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新たなる希望の光

第2話:ラキオスのエトランジェ




「エトランジェ、スピリットよ。我国に国籍不明のスピリットが進入した。いま王は同盟国家との
会談のため、国を離れている。そのため今回の指揮は、この私が行う。」

(王と考え方が違うはず?いったい何を考えている?)

王女レスティーナの説明しているなか、悠人は思った。スピリット、エトランジェを道具としか思
っていない国王とは違いレスティーナは何かが違った。

だが、それでも現在やらせていることは王と変わらない。

だから悠人はまだレスティーナを完全に信用することができていなかった。

「エトランジェとスピリットは、すぐにラースに向かい国籍不明のスピリットを完全に消滅させよ。」

話は続く、その皇女の目は部下としてではなく道具、兵器としか見ているようにしか思えなかった。

(佳織を守ってくれているはずなのに、なぜ?)

様々な思いが浮かび上がる中、

「ご安心くださいませ。この身がマナの霧に消えようとも、ラースの街を必ず奪還いたします。」

エスペリアの発言に悠人は

(そうだ、こんな状態では佳織に危険がつく!)

佳織を守る...その思いが自分を戦わせるのだと再認識する。

「それでこそ、我国のスピリット。期待している。」

「ハッ」

エスペリアとの会話が終わり今度は悠人の方をむいてきて

「エトランジェよ」

「ハ、ハッ」

いきなり向けられた声に少し驚きながら返事をした。

「決して他の者たちの足を引っ張らぬようにせよ。」

(そんなことはわかっている)

「わかっていると思うが、そなたの働きがそなたたちの運命を左右することを忘れなきように...」

レスティーナの声が冷たく響く

(やっぱり佳織は人質ということか)

言葉を聴き、膨れ上がる怒りを必死に堪えた。

「よいな、エトランジェよ。」

「ハッ」

襲いかかりたい気持ちを抑え頭を下げる。そんな心を黒い感情が沸きあがり、身体中に力がみなぎって
いく。

『そうだ  憎む   マナを』

弱々しい声が聞こえてくる。

(......?  !? くっ また、この声か!)

「さっそく支度にかかれ」

その言葉と同時に何かが動き出した気がした。









全てはここから始まる










時は少し遡る。

異世界にきてから二週間、樹竜は【光源】を体の中に隠しながら、ラキオスの近く、北西にある洞窟
の中にいた。

現在の樹竜の状況は...上半身裸で倒れている。

「し、死ぬ!絶対に死ぬ!」

うわ言の様に唱える樹竜。

『立て、主。まだ終わっていないぞ。』

「た、頼む!今日はもう勘弁してくれ!」

『まだです。今日は後二時間は頑張ってもらいます。」

「ヒ、ヒーー!」

哀れ樹竜。鬼コーチ【光源】の前では、ただただ泣き叫ぶしかないのか。

こうなった理由。それはこの世界に来たときに起こった事から始まった。



「何のつもりだ。」

一人の赤い髪の少女に剣を向けられて言い返す樹竜。

少女も何か話している用だがサッパリわからない。

(【光源】、なに言っているかわかるか?)

(もちろんわかります。私たち『永遠神剣』は全ての世界から主を選ぶわけですから、必然的に世界の
言葉がわかるのです)

(なら、翻訳してくれ!)

(わかりました)

そんな話し合いをしているなか、少女は大きな声を張り上げて襲い掛かってきた。

(おい!なんだ!何で襲い掛かってくるんだ。)

(話を途中から聞いてませんでしたが、理由はわかります。この世界では異世界の住人の事をエトラン
ジェといい、一人で国一つの力を持つといわれています。)

(なるほど、だからこの世界に来たばかりの僕なら倒して連れて行けると思ったんだな)

(話が早くて助かります。)

こんな会話中でも相手の攻撃を全て紙一重でかわしている。これは神剣を使わず自分の身体能力をがど
れだけ上がったか試すための実験を意味している。

(これなら大丈夫だな。ところでこの子、なんかおかしくないか?目が虚ろって感じがするんだが。)

(そうですね。これは神剣に心を奪われつつありますね。)

(...?そうなるとどうなるんだ?)

