第5話 初陣  

バーンライトとの開戦。
全軍を持って、攻めるわけにもいかず、セリア、ナナルゥ、ニム、ファーレーンが、ラキオス防衛の任務についた。
今現在、残りのメンバーは、バーンライト領、リーザリオの目の前まで進軍していた。
あと数十分と経たないうちに、戦闘が始まる。
不安は・・・・・・、ある。
元の世界とこの世界で積んだ修練で、俺は生き残れるのだろうか?
しかし、そんなことを考えていられる時間も、後少しだけだ・・・。

ポケットに入れておいた、小さなビンを取り出し、その中身を飲んでいると
「トール、なに飲んでるの?」
ネリーが話し掛けてきた。

「これは酒だよ」
「なんで、お酒なんて飲んでるの?」

不思議そうな顔をしている、ネリーに
「・・・不安を紛わすために、飲んでいるんだ」
「そっか〜、トール不安なんだ」
「ネリーは、不安じゃないのか?」
「不安じゃないよ、だってネリーはくーるだから」
胸を張って、得意げにそう話している、ネリーを見ていると、少し不安が解消された気がする。

少し笑いながら
「ネリーは、クールって感じじゃないな」
「え〜〜」
「まあ、今はまだってこと。そのうちクールになれるよ」
そういうと、ネリーは笑いながら
「そうだよね」
と返してきた。

そんな他愛無い話をしていると、
「準備、完了しました」
エスペリアが戦闘の準備、完了を告げてきた。

「じゃあ、悠人。号令頼む」
「わかった。・・・・・・皆、行くぞ!!」

その悠人の言葉により、戦闘は開始された。



できるだけ、近くの仲間をカバーしながら戦闘する。
それが、主な作戦だった。

しかし、俺はそれを実行できずにいた。

その理由は簡単だ、エトランジェと見るや、敵は多対一での戦闘を仕掛けてきた。
目の前には、警戒しつつ剣を構える、ブルースピリットが3人。

「きついな」
『冷静に対処すれば、徹様なら大丈夫です』
『気負いするなんて、らしくないぞ』
創生に言われ、自分らしくない、という事に気付かされる。

そうだな、自分らしく楽しんでやれば良いんだ。

苦笑しつつ
「お前ら3人、俺を楽しませて見せろよ」
そう言い、幻想を左手に持ち、構えを取った。

俺の言った言葉に反応してか、構えを取り終わると同時に、敵の一人が詰めてきた。
唐竹に繰り出される、斬撃をバックステップで回避し、反撃を入れようとした時、敵はハイロゥを使い間合いから離脱した。
しかし、それだけではなかった、下がると同時に、後ろにいたもう一人のスピリットが、間合いを詰め斬撃を繰り出す。
それを避けると、また後ろにいたが前に出て、斬撃を繰り出す。

斬撃を繰り出す、下がる時に生じる間を、他の者が埋め斬撃を繰り出す。
その繰り返しであった。

単純な動作だが、間合いから離脱する敵を追撃すると、二人からの反撃が待っている。
それだけのリスクを、負うには微妙なところだ・・・。
しかし、このままではジリ貧だな。

「しかたがない・・・。交代だ、創生!」
『待ってました』

そういうと、今まで片手剣だったものが、両手剣に変化する。

間を埋めるために、接近してきた敵は、急に剣が変わったことを驚きつつも、斬撃を繰り出してきた。
しかし、俺の狙いはその斬撃だった。

袈裟懸けに迫る剣を
「はっ!!」
裂帛の気合と共に繰り出した、斬撃により弾き、敵の体勢を崩す。
間髪いれず、袈裟懸けに両断する。

「まずは、一人」

仲間がやられたことにより、警戒し間合いをあけてきた。

「畳み掛けるぞ、創生」
『了解』
「ナイフ!」

手の中には、創生の力により生み出された、ナイフが二本握られていた。
そのナイフを、片方の敵に投げることにより、牽制。
足の裏にオーラをためる事により、一気にもう一人の敵まで間合いを詰めた。
繰り出した斬撃は、剣によって防がれる。
力を入れ、鍔迫り合いに持ち込む。
そうしているうちに、ナイフで牽制した敵が後ろから迫って来た。
しかし、それは思惑のうちであった。

後ろより迫る敵が、攻撃間合いに入るまで、あと少し・・・・・・、いまだ!
剣に込めていた力を弱め、後ろに少し下がる。
それにより、体勢を崩した相手を放置し、
「幻想!」
後ろよりくる斬撃を右手で流し、そして、がら空きになった、脇腹に幻想を突き刺しす。
そのまま、相手の後ろに切り抜けることにより傷口を広げ、体勢を崩していたもう片方に向かって、負傷した仲間を蹴り飛ばす。

