第二十五話 嵐の前の静けさと言うもの(後編)
『今井美紗の場合』
「ん……ん〜ッ! 朝だこんちくしょーッ!」
元気ハツラツなお目覚め。淑やかさなど、どこかに置き忘れてきたさ。
少々寝癖のついた、ツンツンと針金のようにとがっている茶色の髪。
そして少しつりあがった瞳に、欠伸をかましている大きなお口。
そう。
我らがプリンセス、今井美紗のお目覚めの瞬間であった。
「今日もいい天気ねぇ。これで戦闘無かったら最高なんだけどな」
『……あ〜、朝から独り言、うっせえぞミサ』
伸びをして、体と意識の覚醒を図る美紗に対して、気だるそうな不機嫌な声。
それは美紗の手首に装着された、『依存』から放たれるものだった。
『せっかく、いい感じに寝てたのになんでてめえなんぞに起こされなきゃあかんのだ』
どうやら『依存』は、安眠妨害に対しての苦情を、美紗に伝えたいらしい。
「そりゃ、あんたがあたしの神剣だからよ。何言ってんの?」
しかし(良くも悪くも)単純な美紗には、あまり通じなかったようだ。
瞬間、
(……なんで俺はコイツを主人に選んじまったんだろう……)
と思ってしまう。
しかし、認めてしまったものはしょうがない。
いまさら文句を言った所で、ここまで付き合ってしまった時点で、いろんな意味での
覚悟はついていた。
「いいじゃないの。珍しく自分から目、覚めたんだからちょっと散歩でもしようかな」
と、いうわけで。
「あっ、おはようございます、ミサさん」
「おっはよー、ミリア」
「あっ、今日は早いんですね、ミサさん」
「うん。ちょっと早起きしてね、クォーリン」
「あっ……ミサ、お姉ちゃん……おはよう、です」
「……おはよ、セリス」
「うわっ、美紗が普通に起きていやがる!?」
「あたしが起きてるのがそんなに意外か!」
――ズビシィッ!
「……あたしが目を覚ましちゃいけないんかまったく。これでもあたしは元の世界じゃ
早起き得意だったっつうの。この世界に来て疲れがたまりすぎただけだっていうのに」
『まっ、珍しいことはするもんじゃないって事だ……』
経緯はどうあれ館内のメンバーとの朝のコミュニケーションを済まし、
まだ清涼感たっぷりの朝の空気の中に身を投じる。
肺一杯に、その少し湿気を帯びた空気を溜め込み、名残惜しみながら吐き出す。
片手で光を調節しながら、下手をしたら気持ち悪いくらい晴れ晴れとした空を仰ぎ、
煙の上がるハリセンを反対の手で担ぎ、驚くほどすっきりとした表情で眼を細めた。
……その清々しすぎる表情の裏には、犠牲者が一名ほどいるのだが。
そんなことはおいといて。(いいのだろうか? ……美紗がいいと思ったら全てよし)
やはり、この世界はいい。
空気も美味しいし、何より晴れの天気が多い。
本日もその例に漏れずに、だった。
美紗自身、というか本能的に美紗は雨のようなじめじめしたものを嫌う。
性格だろう、と美紗をよく知る人物は口をそろえていうものだ。
「あの……お姉ちゃん」
「ん?」
身を半分翻し、首をちょっと動かすと、そこには先ほど挨拶を交わした赤い妖精が、
相も変わらず控えめな態度で、しかし以前とは違うなにかを持った様子で、いた。
「セリス、どしたの?」
「その……今日は、えっと……」
と、言葉半ばに抱きついてくる。
美紗はそのさほど重量を感じない体を優しく抱きとめた。
そして普段はなかなか見せない(某彼氏により見せれない)優しさと慈しみを持った
瞳でその後頭部を見つめた。
真美から話を聞かされていたし、自分も体験したことだからさほど驚きはなかった。
セリスの態度。
初対面(ということになっている)の時はさすがに遠慮はあったものの、
その晩には、
「お、お姉ちゃんって、呼んでもいいですか……?」
と、小さな体で、勇気を目いっぱい振り絞って、言ってきた。
もちろん美紗はそれを拒むなど無粋な真似はしない。
以前と同じ、いや、それ以上に親密な関係を築けていると思う。
「……うん。セリス、ちょっと散歩に行こうと思うんだけど、一緒に行かない?」
微笑みながら、美紗が言うと、
「ッ! は……はいです!」
セリスは、この朝日よりも眩しい笑顔で答えてくれた。
と、いうわけで。
「それで、ですね……ヘリオンちゃんは、街の男の子に剣の稽古をつけているんです」
「へえ。あのヘリオンがねぇ。あの娘、なんかみょーに親近感がわくのよねぇ。
なんでだろ?」
ただいま、森を散策中。
肌には感じない風が木の葉を揺らし、心地よいBGMとなる中を二人は歩いていた。
身振り手振りで会話を成り立たせるセリスの愛らしい姿を、美紗は聞き、見つめていた。
それだけでも楽しかった。
また、あの時と同じ生活を送れている。
エターナルになっても、なんら変わりない生活。
しかし、
「……で、ですね……ネリーちゃんとシアーちゃんが……」
この生活にも、必ず、確実に終わりがやってくる。
それはこの戦いが終結したとき。
この世界に滞在する意味がなくなったとき。
この世界の、大切な人達との永遠の別れが、やってくる。
戦いは終わらせたい。
だけど、今、自分の目の前で話をしてくれている小さな妖精との別れは、辛い。
自分は明人とは違う。
ここが、決定的に違う。
空也にも、悔しいが負けている。
自分が、あの三人の中で一番弱い。
――心――
明人のように、自らを犠牲にしてこの戦いを終わらせようと強い決心もつけられず、
空也やアセリア、エスペリア、オルファ、ウルカのように誰のためというわけでもない。
中途半端な自分が、少しだけ嫌になった。
……いや、少し、ではない。
こんな中途半端な気持ちで、自分は、エターナルになってもよかったのだろうか。
『別にいいに決まってるだろうが……』
(ッ! 『依存』……)
『難しいことをぐだぐだ考えるな……今中途半端なら、このあと変えていけばいい。
そんでもって、今は目先の幸せを大切にしとけよ……この時を逃したら、もう二度と、
味わうことの出来ない時間になるかもしれないんだからな……』
珍しく、『依存』は多弁だった。
それだけ、伝えたかったことなのだろう。少し動揺してしまう。
目先の幸せ大切にしろ。
まあ、『依存』が言う分には説得力はあった。
「それでで――ッ!? み、ミサ、お姉ちゃん……?」
「ごめん……ちょっと、この体勢、いい?」
今度は、美紗のほうからセリスを抱き寄せた。
そうだ。
この感触を、忘れなければいい。
小さくも、暖かい。
このまま力を込めたら崩れてしまいそうな華奢さ。
しかし大きな存在……。
自分の弱さのせいで孤独を与えてしまった少女の温もりを肌で感じ取り、
美紗は目をつぶって、確かめるように背中に手を回した。
さぁっと、セリスの髪を揺らすほどの風が流れた。
その艶が綺麗な赤い髪が頬をくすぐる。
ああ、そうだ。
自分はそのときの気持ちによって、テンションの変化が激しい。
だから今、自分の戦う理由に、この少女を守りたい。
そして、この少女の未来を作ってやりたい、と思っていた。
『別に本当に理由なんて何でもいいんだよ……つうか、そんなものなくても、戦える。
それでも探したいなら、協力ぐらいはしてやるさ……面倒臭ぇけど、一応、お前は
オレが久しぶりに認めた、ご主人様なんだからな……』
『依存』も相変わらずやる気のない声だったが、一応、励ましてくれたようだ。
――よしッ!
