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           運命に逆らいし者

 

  第一章 
     第一話 出会い


光の柱の中で夢を見た。しかしいつも見ていたあの夢ではなかった。

俺が幼い頃、初めて父と約束した日のことだった。



「健二。お前は将来は何になりたい?」

よく親が子供に聞く質問である。その質問に対し

「んっとね。お父さんみたいに大きくなって世界の平和を守りたい!」

多分アニメの主人公のようになりたいと思っていたのだろう。その答えに父親は

「そうかそうか。でかくていい夢だな。
 だがその夢に近づくならお父さんと一つだけ約束して欲しい」

「なに?約束って?」

「この先どんなことが起きても自分が後悔しない選択をするんだ。
 自分がどうしたいのか自分は今どうすべきなのかをな・・・。
 他人の意見も聞いてもいいが、必ず自分の意思できめるんだぞ?」

そう父親は言ったのだ・・・。



当時の自分はそのことについてはわからなかったが、今の自分にはよくわかる。

「今何をすべきなのか、自分はどうしたいのか。」

気絶している中健二の頭の中は、その言葉で埋め尽くされていた。


















      光の柱にのまれて4時間後

健二はようやく気がつき目をあける。その先で見えたものは・・・

「ただの草原?だよな・・・。何にも無いし・・・」

目に映るものは草、草、草・・・・。見渡す限りの草・・・。

その他に見えるものとすれば遠くの方に見える湖と森、空へのぼる煙。

それと足元にある一筋の槍・・・・。

『あ・・。も・・・ま・・・・』

湖と森と煙と槍。他にはなにもなかった。

「しかしここは何処なんだ?こんな広いとこ日本ではないはずだけど・・・」

更に周りを見渡すが何も無い。

『お・・。きづ・・・・・・』

「?」

しかし今さっきから何か声の様なものが聞こえてくるが、周りを見回しても何も無い。

あるとすれば、湖と森と煙と槍だけ。ん?槍?

「そういやこの槍って何でこんなとこにあるんだ?」

ふと思い槍を持ち上げる。

「うぉ!すごく軽い!いい槍なんだな」

試しに振ろうとした瞬間、

『聞こえてますか!!マスターー!!』

頭の中に響く声。慌てて槍を落とす。

「な、なんだいまの!?確か『聞こえてますか』って言ってたよな。

 でも人影なんてあたりには無いし・・・。まさか!?」

そう言い再度槍を拾う。

(でも槍が話すなんて聞いたことないし・・・)

『それはただの槍ではないですから』

今度は普通の会話を聞いているような声が脳に響く。

「まさか今さっきまで話し掛けてたのは・・・君か」

『そうですよマスター。私は永遠神剣第4位の『守護』と呼ばれています』

「永遠神剣?なんだそれ?しかも君は剣じゃなくて槍じゃないか」

『永遠神剣といわれても様々な形があるのです』

「ふ〜ん。そうかそうか・・・ってこんなもの日本には無いはずだ!じゃあここは何処だ?」

『マスターから見れば異世界。ということになりますね』

「い、異世界・・・。なんでまたそんな所に・・・まさかあの光の柱!?

 異世界に飛ばされる原因としたらあれぐらいしか思い当たらないし・・・。」

何とか頭の中で整理しようとする。

『よろしければマスター。こちらの世界のことを話しましょうか?』

「ああ、君が何故ここにいるかも聞かないといけないけど、その前に頼む。

 頭がこんがらがりそうだからな」

『わかりました。それでは順に説明させてもらいます。』






       『守護』による説明を受け始めて2時間経過

「つまりこの世界には人間と「スピリット」という存在がいると。」

『そうです』

「んで「スピリット」といわれる存在が君のような永遠神剣を所持している。
 そして今、様々なところで戦争が起きていると。そう言うところか」

『そのとうりです。流石マスターのみこみが早くて助かります』

「それはいいんだけど。なんで君はスピリットじゃなくて俺のところに?
 「スピリット」だけが神剣を持つことが出来るんじゃないのか?」

『その質問は、異世界から来た人。ここでは「エトランジェ」といいます。
 その「エトランジェ」も神剣を持つことが出来るのです。
 その上「スピリット」よりも能力が高いのです』

