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***復讐と言う名の弾丸***
 記憶・・・。

それは忘れる事の出来ない記憶の一部・・・。

「・・・アレン、エル・・・? ・・・みんな、何所に行ったのっ!!」

記憶の中にあった街、友達、家族・・・。それはもう取り戻す事は出来ない。

普通に過ごしてきた日常は一瞬の内に崩壊し、気付いた時にはもう自分一人しか居なかった。

「うそ・・・。なに・・・これ?」

見渡す限りの廃墟、廃墟、廃墟・・・。見渡す限り一面の廃墟。

崩れかけたビル、メチャクチャに潰された民家、ひび割れ歪んだ道路・・・そして。

「なんなの、あれ・・・」

見た事の無い少女達が不釣り合いな剣を持ち徘徊している。

「ひっ・・・!!」

相手と目が合った。そう思った瞬間。
突然相手の姿が掻き消え、気付くと直ぐ目の前にその少女が立っていた。

「あ、あぁ・・・」

逃げないと殺されると思っても、圧倒的な恐怖に支配され足がガタガタ震えて動けない。
無造作に剣を構え、そして振り下ろされた。

「いや・・・ィャ・・・ィヤ・・・・・・イヤァァァァァァっ!!!!!!!!!!」


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「馬鹿な・・・この・・・お・・・れ・・・・・・が・・・っ!?」

急所を撃ち抜かれ、エターナルの一人が絶命する。

「・・・・・・」

金色の粒子にその姿を変えながらゆっくりと消滅していくエターナルの亡骸。
それを一人の少女が無言で見ている。
長く透き通った白い髪を三つ編みにし、だぼついた古いジャンバーを着ている14〜15歳位の少女だ。
しかし、その少女からはいくつかの違和感が感じられた。

「ふぅ・・・」

大きく深呼吸する少女の左手にはとても彼女には似合わない銃が握られている。
そして、極め付けは片目を隠す様に頭に巻いているバンダナだ。

「・・・あっけなかったね、あんなのがロウ・エターナルなの?」

『シーンっ! まったく貴女は、またあんな無茶をして・・・』

ついさっき殺した相手の事をケロっとした表情で言うと、少女の左手に握られていた銃・・・。
永遠神剣・第二位【表裏】がキンキン声で彼女を叱りつけた。

『さっきの戦いの中で一体、何度突撃をしたか数えてましたか?』

「そんなの数える暇なんて無かったよ。ボク、そう言う細かい事ってしない主義だから」

『・・・7回です。普通、私の様な永遠神剣は接近戦は苦手だと言っているのに。
 このまま、あんな戦いをしていたらいつか大怪我をしますよ?』

「はいはい、分かったよ。いつまでもこんな場所にいても仕方が無いし、行こっ【表裏】」

『・・・・・・「わかった」・・・ね・・・まぁ、いいでしょう。確かにこんな退れた世界にいるよりも家に帰って
 シーンに綺麗にしてもらっていた方が断然マシですからね。・・・それでは、行きますよっ!!』

掛け声と共に魔方陣が浮かび上がり、そこにシーンがオーラフォトンの弾丸を撃ち込む。
【表裏】は空間と空間を結び付け[門]が無くても自由に他の世界へ向かう事が出来る能力を持っている。