(簡単に言えば意志を持たぬ者、人形になってしまう...ということになりますね)

(!?...そうか。)

襲い掛かってくる少女を蹴り飛ばし間隔をあけて剣を構える。

「なら、完全に意識が奪われる前、自分が自分であるうちにお前を...殺す!」

振りかぶり少女に突撃する。少女は片手をこちらに向けて

「......ファイアボール」

生み出される巨大な火の玉は確実に樹竜を捕らえていた。

少女との距離はまだあるが、気流は振りかぶった剣を振り落とし棒高跳びの要領で空中に回避する。

それと同時に神剣魔法を唱える。

「【光源】の主、樹竜が命ずる、マナよ、オーラフォトンとなり束縛の光となれ!ホーリジェイル!」

【光源】から発せられた四つの光の玉が少女の周りに移動し、そこから細い鎖が出現し少女を捕らえる。

少女は必死になって抵抗するが、予想以上に鎖は強く振り払えるものではなかった。しかも抵抗すれば
するほど鎖は少女を強く締め付ける。

「すまないが、これで終わりだ。」

空中にいた樹竜は悲しげな声に少女は少し笑ったように見えた。

言葉はわからなくても雰囲気で何かわかったらしい。

重力加速度をつけながら、そのまま剣を振り下ろす。

少女はそのまま絶命し、マナの霧へと還る。

『お見事でした』

「まだ意志のある者を殺したんだ。そんな言葉はいらないよ。」

『いえ、あのようにしなければ主に危険が及んでいたはずです。』

「...そうだな。それでも相手を傷つけるのは...辛いものがある。」

少女が消えたところを見つめ、苦い顔をする。

「傷つけられるのは大丈夫なんだが、傷つけるのは嫌だな。それでも自分の意志がない者を生き続けさ
せていても、その人を侮辱しているように感じる。だから僕はそんな人を殺す。」

呟きの様に話す樹竜。それは何かの誓いのように感じる。

「だが、その前に......【光源】」

『何でしょうか主?』

「この世界の言葉を教えてくれ〜〜〜。」

シリアスな雰囲気がぶち壊しである。












話は戻り地獄の勉強(拷問)から二週間後


「終わった。」

『終りましたね。』

「終ったぞーーー!コンチクショーーー!!」

叫ぶ樹竜。

「長かった、長かった。まさかあんな地獄の様な勉強会になるとは思わなかった。だが、そのおかげ
この世界の言葉は僕のもんだー!」

少し意味のわからない発言だったが、それはしょうがないといえよう。

樹竜が勉強を始めてから休みというものは食事、トイレ、睡眠以外はまったくと言っていいほど無かった。

しかも止めようとすれば、【光源】が内側から電撃攻撃をしてくる。

逃げるに逃げられない状況、樹竜はあきらめて勉強についた。

物覚えはいい方だが、完全に覚え、話せるようになるまで【光源】は納得しなく、毎日スパルタ教育が
続いたのである。

勉強中に樹竜は思う。

(どっちが主かわからないなー)

と。

「さて、言葉も覚えたわけだし、そろそろ行動いたしますか。」

『では主、どこに向かいますか?』

「んー。そうだなとりあえず近場のラキオスかな?」

『ではそこのエトランジェと一緒になると?』

「いんや、それはまだないかな。しばらくは様子見。で、納得できなかったら違うところに行く。」

『わかりました。それでは...』


ドゴォーン!!!


近くで爆発がする。

「な、なんだ!?」

『近くで戦闘のようですね。』

「そんなのはわかっている!...クソッ!【光源】行くぞ!」

『しばらくは様子見では?』

「いや、戦闘ということはラキオスにいるエトランジェが出ている可能性がある!もしそうなら確かめ
に行かないと不味いかもしれない!」

『わかりました。では行きましょう。』






場所は変わる


悠人達は今、所属不明のスピリットとの戦闘を終え、少し休憩をしていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、...」

永遠神剣【求め】を近くに置き座って休んでいた。

「大丈夫ですかユート様?」

笑顔で問いかけるエスペリアに悠人は引きつった表情で上半身をそらす。

「あっ...」

その行動で気まずい雰囲気になった。

「ち、違うんだ...お、俺...」

「申し訳ありません。私たちも少し休みますので、どうか心を落ち着けてくださいませ。」

「ご、ごめん...エスペリア。」

「気になさらないでください。ユート様は初陣なのですから。落ち着きましたら、および下さいませ。」

哀しそうな表情で頭を下げて離れた。

視線を下に向け、少し自己嫌悪になっていると

「パパ、どうだった?オルファの活躍!」

「オルファ!こっちに来なさい。」

「え〜っ?どうして?せっかく敵さんやっつけたのにぃ?」

「いいから!!」

「ぶぅ〜!」

離れていく二人を見て悠人は

「きっと褒めて欲しかったんだろうな...」

そう呟く悠人

(でも...)