自身に気合を入れる。
心の中で自分の両頬をスパンとはたき、気合注入(バーニングファイアー方式)。
美紗は後に回した手をほどき、セリスの大きな瞳をしっかり見つめると、
「今日はとことん、一緒に遊ぼう! あたしについてこれる?」
ニッと笑って本日の予定を簡潔に、大胆に、これぞまさに美紗だ! と言う風に伝える。
最初はその豪快さにセリスは戸惑ってしまったが、すぐに状況を整理。
数回言葉を詰まらせ、受け入れ準備、
「は、はいですッ!」
完了。
「ただいまー」
「ただいまですー」
もちのろんだが、二人同時に帰宅。
すでに館には朝食のかぐわしい香りが充満していた。
二人仲良く肩を並べて廊下を通り抜け、食堂に着くと、
「あっ、おかえりなさい。もうちょっとまっててくださいね。すぐに準備終わりますから」
テキパキと自らの手がけた朝食を並べる(誰がつくったのか)割烹着姿で頭に三角巾を
装備したミリアの少々早口のお出迎え。
意外かもしれないが、この館の家事はミリアに一存されている。
洗濯や食後の後片付けなどは他のメンバーもお手伝いに借り出されるが、
基本的にはミリアがすべてを仕切っている。
「ミリアお姉ちゃん、スープお皿に移しとくね!」
「あっ、ありがと、アーちゃん」
「ミリア姉さん、パン、運んでおきますね」
「お願い、クーちゃん。ついでにアーちゃんと一緒にスープもお願い」
「ああ、それはあたしがやっとくよ、ミリアの姉貴。食器も並べ終わったことだしな」
「う〜ん、やっぱりスピリットってのは、エプロンドレスが似合うものなのかねぇ」
「カグヤちゃんサンキュ〜♪ クウヤさんは変な色目を使わずちゃっちゃと
手伝ってくださいな」
てきぱきと働くみんなを(一人は半ば強制的に)取り仕切るミリアは、
生き生きとして見える。
基本的に、こういったことが好きなのだろう。
まもなく、食卓は食欲に真っ向勝負を仕掛けてくる香りと、視覚からも訴えかけてくる、
見ているだけで心が躍る朝食で彩られた。
「おまたせしました、っと」
三角巾を取り払い、燃え盛る炎と見間違えるかのような純粋な赤を印象付ける長く、
艶のある髪を揺らしながら割烹着もついでに脱衣。その下はエスペリアと同じだが
色の黒いエプロンドレス。
ちなみに言っとくと、美紗と空也を除くメンバー全員、おんなじ格好。
それにしてもミリアの割烹着姿はよく似合うものだった。
こいつぁ、いい嫁さんになるぞと『依存』の感想。意外と親父くさい。
「エスペリアさんの料理と比べたらまだまだですが、どうぞめしあがれ♪」
「そういや空也、なんだかんだで朝から起きてたけど、どしたの?」
もさもさとバターの塗られたパンにかじりつく美紗が、もっさりと具をはさんだ、
アリアが羨ましそうに見つめるがしかし絶妙すぎるバランスではさまれているパンに
今まさに噛み付こうとしている空也に問いかける。
二人とも、色々と豪快すぎ。
「ん? ああ、今朝なんかたたき起こされた。ん〜……誰、だったかな?
よく覚えてないんだよなぁ。鼻頭がジンジンして」
さすさすと絆創膏の張られた鼻を撫でる空也。
どうせまた、何かやって自業自得だったのだろうと美紗は納得。
「それにしても、ミリアの料理、見た目も味もいいわねぇ。惚れ惚れしちゃうよ」
「ありがとうございます、美紗さん。ですが、先ほども言いましたとおり私なんて
まだまだですよ」
「まあ、確かにエスペリアのほうが上手いなぁ」
「ちょ、空也! あんたなに言ってんのよッ! 十分美味しいじゃない」
「こういうときは、ちゃんと言ってやった方が仲間としてはいいと思ってな。
なあ、ミリア」
「そうですねぇ。じゃ、クウヤさんはお昼抜きの方向で行きましょうか」
誰も気付いていないが、ミリアの後頭部らへんに『♯』マークが浮かんでいる。
「えぇええええ!? ちょ、なんで!?」
「人の料理を馬鹿にする人にお出しするものなんてありませんわ〜」
「そうだよねぇ。今のはクーヤが悪いって」
「まあ、ミリアの姉貴の料理にけちつけたんだ。自分で作れって話だ。なあ、セリス」
「そうですよぉ。クウヤさん、自分が言ったことには、その、責任持ちましょうね?」
「無責任な人は信用を得られない。隊長としての欠点ですよ、クウヤさん」
どうやらこの場に、空也の味方となってくれるものはいないようで。
みんなから非難の視線を一斉に浴びてぐうの音も出ない空也。
段々扱いが悪くなっているのは、内緒だ。
「はい、空也。ミリアに言うことあるでしょう?」
そして最後のしめは、勝ち誇った笑みの美紗。
絶対的に優位に立ったものが出来る、満面の笑顔だ。
さあ、謝れ。(美紗)
さあ、謝ってみてよね。(アリア)
さあ、謝ってくださいな。(ミリア)
さあ、謝りやがれ。(カグヤ)
さあ、謝りましょう。(クォーリン)
さあ、あ、謝ってくださいね?(セリス)
美紗と八つの瞳。
「だ、あぁあああもう! わかった。俺が悪かった! ミリアの飯はホント、美味い!」
そう言ってたまらず空也は豪快サンド(後にアリア命名)にかぶりついた。
「ん〜ッ! 美味しかったぁッ!」
「です〜♪」
朝の水気を含んだ清々しさもなんのその。
天気はすっかり爽快晴天。美紗のようなさっぱりとしたものとなっている。
その中で、美紗は大きな伸びをする。ついでにセリスもその脇で太陽光を目いっぱい
体に集める。
食事のあと空也は一人強制的に皿洗いをレッツビギン。
なんかこのあと予定があるとか言っていたがそんなのなんのその。
で、いつもはちゃんとお手伝いをしているセリスも時間が空き、今に至る、と。
こういうときだけは役に立つなと美紗の感想。
こういうときでしか価値観を見出してもらえないなんて難儀だなと『依存』の感想。
美紗にべったり出来る時間が増えて嬉しいなとセリスの感想。
そして朝食の後の予定はというと。
「……なにしよっか?」
『お前な……空っぽなのは頭の中だけにしとけ』
『依存』の突っ込みも、また正しい。
事実美紗は、何も考えていなかった。計画性のない猪突猛進の性格が仇となった。
あはは〜、とバツが悪そうな笑顔をセリスに向けるだけだ。
「そ、それじゃあ……ひなたぼっこ、しませんか?」
と、セリスの打開策。
「あっ、それいいわね! こんな天気のいい日は普通だったら、外駆け回るのもいいけど、
そういった落ち着いたのもいいわね♪」
『お前の口から落ち着くと言う言葉が――』
――それ以上言ったら、あんたの体、叩き壊すわよ? 『依存』♪
