第9話 休息
ラキオスの完全制圧により、バーンライトとの戦いは終わりを告げた。
だが、平和が訪れることはない。
サモドア陥落とほぼ同時に親帝国であるダーツィ大公国が、疲弊したラキオスに対して宣戦を布告したのだ。
ダーツィ大公国はラキオスに対して宣戦を布告したものの、睨み合いという状況が続いていた。
ラキオスでの訓練と、小競り合い程度の戦い。
消極的な戦闘が続いていた。
小競り合いが始まって数日。
4回目の戦闘を終えラキオスに戻ると、数日の間休暇が取れることになった。
久しぶりの休暇。
元の世界にいた時のように本を読んでいようと思い、誰かに借りに行こうと自室を出ようとした時に
「あ・・・」
と声お漏らしていた。
とある事を思い出したのだ。
とても重要な事。
それはこの世界の言葉は話せるが、字が読めないと言うことだった。
決めてから数秒でやる事がなくなってしまった。
このまま部屋にいるのもつまらないし下に行くか。
そう考えると部屋を出て、1階に向かった。
1階に降りると、いつも皆が集まるテーブルの方を見た。
いつもなら誰か一人はいるのだが今日に限って誰もいない。
お茶でも飲んでゆっくりするか。
お茶を入れるため、キッチンに取りに行こうとした時
「トールー」
誰だか分かり易い人に呼ばれた。
呼ばれた方を見るとやはりネリーとシアーがいた。
挨拶をしようと言葉を発しようとしたら、ネリーが
「買い物行くからついて来てー」
と言ってきた。
今日はやることが無いしついて行くか。
「行こうか」
短く返答する。
その返答を聞いたネリーとシアーは喜びながら纏わりついてきて、そのまま俺の手を引っ張り詰め所を後にした。
今日の買い物はハリオンにお菓子を作ってもらう変わりに引き受けたという、なんともネリーとシアーらしい理由だった。
1ヶ月ほどこの世界を旅していた時は村などに立ち寄ることは無かったのと、ラキオスに来てから休暇が無かったため、初めて城下を回れるのが楽しみだ。
などと2時間前に考えていた俺が馬鹿だった。
ネリーと一緒にいてゆっくりとなどできる筈もなかった。
買い物をしているまでは良かった。
決められた物を場所の分かっている店に買いに行くだけ。
現金を使えないため署名という方法で購入していたため、50分くらいかかったが全ての物を買い揃えることができた。
直ぐ戻るのも味気ないので
「少し城下を見て回って良いか?」
と提案し、ネリーとシアーは喜んで
「「たんけん〜」」
ここが間違いの始まりだ。
その後、ネリーの後をついて色々と移動して、1時間ほどたったので
「そろそろ戻らないか?」
「えっと・・・、どっちが帰り道だったけ?」
と聞き返された時、今日の俺は抜けているなっと感じた。
これが今の現状。
とにかく戻るためにシアーにも帰る道が分かるか尋ねてみたが
「シアーもわからない〜」
やはりシアーも道が分からないか。
ネリーが「多分こっち」
と歩き出したので、その後に続いて坂を上っていった。
帰り道を探すため歩き回っていると、急に視界が開けた。
そこは湖が見える高台だった。
とにかく、休憩するために座れる場所を探すためあたりを見ると、見知った後姿の人が女の子と一緒に空をぼ〜っと眺めていた。
驚かすためにそっと近づき
「ナンパでもしたのか?」
と聞くと悠人は驚いてこちらを見てきた。
「何で徹がここにいるんだ?」
「俺だけじゃないぞ」
そういうとネリーとシアーが悠人に飛びついた。
慌てている悠人の横でくすくすと笑う女の子を見て
「悠人、紹介してくれないのか?」
と聞いてたがネリーとシアーに纏わりつかれ、喋ろうにも喋れない状況の悠人を尻目に女の子が
「私はレムリアだよ」
と名乗ったので、俺は
「徹だ、よろしく」
と言った。
二人を引き剥がすことに成功した悠人は、落ち着きを取り戻しつつあったので
「で、結局ナンパしたのか?」
と再度聞いてみた。
「そんなわけないだろ!」
「そうか、つまらないな」
まあ、悠人がナンパなどしないか。
しかし、この子は・・・。
「じゃあさ、俺が口説いても問題ないよな?」