『シーン、空間が安定したらもう一度撃ち込んで下さい。く・れ・ぐ・れ・も・っ! この前みたいなチョンボは
 ここの世界では洒落になりませんからね、いいですか?』

実はこの前。同じ様にして別の世界へ移動しようとした時、撃ち込む弾丸の数を間違え力を
暴走させてエライ目に合ったばかりなのだ。

「心配無いよ。そうそう何度もそんな事しないから」

そう言うとシーンはもう一度オーラフォトンの弾丸、フォトン・チップを撃ち込み自分も開いた穴に飛び込み
今居る世界から完全にその姿を消した。


シーンが去ってから数分後。突然どこからとも無く一人の少女と背の高い男が現れた。

「相変わらず。派手に暴れてくれますわね、あの小娘は」

秩序のエターナルの一人が襲われていると聞いてこのやって来て見たらこの有り様だ。
既に仲間は殺され、相手は去った後だった。

「やはりあの時、完全に殺しておくべきでしたわね」

「テムオリン様。誰かを追撃に回しましょうか」

「ふふ・・・。必要ありませんわ、タキオス。あの小娘はいつか必ず自分から私の前に現れるのですから・・・」

「ですが、あの娘は【悲哀】のエターナル。泳がせ過ぎれば後々厄介になるのでは?」

タキオスは納得がいかないらしい。

「あの娘に殺された我々の仲間はこれで四人になります。早めに手を打っておいた方が宜しいかと」

「あらあら、タキオス。焦るとロクな結果を招きませんわよ?」

嘲笑を浮かべ、テムオリンは更に続ける。

「あの小娘はトキミやあの坊や達と同じくらい気に入らない存在ですが所詮は子供。今は神剣の与える知識で
 なんとか戦っている状態、そんなのを相手にしても詰らないし・・・」

「・・・そうですか」

くすくすと笑いながらテムオリンは『門』をこじ開ける。

「さて、行きますわよタキオス」

「この拠点の管理は如何なさいます?」

「そうですわね・・・。メダリオ辺りに任せておきますわ」

「はっ」

「『悲哀』のエターナル・・・厄介ですわね」

そう言ってテムオリンとタキオスは『門』を潜った。


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「くぅぅ・・・っ」

何で自分はこんな所で倒れているんだろう・・・。

「あらあら、鬼ごっこはお終いですか?」

誰かが自分に向かって何かを喋っているが、何を言っているのか解らない。
そもそも何で自分はこんな所で倒れているのだろうか? それも思い出せない。

「だらしないですわね。もうちょっと楽しませてくれると思ったのに・・・あら?」

「うぅ・・・」

とにかく体中が痛い。力を振り絞って体を起こす。が、瓦礫の山に上半身を寄り掛からせるが精一杯だった。
その場で、両足を投げ出してお人形座りする状態になる。
良く見ると左足が有らぬ方向へ折れ曲がっていて、右足の感覚は全く無い状態になっていた。

「ふふふ、まだ動ますの? 頑張りますわね」

「つっ・・・」

自分の事をからかう様な言葉が飛んでくる。そんな中、急に右目が激痛に襲われ反射的に顔を抑える。

「・・・これ・・・ボクの血・・・?」

顔から離した手にはべっとりと血が着いている。右の視界は真っ赤に染まった廃墟を写していて、
それが自分の血でそうなっていると思うと気持ちが悪くなって来る。

「良く頑張りましたわね。でも、これで最後にして差し上げますわ」

前を見ると、宙に浮いている杖を持った少女。テムオリンが持っていた杖、『秩序』を掲げるのが見えた。

「っ!! かっ・・・はっ!? な、何ぃ・・・こ・・・れぇっ!?!?!?」

「ふふふっ、ちょっと貴女の頭の中をいじくってあげてるだけですわ。どこまで正気を保っていられるかしら?」

相手が何か言っているが。彼女、シノンには全く聞こえていなかった。
絶え間無く襲って来る頭痛、吐き気、身体の異常。

「や・・・めて、やめて・・・よぉ・・・っ!! これ・・・い、じょうは・・・ボク・・・ぼく・・・っ! ああぁぁぁァぁああアーーーーーーーっ!!!!」

空を見上げ。限界にまで見開いた目は血走り涙が溢れ、口からは涎を垂れ流しながら断末魔の悲鳴しか出て来ない。

「あ・・・がぁ・・・っ!? かはっ、いぎぃ・・・、ぐ・・・ひゃあぁぁぁぁーーーーっ!!!」

いやいやをしながら叫び続けるシノン。

「随分と粘りますわね、これならどうなるかしら?」

そう言って、更に力を掛けようとした瞬間。

「はひゃうっ!!」

突然、ビクンッビクンッと体を激しく痙攣させシノンはガクリと糸の切れた人形の様に動かなくなった。
目は完全に焦点を結んでおらず意思の光も消え失せている。息はしていたが・・・完全に虫の息だった。