〜それは違うと思う〜

そう思っているが、この世界での教育がそうさせたのだろうと考えてしまう。

「ユート。」

「うわっ、アセリア!?いつからそこに!?」

「さっき。」

驚いた気持ちを落ち着かせるため、大きく息を吸って落ち着かせた。

「脅かすなよ。」

「戦わないのか?」

その言葉に苦いかをしながら

「...戦わないんじゃなくて戦えないんだよ。剣がうんともすんとも言わないんだ。」

「剣が...使えない。」

少し間をおき

「...怖いんだよ。あんなの見たことないし、自分が誰かを殺すなんてリアルになれないんだよ。」

少し睨む様な感じで言ってしまった。

「リアル?ユートは戦うのが怖いのか?」

「アセリアは怖くないのか?あんなふうにいつ消えていくかもわからないのに。」

先ほどあった戦闘を思い出しながら聞いてみた。

「...私は剣のためにいる。剣が戦えというならば、戦う。」

「剣に従うだけなんて...」

愕然とした表情で悠人は呟く

「アセリア!こっちに来なさい!」

エスペリアが現れる。

「話の途中でいつの間にかいなくなるんですから。」

「ん。」

アセリアは頷いてオルファリルのところに向かっていく。

「申し訳ありませんユート様。」

「いや...俺も落ち着いた。さっきは...その、ごめん。」

「いえ、気になさらないでくださいませ。」

エスペリアは笑顔で答える。その笑顔のおかげで幾分か楽になった。

「ここを突破しましょう。それからです。おそらくはまだ伏兵が潜んでいると思います・・・アセリアも油断をしないでください。」

「ん・・」

「オルファ!移動しましょう。」

「はーい。ねぇねぇ、アセリアお姉ちゃん!これ、ネネの実だよ。あっちで見つけたんだぁ〜。はい、あげる。」

「ん・・・」

「はい、パパもエスペリアお姉ちゃんも。」

「ありがとう、オルファ。」

「ありがとう。」

悠人はオルファリルの頭を撫でてやる。

「えへへ♪オルファ、よくわからないけど・・・元気出してね!」

オルファリルはアセリアの方へ走っていった。

すると、エスペリアが悠人に近づいた。

「エスペリア・・・」

今度は、震えることもなかった。エスペリアはそっと頬を撫でる

「ありがとう・・・」

悠人の言葉に、エスペリアは優しく笑った。







「な、なんだ!?このスピリット達は!?」

突如現れた二体の赤のスピリット。

「ユート様!あのスピリット達は危険です!お下がりください!」

エスペリアが叫び前に出る。

「オルファ、アセリア!ユート様をお願い!」

そういって飛び出すエスペリア。

「エスペリア!」

「ん...」

悠人を庇うようにアセリアが立つ。

「エスペリアお姉ちゃん!」

「下がって、オルファ!」

叫び声に、オルファもその場に止まってしまう。



凄まじい攻防。

二体の赤いスピリットの前にエスペリアは堅い守りで弾いていく。そして隙があれば攻撃をして間隔
をとりながら戦っていく。

そして大きな隙が見えた瞬間、エスペリアが飛び出していく。

だが

「インフェルノ」

「きゃあああああ!」

足元から現れた爆発を直接くらってしまうエスペリア。

「お姉ちゃーーーん!?」

「エスペリア!エスペリア!」

そういっている間にも、もう一体の赤いスピリットが止めを刺すためエスペリアに向かっていく。

何とか立ち上がったエスペリアだが、まともに動くことはできなかった。

「エスペリアーーー!」

悠人は叫ぶ、アセリア、オルファが飛び出す。

だが間に合わない。

剣が当たる瞬間!

スパッ!

赤いスピリットの剣を持っていた手が切れた。理由は上から巨大な剣が降ってきて切り落としたのだ。

何事か見るが、一瞬で目の前にあった大剣で斬りつけられてマナの霧へと還っていった。

もう一体のスピリットは危険を感じ、すぐに撤退していった。

「あらー、逃げられちまったねーー。」

エスペリアの前には悠人と同じくらいの青年が大剣を軽々と持ってそう言った。

アセリア、オルファは少し呆然としていたが、悠人だけは違っていた。

目の前の青年に指をさし、

「お、お前、樹竜?」

「やあ!なんかピンチのようだったから助けに来たよ。」

緊張のかけらもなく返事を返した。










第二話完











あとがき

皆様どうもマスタです。どうだったでしょうか今回の話は?なんか微妙だった気がしますが、まぁ
そこはこれから上達していく(多分)ので勘弁してください。
まぁ話はこれぐらいにして。次回は逃げていったスピリットを追っていく話ですね。後はこれから
考えていくので長ーーーーい目で見守ってください。


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