第8話 サモドア攻防戦  

先の防衛戦で負傷したため、翌日俺はベットの中にいた。
傷の方は、ニムの回復魔法により完治していた。
しかし
「今日一日はベットで休んでいて下さい」
っと言われ、休養をとることになった。


ベットに横になり考えていた。

セリア達や悠人達が、次の進軍のために準備をしている。
それなのに俺はベットで寝ている、それで良いのか?
くそ、焦っていても仕方が無いのにそれでも・・・・・・、無駄なことを考えるのはやめておこう、とにかく休むことに専念しないとな。

そう考えていると、部屋の入口からノックをする音がした。
「はい」
返事をすると、セリア、ネリー、ナナルゥが入ってきた。

「見舞いか?」
「そうです」
素っ気無く返してくる、セリア。

「トール、大丈夫?」
心配そうに見てくる、ネリー。
「ああ、回復魔法のおかげで、明日には戦闘に参加できるようになるよ」
そういうと
「そっかー、よかったねトール」
と笑いかけてきた。

ネリーの笑顔を見ていると、少し癒されるような気がするな。
そんなことを考えながら、俺は
「ああ」
と笑顔で返した。

そんな他愛無い話をしていると
「そろそろ、準備に戻ります」
とセリアが言った。

「そうか、すまない手伝えなくて」
「いえ、副隊長は体を休めることに専念してください」
そうセリアは言った。
「行きますよ」
「はーい、またねトール」
そう言うと、3人は部屋から出て行った。

「さてと、また暇になったな・・・」

考え事をしようとした時、ドアをノックする音がした。

「失礼します」
ドアが開かれ、ファーレーンが入ってきた。
「ファーレーンも、見舞いに来てくれたのか?」
そう聞くと
「それも有りますが、お礼を言いたくて」

お礼・・・、ニムを守ったことかな?

その考えは当たっていた。
「昨日はニムを助けていただき、ありがとうございます」
そう言い、丁寧なお辞儀してきた。

「礼なんていらないよ」
「でも・・・」
でも・・・っか。
「俺達は仲間だろ、だから気にしなくて良いよ」
そう自分の気持ちを伝えた。

仮面を被っているので分かりにくいが、それでも表情が晴れやかな物になったと、俺は感じた。
「そう・・・ですね、仲間ですよね」
「大切な仲間だ」

臭い台詞だと思う、でもたまに言うのは良いかな。

「話せてよかったです。それでは準備に戻るので」
「ああ、またな」

ファーレーンが部屋から出て行く。
「皆、心配してくれているんだな・・・」
そう言うと幻想が
『自分でも言っていたじゃないですか、仲間だと』
「まあ、そうなんだが・・・、恥ずかしいから言うのはやめてくれ」
『徹様にも可愛らしいところがあるのですね』
反論のため言葉を発しようとした時
『冗談です。もう言いません』
そう言ってきたが、幻想からは小さくだが笑い声が聞こえてきた。

恥ずかしい台詞は言わないほうが身のためだな。

とたわない事を考えていたが、すぐに思考が違う方向を向いた。
それは次の戦闘についてだ。
次の戦闘は確実に、バーンライトとの最後の戦闘になる。
本陣を攻め落とすのだ、今まで以上の困難が待ち受けているに違いない。

先のサモドア山道戦では、負傷してあまり戦力にならなかった。
このままではダメなのでは?と思ってします。
しかし、時間があるわけではない。
今の状態で、どうにかしないといけないのだ。
なら、しっかり休息をとるか。
そう思い眠りにつくため、目を閉じた。

最初は寝付けなかったが、5分、10分と時間がたつにつれ、徐々に眠りに近づき眠りについた。
夢など見るはずもなく、黙々と眠った。



翌日体の調子が大体戻ったことを確認すると、早々に進撃を開始した。



それから1日が経過し、サモドアまであと半日もかからない位置に着いていた。

リモドアから悠人建ちも進軍していると言う事が影響しているのか、今までのところ防衛の敵とはほとんど遭遇しなかった。
闘った数はたった6人。

「手薄だな・・・」
疑問に思い、口に出していった。

その疑問に答えたのは、セリアだった。
「ユート様の部隊も同時に動いているためでは?」
それがセリアの答えであった。

「そうだな」
・・・しかし、本当にそうなのだろうか?
手薄になる理由を言うと、セリアが言ったものが1つ。
先のラセリオ戦で大半の戦力を使ったと言うのが1つ。
篭城戦に持ち込むと言うのが1つ。
この3つが考えられる。