「壊れてしまいましたか。まぁ、人間にしては良く持った方――」

「そこまでですっ!」

「あら、これはこれは」

テムオリンの背後から怒りを露わにした時深が姿を現わした。

「随分と遅い搭乗ですことね、トキミさん。待ちくたびれてしまいましたわ」

「テムオリンっ、なんて酷い事を!」

「いいじゃありませんか、どうせ破滅を待つだけの世界だったんですから。私はその手助けをしただけですわ」

「そうならない為に、私達が長い時間を掛けて修正していたのを知らなかったとは言わせませんよ」

永遠神剣『時詠』を抜き放ち攻撃態勢を取る。

「あら、いいんですか? ここで戦ったらそこに座っている人間も捲き込みますわよ?」

「・・・そうなる前に、相手を倒せば済む事っ!」

そう言うが早いか一気に斬り掛る。

「おお怖い。嫌ですわね、歳よりは怒りっぽくて」

時深の攻撃をあっさりと回避し、背後に回り込む。

「くっ・・・! この、私よりも老けてる癖に・・・っ!!」

「おほほほほ、私はこの辺で失礼しますわ。これでもあなたと違って色々と忙しいので・・・では、ごきげんよう」

「待ちなさいっ!!」

時深は追い縋ろうとするが、テムオリンは完全に今いる世界から消えてしまった。

「・・・・・・」

テムオリンが去ってから改めて周囲を見渡すが、そこに在るのは廃墟だけ。
破滅へと向かっていたこの世界を、そうならない為に修正していたのにちょっと目を離した隙にテムオリンの介入を許し
この有り様だ。

「そういえば、あの娘は・・・?」

その少女はすぐに見付ける事が出来た。しかし・・・。

「酷い・・・。ここまでする必要なんて、どこにも無いのに・・・」

その少女は、もうどうする事も出来ない状態になっていた。


誰かが自分の事を揺すって何かを言っている・・・。はっきりしない意識の中でそれだけが解った。
体の感覚は全く無く、五感もほとんどおかしくなっている。
自分の中で何かが弾け飛んだと思った瞬間そうなったのだ。

(何を・・・言ってるの・・・?)

さっきまで何かを言い争っていたが、その内容は全然解らなかった。
しかし、今自分の事を揺すっている人物が何かをしていたからこんな事になったのだ。
只、それだけはハッキリと理解できた。

(許さない・・・許さない・・・っ!)

掴み掛かって一発だけでも相手を殴りたかったが、意識が段々薄れていく。

(こんな・・・事で・・・ボクは・・・・・・、死ぬの・・・?)

歪んだ視界がぼやけて行く。

「許・・・さな・・・い・・・、ぜっ・・・たい・・・に・・・」

その言葉を最後に、シノンは完全に意識を失った。

そして・・・。

それからどの位の時間が経ったのか・・・。

『何故、貴女はそんなに泣いているのですか?』

(な・・・に・・・? 誰・・・なの・・・?)

『何故そんなに泣いているのです?』

泣いていた、ここは夢の中かそれともあの世か・・・。廃墟ばかりが支配する世界でシノンは泣いていた。

(ボクは・・・死んだの・・・)

『死んだ? 死んだから哀しくて泣いているのですか?』

おっとりとした声がそう聞いて来たが、シノンはそれを否定した。

(違う・・・。いきなり目の前が光ったと思ったら誰も居なくなって・・・変な人達に襲われて・・・。
 ボクは・・・何も出来なかったの・・・仕返しも出来なかった・・・。この傷も、・・・・・・その時に・・・)

『・・・・・・』

(とっても悔しかった・・・。でも何も出来なかったの・・・)

そこまで言って、シノンはまた泣き出す。

『・・・泣き止みなさい。ここで泣いていても仕方がありませんよ』

(そんなの・・・ボクの勝手だよ・・・! いきなり話し掛けて来て・・・姿も表さないで・・・。貴方は一体誰なの・・・?)

『私の名は『表裏』・・・、永遠神剣・第二位『表裏』です』

(永遠・・・神剣・・・? 『表裏』?)

『貴女の名前は・・・何と言うのです?』

(ボク・・・? ボクは・・・シノン・・・)

『シノン・・・。いい名前ですね』

(うわっ!?)