本気の声だった。(もちろん『依存』にしか聞こえない心の声で)
そのかすかな変化すら感じ取ったセリスがどうしたの? と言う顔で覗き込むが、
美紗はぼろをまったく微塵も出さずに、(後ろに悪鬼の潜んだ)笑顔で答えた。
で。
結局の所、予定はセリスの提案に乗ることに決めた。
セリスの話によると、第一スピリット館に、結構大きなハーブ畑があって、
近くに寝転がるのにちょうどよい芝の敷き詰められた庭があると言う。
特にこういう日、晴れ晴れとした天気の日にはその香りも、いっそう際立つと言う。
常連のセリスが言うから、絶対だった。
むしろセリスが中心となって、同年代のスピリット達が集まり、集団でひなたぼっこを
暇が出来たら行っている。らしいので。
二人は第一スピリット館に差し掛かる。
すると、遠方から声が聞こえてくる。
聞きなれた声が、三つほど。二つは今朝聞いたばかりだ。
何事かと思い、二人は顔を見合わせ、声の発信源に向かう。
そこにいたのは――
「ふぇ? あっ、せ、先客です……か?」
その剣幕に、思わずセリスはおどおどしてしまう。
なぜか少し殺気立っているミリアと、困った表情を作るクォーリンと、対峙する形の
エスペリア。
明らかに雰囲気が悪い。
先ほどまで元気一杯だったセリスが押し黙ってしまうほどだ。
「ありゃ? もしかして、ダブルブッキング?」
いち早く空気を読んだ美紗が、普段どおりの声を上げる。
こういうときの判断力は、とても素早いものだ。
それに気付いたのか、気付いていないか。
「あら? セリスちゃんとミサさんじゃないですか。どうしたんですか? 二人して」
ミリアはいたって平静を装い、返してくる。
やはり、伊達にお姉さんキャラを名乗っているわけではない。
察しがいいのは、もはやデフォルトか。
「ひなたぼっこ、今日はお休みじゃなかったの? セリスちゃん?」
さらに間髪いれずに語りかけてくるミリア。
殺気は、もうない。その熟練の役者顔負けの『顔』の使い方に、セリスは
少々驚きながらも、顔を真っ赤にしながら答える。
「えっと、あの、ミサお姉ちゃんと二人でひなたぼっこしたかったですので……
な、なんでかはわかんないですけど……その……」
それを見て、完全に毒気の抜かれた様子のミリアは、ため息一つ。
んー、と少々唸ってから、
「まあ、そんな細かいことうだうだ言ってるの、私の性にあわないから、もうやめとくわ。
それに、なんだかんだいってもいいお友達になれそうだしね。私、草花が好きな人に
悪い人がいるんなんて思ったこと無いのよ」
エスペリアに向き直り、屈託のない笑顔でそう言った。
「……そうですね。あっ、エスペリアさん、今から時間がありましたら、一緒にお茶、
しませんか? スピリット館でわたしが手塩にかけて育てたハーブ、ご馳走しますよ」
クォーリンもミリアに続き、笑顔でのお誘い。
それを見て、美紗とセリスはなぜか胸をなでおろす。
明らかに様子がおかしかったからだ。
「……はい。ご一緒させてもらいます♪」
エスペリアも、どこか肩の荷が下りたという様子で、答えていた。
「じゃあ、私とクーちゃんは先に戻って着替えてるから、ちょっと時間を置いて四号館に
きてね、エスペリア」
「美味しいお茶菓子も用意しておきますから。あっ、ちなみに意外と思いますが、
そのお茶菓子は全部、ミリア姉さんの手作りで、味は保証しますよ」
「クーちゃん、最後の訂正しないとエスペリアにハーブティご馳走したあとすべて
引っこ抜かれてるかもしれないわよ?」
と、二人はこの場を立ち去る。
それを見計らって、美紗はエスペリアに近づき、小声でささやく。
(どうしちゃったの? ミリア、なんか様子変だったけど……もしかして、感づかれた?)
エスペリアに限って、とは思ったが、それ以上にミリアの勘は鋭い。
(……いえ、大丈夫です。あの人は、そんな細かいことにこだわる人ではないのでしょう?
わたしより、ミサ様のほうがよく知っていると思います)
(そりゃまあ……一緒に暮らしてるからね……)
(でしょう? では、わたしも一度、支度を整えますので……)
それに、どこか嬉しそうな口調でエスペリアは答えた。
なら、大丈夫だろうと美紗は踏んだ。
「……うん。それじゃ、エスペリア。ミリア達のハーブティはホントに美味しいよ」
「……あら。それはとても楽しみです♪」
「お茶菓子も、ミリアお姉ちゃんのがあたし的には、一番です……♪」
「そうなのですか。では、そちらも、楽しみにしていますね♪」
「それにしても、このハーブ畑、すごいわねぇ。あっ、これミリアの野菜?」
笑顔のエスペリアと別れ、数十分。
「ん〜……きもち〜♪」
草原の広大なベッドの上に寝転がる、美紗が伸びをしながら気持ちよさそうに
声を上げた。
燦々と輝く太陽が、陽気を生み出し、体全体を癒してくれるようだ。
セリスもその隣で、この陽光を、体を丸め、気持ちよさそうに受け止めている。
時折、思い出したかのように吹き抜ける風が、先ほど通り抜けてきたハーブ畑の香りが、
気分を落ち着かせる。
セリスの言っていたとおりだ。
ここは、晴れてさえいればこれほどひなたぼっこに適した場所はないだろう。
自然とまぶたが落ちてくる。
過去、この世界に来てから、これほどまでにリラックスした時間帯があっただろうか。
いや、なかったと言えよう。
それはやはり、
「ん〜♪ ぬくぬくです〜♪」
隣で眠る、新たな妹のおかげであろうか。
考えるまでもなく、そうだった。
というか考えるのはお前の本分じゃねえと『依存』が言いかけたが、その時点で、
美紗の意識はすでに深層心理の向こう側へと落ちていたのだが。
セリスはこの上なく幸せだった。
このエターナル――お姉ちゃんと慕う美紗のことは、事実よくわかっていない。
けど、昔から、こうしていたような気がする。
だから、このなんでもないひと時が、懐かしく、至福のひと時だった。
夢を、見る。
昔、まだ、自分がデオドガンにいたときの夢だった。
そこにでてくる先輩スピリットは、誰もが優しく、自身に接してくれていた。
自分は、とても幸せな環境で育ったと思う。スピリットであるのに。
別れは、唐突だった。マロリガンの強襲部隊に攻め込まれ、姉達はすべて、
マナへと還った。
次にたどり着いた、ラキオスでの出会い。
そこは今まで以上に、あったかい場所であった。
最後に、マロリガン……で、何があったのだろう。記憶が曖昧だ。
が、しかし。
その戦いで誰かが、自分に謝ってくれた。
その戦いの後、誰かが、一緒に泣いてくれた。