セリアが言ったのが、一番妥当なものだ。
だが嫌な予感がする・・・。
まあ、敵の本陣を攻め落とそうとしているのだから、嫌な予感がしてもおかしくわない。

とにかく、弱気になるのはダメだ、警戒しないのはもっとダメだ。
手薄だろうが、慎重に確実に行こう。

そう決心し、サモドアへの道を進んで行った・・・。



一方リモドアからサモドアへ続く道、悠人達の部隊は敵主力部隊の一つとの戦闘に入っていた。

一対一に持ち込み、即座に敵を斬り伏せて行くアセリアを横目で確認しながら悠人も敵を如何にか倒していた。
二人目の敵を左から切り上げマナの塵に返し、此方に気付いていないブラック・スピリットを見つけ斬りかかった。
攻撃が当たらないとしても避けられるだけと思っていた。
しかし、その相手は悠人の殺気を感じ、放った斬撃をバックステップで回避すると同時に反撃してきた。
反撃自体は頬を掠める程度のものだったが、この相手が敵の部隊でも上位に位置する者だと言うことを感じさせるには十分だった。
実際この相手は敵部隊の隊長だった。

初太刀を回避され、尚且つ反撃してきたことに警戒し、悠人は求めを正眼に構え、相手の出方を窺った。
それを敵も分かっているためか、居合いの構えを取って牽制をしてきた。

数秒経ち、硬直状態になるかと思われたその時、相手から仕掛けてた。
ウィングハイロゥを使い一気に間合い入り、薙ぎの一撃を繰り出してきた。
速い斬撃。
しかし、警戒をしていた為、その攻撃はバックステップにより楽に回避した。
そう思った瞬間、相手が一歩踏み込んで返す刀で斬りかかってきた。
一瞬反応が遅れたが、如何にか求めで防ぐことができた。

防いだのだから、ここから反撃に転じようと鍔迫り合いに持ち込むため力を込める。
だが、力勝負では此方に分があることを理解してか、その力を利用し間合いの外に下がった。
下がられるとは思っていなかった。
悠人は少し前のめりになってしまったがすぐに体勢を立て直した。

たった一度の攻防。
それだけで悠人と相手の実戦経験の差が見て取れる。

基本能力ではエトランジェである悠人が勝っている。
しかし、その優位を無くすほどの実戦経験の差。
勝負は五分。

とにかく攻めるしかない。
そう思った悠人は、猛然と相手に突っ込んだ。

袈裟斬り、左切り上げ、右薙、逆袈裟と連続して切りかかる。
しかし攻撃は楽にかわされ、最後に放った逆袈裟は神剣で受け流され、無防備になった所を喉を狙った突きを放ってきた。

当たったら全てが終わる。

そう思った瞬間、身を投げるように倒れこむ事により、首の皮を少し斬られただけですんだ。

即座に立ち上がるが、その時には相手が攻撃態勢にはいていた。
右からの薙ぎの一撃。
居合では無かったため、先ほどよりも遅い。

体勢を立て直せ切れていない状態だったが、居合で無かったため求めで受け止める事はできた。
だが体勢が不安定だったため、力任せに吹き飛ばされてしまう。
地面に叩き付けられる瞬間、受身を取ることによりその反動で起き上がった。