「え!?」
「っと言うわけでレムリア、あっちで二人っきりで話さないか?」
そういうと、レムリアは顔を赤くしていたが
「良いよ」
と答えた。
ネリーとシアーは引き続き悠人に任せ、3人から少し離れた場所で話すことにした。
悠人に聞こえない位置まできたが、さてどう切り出そうか・・・。
そんなことを数秒ほど考えたが、あまり長く何も喋らないのも問題があるので、端的に
「レスティーナ様が何故こんな場所にいるのだ?」
レムリアは一瞬驚いた顔をした後、取り繕うように
「私はレムリアだよ、レスティーナ王女じゃないよ」
と言ってきた。
隠したい理由があるのだろう。
そう思った俺はこれ以上詮索しないことを決めた。
「今言ったことは忘れてくれ」
「うん、良いよ」
それからは
「トールくんはヨフアルって食べたことある?」
「いや、無いな」
「じゃあ絶対食べないとダメだよ、すごく美味しいよ」
「まあ、そのうち食べるよ」
「そのうち?今すぐにでも食べた方がいいのに・・・、分かった今からヨフアルの良さをじっくり教えてあげる」
ヨフアルについて熱く話し出して、止めようが無くなった。
レスティーナにも普通の女の子としての一面もあるんだなっと感じさせられた。
そうして話しているとふと疑問が浮かんだ。
レスティーナは何故俺達エトランジェを嫌っていないのかと。
「聞きたい事があるんだが」
「なに?」
「俺がエトランジェだと言うことは分かってるんだよな?」
レムリアは俺のその言葉を聞きうなずいた
「何で普通に話せるんだ?」
「そんなの簡単だよ、スピリットと同じで私達と何も変わらないから」
スピリットを人としてみてるのか、だから俺達エトランジェも人としてみれる。
多分、この世界では稀な思考なんだろうな。
レスティーナが王になればこの世界は変わるのかもしれな。
だけど、俺には関係の無いことだ。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「徹、そろそろ戻らないと時間が」
「そんな時間か、急いで帰るぞ。と、帰り道わかるか?」
「私が知ってるよ。路地を道なりにいって、初めの分かれ道を右に行けばお城の前に出るから」
「ありがとう。行くぞ悠人、ネリー、シアー」
そう言うと全速力で走り出した徹の後を
「まってよトールー」
「ネリー、まって〜」
「今度ワッフル代は弁償するから、またな」
「うん、またねユートくん」
3人の後を追い走り出した。
数秒でレムリアの視界から悠人がいなくなると
「ユートくん、トールくん、今日は話せてよかったよ」
と言った。
それから数日が過ぎた。
龍の魂同盟は正式にダーツィ大公国に宣戦を布告した。
<後書き>
お久しぶりです。
前回聖なるかな発売までには、と言っていたのに結局発売から2ヶ月ほどたってやっと完成です。
書き始めた当初は日常パートの方が書きやすいなっと思っていたのですが、今回書いていると戦闘パートの方がまだ楽だと感じてしまう私がいましたw
今回送れた理由は会話のつなぎの部分をどう書くかという事に悩まされたという所です。
結局今回の形にまとめましたが、もっとうまい地の文の書き方を考えないといけないと感じさせられました。
次回の10話〜12話にかけてダーツィ攻略戦となります。
今までは徹、悠人がメインでしたが、次からはサブスピリットがメインとなります。
予定としては
第10話
エスペリア、オルファの戦闘
第11話
ニム、ファーレーンの戦闘
です。
第12話はラキオス最強であるアセリア、悠人、徹の3人での戦闘となります。
さて最後になりましたが、聖なるかなをプレイした事でそっちの設定も使った作品を作りたいなっとか考えてしまい、仮の設定まで考えている状態です。
力の意味と信念が終わってないのにやっちまってるorz
と言った感じですが、力の意味を全力を書き上げます。
では、次回もよろしくです。
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