はじめに
物語の途中に少し際どい部分があります。
この作品は完全オリジナルの物語なので、設定が本編と違うところも多くあります。
そういったものが苦手な方はご注意、もしくはお戻りください。
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それは闇。
限りなく広がる闇。
何も無い。
すべてが、沈んでいく・・・・・・
此処に、ヒカリなど・・・ありはしない。
※ ※ ※ ※ ※
序章 庭園への道
「やべぇぇぇぇ!!遅刻しちまうぜぇぇぇぇ!!!」
ここはバストラージュ皇国。城上街へと続く大階段。
彼はこの合計六百六十六段の階段を軽快に駆け上がっていた。
『なぁなぁ、もういいじゃねーか。どうせ遅刻なんだから、のんびり行こうぜ、アッシュ〜?』
無責任な発言をするのは永遠神剣の「決断」。
「そういうわけにもいかないって、確かにオレはもう何度も遅刻してるけど・・・今日は特別なんだよ!」
『へ〜?シアリィの奴でも来るのか?』
ピタリと、いきなりアッシュが立ち止まる。
「・・・・・・シ、シ、シアリィちゃんが来てくれるなら、オ、オレはもう張り切って任務をするんだけどなぁ・・・・・・」
顔が赤くなり、動揺しているのか挙動不審になるアッシュ。
『って、お前まだほとんど任務を任されたことねーじゃん』
「う。そ、それは・・・・・・」
『・・・・・・なっさけねえなぁ』
明らかなため息をつく決断。
「う、うるせ〜〜〜〜な!!!いつか俺だって、騎士団長になって、シアリィちゃんに、こ、ここ、告白・・・・・・を」
『ってか、騎士団長なんかになったら、シアリィみたいなレストランの娘なんて目じゃねぇくらいの美女とお近づきになれるっつ〜の』
「なに言ってんだ!シアリィちゃんより可愛い娘なんて、いるわけないだろ?」
『へいへい、まあいいけど、ところで、ホントに今日は何があるんだ?』
「へ?」
『・・・・・・おいおい』
「やべえ!!!もうこんな時間じゃねぇかああぁぁぁぁ・・・・・・」
『哀れだな』
城へと続く階段、もうこの街ではおなじみとなってしまったアッシュの全力階段駆け上がりだった。
※ ※ ※ ※ ※
そのころ時同じくして。
「・・・・・・ん」
カルヴァは目を覚ますと、あたりを見回すと、そこにいた少女にやさしく話しかけた。
「おはよう、エルナ」
「・・・・・・おはようございます。御主人様」
エルナと呼ばれた、まだようやく年齢が二桁になったばかり、といった容姿の少女は、表情を変えずに答えた。
「よく眠れたかい?」
「・・・・・・(コクリ)」
「そうか。それは良かった」
「・・・・・・(じぃ)」
じっと、カルヴァを見つめ続けるエルナ。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
長く見つめあい、しばらくして、カルヴァはため息をつくと、エルナをいきなり抱き寄せた。
「あっ・・・・・・」
「かわいいな、エルナは」
「あの・・・御主人様・・・こんな・・・・・・こと」
「ん?」
カルヴァは戸惑うエルナを見てクスリと笑うと、
「こんなこと?」
そっと、背中を撫で始めた。
「やっ・・・・・・あんっ」
「クスッ、相変わらず小さい体だな」
「あ・・・・・・ふぁ・・・ん・・・」
エルナは抵抗せずにカルヴァの行為を受け入れている。
カルヴァも、決してエルナを乱暴に扱うことは無かった。
「はぁ・・・・・・ぁ・・・ご・・・御主人様・・・もう、わたくしは・・・これ以上・・・んぁっ!・・・が、我慢がぁ・・・」
「・・・・・・わかったよ、おいで」
「は、はい・・・ん・・・今日も・・・ご、御主人様にぃ・・・可愛がっ・・・て、もらえて、とても・・・うれしいです・・・」
そしてカルヴァは、その幼い体を、優しく撫でながら、今まさに行為に移ろうとしていた。
「カッッルッヴァっさま〜〜〜〜!!!あ〜さで〜すよ〜〜!!!」
もちろんそんなことをさせるわけにもいかないので、都合よく乱入者がカルヴァの部屋に飛び込んできた。
「・・・・・・あ」
「・・・・・・ん?」
「・・・・・・・・・・」