「なるほど。でも何で君はここに来たんだ?理由を聞かせて欲しい。」

『それはマスターに私と契約していただきたいからです』

そう言われたが健二は困る。

「しかし俺なんて争い事とか嫌いだぞ?神剣は戦うものなんだろ?」

そう質問するが、『守護』からは

『それは全てマスター次第です。戦いに使うも飾るも。さらに人を守るためにだって』

そう答えが返ってきた。

「人を守るため・・・」

『守護』の最後に聞いたその言葉が頭の中を駆け巡る。

「なら最後に一つだけ聞かせてもらってもいいか?君にとって守るということはどういう事だ?」

『守る・・・。それは大切なものを失わないようにすることもそうですが、自分にとっては

 後悔しないためですね。守ることで失わずにすむものもありますし。

 守らなかった事で後悔するのだけはいやですし・・・』

質問した答えは父親に言われたことと同じことだった。

(後悔だけはするな・・・自分が今何をすべきなのかを考えろ。か・・・

 今自分がすべきことは・・高嶺達を探してもとの世界に戻ることだな

 そのためには力が必要か・・・)

「わかった。そう言うことなら契約しよう。これからよろしくな『守護』」

『こちらこそよろしくお願いします。マスター。では早速契約に入りますので

 私を胸の前で持ってください』

「こうか?」

言われたとおりに持ち上げる。

『そのとおりです。では契約を始めます・・・。目を閉じていてください』

目を閉じしばらくすると『守護』から力が流れ込んで来るような感覚になる。

『契約完了しました。これからはスピリット以上の力を使うことが出来ます。

 ただ・・・その力を持続させるには私と一定距離内にいなければなりませんが・・・』

「それでもかまわないさ。それよりこっちの自己紹介がまだだったな。

 俺の名前は小坂井健二。健二と呼んでくれ」

『ケンジ。ですか。わかりました。今後そう呼ばせてもらいます。何かお困りでしたらなんでも聞いてください』

「そうか?なら早速なんだが今何処にいるんだ?」

『イースペリアとサルドバルトの国境付近ですね。今はイースペリア領内にいます』

「とりあえず情報収集のため近くの町まで行きますか。ここからだと何処が近い?」

『そうですね〜。ここからだと・・・!?ケンジ11時の方向からスピリット3体がこちらに向かってきています!

 この方角だとサルトバルトのスピリットみたいですね』

「なんだって!?」

(そんなこと急に言われても、こちらとしてはあまり戦いたくないんだが、
 まぁ一度戦って見ないとどんなもんかわからないから戦ってみたいとも思いもするが・・・)

