第3話 謁見
ここは最北の国ラキオス。
この国は自然の恵みにより、比較的豊かな国。
"龍の魂同盟"に所属し、帝国の支配圏と対立している。
これが、幻想から教えられたラキオスの全てだった。
実際に来てみると、話で聞いたとおりの豊かな国だった。
昔の西洋建築のような建物。
元の世界ではもう見ることのできない風景がここにあった。
城門まで来ると、衛兵に呼び止められた。
「少々お待ちになっていて下さい」
そう言い、エスペリアは衛兵のほうに歩いていった。
(面白いことが起きるかな)
『徹様はそればっかりですね』
(仕方ないだろ、性分なのだから)
「徹、どうした?」
「少し神剣と話していた」
「そうか」
悠人にとっては、神剣と話すということはそれほどないことだという。
求めは所有者に強制力をかけて支配しようとする。
そのせいで神剣との信頼関係ができてないのだ。
そうこう考えていると、丁度エスペリアが話を終わらせ戻ってきた。
「お待たせしました。今から謁見の間行きますので、トールさまもご同行お願いできますか?」
「ああ、良いよ」
「ありがとうございます。では参りましょう」
エスペリアにつれられ、俺達は謁見の間にむかった。
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「よくぞ、あの魔龍を打ち倒した!エトランジェの名は伊達ではないようだ。そのうえ、エトランジェを捕獲してくるとは、求めのエトランジェそなたの働きは高く評価している」
こいつが王か・・・。
「今回の邪龍退治と、エトランジェの捕獲の功績により、貴様をスピリット隊の隊長に任命する。スピリット共を好きに使うがいい」
なるほど、性根の腐った存在だな。
「落ち着けよ悠人、こういう話は流すに限る」
「わかってる。でもっ!」
「わかってるなら少し静かにな」
まあ、王の器でも測って見るか。
「高名なるラキオス王、お会いできて光栄です。私は永遠神剣 幻想の主 徹と申します」
ラキオス王がニヤニヤと笑う。
少し煽てる言葉を言っただけで、相手を気にせずニヤニヤと嬉しそうに笑うのか・・・。
器が小さいな。
「幻想のエトランジェよ、求めのエトランジェともども今日よりこの国のために働いてもらう」
「有り難き幸せです」
頭を垂れると、いっそうラキオス王は上機嫌になったようだ。
「そうだな・・・、どうせなら幻想のエトランジェ、貴様の力を見てみたい。一度我が前で戦ってみせよ。対戦相手はそうだな・・・、求めのエトランジェ、そなたがやれ」
「な!?」
悠人が驚いて顔を上げる。
「そんなこと!!」
「できないと言うのか?」
ギリッと悠人が歯軋りをする。
悠人と戦うのか、面白そうだ。
「わかりました。では、やろうか悠人」
「徹!?」
「どうせ人質がいるんだから、素直に指示に従ったほうがいい。それに、殺し合いではなく俺の力を見るものだ」
「・・・わかった」
暗い顔をしているが、指示に従わないといけないことを理解しているので、すんなり了承した。
エスペリア達は下がり謁見の間の中央には俺達だけになった。
悠人は腰に差した大剣【求め】を抜く、そして構えるとオーラを生み出した。
構えがなっていないな・・・。まあ、ただの高校生がまともな構えができたほうがおかしいか。
俺は幻想を腰に差したまま構える。
「剣を抜かないのか?」
「ああ、このままでいい。始めるぞ」
悠人と同等のオーラを生み出す。
「いくぞ!」
先に仕掛けたのは悠人だった。
一気に間合いを詰め、唐竹に振り下ろされる一撃。
その一撃を後ろに軽く飛ぶことにより回避する。
なかなかの斬撃の速さだが、余裕で見切れるな。
次の二撃・三撃と繰り出される斬撃も、余裕でかわし間合いを取る。
四撃目の斬撃を繰り出そうと構え距離を詰めてくる悠人にたいし、初めて自ら距離を詰めた。
斬撃が繰り出されるよりも速く手合いの距離まで詰める。
「え!?」
動揺する悠人。
「はっ!!」
裂帛の気合と共に繰り出された掌底は、正確に鳩尾をとらえた。
「がっ!」
悠人は目を剥いて後ろによろける。
間髪いれず間合いを詰め、二撃目の掌底が顎に突き刺さる。
素人ならこんなものか。
よろける悠人の足を払い倒し、幻想を眼前に突付ける。
「そこまで!」
少女の声が、試合の終わりを告げる。
「お父様。彼のエトランジェは、今すぐにでも戦闘に参加させるだけの実力です」
「そうだな。ではエトランジェ、貴様をスピリット隊副隊長に任命しよう!」
なるほど、王女のほうが、正確な判断ができているな。
そのうえ、器も大きいな。
俺は笑いを堪えつつ
「はっ、有り難き幸せ」
頭を垂れ立ち上がると
「本気でやってないから大丈夫だろ?」
「もっと手加減してくれよ」
悠人を気遣い立ち上がらせると、一緒に謁見の間から出る。
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<後書き>
3話目終了で〜〜す。
初戦闘シーンもどき終了。
やっぱり戦闘は難しいorz
まあそれよりも次回予告。
次回はサブスピリット達が登場するお話です。
戦闘シーンはなしに使用か迷い中なのですが、
まあ組み手を入れてもいいかなっと考え中です。
それではまた第4話でお会いしましょう。
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