作者のページに戻る

 




「タキオス、決着をつけよう」


 『聖賢』を胸元の位置まで掲げるようにして構える


「よかろう、もはや数すら覚えられぬほどの闘い。ここで決着をつけるとしよう聖賢者ユウトよ」


 タキオスも無造作に『無我』を構える
 オーラフォトンとダークフォトンが嵐のように空間を薙ぐ

 一筋の汗が地面を叩く
 それが合図だった


「うおおおぉぉぉお!!!」

「はぁぁぁぁぁあああ!!!」


 お互いに大地を蹴る
 二つの対なる剣に宿されたのはただ純粋な破壊の力





 ただ、相手の神剣を砕く為に
 ただ、相手の身体を切り裂く為に



 『聖賢』と『無我』が交差する


 エターナルとなって幾度と無くぶつかり合った強敵
 アセリアと共にエターナルとなって数周期、その長きに渡っての決着が今つく


 身体がちぎれるほどの衝撃が全身を襲う
 徐々に『聖賢』が押され始める
 足が震えだす。手の感覚が消えていく

 相棒の刀身にヒビが入る
 刃の反対側でタキオスが嗤う


「どうした?まさか、終いなわけではあるまい?」



 圧力が増す



「貴様なら俺を倒せると思っていたのだがな。何時かの『永遠』のエターナルのように葬ってくれよう」



 圧力が増す



「さらばだ、『聖賢』。さらばだ聖賢者ユウトよ」



 圧力が増して、必滅の威力に達する








 そして―――――――










『聖賢』は『無我』ごとタキオスの腹を切り裂いていた










永遠のアセリア

-The Spirit of Eternity Sword Returns-

もう一度、あの場所で


序章「過ぎ去りしときに」











「く、ふふふ。はははは。あーーーっはっはっは!!!」


 タキオスは大地に寝転がっていた
 腹の巨大な傷からマナが溢れその身体は段々と薄れていく


「見事だ。俺の負けのようだな」
「あぁ、そうだな」


 大気に変えるマナを『無我』が砕けた分のマナを『聖賢』が吸収していく


「どうした、胸を張れ。貴様は妻の仇を討ったのだぞ?」


 タキオスの身体は既にしたの地面が見えるほど薄れ陽炎のようだった


「相変わらず、訳がわからないなお前は」
「何、自分を倒した戦士を敬えぬほど器が小さくないのでな」


 タキオスはいつものあの屈強な笑みを浮かべる


「ユウトよ。楽しかったぞ」


 そして、『無我』を操る屈強な狂戦士は消滅した


「……………ユーフィ?」
「うん……」


 岩の陰からひょっこりと顔を出したユーフォリアは巨大な布の包みを持ってこちらに来る
 小さかった四肢はスラリと伸び、蒼い髪は腰の位置まで伸ばしている

 そう、何時かのアセリアのように


「はい」
「ありがとうな、ユーフィ」


 渡された布を解き中にある物体を取り出す
 蒼い長剣、優美な装飾がされたその永遠神剣を空に掲げた


「……………全部終わったよ。アセリア」


 今は亡き愛しかった妻の名を呼ぶ
 『永遠』がキィンと悲しげに鳴った


【ユウトよ。ご苦労だったな】


 『聖賢』の声がする

 違う、誉められるような事じゃない。これは責任だ
 俺の未熟さゆえにアセリアの命を散らせてしまった、俺の義務だ



 アセリアが死んだあの日から、死に物狂いで鍛錬に走った
 今まで触りもしなかった戦いの知識を習得した
 身体中のマナを使い果たし、それでも『聖賢』を振り続けた




 血生臭い戦場で幾度と無くタキオスと戦った



 そして、それをようやく終わる


(アセリア……………、お前は今の俺をどう思う?)


