第4話 手合せ
謁見を終えて外に出ると、エスペリアが待っていた。
「俺が生活する場所に、案内してくれると言うことかな?」
「はい、トール様には第二詰所で、生活してもらうよう仰せ付かりました」
「わかった。まあ、場所がわかれば一人でも行けるから」
「わかりました」
そういうと、エスペリアに第二詰所の場所を聞き歩き出した。
少し歩いていると、前方に一つの家屋が見えてきた。
ノックをすると
「お邪魔します」と言い、詰所の扉を開けた。
中に入ると、九人のスピリットがいた。
八人が色々な表情を浮かべている中、まとめ役であろう青い髪の少女、セリアが話しかけてきた。
「貴方が、新しいエトランジェですか」
「ああ、名前は徹だ、これから一緒に暮らす事になる。まあ、仲良くやっていこう」
そういうと、各々が自己紹介を始めた。
普通に自己紹介をしている中、先ほどの、セリアという少女だけは違った。
「私は、あなたのことを信用できません」
それが、セリアが発した言葉だった。
「唐突だな」
「私達の上に立つ人である、貴方の力を私達はしらない。そんな人を信用できないのは、当たり前でしょ?」
「・・・そうかもな、じゃあどうすれば良い?」
「貴方の力を試します」
なるほど、つまりは手合せをしろと言う事か。
「わかった。それ相応の場所に移動してからやるか」
「わかりました。では、ついて来てください」
セリアに案内され、訓練場に向かった。
俺とセリアのあとを、追いかけて、残りの八人がついてきていたが、
「面白そ〜」
「お、面白そうって」
「し、シアーはえっと・・・・・・」
「ニムには関係ないし」
関係ないからと、色々と言っているのを聞いていると、これはある意味、見世物だなっと感じた。
訓練場につくと、ある程度の距離をとり、準備を始めた。
「本気でこい、そうじゃないと、俺の力は測れないぞ」
そう言い笑った。
「余裕ですね、そうしていられるのも、今のうちだけです」
「そうか・・・、じゃあ始めるか」
両者、準備が終わり構えをとる。
徹は無手で構え、セリアは熱病を構えた。
なかなかの修練を積んでいるようだな。
まあ、そうでなくては面白くない。
少しずつ距離を詰めていく徹。
一方のセリアは、徹が剣構えていないことを警戒しているのか、一定の距離を保とうとしていた。
距離が詰まらないことにより、両者睨み合いの状態が1分ほど続いた・・・・・・。
硬直状態を打破しようと、先に動いたのは徹だった。
一気に手合いの間合いまで詰めると、牽制の掌底繰り出すが、その掌底を紙一重で回避し、カウンター気味に繰り出される刺突。
「っ!!」
牽制で繰り出した、掌底の軌道を変化させる事により、剣を弾き、バックステップにより、距離をとった。
「なかなかの刺突だ」
「褒められるほどの、ものではありません・・・」
面白い、悠人の時より実戦に近いな。
褒めても、表情を変えずに構えているのも良いな。
・・・少し攻め方を変えるか。
一呼吸おいた後、徹は再度距離を詰めた。
足の裏にオーラを集めることにより、先程よりも速い速度で間合いを詰め、相手の懐に飛び込む。
予想よりも速い動きをする徹にたいし、少しは動揺すると思われたセリアは冷静だった。
手合いの間合いより、繰り出された掌底を剣で防ぎつつ、ウィング・ハイロウを使い距離をとった。
「意表を突けると思ったが、無理だったか」
「あの程度で意表を突けると思ったのでしたら、笑えますね」
「言ってくれるね。少し本気でいくかな」
「どうぞ、ご自由に」
徹は間合いを急激に詰めようとした。
しかし、セリアの攻撃間合いに入る前で止まった。
止まったことに疑問を浮かべるセリアに、
「舞散るが如し[落葉]、見切れるかな?」
そういうと、徹はゆっくりと、葉が舞い散るように左右に動き出した。
ゆらゆらと緩急をつけ左右に動く徹に、
「こんな小細工!」
そういい、徹に攻撃するため、セリアが一歩詰めて切りかかろうとしたその瞬間、セリアの目の前から、徹が消えた。
「え?!」
動揺した時、何かに足を払われ、セリアは後頭部から倒れた。
「っ!!」
消えたと思われた徹が、倒れているセリアに、剣を突きつけていた。
「いまのはいったい?」
「それよりも、俺の勝ちでいいよな?」
「・・・・・・貴方の勝ちです」
手合せも終わり、晩御飯を食べることになった、第二詰所のメンバーだが、その前にセリアに種明しをしていた。
「そんな単純なことで、消えたように見せるなんて・・・」
「単純だけど使えるものさ。実際、何十年もの時間を積み重ねて、作り出された技だからな」
「ねえねえ、トール。ネリーにも、らくようって言うの、できる?」
徹は少し笑いながら
「練習しだいで誰でもできるよ、あのぐらい」
「そっか〜」
と答えるネリーを見ていると、妹がいればこんな感じかな?と考えていた。
まあ少しは、悠人の気持ちもわかる気もするな。
それから時はたち、日常生活や鍛錬を通して、第二詰所のスピリット達と打ち解けていけたと俺は思う。
このまま何も起きないかと、錯覚してしまうような時間であったが、ラキオスとバーンライトが戦争状態に入ることにより、終わりを迎えた。
<後書き>
手合せと書いてcommunicationと読む、と言うことになっているKuroです。
今回は3話の続きです。
練習のため、戦闘ありにしました。
おかしなところが無いことを、祈ってますorz
今回登場した、技については下記で説明があるので、見てもらったほうがわかりやすいと思いますので。
まあ、次の5話目はバーンライトとの戦争です。
多分、2〜3話かけてバーンライトは完結させるつもりなので、次回もよろしくお願いします。
<今回登場した技の説明>
落葉(らくよう)
特殊な歩法から繰り出される技で、木の枝から葉が落ちていくような動きで敵を撹乱し、そこから急激な動きにより、使用者が消えたように見せ、敵の足を払う技。
ゆらゆらと左右に移動しながら敵に接近し、敵が自分から攻めてくる、もしくは技の間合いに入ると、急激に屈みながら、相手の死角に潜りこむ事により、消えたかのように見せ、そのあとに敵の足を払う技。
これが祖父に教えられたものだが、徹のアレンジバージョンは、敵の足を剣で切り落とす。