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新たなる希望の光

第4話:力の片鱗


近づいてくる敵国のスピリット達。

迎え撃つは樹竜、エスペリアの二名だけだった。

数は不明。力の差もまだわからない。

見えないプレッシャーが襲い掛かってくる。

だが、

「大丈夫ですよ。なんとかならなそうでも、以外に何とかなるものなんですから。」



突然、左右の林からスピリットが襲い掛かってきた。

最初に狙われたのが先頭にいた樹竜。当の本人は武器を地面に突き刺したまま構えず、ダラダラとしてい
た。

ブルースピリット二人の同時攻撃!間合いは完璧、当たると思った瞬間!

二人の攻撃が通り抜け、お互いを斬りつけるという形になった。

致命傷とまではいかないが、それなりにダメージを与えていた。

それを見て追撃に出ようとしていた他のスピリットが飛び出してきた。

敵の部隊はブルースピリット二人、グリーンスピリット一人、レッドスピリット三人だった。

後方からグリーンスピリットが怪我を負った二人を回復させようと神剣魔法を使おうとするが、

腹部に突然の激痛が走り見てみる。

すると巨大な剣が腹から生えていた。いや、

「悪いな、戦闘で一番厄介なのは仲間の傷を癒すことができるグリーンスピリットだからな。始めに
潰させてもらう。」

突き刺さっていた大剣を上へ向かって斬りつけた。

完全に絶命したグリーンスピリットの方を見たスピリット達は驚いていた。目の前にいるエトランジェ
とグリーンスピリットを倒したエトランジェ、まったくの同一人物だった。

「まだ気付かないのか?お前らが見ているのはデコイだよ。」

言い終わると先ほどまで見ていたエトランジェの体が薄くなっていき、最後には消えていた。

「驚いているが僕の永遠神剣は光を操る事に対して特化しているからな、これくらい簡単なことなんだ
よ。」

そのままスピリットが群れている場所に突進していく。

振り落とした一撃はブルースピリットに止められ、後ろにいたレッドスピリットが神剣魔法を使おうと
していた。

だが、

「あまいな。」

ブルースピリットの腹部を蹴りつけ後方に飛ばし、ちょうど後方にいたレッドスピリットを巻き込み神
剣魔法を阻止した。

「他のスピリットは...!?あそこか!」

エスペリアの近くに他のスピリット達が集まっていた。

うまい攻防を行なっていたが、数が多すぎるため徐々に傷を負っていた。

「クソッ!」

急いで走り出すが、スピリット達との距離がかなりある。

一番に神剣魔法を使うレッドスピリットのところへ向かうが、間に合いそうに無い。

「【光源】!何か無いか!」

『この状況なら〔シャイニングフィールド〕が一番有効かと。』

「よし!」

立ち止まり、大検を地面に突き刺して...

「「フレイムレーザー」」

「シャイニングフィーールド!!」

ほぼ同時に放たれた神剣魔法。

僅かだが樹竜の魔法の効果の方が全てに行き渡り全てを包み込む。

エスペリアに大ダメージを与えるはずの魔法が、僅かな傷しか与えることができなかった。

「これは...」

「大丈夫ですか!エスペリアさん!」

呟くエスペリアに急いで近づいていく樹竜。

「えぇ、大丈夫です。」

「フゥー、間に合ってよかった。」

額に汗を拭って安堵した。

視線をエスペリアから敵のスピリットに向け、

「エスペリアさん、まだいけますよね?」

「はい、まだいけます。」

「ならブルースピリット二人、お願いしていいですか?僕は残りのスピリットを撃破します。」

「わかりました。気をつけて下さい。あのスピリット達はまだ無傷ですし...」

「大丈夫ですよ。あぁそれといい忘れていましたが、このフィールドの中では神剣魔法はほとんど意味
がありませんから。まぁ攻撃、防御に関しては大丈夫なので、それを考慮して戦ってください。では」

ブルースピリットを無視してレッドスピリットへと走り出す。

通り抜けていった樹竜を後ろから追撃しようとするが、

「あなたたちの相手は私です!」

時間差でやってきたエスペリアに邪魔され足を止めてしまう。

「ありがとうございます!」

走りながら礼をいう。

レッドスピリットの近くまで来ると、勢いを殺さずそのまま突きをだす。

防御の体制は十分にとれてはいたが

「無駄だーーー!」

神剣を砕き、そのまま胸部を貫いた。

その一撃でレッドスピリットは絶命し、マナへと還っていった。

「あと二人!」

防御が無駄だと悟り、闇雲に襲い掛かってくる。

今度は樹竜が防御にはいる。さすがはエトランジェといった感じで、硬い防御でスピリットの攻撃をま
ったく受付けない。

少しだけできた隙を見逃さず斬りつけ絶命させる。

残り一人も襲い掛かってきたが、余裕を持って足払いをして転ばせて、大剣を突き刺した。

そのままの体制のまま

「...すまない。」

苦い表情をしたまま呟く。

「キリュウ様...」

「!?...エスペリアさん、大丈夫でしたか?」

「はい、私の方はたいした事はありませんでした。」

「そうですか。」

そこで話が途切れる。

「すいませんエスペリアさん、先に悠人達のところへ向かっていってくれませんか?」

「どうしてですか!?」

「理由は二つあります。僕がまだ完全に使いこなせていないせいでシャイニングフィールドが完全に解
けるまでここから動けないんです。もう一つはですね、実は僕、結構、満身創痍なんですよ。」

「ですがあの戦闘ではまったく...」

「確かにあの戦闘では傷を負うようなことはありませんでしたが、あなた達と会う前に修行をしていた
んですよ。その時の傷が開いてしまったらしくって、立っているだけでもやっとなんですよ。」

