Oath and Promise
Chapter0
僕と『僕』 -Those who talk-
ピチョン―――――
足元に水滴が落ち、波紋が広がる。
立っているのは水の上、沈む事がない水の上。
「やぁ僕。
久しぶりだね」
目の前に一人の人物が姿を現す。
「やぁ『僕』。
1ヶ月ぶりかな、どこに行ってたのさ」
周囲は闇。
それなのに、2人の少年の周りのみ明るかった。
「ちょっと問題が起こってね」
「そうかい。
帰って来たという事は、問題は解決したんだろう?」
平然と会話する2人。
着ている物も違えば体格、顔も違う。
それなのに他者が見たら一瞬、同じ人物が二人居るような錯覚に陥るであろう。
それ程に二人の「何か」は酷似していた。
「いや、それが厄介な事になった。
『僕』から忠告しとかないといけないんだ」
「厄介な事?
それに、僕に忠告だって?」
僕と言う少年は寝巻き姿。
もう1人の『僕』という存在は見慣れない制服に、黒っぽいコートを羽織っていた。
「ああ。
僕、近い将来に常識を逸した事態が起こるよ」
「常識を・・・逸した事態?」
「ああそうだ」
「『僕』、詳しく教えて貰えると幸いだ」
「それは『僕』にも分からない。
何せまだ不確定要素が多くて、どう転ぶか分からないのが実状だ。
漠然と、ただ厄介な事に成る事しか分からない」
「何が起こるか分からないけど、起こる事のみは分かってる。
本当に厄介な事だね」
「僕、いつも言ってる事だけど・・・」
「僕は『僕』であり『僕』は僕でもある、だろう?
長い付き合いだ、『僕』の言う事ぐらい分かるよ」
「ああ。
どんな状況にあろうとも、『僕』は僕の傍に居る。
その事だけは忘れないでくれ」
「当然だよ」
「さて、『僕』は消えるとしよう。
流石に疲れたよ」
「ああ、待ってくれ『僕』」
「なんだい、僕」
少しの間を置いて、少年が答える
「いつもの様な映像は無いのかい?」
「残りが少ないから今日は止めとこうと思ってたんだが・・・見たいかい?」
「ああ。
すまないが、今日はそんな気分なんだ」
「そうか、なら見せよう」
もう1人の少年が眼を瞑り、顎に手をかける。
考え、言葉を選ぶ時の仕草だ。
「タイトルは・・・そうだな、『終わる過去、始まる未来』としておこうか」
「その映像もどこかから仕入れて来たのかい?」
「ああ。
そう解釈してもらって構わないよ」
「そうか。
それじゃまた会おう、『僕』。
呼び止めて悪かったね」
「ああ、元気でな、僕」
こうして二人の会談は終了し、夢へと移行する。
この世界でなく、何処かの世界で起こった冒険の映像-夢-。