作者のページに戻る

番外編 スピリット――その思い

「ほらほらシアー、いこういこう♪ 今日はいい天気だから、お散歩日和だね♪」
「う、うん! お姉ちゃん」
「毎日がこうなるように、あたし達が頑張らないとね!」
「……う、うん! あたしも、頑張る! お姉ちゃんと、ずっと一緒にいたいから……」
「そうだね! あたしも、シアーとずっとずーっと、一緒にいたいもん♪」

『静寂』の元気娘。『孤独』知らずの引っ込み思案
 ネリー・ブルースピリット
 シアー・ブルースピリット

 開戦当初からラキオスで戦ってきたこの二人の実力は、もはや部隊には
 欠かせない力へと成長していた。
 ネリーのスピード、シアーのパワー、どちらも開戦当初とは比べ物にならない。
 先ほども述べたが、この二人の力はもはや大陸の中でも最強の部類に入るだろう。
 そしてネリーはシアーの姉として、シアーはネリーの妹として、この戦いの中で
 深い絆が生まれた。
 その二人のじゃれあいは、本当の姉妹をも超えているだろう。
 休日は二人で城下町へ出動。
 そこで頬張るのは、もちろんヨフアル。

「あ、あたしだって、ホントは怖いんですから! ほ、ホントですよ?
 ……ふえぇええんごめんなさいそんなことないですから逃げないでくださいぃ。
 ……はい、お姉さんは優しいですからね♪ って、お姉さんに見えないって
 どういうことですかぁ!」

『失望』など露知らず
 ヘリオン・ブラックスピリット

 ネリー、シアーと同じく、誰もがここまで成長するとは思っていなかった妖精は、
 今やその剣技の実力はファーレーンにも勝るとも劣らない。
 しかし性格は、最初期からあまり変わっていない。
 戦闘中におどおどすることはなくなったが、いまだに自分に実力に自信が持てていない。
 最近の休日の過ごし方は、ミリアの家庭菜園を手伝ったり、街に出て子供達に
 剣の使い方を教えている。
 どうやら子供の相手は大丈夫らしく、ヘリオンは城下町の子供達の人気者。

「ヒミカさ〜ん、今日もいい天気でいいですねぇ♪ こんな日に食べるお菓子は、
 ホントに美味しいですねぇ♪」
「そうね……でも、毎日がこんな風になったら、私は」
「大丈夫ですよぉ。そのときは、そのときです。それに、ヒミカさんだったら
 大丈夫ですよぉ。わたしが保証しますぅ♪」
「……ふふっ。ハリオンがそういうと、何事も大丈夫に思えてくるから、面白いわ」

『大樹』の暖かさ。『赤光』の輝きの心
 ハリオン・グリーンスピリット
 ヒミカ・レッドスピリット

 昔も今も変わらず、おっとりとした性格のハリオンに、生真面目な性格のヒミカ。
 この二人の関係は、これからも崩れることはないだろう。
 お互いがお互いの足りない部分を補い、助け合い、これからもずっと、同じ道を
 歩んでいくだろう。
 そしてこれから、スピリットたちを正しき道に導いてくれる、先導者にもなれるだろう。
 この二人は、それだけの指導力と包容力を持っているはずだ。
 最近、ハリオンの趣味だったお菓子作りにヒミカもはまっていて、休日はもっぱら
 お忍びで練習中。
 ヒミカ曰く、「こんなの、見つかったら……似合わないから……」
 ハリオン曰く、「そんなことないですよぉ♪ ヒミカさんは才能ありますってぇ♪」
 らしい。
 そして最近、ヒミカはセイグリッドの代わりに二号館に移ることになった。

「……変わった、わよね。私も、あなたも、そしてこの国も、人も、みんな」
「……うん。セリア……」
「でもやっぱり、あなたが一番変わったわよ、ナナルゥ。でもどうしても、
 思い出せない……」
「……この国を、ううん……みんなを変えた、人……」
「そうね……でも、もういいわ。あたしは、今を大切にしたいもの。ナナルゥと
 一緒にいる、この時間をね」
「……うん。ありがとう、セリア……」

『熱病』を払いのけ、『消沈』が浮上したとき
 セリア・ブルースピリット
 ナナルゥ・レッドスピリット

 この戦いを通じて、一番変わったのはこの二人だろう。
 セリアは性格が丸くなり、よく笑顔を見せるようになった。
 その笑顔は温かく、軟らかく、そして、その笑顔がナナルゥの心を助けた。
 ナナルゥはセリアと話し、共同作業をし、そしていつも間にか闇に落ちかけていた心は
 再び光を取り戻していた。
 そんなナナルゥはセリアによく懐き、セリアは押さえ込んでいた温かい心で迎え入れた。
 常連となったカフェで休日を楽しみ、戦闘では二人のコンビネーションの前に
 立っていられる敵はいない。
 最近のセリアの悩みはナナルゥと大差をつけられている胸――(効果音:ズブシャァッ!