自分の方に流れてくる仲間を、如何するべきか迷っている隙をつき
「創生」
両手剣により、二人同時に貫いた。

マナの塵へと帰っていくスピリット、綺麗だと感じる暇もなく新たな敵の気配を感じた。

「なかなかやるね」
相手はグリーン・スピリットだった。

さっきの3人とは雰囲気が違う・・・、この隊の隊長といったところか。
「お褒めに預かり、光栄ですね」
そう言い会釈する。

「心にも思っていないことは、言わないほうが良いよ」
「そうだな、じゃあ楽しい戦いでも始めるか」

敵の武器はランスに近い形状、十八番は全体重を乗せた突進といったところか。
・・・力で力に対抗するのは、少しきついかな。

「幻想」
『了解』

武器を幻想に持ち替え、構える。

「剣の形状を返れるのか、面白いね」
「まあな」

答えると同時に間合いを詰め、繰り出さした斬撃は、ランスにより、軽く防がれてしまった。

「あんたの力って、この程度?」
「まだまだ!」

至近距離より放つ、嵐のような斬撃。
しかし、それをことごとく防がれる。

攻撃の手を休めることなく
「防ぐことしか、出来ないのか?」
と聞く、すると
「そんなわけないだろ」
と答え、俺の繰り出す斬撃を防ぐと同時に、力を込め薙ぎ払ってきた。
その力を利用して、間合いを取り体勢を整える。
しかし、それは、相手の思惑のうちだった。

突進の構え・・・、敵の十八番が来る!

「行くよ、チャージ!」

グリーン・スピリットのスピードとは、思えないような速さで突進をかけてくる。

防ぐか・・・。
いや、あれは防いだらやばい。

防げないと判断するや、葉が舞い散るように左右に動き出す。

「はっ!!」
渾身の力で繰り出されたチャージを、落葉により死角に回り込み回避し、足に向かって薙ぎ払いの一撃を繰り出す。

金属の擦れあうような音がする・・・。
一瞬、何が起きたのか理解できなかった。

「甘いよ!」

シールド・ハイロゥか!

気付いた時には、突きが繰り出されていた。

「っく!」

何とか、その攻撃を回避し体勢を立て直すが、回避は完全ではなかった。
左肩を浅くだが、かすっていた。

「楽しいね。でも、次で終わらせるよ」
「・・・・・・」
「話す余裕も、なくなったようだね。じゃあ決めるよ、チャージ!!」

爆発的なスピードで、俺を殺すために迫る敵・・・。

冷静に、この一瞬の命のやりとりを楽しみ。
そして、「勝つのは、俺だ!」

今使用できる、最大のオーラを体に纏わせる。

「小賢しい!!」

串刺しにするために繰り出される突きを、左手に持った幻想で、ギリギリのタイミングで流す。

「はっ!!!」
空いた右手で、渾身の掌底を繰り出す。
しかし、それはシールド・ハイロゥにより防がれる。
「同じ手に引っかかるなんて、甘すぎだよ!」
「そうかな」
「え?」
驚愕する敵・・・。
掌底は防いだ。
しかし、自分の足が何故、 宙を舞っている。
片足が無くなったことにより、バランスを崩し倒れ伏す。

「甘かったのは、お前だったって事さ」
「何故・・・。防いだはずだ!」

苦笑しながら答える。

「そうさ、一撃目は防がせてやったよ」
「防がせただと・・・・・・!!!」
目の前にいる、徹が二人に増えた。
「なっ!?」
「[白昼夢]、掌底が当たったところまでが本物。その先、お前が見ていたものは幻だ」

「はははははははははは」
壊れた様に笑う・・・、笑う。

「渾身の掌底を防いで、踊らしていると思っていたが、踊らされたのは自分ってことか!」
「そういうこと」

少しの間・・・、さらさらと、敵の足からマナが霧となり、金色の光が立ち上るのを見ていた。

「・・・・・・、とどめを頼むよ。私の負けだ・・・・・・」
「わかった」

幻想を心臓に向かって、振り下ろす・・・。

突き刺さる寸前
「ありがとう」
そう言い残し、マナの塵へと返っていった。

「・・・・・・。さてと、皆も終わったみたい出し戻るか」

ゆっくりと、歩きながら考える。
この戦争は、負けたものが塵にかえる・・・。
そういう、ルールなのだと再確認しながら、ゆっくりと皆が待つ場所に向かった。











<後書き>
仲間との会話は最初だけ〜。
他全部、戦闘〜。
あと、創生を使用した、初戦闘〜〜。
疲れたorz
技については、前回と同じで下に記載します。
では、次回予告。
次はリモドアです、山道が開かれるくらいまでは、進めるつもりです。
創生の対スピリット用の能力は、今回出そうかと思ったのですが、やめときました。
バーンライト最終戦まで、お預けという感じですね。
実際は、どう書こうか悩んだので、一旦保留にしただけorz
こんな感じで、後書き終了ということで、次回もよろしく〜。



<今回登場した技の説明>
白昼夢(はくちゅうむ)
幻想の力を使い、自分の幻を作り出す技。
仕様用途は、主に意表をつくためである。

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