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序章  始まりの死闘






ある世界、ある場所で、二人の人間が立っていた。
一人は、銀髪に赤い眼の青年。
一人は、黒髪に赤い眼の青年。
二人は互いに、対峙していた。

黒髪の青年の名は、六王天魔(ろくおうてんま)。
銀髪の青年の名は、四神聖(よがみひじり)。
六王、四神は共にこの世界の中心に位置するものだけが名乗ることのできる名だ。
「まさかあのときのガキが、ここまで追ってくると思ってなかったな。」
聖はそう呟いた。
「ふざけるな!あの時の貴様がしたことを忘れられるか!」
天魔はそう激昂した。
「そうだな。確かにそうだ。」
冷静に、あくまで冷静に聖はしゃべる。
「だがまあいい、ここまで追ってくるのなら、後はこれしかないな。」
二人は、持っていた剣を構える。
天魔の剣と聖の剣はまさに瓜二つの剣だ。
違うのは、天魔が白、聖が黒の剣だということ。
それ以外は、まったく同じ両刃の剣。
二人は正眼に構え、宣言した。
「さあ、殺し合おう。」 





天魔は動かない。
否、正確には動けないだ。
相手の間合いに入った瞬間、切られると本能的に感じてしまったから。

聖は動かない。
正に動かないのだ。
自分の間合いに入った瞬間、相手の体を真っ二つにできるという自信からだ。

二人は、不動。
しかし、その差は歴然としていた。


長い時間が流れた。
否、それは一瞬だったかもしれない。
時間の感覚など、とっくの昔に麻痺している。
ただ一心に目の前の敵を天魔は、にらみ続ける。

「どうした?動かないのか?」
聖は、天魔に話しかける。
まるで歌うように、まるで親友に話しかけるように。
「復讐を果たすんだろ?ここで俺を殺すんだろ?」
「黙れ」
「この四神聖を殺してあいつらの敵を討つんだろ?」
「黙れ」
「さぁ、俺を殺してみろ!」
「黙れといっている!」
激しい叫びと共に天魔は、聖に剣を打ち下ろした。
それを聖は、下から剣を振り上げて迎え撃った。




ガキィィィィィィィィン




鈍い音が響き渡る。
それと同時に異変が起きた。
激しい光が、剣から発せられたのだ!
「っ!!」
それと同時に、天魔の脳に直接何かが話しかけてきた。
「汝、その純粋な望み気に入った。」
「なんだ?」
天魔は叫ぶ。
光によって聖の姿は確認できない。
「その望み、叶える力をやろう。」
そういって声は話し続ける。
「来るがいい!!!妖精の住まう大地へ!!!!」
その言葉と同時に光がさらに爆発した。
そして、天魔の意識は光に飲まれていった。




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