突然、目の前に光の玉が現われた。
さっきまで泣いていたシノンだが、いきなり目の前に出現した光に驚き。ただ呆然とその光の玉を見ている事しか
出来なかった。

『力が欲しいのなら、私を手に取りなさい』

(ちから・・・)

憑き物に憑かれた様にゆっくりと手を伸ばし、玉を掴む。

『そして、これからはアナタは『表裏の衣』を纏うエターナル。『表裏の衣』シーンと名乗りなさい』

(シーン? でも、どうして・・・)

『これからの戦いに、アナタの本当の名前にまで血を塗らない為にです』

これが、シノン・・・もといシーンと『表裏』との出会いだった。


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『・・・ン、シー・・・、シ・・・ン、・・・シーンっ! 起きなさいっ!!』

「・・・っ!?」

ざぶんっ!!

湯船に浸かり良い気持ちでうとうとしていたのに、
急に声を掛けられたので驚いた拍子に滑って風呂の中にダイブするハメになってしまった。

さばっ!

「ぷはっ!!」

『やっと起きましたか?』

「『表裏』・・・。ひどいよ・・・」

『こんな場所でも眠るシーンがいけないんです。風邪を引きますよ?』

「いいじゃん、ボク寝るのもお風呂も好きだし」

『・・・それでも、そんな事をする人はいません』

「けち・・・」

ボソリと呟き風呂から上がる。

それから・・・。

『そうそう、そのパーツはしっかりと水分を拭き取っておいてくださいね』

「ん・・・わかった・・・」

『・・・・・・』

「・・・? どうしたの『表裏』」

『それと・・・。ちゃんとシャツのボタンを止めて前を隠しなさい、はしたないです』

黙々と作業をするシーンの格好は大きめのTシャツにパンツ一丁で、しかもシャツのボタンは全開という
とってもあられもない格好なのである。

「いい・・・、暑いから」

『もう・・・、見てるこっちが恥ずかしいですよ・・・』

そんなシーンの格好を正そうとしている『表裏』だったが、無駄な努力になってしまった。

「そういえば・・・あのね、『表裏』・・・」

突然何かを思い出したように作業していた手を休め、シーンが『表裏』に声を掛けた。

『なんですか?』

「・・・・・・ううん、何でも無い・・・」

しかし首を横に振ると、また黙々と手入れを開始した。

それから小一時間が過ぎて・・・。

「ん・・・、出来た」

ガチャン☆ と最後の部品を取付け、『表裏』の手入れが終わった。

『ふう・・・、スッキリしましたよ。自分の身体がバラけている状態はやっぱり落ち着きませんね』

「心配無いよ、この前よりもうまく手入れできたし」

『・・・その日によって手入れの良し悪しが変るのは勘弁してくださいよ』

「出来るだけ気を付けるよ・・・。それじゃボク、服を・・・っ!」

その時、シーンの住む家に誰かが入って来る気配がした。

『・・・っ! 侵入者っ!?』

「だれっ!」

右目の傷をバンダナで隠し素早く振向き、隠れ手入れしたばかりの『表裏』を構える。

「失礼しますよシーン。済みませんがその・・・おっと、これは失敬」

紳士服を着た30後半の男が何かを言おうとしたが、すぐに視線をシーンから背ける。

「え?」

『シーン、ボタンを止めなさい!』

つまりは、ボタンを止めないで勢い良く振りかえったからその拍子に・・・。

「・・・?」

「・・・・・・」

『・・・・・・』

「・・・えっと・・・・・・。いやん・・・」

業とらしく恥ずかしがるポーズを取ってみたりするシーンだが。一瞬、場の空気が寒くなった感じになった。


ソファーに座り紅茶を啜りながら今回シーンの元を訪れた理由を簡単に話すアウラ。
向かいのソファーに座るシーンは・・・。ボタンを真中一つを止めただけで相変わらずラフなままの格好だ。
しかもソファーに胡座で座っているのだが、本人は全く恥らう様子は無い。