「フォーレーンさん……」
「なに? ニム……」
「……ニム、今すっごく幸せだよ……みんな一緒で、ファーレーンと一緒に入れて……」
「わたしだって……この戦いが終わったら、もう、戦わなくていい日が来る……
 それがわたしが、ニムに生きていて欲しい時代が、ようやく来るの……」
「ファーレーンさん……」
「ニムはわたしの大切な、大切な家族なんですから」

『曙光』の眩しさを、『月光』で受け止め――
 ニムントール・グリーンスピリット
 ファーレーン・ブラックスピリット

 もともと懐いていたニムントールと絆をさらに深めたファーレーンは、
 いつしか戦いのない世界で、ニムントールに今までやってやれなかったことを
 して欲しいと願うようになっていた。
 そしてそれを、自分の戦う意義として掲げるようにもなっていた。
 ニムントールは戦いを通じて、『仲間』という繋がりの大切さを知り、一歩、また一歩と
 成長していった。
 訓練が終わったあと、ファーレーンがニムントール膝枕をして木陰で休むのが
 最近の日課。
 実に嬉しそうな表情で眠るニムントールを、ファーレーンは仮面の奥にある優しい瞳で
 見つめている。
 その姿はまるで、母親と娘のようにも見える……。

「……ワタシの、戦う意味……それは遠く昔に、誰かのために、捧げたはずの剣……
 ですが今は違います。この国のため、そして、ワタシたちスピリットと人の未来のため、
 ワタシは戦います。ですが……今一度、会ってみたいです。思い出せない、誰かに……」

『刻印』を刻まれ、奮い立った思い
 セイグリッド・ブラックスピリット

 一度は失われたが、再びこの地に舞い戻った『不死鳥の戦乙女』。
 その性格は面倒見がよく、優しいお姉さんと部隊で通っている。
 街にもよく出没し、昔誰かに教わった小物作りの材料や参考になる商品を見繕っている。
 そして、その心には大きな空洞ができていた。
 それは、自分が剣を捧げようと思った人のこと。
 一度だけ、いや、他の誰にもなびかないセイグリッドが、唯一、心から『好き』に
 なった人。
 ちなみにほとんど差別のなくなった今の大陸で、声をかけられることはよくある。
 特に差別がいち早くなくなったラキオスではもはや、妖精趣味はないといっても
 過言ではない。
 その中でも、特にセイグリッドの容姿は街の人々の視線を集めるほど。
 しかしセイグリッドは来る男来る男すべてを笑顔で「ごめんなさい」で追い返す。
 当然だ。
 その思いが向けられるのは、ただ一人。
 思い出にある、『誰か』だけだから――
 決め技は、黒の属性を幾重にも自らの神剣に乗せ、極限まで属性効果を高める、
 『ファフニール・ブレード』。
 それと対象に属性効果を与えることができる『ダーク・エンチャント』。

「アズマリア、今回のイースペリアの復興に関する調書です。目を通しておいてください」
「はいはい了解しました――っと、パーミア、ヨフアルのおかわり、お願いね」
「……はあ。よくそこまで食べて、どこに入っていくんですか」
「気にしない気にしない♪ えへへ……心配してくれてありがとね、パーミア」
「わわわッ! き、急に抱きつかないでくださいよアズマリア!」
「いいじゃんいいじゃん♪ ……大丈夫だよ。あたしだって、早く帰りたいもん……
 そして、国を挙げてみんなの弔い、してあげなきゃ……人にも、スピリットにも……」
「……そのときは、きっとそう遠くない未来、来るでしょう。いえ、私が、必ず」