誰、だっただろうか。
思い出せない。
しかしそれは、自分にとって大切な、今隣で微笑んでくれている人と同じぐらい、
大切な人だったと記憶している。
もしかしたら――……いや、そんなことはないだろう。
しかしないとわかっていても、そう思うしかなかった。
本当に、彼女はなんなのだろうか。
答えは、考えれば考えるほどに見つからない。深みにはまっていく、底なし沼のようだ。
この陽気で持ち上がった気分でなにかわかると思ったが、やはりダメだ。
答えが出ることはない。
……なら、忘れよう。そう思う自分がいる。
この人がどんな人であろうと、自分が好いた人だ。
世間知らずと言われるかもしれないが、今のところ悪い人には出会ったことはない。
……なら、信じよう。そう思う自分がいる。
この楽しいひと時を。
それを感じている、自分を……そして、唯一無二の、姉を……
どれほどの時間を過ごしただろう。
すでに日は、高々と昇っている。昼に限りなく近い時間であろうか。
このまま何事もなく、今日という日が過ぎれば――そう思っていた矢先だった。
『ッ! 起きろ、美紗!』
「ッ! な、なに? なんなの!?」
そこに珍しく焦燥を感じさせる『依存』の声に、美紗は飛び起きた。
隣にいるセリスは、無反応。今なら簡単に食べれそうだ。
怖いお兄さん方、変な目で見るのは――って違う違う。
セリスはどうやら眠ってしまうと反応が鈍くなるらしい。新たな発見だ。
『それならちょうどいい。美紗、あの忍者ヤロウ……格好だけじゃねぇようだ……
完璧に気配を消して、奥の森にいる』
「ッ! ……どうして、あんたはわかったの?」
「俺は一度戦った相手の気配は絶対に忘れない。悔しいからな。どんだけ上手く気配を
消しても、俺のセンサーには引っかかる。そう出来てるんだ』
「……なら、話は早いわ。行くわよ、『依存』」
『了解。今回は、蹴りつける気で行くぞ、美紗』
森に入ってすぐ、だった。
どうやら完全に奇襲を仕掛けたつもりだったらしい。鉄仮面が崩れ、驚いている。
「まさか貴様に見つかるとはな」
「あたしの『依存』、舐めてもらっちゃ困るよ!」
これで三度目か。この二人が――パーサイドとミサが――対峙するのは。
一度は破れ、一度は退けた。
ここで決着をつけるのが常道か。
「ふん。一度の勝利で図に乗るなよ、小娘が」
忍び装束の後ろの腰に装備されている短刀に手をかけ、前屈姿勢をとるパーサイド。
「どっちが。あんときゃ逃がしたけど、今度こそ、フッ飛ばしてあげるわよ」
拳をあわせ、両手足にリングを出現させる美紗。
「戯言を……ッ! 『異端者』パーサイド……参る」
そこからは、音速を越えた戦いだ。もはや二人にそれ以上の言葉など不要だ。
「ふ――ッ」
先手にでたのはパーサイド。美紗は受け手に回る。
初速で地面を砕き、一気に間合いを詰めるパーサイド。
ウルカに負けず劣らずの抜きで『異端』を抜き、すべてを包む漆黒のような刃を
美紗に立てる。
美紗は拳で、それを受け止める。
すぐさま弾き飛ばし、美紗の間合いである超至近距離で反撃に移る。
「くらえッ!」
右足を支点に裏拳をかます。
しかしパーサイドの直前まで迫った所で、美紗のバランスが崩れた。
足元が滑る。先ほどまで泥濘などまるでなかったのに、まるで沼にはまった足のごとく
沈んでいく。
確か、このパーサイドの能力は……
『忍術だ。こいつはすべての属性を神剣で操ることが出来る。自然を弄繰り回し、
自分に有利な地形を作ってくる。さらに隠密機能は、どの神剣よりも高ぇ』
だ、そうだ。
これはさしずめ、土遁といったところか。確かにこの能力は厄介だと思う。
相手を故意に陥れ、そして自分は最善の状態で戦うことが出来る。
単独戦闘でこれほどのアドバンテージはそう、ないだろう。
美紗の攻撃は精度を失い、空を切る。
「かかったな」
静かにそう言い放ち、再びパーサイドの攻勢。
足元がままならない美紗は、しかし持ち前の反射神経をフル活用し、かわす。
まさか泥濘がここまで足を取るとは思っていなかった。実戦経験の差か。
無表情で追い詰めるパーサイド。だが致命傷は与えられない。
必死の表情で避ける美紗。だが致命傷は貰っていない。
この場合、精神的には追い詰める側の方が負担は重いだろう。
自分に有利な状況を作り、なおかつその術中にはめたはずなのに、まだ倒せない。
そういう焦れる気持ち。
それは必然的に、焦りを生む。
逆に、この不利な状況でも負けん気で立つ美紗は、幾分か楽だ。
多分、このパーサイドは静かに燃えるほうなのだろう。
相変わらず、鉄仮面だ。だがその無表情のせいか、変化が手にとるようにわかる。
確実に、自分が相手を焦らしている。
精神的に、有利な位置に立ったのは確かなことだ。
「……雷よ……我が手に集え……」
「ッ!」
目を見開き、明らかに慌て、離脱。
当然、はったりだ。苦そうな表情をするパーサイドをにやけ顔で見る美紗。
先日見せたあの雷撃の威力を覚えていたパーサイドにとっては当然の行為だった。
「どーしたのよ? もしかして、びびってる?」
しかしこうもおちょくられると、さすがに頭にくるものがある。
「黙れ……ッ! いいだろう……私の怒りに触れた罪、その身をもって味わえ」
空気が揺らぐ。
パーサイドの纏う空気の質が変わった。
放たれる殺気も、気配も、まるで違う。
「行くわよ、『依存』!」
『言われるまでも、ねぇよ!』
美紗も両足を踏ん張り、力を込める。
だが、この二人の力があまりに巨大だったため、気付かれ、また気付かなかった、
「ミサ……お姉ちゃん?」
乱入者が、一人。
「セリスッ!? 来ちゃダメ――」
「もらった!」
「ミサお姉ちゃん!?」
一瞬早く、パーサイドが出る。
この勝負でその一瞬は、限りなく大きいものだった。
反応が遅れる。
セリスが叫ぶ。
美紗は遅いとわかっていながら構える。
水を打ったような静けさ。
風が吹くと、葉がさざ波のように音楽を奏でる。
「……なに? どういうつもりよ」
美紗の首筋は、あと数ミリ踏み込めば確実に貫かれていた。
「……悪いが、このような不意打ち、個人的にはどうも好かん」
「さっきはもらった、とか叫んでたけど?」
「癖だ。忘れろ」
刃を戻し、振り返るパーサイド。
「今回は見逃してやる。その代わり」
鋭く光る眼光を向け、最後に、
「次に会うとき、このような無様な真似はしてくれるな……我が宿敵よ」
言い残し。
木の葉が舞い、パーサイドの姿を隠した次には、その姿は消えていた。
