
「そういえば、名前を聞いてなかったね。僕は愁って言うんだ。君の名前は?」
「愁兄ちゃんか。俺は狼雅、ろうがってんだ。よろしく!」
二人が談笑をしていると、悠人がコートを羽織りながらこちらに向かってくる。
「愁、お待たせ…ってその子は?」
「あ、悠人君。この子は狼雅君だよ、僕の友達さ。狼雅君、こっちは悠人君。」
「よろしく!悠人兄ちゃん。っと、そだそだ。愁兄ちゃん。」
思い出したように愁の袖を引っ張る狼雅。
「ん?どうしたんだい?」
「本当は、明日会えたら渡そうかと思ってたけど、今渡しておくよ。友情の証さ!」
そう言うと狼雅は、愁の手にストラップを押し当てる。
「ありがとう。…ん?珍しいストラップだね。刀のストラップかぁ」
「壱の太刀は想い人の為に弐の太刀は戦友(とも)の為に…ってね♪」
ニコニコしながら言葉を紡ぐ狼雅。
「なぁ…愁、こいついくつだ?」
冷や汗をかきながら、愁に尋ねる悠人。
「僕に聞かないでよ……っと悠人君、そろそろ行かないと」
「ん?兄ちゃん達どっか行くの?」
「勉強会だよ。俺の家でやるんだ。他にも何人かいるけどな」
狼雅の質問に答える悠人。
「そっか。んじゃ俺は帰るよ。悠人兄ちゃん、ちゃんと勉強しろよ〜!」
「大きなお世話だっ!」
「ははっ、んじゃね〜!」
昼間のように、ニコニコしながら走り去っていく狼雅。
「…ったく。んじゃそろそろ行くか、愁」
「うん。そうだね。行こうか」
二人は苦笑いを浮かべながら、悠人の家へと足を向けた。



「ただいま〜」
「お邪魔します」
悠人の家に着くと、奥からぱたぱたと足音が聞こえてくる。
「お帰りなさい、おにいちゃ…って萩原先輩も!お、お久しぶりです」
愁は、以前悠人の家に来たことがあったので、佳織とも顔見知りであった。
「佳織ちゃん、お久しぶり。今日は勉強会だってね、僕も参加しようかなってさ」
「そうだったんですか。お兄ちゃん、碧先輩はもう来てるよ。今日ちゃんも、もうすぐ来ると思うけど」
「ん、了解。んじゃあ、先に始めとくか」
「そうだね。んじゃ佳織ちゃん、また後でね」
「はい。萩原先輩」
二人は佳織に声を掛けると、悠人の部屋へと向かった。
「おう、悠人…って、萩原も来たのか。停学者がなぁにやってんだよ」
光陰が冗談交じりに声を掛ける。
「僕だって、優等生って訳じゃないしね。まぁいいじゃない」
愁も冗談で返し、ニコニコしている。
「そういえば萩原、横島が「体力作りはしておいてくれ」…ってさ」
「部長が?…了解。承ったよ」
愁は演劇部だ。部長に推されていたが辞退した、という噂もある程に、演技は上手かった。
「よし!それじゃあ先生方!よろしくお願いします!」
「「おう(了解)」」
こうして、勉強会は始まった。
…今日子が来てから、勉強会から談笑になったのは言うまでもない。







勉強会から数日、愁は毎日のように、神社の境内で殺陣の練習をしていた。
狼雅がチャンバラごっこと称して、遊びに来ることもあった。
「…はぁ…はぁ」
傷だらけの二振りの短い木刀を、足元に置く。
息が上がる。今日は狼雅は来ていない。日ももう暮れそうだ。
「ん…?狼雅君?今日は遅かったね」
しかし、狼雅は真剣な目を向けてくるだけ。
「兄ちゃん…もうすぐ、門が開くんだ。兄ちゃんは…苦しむかもしれない。でも忘れないで、
 答えなんてない。一生懸命やった結果…それが答えなんだよ…」
「…??何言ってるの…?」
向こうから足音が聞こえる…3、4人だろうか…
「悠人君達…?それに…巫女さん…?」
「門が…開くよ…頑張ってね。兄ちゃん」
意識が遠くなる、こうして…門は…そして…戦いの日々の序幕が、開かれるのであった。

「いいんですか?彼を、巻き込んでしまって…」
巫女が狼雅に尋ねる。
「彼は、僕のとっておきさ。彼は、僕が担当するから…トキミはあっちを頼む。」
狼雅少年は、ニット帽を脱ぎながら答える。
風に、その燃えるような赤い髪が映える。
「まったく、あなたはいつもそうなんですから…」
「さぁ、こっからが正念場だ…!」


第二話に続く




〜あとがき〜
ども、右端です。
拙い文すいませんでしたorz
皆様、ご満足いただけたでしょうか?
ご指摘、クレームはじゃんじゃんとください♪
これからも誠心誠意頑張りますので
どうか一つお願いします;

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