 もし、会えれば今までのことに嘘をつくわけには行かない
 騙したままいる事はできないから

 復讐に身をおき、幾つもの世界を壊しながら戦い続け
 そして、人を殺して自己満足している自分に


 罵られるかも知れない
 軽蔑されるかもしれない

 呪われ、恨まれるかもしれない




 それとも、いつもの優しげな笑顔で迎えてくれるのだろうか
 自分を受け入れてくれるのだろうか


 だが、それは俺の勝手な都合の良い解釈だ
 思いっきり首を振った


「お父さん、無理してない?」
「大丈夫、大丈夫だよ。ユーフィ」


 心配するユーフィに頷いて立ち上がる


「帰ろうか。はやく帰らないと時深がうるさいしな」
「お父さん……うんっ!」









「そうは……………いきませんわよ」


 声が響いた。聞きなれたこの声は……………


「法皇テムオリン!!!」










 *    *    *










「待ち伏せか?味方が倒れてから出てくるとは相変わらず悪知恵が働くな!」
「あらあら。数百年の間に随分の口は達者になりましたわね。時深さんが知ったら悲しみますわよ?」
「おかげさまでな!お前には流石に負けるよ」


 うふふ、と遊戯を楽しむかのように踊る
 滑稽な光景だがテムオリンの神剣『秩序』に集うマナがそうでも無いといっている

 加えて、俺は今の対決でマナを消費しすぎている
 戦えば………恐らく命が無い


「まぁ、そんな口の悪い坊やにはお仕置きが必要ですわね」
「―ッ!!」
「これは!?お父さん!?」


 『秩序』のマナが消失したと思った次の瞬間
 テムオリンの目の前の一点、ごく小さな一点に向かってマナが集まり始めた
 悲鳴をあげ収束していくこの世界全体のマナ


 この現象を俺は見た事がある

 これは―――


「『マナ消失』だと!?馬鹿なそんな事をしたらこの世界ごと吹き飛ぶぞ!?」

「くっ!『悠久』よ。汝の契約者たるユーフォリアが命ず!マナよ我が前に集いて理をゆがめよ。その歪みもて『門』よ開け!!」


 ユーフィが『悠久』を使って『門』を開こうとする
 『門』を開く分のマナが集まって門が……………


「開かない?え、なんで!?ユーフィ間違ってないよね?」
「『聖賢』!どういう事だ!」

【恐らくは世界に『蓋』が掛けられているのだ】


 と言うことはこの世界から出ることが出来ないのか!?
 この世界は比較的マナが薄いがこれだけの量が集まれば……………まして中心部で喰らったら……………


【そうだ。消滅は免れぬ。拙いぞユウトよ】


「うふふふ。ようやく解りましたか。まぁ、マナが減ってしまうのは頂けませんけど
 作業の過程で二人のエターナルを巻き添えに出来れば儲け物ですわね」


 そう言うとテムオリンの身体が爆発した
 エターナルミニオン当たりで作ったダミーか!


「ユーフィ!もう一度『門』を開いてくれ。この際ここから出れれば良い!」
「で、でも」
「俺と『聖賢』の分のマナも送る。今はユーフィが頼りなんだ」



 戸惑ったユーフィは一瞬だけ俯いて


「わかった!やってみる!」


 そういうと再び『悠久』を掲げる
 俺は『聖賢』と共になけなしのマナをユーフィに送る


【急げ!急ぐのだ!】


 中心部のマナは臨界に達しようとしている
 時間が無い、失敗したら俺どころかユーフィも一緒に消滅してしまう

 そして、ユーフィに十分なマナが納まり詠唱を始める


「くぅ………よし!汝の契約者たるユーフォリアが命ず!マナよ我が前に集いてッ……………」


 だが
 術式がまだ終わらぬうちに中心が崩壊した



 光が迫る





 門は間に合わない





 音が消える





 終わりか?





 終わりなのか?





 なぁ、アセリア





 俺もうダメみたいだ





 ごめんな、ユーフィを守れなかった




 『永遠』が腰の布の間から見えた





 諦めるな、と声がした気がした










 そして、気が付けば俺は森の中に倒れていた






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 発投稿ですかね?神無月と言うものです、お見知りおきを

 さて、冒頭の時間軸ですがアセリアルートのその後といった感じです
 時間的には数周期が経過しているのでユーフィもあれからほんのちょっぴり成長してます

 アセリアは……………って!ちょっとアセリアさん!?なに『永遠』構えてやがりますか!?

 はい?いきなり殺すなと?いやぁ、まぁ。その場のノリと言うやつで……………


 いや………正直そこで『永遠』で攻撃態勢に入られると……………冗談ですよね?
 え?本気?


 ………………………………………

 ………………………………………

 ………………………………………



 では、皆さん!不束者ですが今後よろしくお願いします!では!




 シュタッと手を上げ全速力で逃亡する作者。追撃に入るアセリア
 地平線の彼方から爆音が聞こえて――――――



(幕)

作者のページに戻る