「だ、大丈夫ですか! ミサお姉ちゃん!」
それを待っていましたといわんばかりに、セリスが駆け寄って、美紗に抱きつく。
「……大丈夫よ……」
だが、精神的には十二分にまいっていた。
セリスに非があるわけではない。
油断を作ってしまった自分に責任があるのだ。
「……もう二度と、こんなことしない」
「ううん……させないですから」
「え」
「あたしが強くなって、お姉ちゃんの重荷にはなりません」
「……無理しなくていいのよ。今回はあたしのミスだからね。気負わない、気負わない」
意気込むセリスを尻目に、美紗は笑顔で対応する。
多分、今度会うときは本当に一対一か、空也と一緒にだろう。
パーサイドと、もう一人のパートナーらしきレイジスという男。
あいつは確か、空也にお熱だったから。
だからセリスと一緒に戦うことはほとんどないだろう。
「ゴメンね、せっかくの休日なのにこんなことになっちゃって」
「そ、そんなことないです! あたしは、十分楽しめていますから……」
「そう……じゃ、ちょっとここでゆっくりしましょうか」
案外、居心地がいい事が判明。
葉の隙間から入り込む木漏れ日や、静かな情景。
戦闘で踏み荒らされていない場所を選べば、寝転がることも出来そうだ。
それに、ハーブの香りも少し流れてくる。
今日は、いや、今度のすべてが決まる戦いまで、ゆっくりしよう。
そして、今度こそ、決着をつける。
この世界を、そして、今護りたいと感じている、この娘のために……
『三倉真美の場合』
まだ朝日すら顔を覗かせていない深夜に近い時。
一つの影が、その気配を隠すかのようにゆっくりと、しかしちゃんとした足取りで
ある部屋に歩み寄る。
「なんかすんごく扱い悪いような気がしますが、ようやく出番がやってまいりました。
さあ皆さんお久しぶり! みんなのお姉さん三倉真美、ただいま参上!」
だ、そうです。
ちなみに言うまでもないが、真美の向かう先にある扉の向こうには、真美その他大勢が
お熱のエターナル――『聖賢者』明人君がぐっすりとオヤスミ中のはずだ。
この時間はさすがに誰も目を覚ましていないだろう。
そう踏んでやってきた。
というか神剣から通じて他の小娘どもが覚醒していないことはわかっている。
確信犯だ。
「と、いけないいけない……抜き足、差し足、忍び足……ふふっ、まだアソコは誰も手を
つけていないと思いますから……私が一番乗りです……♪ 見たか小娘ども」
とうとう、扉の前まで到着。
さあ、このまま行くと我らが主人公、明人君の貞操が危うい。
だが誰も起きる気配はない。真美の隠密能力は、完璧だったということか。
およそ人の聴覚に入らない音を立て、扉を開け入る真美。
こんもりとふくらみを見せるベッドが見える。
本日の獲物が何も知らずぐっすりと寝ているはずである。
真美はそれをギラギラと目を輝かせ、息遣い荒く、それを睨むような視線を向ける。
「ふふふ……さあ、さあさあさあ! あっきとさ〜ん♪ 真美お姉さまが朝這いに
来ましたよ〜♪」
ぶわっと布団を剥ぎ取り、どういったタイミングでか巫女服を艶かしくはだけさせ、
表情も頬を赤らめすでに臨戦態勢。いつでも食べれます食べてください状態。
明人の事だ。どうせ押しには弱い。
だからこうやって強引に押し倒すのが一番の手法だろう。
他の小娘には真似できない強引というか恥知らずというかの手段。
どこからどう見ても、完璧な奇襲だ。防ぎようがない。
明人もこうなってしまってはもう抵抗など無意味だろう。
が、しかし。
「……って、明人さん……?」
さわさわと触ってみる。
感触が、人の感触ではない。なんか羽毛のような綿のような。
目が慣れてきたのと、ようやく顔を覗かせる太陽でそれを確認。
……丸められた布団が一つ、こんもりと抱かれている。
「なんじゃそりゃあ!」
みんなのお姉さん三倉真美、女性にはあるまじきセリフで思わず大声で突っ込み開始。
「なんで……そんな……私の完璧な奇襲がこのような古典的な手に引っかかるなんて」
「ん? 誰かいるのか?」
そこに、この館では似つかわしくない男の声。
しかしそれは、真美の待ち望んでいた人のものではない。
「って、あれ? 真美さん――」
「シャラップ」
――ズガンッ――
『時詠』の力を使い、明人とほぼ同じ時をもってしてエターナルとなった『応報』の主、
空也の背後に回って首筋に一撃。
空也はなにが起きたのかわからないうちに気絶。
なんだかんだで格段にキレのよい動き。戦闘能力はやはり、真美が一番だろう。
そんなことを思わせるが、今はそれを置いておいて。
「なんで空也さんが……ッ! こうなってしまっては、『時詠』、記憶の操作を」
『はいはい……まったく、少しは手加減を知りなさい、真美』
柔らかい、大人の女性を思わせる『時詠』の声が真美を諭すように声を放った。
「だってぇ……」
『あなたはあの人、明人さんに対して執着しすぎです。そんなことでは、
いつか足元をすくわれますよ』
続けて、『時詠』より少しきつめな女性の声の『時果』が文句を言う。
「そんな『時果』まで……」
『文句を言われても仕方のないことですよ、我が主』
最後に、『時逆』の先の二人を足して二で割ったような声でしめられる。
「うぅ……誰も私の味方してくれないんですかぁ……『時逆』までそんなこという……」
『いじけないの。はい、この人の記憶操作、終わったわよ』
文句は言いつつも、確実に仕事をこなす『時詠』に、真美はようやく安堵の声を漏らす。
「ありがとうございます、『時詠』……はあ……いったい明人さんはどこに……いえ、
それよりもいったい誰が明人さんを」
『それもそうね……私達、三人の網に気配が引っかからずに行動をするなんて……』
『だけど、主も他の女の子達にしか気配を回していなかったのが仇になったわね』
今回の件。
『時果』は真剣に考えているようで、『時逆』は真美を軽くけなしている。
しかし今回は、『時果』の意見が正しいだろう。
真美は他のエターナルとは違い、一本の神剣だけではなくこのように三本もの神剣に
認められている特異な人物だ。
力も、この世界にいるカオス勢の中では群を抜いて高いであろう。
それは同時に、気配察知能力も群を抜いているということに繋がる。
「……む。この気配は明人さん……ようやく? いや、勘がいいですね……消えましょう」
忍者よろしく。
そんな感じで真美は気配を消して、天井にへばりつく。
「おーい、いったいどこの俺の部屋まで行って――って空也!? どうした!
