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新たなる希望の光

序章:ひび割れた日常

『主よ、目覚めよ』

遠くから何か声が聞こえてくる。

『目覚めよ』

どこか懐かしく、そして寂しい声。だが姿は見えない。

(誰だ?僕に何か用か?)

返答しようにも声が出ない。しかし

『我は、汝の剣。永遠神剣 第○位【○○】』

(?)

聞こえてはいるが肝心なところが聞こえない。

(永遠神剣?何だそれは?)

『主はこれから異世界に行き、様々な体験、出会い、別れが待っている。』

(いやいや、そんなとこ行きたくないから)

勝手に進んでいく話に訳もわからずつっこんでしまった。

だがそんなことにお構いなく。

『その時、我は主の力となろう。』

(おーい)

もうどうでもよくなったのか、声に力が入っていない。

そして、話が終わったと同時に意識が覚醒していく。

(あぁ、そういえばこれ夢の中だっけ?)









「なんか気分わりぃ〜〜。」

樹竜は気だるい声を放ちながら体を起こす。

「なんだったんだろう今の夢?なんかやけにハッキリ覚えてるし。」

布団の中で必死に考えるが、どうでもよくなってきたのか「まっ、いっか。」ですませてしまった。

現在、樹竜が住んでいる場所は神社である。別に元から住んでいたわけではなく、学校の通学が便利
だということで神社に住んでいるのだ。

ちなみに神主とは親戚なので簡単にこちらにこれた。

「さて今日の予定は、と。 ...ゲッ!」

部屋の中のカレンダーを見た瞬間、樹竜は嘆いた。

「神社全体の掃除と足りない物の買出し...こりゃ学校休みだな。」

そうと決まれば即行動、すぐ電話をして掃除を始めなければ。

受話器の前に行き、考える。さて誰に電話すべきか。現在6時50分、光陰は起きているだろうが
電話にすぐ出ないのはわかっている。今日子は、まだ寝ているな。最後は悠人だがやつも寝ている。
!?いや、奴には最強のSISTER、佳織ちゃんがいるではないか!そうと決まれば。

「もしもし、牧野ですが。悠人君は起きていますでしょうか?」

わかっていながらも聞くところが律儀である。

『牧野先輩ですか?お兄ちゃんはまだ寝てますけど。何か御用ですか?』

「うん、そうなんだけどね。悪いけど佳織ちゃん、悠人が起きてからでいいから伝えてくれないかな。」

『わかりました。で、伝えたいことというのは?』

「今日、用事があって学校には行けないから、と伝えておいて。自分で連絡すれば一番いいんだけど
これからすぐに作業に入らないといけないからね。」

『そうですか、わかりました、お兄ちゃんにはそう伝えておきます。』

「いやー、悪いね」

『いえ、お仕事のほう頑張って下さい。』

「どうも、それじゃあね。」

そういって電話を切る。早速取り掛かるとしますか。








作業が終わったのは日が暮れかけたころだった。

「や、やっと終わった。叔父さんの頼みとはいえ、結構厳しいぞこれは。」

近くにおいてあった清涼飲料水を飲みながらいった。やはりこれだけの作業を一人でやるのは辛いもの
である。

賽銭の近くに腰掛けながら。ボーっとしていると下の方で何か気配がする。

(ん?なんだ?)

面倒くさがりながらも声のする方へ行ってみる。

「おい!誰かいるのか!」

歩きながら、声をかける。

しかし、いきなり足元から現れた光に吸い込まれていく。

(な、なんだよこれ!?何でこんなありえないことが起こるんだよ)

そんな考えをお構いなしに、体が吸い込まれていく。

(ありえないが、確実に起きていることだ。なら!)

全体が吸い込まれる直前。樹竜は息を大きく吸い込み。

「な、何じゃこりゃーー!」

某ドラマに出てきた有名なセリフを叫びながら光の中に消えていった。


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