間合いは開いた。
だが主導権を相手に握られている。

毒突きたくなるのを抑え、何度も攻撃を繰り返した。

しかしそのたびに、避けられ、受け流され、鋭い反撃が返ってくる。
そんな攻防を繰り返していくうちに、悠人は精神的にも不利になっていた。

どうする、どうすれば。

勝つ手段が思いつかない。
・・・・・・求めに力を借りれば・・・。
・・・そんな事をしたら飲み込まれてしまうかもしれない。

「・・・くそ!」

アセリア達が来てくれるのを待つか?
横目でアセリア達を見たが他の敵と闘っている為、此方に気付いてもいない。
もうダメなのか・・・。

そう思った時、ふと訓練の時に受けたアドバイスを思い出した。

力で捩じ伏せろ。

そうだ、俺には相手のような実戦経験も無ければ、徹のように武術を習っていたことはない。
だが、エスペリアは俺の攻撃は重いと言っていた。
徹は俺のほうが力があると言った。

一撃に全てをかければ、誰にも負けない一撃を放てるはずだ。

「バカ剣!俺は此処で終わるわけにはいかないんだ。力を貸せ!」
求めはバカ剣と言われた事に不機嫌になりながらも力を貸してくれた。

悠人を包むオーラの総量が一気に跳ね上がる。
相手を一撃で倒す。
どう切り込むか決めていない・・・。

どう切り込む・・・・・・、そういえば・・・。

ふと思い出した構え。
その構えは左足を前に出し、求めを持った右手は右耳の辺りまで上げて、左手は軽く添えられている。
八相と言われる構え。
それを構えている積りだった。
だがその構えは八相に似ているが違うもの。

その違いは悠人の心の中にある、一撃で決めると言うこと。
それが、八相では無くそれに似たもう一つの構えのように見せているのだろう。

その構えとは、蜻蛉の構え。

そう、有名な一撃必殺の示現流の構えである。

二の太刀は要らない・・・、この一撃に!!

そう決心した時、悠人は動いた。
雷が落ちたと思わせる踏み込みの音。
先ほどまでとはまったく違う踏み込みの速さ、そして鋭さ。
今の悠人を表すならば、それはこの言葉しか無いだろう。

疾風迅雷。

「でやぁぁぁぁっ!!」
裂帛の気合と共に、宛も石を投げるように相手に向かって袈裟懸けに振り下ろされた一撃は、今までで一番と言える速さ、そして重さの一撃。
その証拠に打ち下ろされた先の地面が、風圧だけで切れていたのだ。

相手は反応することもできず、マナの塵に返っていった。

倒せたことに安堵したが、辺りを見るとまだ戦闘は続いていた。
一度深呼吸をすることにより、気持ちを切り替え次の敵に向かっていった。




悠人達がリモドア側の主力部隊を殲滅したころ、徹達はもう一つの主力部隊と戦闘状態になっていた。

苦戦する事無く、このまま一気にサモドアまでたどり着けると思った時、敵の増援が到着した。

こんな所で無駄に時間を消費することは出来ない・・・。
「突っ切るぞ!」
そう言うと全員が一気に加速した。

進行の邪魔になる者を切り倒し進んで行く。

もう少しで抜ける。

一段階速度を上げて一気に抜けきろうとした時、この世界では有り得ないと思っていた攻撃により進行を止められた。

その攻撃とは掌底だった。
それだけならまだ珍しいと言うだけだったが、ピンポイントに顎を狙ってきたのだ。
普通この世界では、剣を使って戦うのが主流で、訓練士でも体術を使える者はいなかった。

だが目の前のブルー・スピリットは確実に体術が使える。

対策を練ろうと考えようとした時
「初めまして、僕は傲慢の主、クーナ」
戦場で名乗られるのは初めてだった。
名乗り返すのを待っているのだろう、じっと此方を見てきたので
「幻想が主、徹」
と名乗り返した。

「トールか・・・。うん覚えたよ」

今までの相手とは違う雰囲気。

「でも、此処で僕に負けたら名前は忘れるからね」
そう言い少し笑ってしまった。

「なら一生忘れられない名前にしてやるよ」

そう言うと、一気に間合いを詰め、繰出す技は[三枝]。
徹の十八番と言える技。
確実に倒せると言う絶対的な自信があった。

初撃は右正拳突き[穿ち]。
しかし、それを紙一重でかわされる。
だが、それで終わりではない。
一気に屈み、円を描く用に繰り出す、足払い[払い]。
そして、決めの一撃である、肘打ち[槌]が残っている。