『イベント・・・ですか?』

「なに、それ・・・?」

「私も細かい事は・・・。翁の暇潰しと言うのが強いのですが・・・私はその事をシーンに――」

「興味無い・・・」

ピシャリ、と断りを入れるシーン。

「と、言うと・・・?」

「ボクはボクのやり方でやらせてもらう・・・。翁にもずっとそう言ってきたんだから」

「とにかく、一度翁に会ってみてください。では・・・」

座っていたソファーから立ち上がり玄関へ向かう。その途中で振り返らずに・・・。

「くれぐれも、その格好で行くのだけはお勧めしませんよ・・・シーン」

そう言って彼は帰って行った。

『シーン・・・』

「解ってる・・・。だけどボク、あんまり翁は好きじゃない・・・」

『それはまぁ・・・。最初に会った時の印象が印象でしたから・・・』

苦虫を噛み潰したように応える『表裏』。

「行くしかないみたい・・・だね」

『表裏』と契約してからあまり感情を表に出さなくなったシーンだが、どこかゲンナリしている。

『では、行きましょう』

渋々と言った感じで肯いたシーンは急いで着替えをして出発した。


「久しぶりじょの〜、シーン。元気してたか? ・・・いつつ・・・・・・」

「・・・まあ・・・ね」

到着草々、尻を撫でられたシーンに一発殴られた翁だが。

「相変わらずのセメント娘じゃ〜、まぁそこが良い所なんじゃが」

本人は全く堪えてない様だ。

「お前さんがここに来たという事は・・・もうアウラから話しは聞いている様じゃな」

「その話しなんだけど、ボクは――」

「最近になってのぉ〜。また新しくカオス陣にエターナルが加わったんじゃよ」

「っ!」

『・・・・・・』

「『聖賢』と『永遠』が新たな主と契約したと言う情報が入っておるんじゃよ〜」

『聖賢と永遠が・・・』

「どうしたの・・・『表裏』」

『・・・・・・』

『聖賢』と言う永遠神剣に『表裏』が反応したが、シーンが訊ねても答えてくれなかった。

「それに最近めっきり暇でな〜、ここは一つ景気良く行きたいんじゃよ」

「それにボクも参加しろ、と?」

「どうじゃ〜? ロウ、カオス、両陣営のエターナルが倒し放題、選り取りみどりじゃぞ?」

「・・・・・・」

「悪い話じゃ無いんじゃが〜」

「・・・・・・」

「・・・聞ぃとるか? わしの話し」

「・・・・・・」

『駄目っぽいですね・・・』

何故か考えるポーズのまま動かないシーン。簡単に言えば寝ていた。

「仕方無いの〜、イタイのは嫌じゃが・・・ほれ、むにっとな♪」

むにゅ・・・ムニムニ・・・・・・。

「・・・はうっ!? ひゃ、ひゃあっ!」

「おおっ、起きたか?」

「こ、この・・・っ!」

「ん?」

耳まで真っ赤にしたシーンが拳をふるふると振るわせる。

「この、スケベーーーっ!!」

勢い良く繰り出される右ストレートだが。

「おっと、・・・危ないの〜」

難なくそれを避ける翁。アウラの時は気にしていなかったが、触れたりするのが嫌らしい。

「とにかくじゃ〜、どうじゃ?」

「・・・・・・。少し考える・・・」

「そうか〜、良い応えを待っておるぞ?」

「・・・・・・」

クルっと回れ右をするとシーンは翁の家から外に出た。


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「悲哀のエターナル?」

「はい」

「トキミ、それは一体何だ?」

「よく解らないんだけど・・・」

ユウトとアセリアは時深から聞かされた話しが解らず質問した。

「悲哀のエターナルとは、私達のような存在を良しとしないエターナルで構成された集団です」

「?」

「何だそりゃ?」

「簡単に言えば、私達の事を一方的に敵視しているエターナル達の事です」

「一方的に・・・?」

「それはロウ・エターナルも憎んでいるのか?」

二人の質問にコクリと肯く時深。

「彼等は有無を言わずに攻撃して来ます。今までに、もう何人犠牲者が出たか・・・」

「でも・・・何でまたそんな?」

「細かい事情は・・・私にもほとんど解らなくて」

ユウトもアセリアも初めて聞いた話だった。まさかそんな連中が居たなんて・・・。