乱入者、ミリア・ブラックスピリットは赤面した。当然といえば当然だが。
「な、ななな、何をやってるんですか!!!」
「やあ、おはようミリア、君も混ざるかい?」
特に悪びれる様子もなく、カルヴァは平然と言ってのける。
エルナのほうも特に恥ずかしがる様子はなく、行為を中断されたことで少し不満そうな顔をしていた。
「も、もうっ!そんなことしてる場合じゃないですよ!?クリストロさんが呼んでるんです!!」
「俺とエルナの一時が邪魔されるのは気に食わないが・・・そうか・・・あいつが・・・なら・・・」
カルヴァはぶつぶつと何かをつぶやきながら、傍らにおいてあった神剣「予兆」を手に取る。
「予兆、どんな感じだい?」
カルヴァが語りかけると、嫌々といった感じで小さな声が部屋に響いた。
『異界の者、異界より召喚され、我が主の敵となるだろう』
エルナとミリアは、静かにカルヴァと予兆の会話を聞いていた。
「異界の・・・エトランジェの数は特定できるかい?」
静かな沈黙の後、予兆は重々しく喋りだした。
『不明』
「・・・そうか、では、この国に反応は?」
『否・・・・・・だが』
「ん?だが・・・なんだい?」
『勇者・・・・・・』
「勇者だと?」
聞きなれない単語に反応するカルヴァ。
『栄光への階段を上る勇者・・・否、まだ可能性・・・・・・それは、この国に・・・・・・主の近くに・・・』
その一言を残し、予兆はそれきり言葉を発しなくなった。
「カルヴァさま?勇者って・・・・・・」
「どうやらこの国のどこかに勇者・・・いや、勇者の見習いかな、そいつが俺の近くにいるようだ」
カルヴァは相変わらずの微笑みのまま、窓の外を見ていた。
「楽しみだな」
「でもでも、その勇者さんは、カルヴァさまの敵になるのかもしれませんよ?それに、エトランジェって・・・」
「ああ、どちらも私にとって、敵になってもらったほうが都合が良いかもしれないな」
「え?何故ですか〜?」
「ふふ、まぁ・・・お楽しみだね」
「・・・・・・・・・・」
混乱するミリア、微笑み続けるカルヴァ、そして、それを眺め続けるエルナ。
「これで、また退屈せずにすみそうだな」
微笑むカルヴァ、だが、その優しい目の奥には、静かに殺意の光が浮かんでいた。
カルヴァは気づいてはない。
眺める窓から見える大階段。
その頂上の街、通称「庭園」。
そこを走る、アッシュの姿に。
※ ※ ※ ※ ※
『それで、憧れの隊長、副隊長さんが帰ってくるんで、そんなに急いでいた、と』
「はぁ・・・そ、そうなんだよ。・・・はぁ、はぁ、はぁ」
その頃のアッシュは、疲れ果てたのか、トボトボと歩いていた。
『そりゃあ急ぐのも無理ねぇな。副長さんはともかく、あの隊長さんはな〜〜?』
「うう・・・・・・リーグ隊長は本当に厳しいからな」
『下手すりゃクビだな』
「や、やなこというなよ〜〜」
アッシュはようやく大階段の頂上、バストラージュ城のある城上街「庭園」。
ここに住むことのできるのは、城の中でも地位の高いもの、有名な研究家、貴族などだけだ。
そのほかの人々は、大階段の下の街、城下街で暮らすことになっている。
つまり・・・・・・
「超高級住宅街・・・・・・オレみたいなのがいるべき場所じゃないよな・・・」
『ま、守備隊募集のおかげで少しはここも庶民っぽくなったけどな』
「そうだな、階段昇るのは疲れるけど、それは副長・・・カルヴァ副長に感謝、だよな」
本来なら、庭園内はアッシュのような身分の低い者は立ち入ることすら出来ない。だが、カルヴァの守備隊募集のおかけで、ここに入ることが出来
るのだった。
もちろん、試験は並大抵のものではなかったが、持ち前の努力で何とか守備隊・・・見習いの座を手に入れたのだった。
それからというもの、この庭園にも、アッシュのように大階段を昇るものがだいぶ増えたのだった。
「でもな・・・・・・」
アッシュは深いため息をついた。
「ノーナみたいに、オレたちが昇ってくるのを嫌がる奴らも多いけどな」
貴族の集まる庭園に城下街の庶民達が入ってくる。
これに反対の声が起こらないはずが無かった。
ノーナもその一人で、守備隊に城下街の人達が入ったときから、何かと嫌味を言ってくるのだった。