『鉄血』の誓いを胸に秘め――
 パーミア・ブルースピリット

 変わらない関係を、アズマリアと築くイースペリアのスピリット隊隊長。
 ラキオスで一緒に過ごすうちに、パーミアもアズマリアのことを呼び捨てにするように
 なり、関係がより深まったことを示している。
 今はまだ復興途中のイースペリアとラキオスを行ったり来たりして、有志のスピリット
 とともに王国の再建をアズマリアと目指す。
 ミニオンとの戦いが激化する中でも、パーミアの率いるスピリット隊は引けを取らず、
 パーミアの統率能力の高さが見て取れる。
 そんなパーミアのために有志となったスピリット達の目的は――パーミア自身(!?)。
 パーミアはどちらかというと、いや、スピリットからしてみれば大き目の身長。
 そして凛とした顔立ち。
 惚れるスピリットがいないというほうがおかしいらしい(アズマリア談
 積極的なスピリットもいれば、陰からウットリとパーミアを見つめるスピリットも
 いるらしい(アズマリア談
 決め技は精神を集中し、『鉄血』の力を限りなく限界まで高めた、『インパルス』。
 その衝撃は相手を強制的に行動不能にするほど。
 そして――決め技、というわけではないが部隊全員の力を引き出させる、『激励』。
 これはエトランジェの力に近いが、オーラではなく言葉によって能力を
 引き出させるため、傷を癒す力は無い。

「ひなたぼっこ……気持ちいい〜♪ ん〜……眠ったら、また見れるかなぁ……
 つんつん頭のぉ……とっても優しくって……とってもおっきくってぇ……
 優しい匂いの……お姉ちゃんの夢ぇ……♪」

『熱砂』の思いを乗り越えて――
 セリス・レッドスピリット

 新たな姉に囲まれて、幸せな日々を送るセリス。
 過去に傷つけられた心は癒え、今では年少組みに混じって姉に甘える。
 最近は徐々にひなたぼっこメンバーも増えてきて、大勢に囲まれ眠るそこには
 幸せ空間が漂っている。
 特にセリスの寝顔は見るものすべてを癒すといわれるほど。(レッドスピリットなのに)
 その起きたセリスにどんな夢を見たのかと訊くと、決まって同じ答えらしい。
「大好きなお姉ちゃんと、一緒にいる夢。一緒になって、お昼寝して……ずっと、ずっと
 一緒にいるっていう……とっても、とっても嬉しい夢です……♪」
 しかしそう言っているときのセリスの顔は、どこか陰りを持っているという。
 だが次の瞬間にはいつもの、天使のような笑顔が戻っているという。
 誰も、その真意を知ることはできない。
 セリスの心に深く、深く残っている『姉』は、特別な存在だから。
 決め技は、持てる神剣魔法の最大火力を相手にぶつける、『ブラスト・ランチャー』。

「てめ、アリア! そりゃあたしのヨフアルだろうが! さっさと返せっつうんだよ!」
「へっへーん♪ カグヤが残してるからいけないんだからね♪ はむっ♪」
「なぁあああ!? なっ、てめっ、は――ガキが! そこになおれコンチクショウッ!」
「きゃー♪ カグヤが怒ったぁ♪」
「あらあらアーちゃんもカグヤさんも楽しそうねぇ。ちょっとはクーちゃんみたく私の
 家庭菜園の手伝いしてくれないかな」
「それは……無理な話でしょうね、ミリア姉さん。でも、あの二人はあれぐらいが調度
 いいんじゃないですか?」
「それもそうねぇ。……ん〜、でも、な〜んか足りないのよねぇ」
「……そう言われれば、そんなような気がしないでもないような……
 いえ、そんな気が、します」
「誰かがあの二人の仲裁に入ってたような……あっ、このハーブそろそろじゃない、
 クーちゃん?」
「あっ、ホントですね。……ミリア姉さん、こっちのリュクエムとかも取れごろなのでは?」

 四人の絆はこれからも――

 アリア・ブルースピリット
 カグヤ・ブラックスピリット
 ミリア・レッドスピリット
 クォーリン・グリーンスピリット

 マロリガンの復旧もそこそこに、ラキオスで楽しい生活を手に入れた四人。
 もちろん、この四人を中心にマロリガンの復旧は行われているが、今現在の
 情勢からもともと他にいたマロリガンのスピリットが母国に戻り、奮戦している。
 故にこの四人は基本的にはラキオスの、第四スピリット館に住んでいる。
 そこでは毎日のようにアリアとカグヤの姉妹喧嘩が起きて、ミリアの家庭菜園が
 その勢力をどんどん伸ばし、今では庭のほとんどが農地に。
 そしてクォーリンのハーブ畑もその農地の隅にちょこんとある。
 『足りない』
 そこに当てはまる人物を胸に、四人は今日も過ごしていく。
 思い出が詰まった故郷を取り戻すために。