確実に決まる。

だが、その思いは無残にも打ち砕かれた。

2撃目の[払い]は、飛んで回避され。
空中で回避できないところを狙った[槌]も腕で防がれ、その力を利用され距離をとられたのだ。

「初見で・・・・・・、有り得ない!!」
あの技を全て防がれる、そんなことは考えてなかった。
ありえないと思った。

不敵に笑うクーナは
「僕も初見じゃ防げないと思うよ」
そう言ってきたのだ。

「初見じゃないと言うのか?」
俺はこの世界で初めて[三枝]を使った。
仲間との練習でも使ったことがない、それなのに何故・・・。

こちらが動揺している隙に相手は構え、そして繰り出してきたのは
「[三枝]、行くよ」
俺が使った技だった。

動揺する徹に対し、肉薄するクーナ。
[穿ち]がくるっと思った時、相手は一気に上体を沈めた。

[払い]か!

そう認識した時には[払い]が繰り出されていた。
それを飛んで回避する、徹。
だが、徹が思っていた技ではなかった。
円を描くはずの[払い]は半円で止まり、そのままクーナは片足を前に突き出した状態で一瞬静止したのだ。
クーナが取った行動、それは[払い 否]という[払い]の別バージョンの技。
そして、そこから派生して繰り出される[飛翔]という技の体勢だったのだ。

認識が一瞬送れた徹に対し、繰り出される飛び膝蹴り。
正確に鳩尾を貫き、その衝撃は徹の体がくの字に曲がる程であった。

胃の中のものを吐き出しそうになるが堪える徹。
だがクーナは止めを刺すべく[飛翔]からの三撃目[落]を繰出すため、徹の両肩を手で掴み両足の裏を腹に当て、そして一気に地面に弾き飛ばしたのだ。
受身を取ることもできず背中から激突し、一瞬意識が飛びそうになった。
だが、どうにか起き上がり構えを取る。

「何故使えるんだ・・・・・・」
「教えてあげないよ」
クーナは笑顔で言葉を続けた
「トールが此処で死ななかったら、そのうちわかるよ。知りたかったら、僕を倒して生き残ってみなよ」
楽しげに話すクーナを見ていた徹は、相手がハイロゥを出していないことに気付き
「自分の方が優勢だからと、ハイロゥを出す必要もないと言いたいのか?」

俺の言葉に同意し、全力を出されないうちに殺りきるしかない。

自分の意図した方向に事を運ぶよう言葉で誘導し様としたが
「ハイロゥは出せないよ、人間から言わせれば僕は欠陥品らしいから」

思いもよらない言葉が返ってきた。
嘘と思う、だが敵にとって優勢な状態なのだから此処で嘘を言う必要は無いだろう。
これは真実なのだ。

今の言葉にたいする結論を瞬時に出し、次の思考を巡らす時間を稼ぐため言葉を発した。
「なら神剣は何故使わない?」
「そんなの、相手の得意分野で叩きのめしたほうが面白いからに決まってるよ」
神剣を使わないのか、ならばある程度無手で戦い、意表をついて神剣を使えば・・・。

そう考えていると
「でも、そっちが神剣を使うなら、僕も使ってあげるよ。躊躇無く一瞬で殺してあげる」
勝機になると思ったが、これは神剣を使ったらどうなるかわからないな・・・。
なら無手で行くしかない。
相手は同門用の[三枝]を使ってきた。
何手か試し、本当に同門なのか調べ、そこから勝機を見出すしかない。