「話し合いなら聞こう。けど無理奴連れて行こうとするなら迎え撃つ。お前の得意分野は何だ?」

『私は主に守備と回復に優れています。ただ攻撃の方は・・・』

「別に殺さなくてもいい。気絶させることぐらいはできるよな?」

『それなら十分に。でもどうするんです?気絶させた後は?』

「あとから考える!話し合いで済んだらそれの方がいいけど・・・」

『そううまく行くわけはないでしょう。なにせエトランジェですから。』

「だよなぁ。ま、戦うことになったらその時はその時でいいか」

『そうですね。まぁ何とかなるでしょう。・・・来ますよ!』

『守護』を握る手に力が入る。

「ま、頑張ってみますか」










       健二初戦1時間前

  イースペリア城内 謁見の間

つい2時間ほど前に出現した光の柱。その話で周りの臣官達は騒ぎあっていた。

「”伝令。ここより2時方向、サルトバルトとの国境あたりで光の柱を確認。

 エトランジェが領内で召喚されたのだと予測されます”」

兵士の報告に周りがさらに騒ぎ出す。

「”静まりなさい。エトランジェが出現したということは他の国にも現れた可能性があります。

  エトランジェを他国に取られるわけにはいきません。誰か出現したと思われるエトランジェを

  ここにつれて来てもらえないでしょうか”」

その言葉に1人のブルースピリットが手を上げる。

「”私にその任務を受けさせてもらえないでしょうか?”」

「”シリカ。あなたに頼むなら安心ですが、なるべく話し合いで決めるように。戦ったりしてはいけませんよ。

  向こうが拒否するならば仕方ありませんが・・・”」

「”わかってます。なるべく話し合いで解決するよう努力します”」

しかしシリカと呼ばれるスピリットは

(エトランジェか。1度は戦ってみたいんだよね)

そう考えていた。

「”それでは行って参ります”」

謁見室をあとにするシリカ。それを見つめる女王アズマリア。

「”話のわかってくれるエトランジェであればいいのですが・・・

  シリカ。死ぬ無茶だけはしないように・・・。”」

呟くその言葉は誰の耳にも聞こえていなかった。







        健二初戦闘3分前

近づいてきていたスピリット3体は健二を発見するとその場で立ち止まる。

「”貴様エトランジェだな。我々について来て貰おう”」

「何故だ。別に行くも行かないも俺に決定権はあるだろ?」

「”貴様にそんなものは無い。ついて来るのか?そうでなければ力ずくでも連行する!」

そう言いスピリット達は神剣を構える。

(やっぱりこうなるか。なぁスピリットってみんなこうなのか?)

『守護』に話し掛ける。

『何処の国も同じような者が多いですね』

(話し合いとかそう言うのはこの世界には無いのかよ・・・)

思いながらも『守護』を構える。

「そっちがやる気ならこちらとて何もしないわけにも行かないしな。まぁ相手してやるよ」










        健二初戦闘開始直後

イースペリアを出たシリカは持っている神剣からエトランジェの居場所を探っていた。

(どこに行ったんだろ。確か報告ではこの近くのは、ず・・・!)

神剣からエトランジェの神剣だろう強い力を感知した。しかしその他にも3本の神剣の力も感じた。

(まさか、サルトバルトのスピリット!?しかも戦ってる!?なら早く助けに行かないと)

移動していた足をさらに速める。

(いくらなんでも召喚されたばかりなんだから・・・)

そう思うが、戦闘区域に入ったとたん目の前で起こっている戦いは圧倒的であった。














「”くそ。何故私達の攻撃が当たらない”」

焦りを見せるサルトバルトのスピリットたち。攻撃をするも全て弾かれていた。

「もう終わりか?ならこっちからも行かせてもらう!」

『守護』の先で近くにいたスピリットの剣を弾く。そのまま回転させ柄の方で思いっきり突いた。

「”くっ”」

腹に強烈な痛みを喰らい膝をつく、そこに更に攻撃を加える。

「少しの間気絶しててもらう。我流闘技「衡絶」!」

手に集めた気を相手に叩き込む。叩き込まれたスピリットは3mほど飛び気を失う。

(おぉ。気の攻撃でも結構喰らうんだな)

『当たり前です。神剣の力があるだけで他は普通の人と同じなんですから』

『守護』がそう答える。

『でも今まで普通の攻撃でしたからよけれましたが神剣魔法が来たらどうするんですか?』

後ろの方にいたスピリットが詠唱を始めているのが見える。

(ま、それならこちらも使うまでさ)