「大隊長……また読書ですか?」
「ん? ああ、アイラちゃん……ううん。今日はちょっと違うわね」
「へ? 大隊長が休日にすることといったら寝ること食うこと読書すること、
 そのどれかしかないでしょう? なに冗談ぶっかましてくれているんですか」
「……アイラちゃん、それ、絶対に偏見だから。こんな窓の外を見ながらそれができる?」
「ああ、なるほど。大隊長はあの人にお熱でしたね。ここから丸見えですねそういえば」
「……そういうアイラちゃんだって、あの娘にくびったけじゃないの?」
「あれはいいんですよ。小さい子はかわいい。それ以外に表現のしようはありません。
 ああいった子を腕の中に包んで、匂いを確かめ、感触を味わい、悦に浸る……
 はぁ……そう考えただけでも鼻血が出てきそうな勢いです。至極のときです」
「実際出てるから後でちゃんと拭いときなさいよ。ったく、こういうところは
 あたし以上なんだから」
「……ちょっと心外な気もしますが、大隊長。本題なのですが――」

『樹林』の大きさ、『氷河』を超えて――
 フェイト・グリーンスピリット
 アイラ・ブルースピリット

 サーギオスの領土をミニオンから守るための巡回部隊の大隊長と、その副隊長補佐を
 勤めている二人。
 まあ実質、この二人の関係は変わっていない。
 副隊長のクリスを放っておいて、この二人の漫才は展開される。
 あまり知られてはいないが、フェイトの力は本当に強力。アイラも同じく、だ。
 意外なことにフェイトは癒しの力がハリオンにも負けず劣らず、戦闘能力も、
 多分大陸全土のグリーンスピリット――いや、スピリットの色に関係なく最高クラスの
 力を持っているといってもいいだろう。
 決め技は緑属性を自らの神剣の先に集中、すべてを貫く『エア・スマッシュ』。
 そして癒しの力を過剰なまでに送り、相手のキャパシティを超えさせる、
 『デストロイ・プライヤー』。
 そんなフェイトの最近もマイブームは、アイラの淹れてくれたお茶をすすりながら、
 人間観察。
 そして部隊のみんなの面倒を見ること。意外と世話好きな面も持ち合わせている。
 アイラの力も相変わらずで、アイスバニッシャーの効果を攻撃に転じれることができる。
 その特殊すぎる力を使えるのは、大陸中を探してもアイラのみ。
 発想の転換がすばらしい――とはいっても本人に自覚がないのがさらに凄い所である。
 そんなアイラの決め技は、氷を刃に纏わせ、相手に凍傷と同時に深い傷を負わせる、
 『氷陣刃』。
 手元に氷の力を集め、小さな吹雪を相手に吹き付ける『アイシクル・ウィンド』。
 頭の回転も速く、常に冷静だが、唯一の欠点としてあげるなら、無類の子供好きと
 いう所だろうか。
 とにかく小さい子供が大好きで、隊の小さめのスピリットを見つけると目にも
 止まらぬ速さで抱きしめ、頬を摺り寄せ、はあ……、と悦に入る。
 しかしそれを拒む者はあまりいないという話。
 最近のマイブームはハーブティの調合。

「はい、報告ご苦労様です。あなたも休んだ方がいいですよ? ……あっ、はい!
 今行きますね。ちょっと待っていてくださ〜い! ん? あっ、私は、大丈夫です。
 私よりも苦労した人を、知っていますから。……え? それは誰ですか、って?
 ……ごめんなさいね。私も、よく覚えていないんです。でも、私がとても
 お世話になった、ということだけは覚えているんです。今でも、私目標は……
 その人のようになるということです」

『蒼天』を切り裂く黒の刃――
 クリス・ブラックスピリット

 仮面を脱ぎ捨て、もう隠すことも、隠す理由も『無くなった』クリス。
 そのブラックスピリットにしては珍しい、ブルースピリットに負けず劣らずの
 美しい青髪をなびかせ、部下に慕われるよき副隊長として、ラキオスに貢献している。
 そんなクリスは、記憶にあるのに、記憶にない、銀髪の人の後ろを追いかけ、
 追いつけないとわかっていても追いかけ続けている。
 戦闘能力は間違いなくトップクラス。
 その実力はカグヤですら軽くあしらえるほど、一対一の駆け引きの強さは
 群を抜いている。
 他にも統率能力はフェイトやパーミアほどではないとしても、
 まあ、比べる相手が間違っているといえるほど高い。
 決め技は自らの神剣の名前のとおり、相手を蒼い天へと還す無数の刃で
 相手を切り裂く『蒼天の太刀』。
 神剣魔法の、黒い刃で広範囲の敵を切り刻む『シャドーエッジ・インパクト』。
 趣味は、小物集め。
 特にかわいい物好きで、セイグリッドにリクエストをする場合もある。
 部屋はセイグリッドの作品の割合が一番多いとか。

作者のページに戻る