喋ってる間にある程度は回復した。
「じゃあ再開と行くか」
俺の言葉を聞いて笑顔になるクーナ。

約6mの距離。

息を吸い、吐き出すと同時に間合いを詰める。

まずは軽く打ち合ってみる。

そう考え左で軽く牽制をしてみた。
だが此方の懐に潜り込むように回避され、同時に肩による一撃を繰出してきた。

衝撃に任せ後ろに引くことにより間合いを開ける。
その間合いを一足で詰めるクーナ。

今度は逆に左による牽制を繰出された。

クーナの意図は読めた。
試されている。

繰出された左を右手の甲で払うと同時に、左正拳突きを繰出す。

間合いを開けるか?と思ったが、強気にもクーナは徹が繰出した左正拳突きあわせるように、右正拳突きを打ってきた。

両者打ち出された拳を紙一重で回避し、バックステップにより間合いを開けた。

少し息を吸い、吐き出すと同時に一気に間合いを詰める徹。
両者攻撃が当たる位置まで詰め、攻撃型の[落葉]の体制に入ろうとした。
しかしクーナは、バックステップで[落葉]の間合いの外に出た。
「攻撃型の[落葉]だね。少し間合いを開ければ使えない技だね」
クーナは[落葉]の弱点を言い当てた。

だが今回は動じない。
防がれることを前提としているのだから。

間髪いれず、歩法の一つである[無足]で詰める。

相手から見れば突然敵が目の前に現れた用に見える技。
しかも知っていても対処し様の無い技。

手合いの間合い。

繰出す技は[連花]。
左一本で繰出される、無数の拳撃による牽制。
しかし、その攻撃も紙一重で回避してくる。

[連花]を繰出している左手が引く瞬間、本命と見せかけて繰出す右のストレート。
だがその一撃も回避される。

しかし、それはフェイクだ。

避けられた右を引くと同時に、再度繰出される速い左。
相手は[連花]だと思い紙一重で回避しようと動作している。
左はクーナの横を過ぎようとした瞬間、軌道を変え顎に突き刺さった。

意表を突かれたクーナは、防御できず吹っ飛ぶ。

間髪いれず追い撃ちを撃つため、吹っ飛んだクーナを追いかける徹。
クーナは頭から地面に接触したがすぐ立ち上がろうとした。
だがその動作に入る前に徹は追い付き、右正拳追い打ちを繰出した。

脊髄反射と言うべき速度でガードするため、クーナは腕を顔の前でクロスさせた。
それと同時に突き刺さる拳。

追い打ちの衝撃により、頭が地面にめり込む。

打ち出した拳を引き、そこで終わるはずも無く再度繰出される追い打ち。
打ち出した拳が当たる直前で、クーナが徹の手首を取った。

不味い。

そう思った徹は、取られた腕を振り払いバックステップにより距離を開けようとした。
だが振り払う間に、相手は倒れている状態から蹴りを繰出してきた。
鳩尾に当たったが、幸いにもバックステップの動作に入っていたので、衝撃を受け流すことができた。

頭から血を流しながらも立ち上がったクーナは
「最初に詰めてきたのは[無足]だとわかったけど、急に変化したあれは何?」
と聞いてきた。

「[蔓]と言う技だ」
そう言うと同時に考えていた。

[無足]など古い技を知っているのに[蔓]と[連花]知らなかった・・・。
つまりは最初の技しかしらないんだ。
なら突破口は見えた。

「知らない技もあるんだな」
と聞いてみた。


「まあね。僕は原型になったやつしか知らないから」

その答えを聞き確信した。
ならば
「そろそろ決着をつけようか」
そう言うと徹は[四凶 饕餮]の構えを取った。

「お〜、[饕餮]使えるんだね。じゃあこっちも四凶で・・・っと言いたいけど、僕は使えないだ。だから変わりに[五閃]で行かせてもらうよ」

[五閃]・・・、閃光の速さで正中線にある五個の急所を打ち抜く技。
だがその程度で止まるわけにはいかない。

「行くぞ!!」
言うと同時に踏み込む徹。

先手を取ったのは徹だった。

打ち出した拳は、途中で掌底に変わった。
本来の[饕餮]にない動き。
その瞬間
「え!?」
クーナが声をあげた時には胸の真中で掌が静止した。

打撃ではない?と思った時、掌が回転しゼロ距離から一気に撃ち抜いた。

クーナは吹き飛ぶ事無くその場で血を吐いた。

まだだ!