「ユウトさんもアセリアも、十分注意して下さい。それと、決して彼らを甘く見てはいけませんよ」

「ん、解った・・・」

「ああ、そんな奴等に好き勝手されてたまるかよ! そんな事、絶対にさせやしない!」

「それでは、私は先に戻りますから――」

その時・・・。

「相変わらず、綺麗語とだけは天下一だね。カオス陣営のエターナルは!」

「えっ!?」

「っ!」

「なにっ!!」

突然罵声が浴びせられ、声のした方へ振向く。そこに居たのは・・・。

「貴女は・・・、まさか・・・っ!?」

どこからか現われた少女の姿を見て、時深は一瞬言葉を詰らせた。

「アンタ達じゃ世界は救えない。そもそもアンタ達が居なければ世界は静かな状態でいられるんだ!
 超越者気取りで・・・調子に乗るなっ!!」

スパッツにプリーツスカート、だぼだぼのジャンバーを着込んだ少女ががそこに立っていた。
銀糸の様な長い髪を三つ編みにし、右目をバンダナで隠している。

「貴女は・・・あの時の・・・?」

真っ青になった時深はそれだけしか言えなかった。

「お前が悲哀のエターナルなのかっ!!」

『聖賢』を抜き放ち構えるユウト。アセリアも『永遠』を構える。

「・・・ん、負けない!」

「今日はちょっとした挨拶だよ、私は別に今戦っても構わないけどね。私の神剣がアンタ達の神剣に用事が有るからって
 来ただけ」

『なんだと?』

少女の言葉に『聖賢』が反応した。

「『表裏』、さっさと終わりにしてよね」

『久しぶり・・・ですね、『聖賢』。それに、『永遠』・・・』

『お前か、『表裏』・・・』

「知り合いなのか『聖賢』?」

『・・・私の、昔の仲間だ』

「なんだって!?」

「そうなのか『永遠』?」

『はい』

改めて少女の手にしている銃型の永遠神剣を見る。
『聖賢』の言う事が本当ならば、あの神剣は元はカオス陣営に協力していた永遠神剣になる。

『こんな形で貴方方と再会する事になるなんて・・・残念です・・・』

『それを今更言いに来たのか?』

『はい・・・』

『ならば、仕方が無い。それも運命だ』

『そうですね・・・。シーン』

「なに、『表裏』」

『ありがとうございます、私の用事は済みました・・・。行きましょう』

「解った。それじゃあね、精々気を付けて行動する事だね新人エターナルさん」

「ま、待てっ!」

追い縋ろうとしたユウトの足元に銃弾が撃ち込まれる。

ガシャン!!

「何度も言わせるなっ! 今回は挨拶だけだって言ってるだろ! ・・・それとも無駄死にしたいの? ここで。
 殺されたいの? この私、『表裏の衣』のシーンに!」

「・・・うっ!?」

そして、撃った少女はまるで少女とは思えない程の声音と殺意をユウトに向ける。

「じゃあね」

そう言うと少女は去って行った。


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『シーン・・・』

「なに?」

『どうするんです? 翁の計画には・・・』

その質問にシーンは・・・。

「決まってる、もちろん参加するよ」

『解りました。ならば私も、全力を尽くしましょう』

「ありがとう・・・『表裏』」

『いえ、大した事では有りませんよ・・・シノン・・・』

「『表裏』・・・それは」

それは、シーンの本当の名前・・・。あの時封印した名前だった。

『今は・・・今だけは、アナタの本当の名前で呼ばせて下さい・・・』

「うん、解った・・・」

こうして、シーンは翁の計画に参加する事を決めたのだった。

勝利を掴むのは・・・【悲哀】か・・・それとも・・・・・・・・・。




<<あとがき>>

 ほおおお・・・、悲哀ストーリー・・・なんとか完成ですよ・・・。

書いてる途中で「いいのかな、これで・・・」とか、「なんか矛盾してる・・・」なんて思考が

グルグルと無限ループの様に回り始めるんですよ。

しかし・・・そうなりながら書いた作品の割には一番良く出来てる方なんですよね・・・私的には・・・。

いや〜、これを元に連載SSの方も頑張らないと。

ではっ!!

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