「...わかりました。では失礼します。」

「いってらっしゃ〜〜い。」

手を振りながらエスペリアを見送った。

『いいのですか主。あのような嘘を言って。』

「いいの、いいの。満身創痍って言うのは本当なんだし。」

『ですがフィールドを解き、あのスピリットに癒してもらえば...』

「いや、ここで神剣魔法を使わせては悠人達が辛くなる。この場はこれでいいんだよ。」

持っている大剣に意識を向け、シャイニングフィールドを解いた。

そしてそのまま草むらの中に倒れこんだ。

「ダメージ吸収か、あまりホイホイやるものではないな。」

エスペリアを助けた時に使った技、相手を使用している武器で貫き、その時相手の負ったダメージを吸
収して、相手を癒すといった神剣魔法である。

しかしこれには魔法の詠唱はいらず、本人の好きな時にできるといった反面、全てのダメージを吸収し
てしまう不便さがある。

『それで主、この後どうしますか?』

「そうだな〜...とりあえず悠人達が戻ってくるまでここで寝ているか。僕のレベルが低いからまだ
回復魔法もできないし、ね。」

『わかりました。では、おやすみなさい。』

「おやすみーー。」

そのまま寝てしまった。





しばらくして悠人達が戻ってきて、草むらで倒れている樹竜を見て驚いたが、寝ていると分かり小突い
て起こした。

「おかえり。」

寝ぼけながらそういった。

体中に負った傷はエスペリアに直してもらい、今はラキオス城にいる。

王に会う前

「メチャクチャ気に入らなかったら違うところへ行くから。」

その発言のおかげで悠人とエスペリアは緊張しながら王の前にいた。

「エスペリア、なんですその者は。」

王が話す前に、隣に王女が話しかけていた。

「はい、この方は任務の途中、私たちを助けてくださったエトランジェのキリュウ様です。」

「そうですか。」

どこか値踏みをする姫の視線に小さな声で悠人に

「ねぇ、今ってさ僕の鑑定?」

「多分そうじゃないか?」

「う〜ん、美人に鑑定されるほどかっこよかったかな〜?」

「...どこをツッコンでいいのやら。」

「それでどうなのだそのエトランジェの実力は?」

今度は王が笑みを浮かべながら聞いてきた。

「はい、この方は満身創痍の状態でもスピリット二部隊を軽く倒す実力があります。」

「ほぅ。」

濃い笑みがさらに濃くなり、樹竜は寒気がしてきた。

(大変です!大変です!)

(どうしました主!)

(脂身が話しています!たすけてくれーーー!)

(...そうですか)

【光源】はそういって黙ってしまった。

「そこのエトランジェよ。」

「はい。」

王女が話しかけてきて少し暗めの返事をした。

「もう一人のエトランジェと共に、このラキオスの為に働きなさい。」

「嫌です。」

まさに速攻!一瞬でその場が静まり返った。

動揺の声があたりに響く中、悠人とエスペリアが詰め寄ってきた。

「樹竜!」

「キリュウ様!」

「「どういうことなんだよ(なんですか)」」

その声を会えて無視して

「どういうことです。」

王女の歪む顔を見ながら一言、

「メンドイ。」

「「「...ハッ?」」」

「いやだから、メンドイ。」

また静まり返ったが

「ぶ、無礼者!!」

周りにいた兵士が怒鳴り声を上げる。

「まぁ、待て。」

いままで沈黙していた脂身王が話す。

「こやつもエトランジェ。どのように歯向かおうが、所詮王族には逆らえんのだ。」

唯一冷静を保っていた王。その理由がこれであった。

「エトランジェよそなたに拒否権は無い。ワシの期待を裏切ぬようにしっかりとラキオスの為に働いて
もらおう。」

頭をかき『悪いなー』という表情をしながら。

「あぁ、悪いが僕には強制力は聞かないから。」

「なに?」

その一言で醜い笑みが消えた。

「なんで?って顔しているけど...あれは四神剣の主に対してだけだから。僕の神剣は四神剣ではな
いしね。」

「何を馬鹿なことを。」

「まぁ、信じられないか。なら試してみるか?」

そういって大剣を持って王へ近づく。

信じていない王は笑みを浮かべながらその状況を見ていた。だが

「バ、バカな!?」

「だからいっただろう。僕には強制力は働かないって。」

大剣を背中に背負い、元の場所へと戻っていく。

「まぁ、そういうわけだから。」

「ではどうすれば我国のために働いてくれるのですか?」

いっぺん変わって話す態度が変わった王女。

「そうだな、まず衣食住の保障を一つ、あとはまぁ知り合いのそばが楽だから悠人が住んでいる所に
住ませてもらえばいいかな?」

「そ、それだけですか?」

以外に簡単な願いに拍子抜けしてしまった。

「うん、今のとこはそれだけだね。」

「わかりました。」

「じゃあー、そうゆうことで。」

そういって片膝をつき、

「永遠神剣 第四位【光源】の樹竜!一時の間ラキオスに忠誠を誓います!」






第4話完




あとがき
 どもー!毎度毎度、短い文で申し訳ないと思いながら送っているマスタです。樹竜の力の一部、光の
操作について書けましたが、これも全て【光源】の訓練(拷問)のおかげですね。ちなみにラキオスに
行っても【光源】の地獄の特訓は続きます。あわれ樹竜!明日の朝日は見れるのか!?

では次回もよろしくお願いします。

PS:3000HITもしていました!皆さんありがとぅ〜〜!

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