掌を引くと同時に両手を手刀にし、両方の胸の下に突き入れ、そして力任せに肋骨を折りにいった。
骨が折れる音。
それと同時に折れた肋骨が臓器に刺さり、手刀を突き入れた部分から鮮血がほとばしった。

手を抜くと同時にクーナの右腕を取り、足を払い、地面に叩き伏せ、腕を折り、足を使い追い打ちをかけると言う動作を正確に決め、間合いを取る。

決まった。
そう思った時、クーナは起き上がった。

まだか・・・・・・、いやもう終わっている。

体から立ち上る金色の光。
マナの塵に返ろうとしている。

「トールの勝ちだね」
最後の力で話し出すクーナ。

「そっちが本気だったら、負けていたのは俺のほうだ」
正直な感想を言う。
「そうだね。でもこれで面白くなるね」
意味深な言葉
「どういう意味だ?」
答えが返ってくるとは思わないが聞き返さずにいられなかった。
「また会えたらわかるよ」
「またなんて無い。マナに返ろうとしているだろ」
「そうだね。でも・・・・・・、いいや、これ以上言うと面白くなくなるし」

また意味深な言葉を・・・。
意味の無いただの戯言であってくれれば良いのだが、この言葉にもし・・・・・・・これからが面白くなる要素があるなら知りたい。
同門との死闘、こっちの世界に来てこれだけ面白い事が出来るとは思わなかった。
もしこれ以上の事があるならやってみたい、たぶん代価は自分の命になるだろう。

考えているうちに、クーナは完全に消えかけていた。

「またね」

一言、それだけを言い残しマナの塵に返っていった。

気持ちを切り替え、サモドアに向かうため走り出そうとしたが、バランスを崩し倒れそうになった。
流石に最初の[三枝]とオーラを全快で維持し続けていたため、まともに体が動かないようだ。

ゆっくりでも向かわないと。

そう思いサモドアに向かった。

到着した時には、サモドアは夕日に照らされオレンジ色に染まっていた。
その色の所々に見える煙の筋。
戦闘が終わった後だった。



ラキオス、バーンライトの戦争はアセリア達の活躍によりラキオスの勝利で終わった。









<後書き>
執筆活動が殆ど出来ない状態になってましたが、どうにか8話目を完成させることが出来たKuroです。
今回で第1章が終わったと言う感じです。
そして他にも、オリジナルのスピリットが登場して1話でマナの塵に返ったり、悠人が示現流なんて使ってみたり大量に技が登場したりと色々あった今回の話です。
示現流は悠人のオリジナル技の原型となるだけでこのまま使い続けると言うことは無いと思います。

次回は休暇の話からダーツィとの戦争開始までの話です。

次が完成するのは何時になるかわかりませんが、聖なるかなが発売されるまでには完成させるつもりです。
では、次回もよろしくです。


<キャラ説明>
名前 :クーナ
性格 :明るく、残虐
神剣名:第6位 傲慢(ごうまん)

外見
身長  159
髪の色 青
目の色 青

設定
ウィング・ハイロゥを使うことができない特殊なブルー・スピリット。
ハイロゥを使えないがその強さはエトランジェ並みである。

<今回登場した技などの説明>
三枝(さんし)
三連続攻撃の総称。

肘打ちの[槌](つち)
右正拳突きの[穿ち](うがち)
円を描く用に繰り出す、足払いの[払い](はらい)
半円で止まるバージョンの[払い 否](はらい いな)
飛び膝蹴りの[飛翔](ひしょう)
敵を掴み弾き飛ばす[落](らく)
が存在している。
これ以外にも数種類存在する。

五閃(ごせん)
正中線にある五個の急所を貫く技。

蔓(つる)
打撃技の一つ。
ストレートに繰出した拳が、突然軌道を変えて相手の急所を攻撃する技。

連花(れんか)
左手だけで繰出す連撃。
スピード重視のため、一撃の威力はそれはど高くないが、撹乱、牽制には十分な効力がある。

掌波(しょうは)
クーナに止めを刺した、ゼロ距離から掌を回転させ敵を打ち抜く技。
内部破壊を目的とする物で、血を吐いたのはそのためである。

掌波、連花、蔓はこの流派の最初には無かった技。
中国拳法、空手など様々な武術を知り、そして何年にもわたり研究し作り上げられた新しい技。

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