何があった!?」
「うぅ……あ……? オレは、いったい……」
「何があった。敵襲か? いや、ここまで巧みに気配を消す奴なんて……」
「そういわれりゃ、そんなような気がする……でも、あいつじゃねぇ……よな」
どうやら記憶操作は完璧に決まったらしい。言う空也の顔は虚ろだ。
とりあえず、自分のことは完全に記憶から抜け落ちたようだ。予定通り。
さて。
本日から、明人を連れ出した犯人を発見し、報復せねば。
『……諦めが悪いというか執念深いというか……良くも悪くも、ね』
そんな『時詠』の声は、すでに真美の耳に入ることはなかった。
朝食も摂らず自室にこもって今後の予定を決めていた。
「さて。まずは情報収集からです。基本基本、っと」
そしていつのまにか終わっていた朝食のあとすぐに、意気込む巫女が立つ場所は、
第二スピリット館の前に移っていた。
「おはようございまーす」
「あっ、おはようございます、マミさん!」
「お、おはようございます」
入ってすぐに出会ったのは、蒼き妖精の姉妹だった。
「あら? 今から訓練でしょうか?」
その二人は、いつもの戦闘服に神剣『静寂』と『孤独』を鞘ごと持っていた。
「うん! あたし達だって、アセリアさん達の足、引っ張りたくないですから」
「少しでも、強くなって……マミさん達のお役に立ちたいんです」
本日も変わりなく、元気いっぱい絶好調なオルファが太陽ならこちらは煌くマナの
輝きネリー。そんなに変わらないか。
そして思わず頭を撫で回したくなるような大人しく、控えめな態度のシアー。
ここまで両極端だと逆に気持ちがいい。だからこそ、二人の相性がよいともいえるが。
「それにこのあとアリアちゃんと合流して」
「他のみんなも一緒なの……」
「そうですか。あっ、お二人にちょっと訊きたいことがあるのですが……」
「なに?」
「ここ数日、不審な人物――いえ、新しく隊に配属された人とかいませんか?」
真美の質問に、二人はうーんと唸りながら考えてくれる。
まあ、本来の目的を知ったならばそんな気など起きないこと必至だが。
「お姉ちゃん、知ってる……? あたしは、全然……」
「ちょっと、そういうことにはあたしも……多分、ヒミカさんやファーレーンさん、
それにセイグリッドさんやパーミアさんなら知ってると思いますよ」
そしてそう、答えを導き出してくれた。
どうやらこの二人は戦闘専門だったらしい。
こういった人事は、明人やエスペリアを除くとその四人に任されているらしい。
当然といえば当然のことだろう。
「えっと、ヒミカさんは、確か王城に行っててお昼ぐらいにしか帰ってこなくて」
「ファーレーンさんは……この時間ならニムと他の場所で訓練していると思います……
パーミアさんは……アズマリア様の行政のお手伝いをしていると思います……」
「セイグリッドさんは……ねぇ、シアー」
「うん、お姉ちゃん……多分……」
「? 多分、どこに?」
少々困った表情を作り、口をつぐんでしまう二人に疑問がよぎる真美。
そして次にネリーから放たれる言葉により、真美は表情を変え、
この場から去っていった。
「どこですか! 明人さんどこですか! 返事なさい! 返事ッ!」
紅白の巫女服を振り回し、煙を上げて走る様は実にコミカル。
真美は先に聞かされたネリーとシアーの言葉により冷静さを失っていた。
冷静さを失いすぎるのも、ある意味問題であると思うが。
「多分、またアキトさんのこと探してると思いますよ?」
「セイグリッドさん……アキト様のこと好き、みたいですから……今日当たりに、
押し倒してみよっかな〜、って……冗談だとは思いますけど……」
と言っていた。
特に最後の言葉を聞いて真美が黙っているわけない。もはや必然。
「くっ、『時詠』『時果』『時逆』、全力を持って、エターナルの気配を!」
そんな不純なことで真剣の力を使うでない。
だがそんな言葉、今の真美に言った所で焼け石に水。
そんな灼熱にのぼせ上がった真美に対してどんな言葉もぬるま湯に等しい。
すぐに蒸発してしまうであろう。
『……あら?』
最初に『時詠』。
『……そんな』
次に『時果』。
『……珍しいこともあるものだわね』
最後に『時逆』。
そして声をそろえて、
『『『反応なし』』』
「なんですと!?」
言葉を同じくして、急ブレーキ。
「そんなことあるんですか、『時詠』」
『あるも何も、今、こうして気配が感じられないの。聖賢を完璧に中に隠してるみたい』
軽く言うが、それは結構難しいことである。
まず形ある神剣をマナに戻す。この作業が大変だ。
それをクリアして、自分の体を構築しているマナの波長とあわせ、しまう。
波長をあわすのもまた、難しい。いくら自分を認めた神剣だからといって。
現に真美も、『時詠』は常に袖の下に隠し持っていて、『時果』、『時逆』は、
必要に応じて具現化している。
「やりますね明人さん……こうなってしまっては仕方ありません……
先にセイグリッドさんを見つけましょう。誰か訊ける人は」
噂をすれば、なんとやら。
あの蒼い妖精と紅い妖精のコンビは……初期段階からこのラキオスに仕える妖精。
「セリアさん、ナナルゥちゃん、こんにちは」
打って変わり、営業スマイルを作って、のんびり歩くお二人に声をかける。
「はい? あっ、マミさん。こんにちは」
「……こんにちは……」
気付いたセリア、ナナルゥは頭を下げて挨拶をする。
戦闘中とは違い、二人とも、だいぶ表情が柔らかい。
「二人とも、セイグリッドさんを見かけませんでしたか?」
単刀直入。
余裕の無さが窺える一言であった。
「セイグリッド? 彼女は……ん? どうしたの、ナナルゥ」
「…………」
ナナルゥはセリアの背中に隠れるように下がっている。
どこか小動物を思わせるその珍しい行動に、セリアは振り向きながら訳を訊く。
「……話しづらいわ。いきなり、どうしちゃったの?」
「……この人……なんか、怖い……」
「え? マミさんが?」
「……うん。この人……見えない……よくわからないけど……全然違う……」
おっ、すごいぞナナルゥ。
一度、顔を合わしただけで真美の本性を見破ったか。
「何言ってるのよ、ナナルゥ。えっと、セイグリッドならアキトさんが街に行ったから、
今は自室で書類の整理でもしているかと思いますよ」
「そ、そうですか。ありがとうございます、セリアさん」
それでは、といって真美は早々とこの場を立ち去ろうとする。
ナナルゥは、人の腹の裏側まで見通す力があるのか。
そう思えるほど、的確で、タイミングがバッチリな突っ込みに動揺してしまった。
「はあ。別に、たいしたことではないです。では、わたし達も街に出ますので、また」
「……さよなら……」
「猫かぶりが通用しないスピリットがまさかいたなんて……」
『そこは悔しがる所じゃないですよ、我が主』
軽く『時逆』の突っ込み。
さて。今日はとにかく歩く日だ。
真美は再び、二号館の前に立っていた。
色々、明人達エターナル参戦により引越しがあったらしいが、セイグリッドは確か、
二号館に移住したはずだ。
ノックを二回、
「お邪魔しま〜す」
扉を開けて、中に入る。
「あっ、ちょっと待っててーッ! 今行くからーッ!」
と、そこにやってきたのは、
「……へ?」
「あら」