『守護』を地面に突き刺しこちらも詠唱に入る。

「マナを防ぎし盾よ 我の前にその姿をあらわせ・・・」

こちらの詠唱が完成したのと向こうの詠唱が完成したのは同時だった。

「”ファイアーボルト!!”」

「ディフレクション!」 

目の前に盾の形のバリアが張られそこへ敵の魔法が襲い掛かる。

しかしバリアに触れた魔法は見事に霧散した。

「”なに!?”」

驚いている隙に相手に近づき「衡絶」を叩き込む。

「遅い!」

弾き飛ばされたスピリットは木に背中からぶつかり気を失う

「これで2体目っと。あとは・・・」

1人残っている奴に近づく。

相手は恐怖が強かったためかそのまま突っ込んできた。

「悪いな。仕掛けてきたのはそっちなんだ後悔するなら襲ったことにするんだな。」

相手の武器を弾き飛ばし、続けざまに打ち込む。

「ふぅ。これでお終いかな。」

『そうですね。この様子だと後2時間は目を覚まさないし、大丈夫でしょう』

「ならよし。んじゃとりあえずこいつらをかためといてっと」

気絶している3体のスピリットを1箇所にまとめる。

「よし。これでいいだろう。じゃぁそろそろそこにいる奴。出てきたらどうだ?」

『!?気付いていたのですか』

「まぁな、戦闘中にあんなにじろじろ見てたら誰でも気がつくって。」

『それでも流石です。相手は神剣の気配も隠していたのによくわかりましたね』

「どうも」

照れ隠しに頭をかく。

「俺に話があるなら聞くけど・・・。早く出て来いよ」

そう言い気配のする方を睨みつける













「・・・。じゃぁそろそろそこにいる奴。出てきたらどうだ?」

「”!”」

そう言われたとたん体が強張った。

確かにじろじろ戦いを見ていたが神剣の気配は隠したつもりだし

見つかるだなんて思っても見なかった。

(流石エトランジェってとこかな・・・)

「俺に話があるなら聞くけど・・・。早く出て来いよ」

(ま、見つかっちゃったもんは仕方ないっか。まぁ話し合いで解決できそうだし。
 そこまで警戒する必要は無いかな)

そう思い隠れていた場所から出る。

















「やっと出てきてくれたか。で、あんたは俺に何の用?」

「”イースペリア女王アズマリア様からあなたを連れて来るように言われたの。」

「へぇあんた達もか。でもそこで俺がついていく事を拒否したら?」

「”無理矢理にでも連れて行くように言われたけど・・・。今の戦いを見てたけど、

  十中八九こちらが負けるでしょうね”」

「やってみなきゃわからないだろ?」

「”そうだけど。あんまり戦うなって言われてるし・・・」

「ふむ。戦うなってことはその女王は話し合いで何とかしたいと、そういうわけか」

「”そのとうりよ”」

少し考えながら『守護』に聞く

(話のわかるやつそうだな。とりあえず話を聞くだけ聞いてみるか)

『そうですね。今の状況もわからないですし、

 他のエトランジェの情報も得られるかもじれませんしね』

(だな。まぁ嫌なら逃げたらいいしな。情報収集にはもってこいか)

「わかった。そう言うことなら同行しよう」

「”いいの?そんなに簡単に決めちゃって”」

「少しは話がわかる奴そうだからな。話だけでも聞きにいく価値はあるだろう」

「”そういうことなら私達の国へ案内するわ。私の名前はシリカ・ブルースピリットよ”」

「俺の名前は小坂井健二。まぁ健二と呼んでくれ。」

「わかったわ。じゃ短い間だけどよろしく。ケンジ」

「ああ。こちらこそよろしく。シリカ」




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 あとがき

作者のケンジです。ようやく飛ばされて初戦闘シーンも書きましたが・・・。
・・・こんなんでいいのだろうか・・・。と思ってます。
新しくシリカ・ブルースピリットが登場しましたが、詳しい設定はまだ決めてなかったりする・・・。
いろいろと設定していない事とかが多くて多くて大変です。
今回の内容は結構考えるのにも苦労しましたが結果的によく出来たと思っています。


今までの話の中でもっとこうした方がいい。とかここが良かったなど
意見、感想がありましたらどんどん書いていただければうれしいです^^


最後にここまで読んでくださった方ありがとうございます。
今後とも頑張って書いていきますのでよろしくお願いします


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