『たしか、それを抑えたのもカルヴァだったんだよな』
「ああ。さすがだよな、俺たちと同じように流れ者なのに、一年で守備隊の副隊長だもんな」
『お前とは大違いだな』
「う、うるせぇ!オレだって、いつかは副長や隊長より強くなって見せるさ!!!」
『へいへい、ま、せいぜいがんばりな』
意気込むアッシュだったが、決断の反応は冷たかった。
「あ!お前信用してないな!?」
『だってよ、その台詞、もう聞き飽きたんだよ。もう守備隊に入って一年だろ。んで、お前が今までやってきたこと、全部見習いと大差ないんだから、信
用もなくなるわな』
そう、あの守備隊に入ってもう一年になってしまっていた。
その間にやった任務といえば、街の掃除、街の周りに現れる下級魔物を倒すことだった。
後の時間は、すべて剣の鍛錬に当てているのだが、なかなか上達もせず、気持ちは焦るばかりだった。
「・・・・・・わかってるよ、オレだって、もっともっと色々な任務をやってみたいさ。そのためにも、更に特訓を増やして」
『その所為で遅刻したんだよな』
「・・・・・・」
『・・・・・・』
気まずい沈黙が流れる。
『だ、だけどよ』
さすがに言い過ぎたと思ったのか、決断が気遣いの言葉をかける。
『まぁ・・・なんだ・・・お前はちゃんと強くなってるじゃないか。ほら、この前だって、ノーナの奴を負かしたじゃないか!』
「あれは・・・ノーナが油断してたから勝てたみたいなもんだよ。オレの成長じゃない」
『そんなことね〜ってば、ノーナは油断してたが、あのときのお前の隙を突く攻撃はさすがだと思ったぞ!』
「・・・・・・」
『お前はまだまだこれから、だろ?』
「・・・そうだな」
やっと元気を取り戻したのか、少しずつアッシュの顔が明るくなっていく。
「そうだよ!オレはまだまだこれからなんだ!もっともっと強くなって、副長や隊長なんか、すぐに越してやるぜ!!!」
『やっといつもの調子に戻ったみてぇだな、ホントに苦労かけるぜ』
決断はやれやれといった感じに、軽く振動した。
「・・・ありがとな、決断」
『な、なに言ってんだよ、ほ、ほら、さっさと行こうぜ?未来の隊長さんよ』
照れたような決断の口調に、アッシュもうれしくなって再び力を取り戻したような気分になった。
「ははっ、よし、いくぜ!!!」
『おうよ!!!』
決断を腰に下げたアッシュは、城に向かって走り出した。
アッシュはまだ知らなかった。
すべてを。
この後、自分の身に起こる悲惨な運命を。
エトランジェの存在のことも。
そして・・・・・・・・・・
あの少女のことも。
すべては、始まったばかりだった。
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あとがき
あ〜、オリジナルって難しい。
こんにちは、miTurugiです。
さて、私のオリジナル永遠物語、いかがでしょうか。
・・・・・まず設定がどんどん増えていく・・・・・・
そして、ちょっとまずかったかな・・・カルヴァとエルナは。
構成ではもっとクールだったんですがね、カルヴァ君。光陰みたいになった。
今回は序章ということで主人公二人を出しましたが、次からはどちらかがメインで話を展開させていくつもりです。
では、次回でお会い?しましょう。
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次回予告
シアリィ「レストラン、ドミニストへようこそ〜〜〜」
ツカサ「えっと、何で僕たちまでここに?」
シアリィ「この次回予告では、その回で出番のあまり無い人が担当するのです!」
ツカサ「・・・そういえば、結局僕たちの出番なかったもんね」
テイカ「そーよそーよ!アタシたちは勇者様なのよ!この扱いは何なのよ!」
ツカサ「僕たちは勇者じゃなくてエトランジェだよ」
テイカ「どっちでもいいのよ!同じ正義のヒーローなんでしょ?」
カム「ふふ、そうとは限らないかもな」
ツカサ「え?それ・・・どういう意味ですか?」
カム「次回」
シアリィ「早すぎる試練」
ツカサ「何なんですか〜?先輩〜〜〜」
カム「次回を待て」
テイカ「それじゃ、まったね〜〜〜♪」