まさか。
誰が真美の訪問を予測していたか。
そんな油断が珍しいエンカウントを生む。
赤い妖精――ヒミカがエプロン姿(フリル付)で玄関に出現。
その姿を例えるなら、新妻。下は素肌ではないけど。
「や、な、ま、マミさん!? ちょ、なんで!?」
予期せぬ訪問者にあわてまくる戦乙女。珍しい光景なので思わず記憶に留めておく真美。
「ヒミカさ〜ん、どうしたんですか〜? クッキー焦げちゃいます――あら、
マミさんじゃないですか〜。こんにちは〜♪」
焦燥しきり、普段の凛々しさはどこへいったのやら。
な感じのヒミカをよそに、ハリオンが相変わらず間延びした口調で奥から出現。
こちらのエプロン姿は様になっている。
割烹着でも着たらよく似合いそうだ。(真美談
そんなことは置いておいて。
シュン、ともう何もいえない顔を真紅に染め上げて俯けるヒミカ。
そしてハリオンのセリフからして、たった今の今まで二人でお菓子を作っていたようだ。
甘く香ばしい匂い。
しかしまあ、ハリオンは料理が好きだというのは知っていたが(温度感知に問題あり)、
まさかヒミカにそんな趣味があったとは意外であった。
王城に行くとネリー、シアーに偽っておいてお菓子を作っていたとは可愛い所もある。
そんなことは置いておいて。
「あの、セイグリッドさんはいるでしょうか? セリアさんに訊いたら、自室にいると」
「はい〜。今は、人事の見積もりしなおしをしていると思いますよ〜」
「そうですか。あがっても、よろしいでしょうか?」
「どうぞどうぞ〜。あっ、よろしければお茶もしていきませんか〜? ちょうど、
お茶菓子も出来そうなので〜♪」
「いえ、そんなに長居する用事でも無いので、遠慮しときます。ヒミカさんのお菓子も
楽しみでしたが」
「ッ! 〜〜〜ッ!」
真美のセリフで、よりいっそう、顔を紅くしてしまうヒミカ。
別に恥ずかしがることではないと言うのに、と、真美は最後にそんなことを思って
この場をあとにした。
ノックを二回。コンコンと乾いた音が廊下と室内に響く。
「はい。開いてますからどうぞ」
「失礼します」
聞きなれない声に驚いてセイグリッドが振り返ると、巫女が柔らかい笑みを作っていた。
「マミさんじゃないですか。あっ、すみません。何も準備していなくて」
振り返った姿のまま、慌てて立ち上がり、椅子を用意するセイグリッド。
「気にしないでください。私が急に押しかけたのですから」
「ですが……とりあえず、おかけください」
真美の(猫かぶり)笑みで先に折れるセイグリッド。
言われ、用意された椅子に(猫かぶり)物腰柔らかく腰を落とす真美。
「それで、ワタシに何か御用でも?」
「はい。ちょっと……」
そして真美はネリーとシアーに質問したものと同じ言葉を投げかけた。
「……新しく入隊した人、ですか。ちょうどよかったです。今、整理していた資料が
それでして……少々、お待ちください」
机の上に整頓された紙束をまとめ、振り返るセイグリッド。
「どのような人をお探しで?」
「(私の神剣に気配を感じさせない……ですから)訓練士の方か、技術士の方で、
新しく力になってくれる人はいないでしょうか?」
「え……あっ、ちょっと、それは……すみません、ワタシが担当しているのは
スピリット隊員の管理だけですので……」
バツが悪そうに頭を下げるセイグリッド。
真美、心の中で気取られないように大きく舌打ち。
しかし顔に出さないのは、プロか。
「そうですか……では、どなたがそちらの方の管理を?」
「そうですね……基本的には、パーミアさんがそちらの人事を行っています。
ですから、ワタシよりパーミアさんを訪ねたほうがよろしいかと」
「もういい加減にしてくださぁい……」
とぼとぼとぼ。
肩を落とした状態で真美はラキオス城の領地をたらい回しされている。
否。ある意味、自ら望んでその道を突っ走っているのであろう。
『なかなか見つからないわね』
「ホントですよ『時詠』ぃ……私、もう疲れちゃいましたよぉ……」
「ん? 真美じゃないか。どうしたんだ? 疲れた顔して」
「聞いてくださいよ明人さぁん……実はです明人さんじゃないですか!」
危うく、このまま何事もなく話が進む所だった。よくぞ気付いた天然巫女よ。
「うわっ、なんだよ急に大声出して」
「私は! 明人さんの貞操の危機を知って、ここまで一生懸命探してたんですよ!」
「なんだよ貞操って……ていうか、セイグリッド探してたんじゃないのか?
買出しにでてきたセリアとナナルゥに訊いたんだけど。それに、セリア俺と
間違えているんじゃないかって一応、俺の場所も示してた、って言ってたんだけど」
「へ?」
真美は少々考え込む。
………
……
…
『えっと、セイグリッドならアキトさんが街に行ったから、今は自室で書類の整理でも
しているかと思いますよ』
言っていた。
「あっ……」
「聞き逃した、って表情だな」
「し、仕方ないじゃないですか! そんなことより明人さん! 今朝、
どこに行っていたんですか? 部屋にいなかったようですが……」
「……別に。空也にせがまれて早朝瞑想に付き合っていただけさ」
「なんですか。今のあからさまな間は。私に嘘をついてもすぐに」
「ところで、なんで真美が今朝のこと知っているんだ? ……まさかとは思うが」
「私はこの辺で失礼させていただきますそれでは明人さんまたのちほど」
脱兎のごとく、とはよく言ったものだ。
真美の逃亡姿は、まさにそれであったから。
数秒もたたずに、明人の視界からその姿を消したのだった。
『だいぶ頭が回るようになったわね、聖賢の主も』
「……いい加減にして欲しいですよ『時果』……畜生……」
およそ女性が口にする言葉ではない言葉を最後にいれて、真美は肩を落とすこと再び。
こうなってしまってはもう、誰も頼ることは出来ない。
当初の予定である明人捕獲(だったらしい)はもう無理だということが判明し、
こうなっては自らの気持ちを抑える憂さ晴らしのために、今朝、明人を連れていった
犯人を見つけて一言告げてやらねばならないだろう。
「……ん? あら……」
そんな邪なことを考えていると、ピクリとただでさえ気が立っているのに、
さらに神経を逆撫でする戦いの宴を知らせる警告。
この気配は、見事『依存』の説得に成功したなにやら明人に気があるようないような
よくわからない美紗。
もう一人は……その美紗と、先日戦闘をおこなっていた『異端』の主か。
憂さ晴らしにまず、この二人の戦いに介入してやろうか。
そう思った矢先に、どうやら一瞬で勝負は終わったらしい。
この二人は速さに目を見張るものがある。
故にこの一瞬のやり取りでも、また、激しいやり取りだったのだろう。
「仕方ありませんね……こうなったら自分の力で探して見せましょう――ッ!」
再び、神剣を通じて感じるものがある。
『時詠』が騒ぐ。
『時果』が警告する。
『時逆』が敵意をかもし出す。
この感じ、この気配こそ、真美が毛嫌いする、本当に天敵と呼べる唯一無二の存在。
巧みに気配を調節して、牽制に来たか。
はたまたこの場で決着をつけに来たか。
どちらでもいい。
今の真美には憂さを晴らす何かが必要だ。
その相手としては申し分のない、いや、これ以上にない相手だ。
場所は、と真美は口に出さずに訊く。
場所は、イースペリアをさらに西へと向かった場所だった。
限りなく、ソーン・リーム自治区に近い場所。
こんな距離、三本の神剣の力を使えば一瞬だ。
雪のちらつく身をこわばらせる寒さだが、対峙する二人にとってそんなものは
おまけにすらなっていない。
「随分と、見つけるのに時間かかりましたわね。感覚まで年をとられているのかと
思いましたわ」
その雪と見間違えるような白。それが彼女のイメージカラーだ。
しかしその内に秘めるのは、まったく逆の黒い心。
決して大きくない、どちらかといえば小さな体躯の法師姿の幼女が浮いていた。
「あら。見た目以上にお年をとられているあなたにはこの寒さは応えましたか?」
こちらも、腹黒さでは負けていないだろう。
栗色の腰まである長い髪。赤茶色の大きな瞳は鋭くつりあがっている。
これは向こうにもいえるが、二人とも見ているほうが寒くなっている薄着だ。
紅と白がお互いよく映える巫女服。頭には真っ赤なヘアバンド。
「まさか。そんなことありませんわよ真美さん……あなたの計画をここで潰すと思うと、
ここまで気分が高揚してくるとは思いませんでしたわ」
「言ってくれるわね、『法王』テムオリン。私こそちょうどよかったです……
たまりにたまった鬱憤、ここで晴らさしてもらいますよ」
二人の周りに、国一個分動かせそうなマナがうごめく。
それはうねり、舞う雪の結晶を破壊していく。
二人が浮かべるのは、この緊迫した場所に会わない、
薄い、
微笑だった。
「あなたの事情に付き合うわけではありませんが、行きますわよッ!」
「言われずともッ! 『時詠』ッ!」
辺りを包むマナが弾けとび、戦闘開始を告げる。
テムオリンは『秩序』を振り上げ、真美は『時詠』を袖の下から出す。
そしてまず、真美が行動をとる。
袖の下からさらに人を模った符を取り出し、マナをこめ、念じる。
たまったマナを帯びた符は、真美のこめた念どおり、テムオリン目掛け走る。
「時間後と速くなる私に、ついていけますか?」
その攻撃があたると同時に、真美はテムオリンの目の前に出現。
さらに後方に真美の分身が現れ、
「タイム、アクセラレイトッ!」
その真美の動きをトレースする。
『時詠』を右に薙ぎ、その返す刀でまた攻撃を浴びせる。
その勢いを利用し半回転し『時詠』で切り上げ、最後に勢いをつけ、穿つ。
「この一瞬で、決めさしてもらいます」
そして、腕を振り下ろし、離脱。
そのときを待っていたかのように、分身も腕を振り下ろし、詰め込まれたマナを
爆散させた。
「……ふん。この程度ですの? 興醒めですわ」
しかし悠然と、法王は何事もなかったように無傷で宙に浮かぶ。
テムオリンの永遠神剣『秩序』。
その力はロウ・エターナルの中でも最高に近い、第二位の位を持つ神剣である。
やはり、この程度の攻撃ではダメだった。
認めたくないが、長年の付き合いで大体わかっていた。
今のが真美自身、最高クラス一歩手前の攻撃だ。それが通じないの相手が一つ上手。
まあ、今だけはさすがといっておこう。
「それではこっちの番ですわ。『秩序』の力、とくと味わいなさい」
テムオリンが『秩序』を体の中心に置き、念じる。
再びマナの流動があった。
これが、テムオリンがもっとも得意としている攻撃。
「永遠神剣第四位『蔓延』、永遠神剣第五位『反目』、永遠神剣第四位『黒狼』、来なさい」
まもなくテムオリンの背後に、三本の永遠神剣が出現する。
これは、テムオリンがコレクションしている第四位以下の永遠神剣の一部。
それらを召喚し、相手に叩きつける。
永遠神剣を操ることなど、いくら上位神剣であろうと普通では出来ない。
だが、テムオリンは普通ではない。
それを軽くやってのけるほどの実力者なのだ。
しかもその永遠神剣一本一本がテムオリンの『秩序』にあてられ力を増しているという
厄介な攻撃だ。
「さあ、お行きなさい。そこの巫女さんに死の舞踏を教えてあげなさい」
変則的な動きで迫る剣の形をした三本の神剣。
しかし真美も、普通ではないことを忘れてはいけない。
真美は余裕の笑みを浮かべ、手に持った扇に力を集中させる。
真正面から迫る『蔓延』――手首を捻り、叩き落す。
真後ろから襲い掛かる『反目』――目をつぶったまま、体を横に向け、回避。
突き刺すように飛び掛ってくる『黒狼』――『時詠』と刃を合わせ、弾け飛ぶ。
三本同時に縦横無尽に狙う攻撃は――まるで図ったこのように真美の服をまったく
傷つけることなく、本当に舞を踊っているかのように避けられ、
「タイム・トリップファン」
三本とも、真美の力により強制送還された。
「あら? この程度でしたんですか、テムオリン。興醒めですね」
扇をたたみながら、セリフをそっくりそのまま返す真美。してやったり顔で。
「言ってくれますわね……まあ、そうでなくては張り合いありませんけど」
「……さあ、お遊びはここまでにしておきましょう」
真美の一言で、さらにマナの密度が上がる。
「一人で来たのは間違いでしたね。今ここで、この戦い、終わらせてあげましょう」
「もちろんですわ。真美さん、あなたの屈辱の惨敗で、この戦いの幕は閉じますのよ」
「口だけならなんとでも言えます……いきますよ法王――武器の貯蔵は十分ですか」
息を吸い込み、吐き出す真美。
足をつけるその周りに、魔方陣が展開する。
そして、具現化させる、真美の持つ最大の神剣の力を。
「あなたに心配されるほど、ワタクシのコレクションは落ちぶれていませんわ」
しかし武器など使う必要もない。
そう、テムオリンは最後に付け加える。
テムオリンもまた、自らの持てる神剣魔法の最高峰で来るつもりだ。
相手の力に合わせ、無限にその威力を増加させていく脅威としか言いようがない魔法。
「私には――」
「……やっぱり止めましたわ」
その場ズッコケが出来る真美はいつでもお笑いの世界に転向できるだろう。
急にやる気のかけらもなくなった顔のテムオリンの言葉に思わずコント張りの
ズッコケをかましてしまう真美。
「い、いきなり何を言ってるんですかあなたは!」
「こんなギャラリーもなんにもない場所であなたを負かしても、ある意味自己満足……
自慰に等しいですわ。そんな惨めな真似、ワタクシには似合いませんから」
「……確かにそういわれてみれば、そうですね。あなたが負けるかわいそうな姿は
全員にしっかりとクリアに伝えるべきですよね」
うふふ、おほほ、と嫌な笑いを二人はする。
もちろん、和んでいるわけではないのは言うまでもないことだ。
「あなたのようなクソ生意気な人は、一度コテンパンにのされるのがいいですわ」
「そっちこそ。ですが、あなたのそのありえない角度で曲がった性格と腹黒さは、
文字通り死んでも治らないかもしれませんけどね」
「……貧乳おばさん」
「おだまり年増ロリ幼女」
再びうふふ(以下略
「……いいですわ。今度出会うときが」
「あなたが負けるとき、ですよ」
「この巫女服でしかその体型を隠せない貧相な体つきで色情魔の真美さん」
「マニアックな受けしか狙えないような姿でしか出てこられないテムオリン」
……最後の最後に嫌な戦いが繰り広げられたな……
さあ、次はようやく男勢の登場だ。
第二十六話に続く……