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・・・イースペリア・・・

 「ふっ!」

	ギシ!?

 「ふっ!」

	ギシ!?

 太陽が天高く上り、正午を迎えようかと言う頃・・・。
 聖矢はベッドに足を預け、負荷を高めて腕立てをしていた。
 聖矢が目を覚ましてから、今日でちょうど五日目。
 ようやく体がまともに動くようになった聖矢は、数日訓練を怠った事で
 なまった体を鍛え治そうと、早くも訓練を始めていた。

	ココン・・・。

 「どう!ぞ!あいて!る!」

 腕立てを続ける聖矢に扉をノックする音が聞こえ
 聖矢は、腕立てを休む事無く続けながら、入室を促した。

	カチャ・・・。

 「っ!?」

 アルフィアが入室して来ると、聖矢の姿を目にとめ
 突然慌てだし、慌てて踵を返した。 

 	バタバタ!!
	ゴツ!?
 
 すると、自ら扉に突っ込み、額を痛打した。
 アルフィアが慌てた理由、それは、聖矢が上半身裸で訓練したからである。

 「・・・はぁ〜」

 	ギッ!?

 その様子を見た聖矢は、深い溜息を吐くと
 腕立てを止め、傍に置いてあったタオルを肩に掛け、アルフィアに歩み寄る。

 「ぅ〜〜・・・っ!?」

 額を押さえ、その痛みに涙するアルフィア・・・。
 そして、聖矢が近づいて来た事に気付き再び慌てだし、しゃがみこんだまま、後ず去る。

 「どれ。見せてみろ」

 アルフィアの慌てふためく姿もどこ吹く風とばかりに、聖矢はアルフィアの額に手を伸ばす。
 
 『あ〜あ・・・コブになってやがる。
  全ったく、コイツはどうしてこうなんだ?』
 『セ、セセ、セイア様!?だ、駄目です!こ、心の!じゅ、準備が!』

 聖矢の行動にアルフィアの思考は、まるで見当違いの方向に飛んでいた。

 「すぅ〜・・・はぁ・・・」

 聖矢はアルフィアのコブに軽く触れると、瞳を閉じ、ゆっくりと息を吸ったかと思うと
 静かに気合を入れた。
 すると・・・。

 	ボゥ・・・。

 聖矢の掌がに薄っすらと光、熱を帯び始める。
 
 『・・・え?あ、あったかい・・・』

 聖矢の掌の温かささに、気付いたアルフィアは、強張った肩の力を揺るめ、目を閉じた。
 まるで暖かな太陽の日差しを浴びているかの様な感覚に、アルフィアは何とも言えない心地よさを感じていた。

 「・・・ん・・・良し。もういいぞ?他に痛ぇ所は無ぇか?」
 『・・・へ?あ、あれ・・・痛く・・・ない?・・・』

 額から手を離し、聖矢に質問されて始めて、先程までの額の痛みが引いている事に気付くアルフィア。

 「お〜い?聞いてるか?」
 「っ!?」

	コクコク!

 不思議な感覚を受け、疑問に思っていた事で、ボーっとしていると
 聖矢に顔を覗き込まれ、アルフィアはまたも、慌てた様子で頷いた。

 「・・・で?他に痛い所とかは?」

	プルプル!?

 「ん、了解。飯だろ?直行くから、下行ってろ」

 そう言って、聖矢は立ち上がると、アルフィアに背を向けた。

 「・・・」

 だが、アルフィアは、今まで聖矢に触れられていた、額に手をやり
 何処か遠くを見つめながら、再びボーっとしていた。
 すると・・・。

 「・・・おい」
 『ビク!?』
 「着替えるから、出て行けって言ってんだよ」
 
 聖矢は着替えようとしているのに、何時まで経っても退出しようとしない
 アルフィアに苛立たしげに声を掛けた。

 「っ!?」

	ペコペコ!?
	バタタ!!
	バタン!?

 それを聞いた、アルフィアは顔を真っ赤にして、慌てて頭を下げ
 大急ぎで退出して行った。

 「アルフィア!!うるさいわよ!?セイア様に迷惑でしょ!!」

 すると、下からリアの怒鳴り声が響いてくる。

	シュボッ!?

 「ふぅ〜・・・今日も何時も通りだ、な。しかし・・・」

 最早日常になりつつあるアルフィアの慌てぶりと、それを一括するリアの怒鳴り声を聞きながら聖矢は
 タバコに火を点けて、アルフィアに用意された服を着る。

 「ダセェよな・・・この服」

 何でも、聖矢の服は、Gパン以外ボロボロの状態だったらしく
 アルフィアにあてがわれた服を着る事になったのだが
 この屋敷には、女物の軍服しかなかった為、急遽用意された服は
 人間の兵士のお古を着ることとなったのだ。
 今となっては時代遅れのモノらしく、お世辞にもそのデザインは良いとは言えなかった。
 
 「ま・・・仕方無ぇ、か
  居候の身で、居、食、住。
  全部、世話して貰ってるんだ、文句言え無ぇよ、な。はぁ・・・」

 深い溜息と共に、煙を吐き出すと、聖矢は踵を返し階下に下りて行った。

††††
 「良い!アルフィア。セイア様は、我々、いえ・・・。   イースペリアにとって大切な方なのよ!それなのに貴方ときたら!?」     ペコペコ!!  聖矢が階下に降りてみると、キッチンの方から怒鳴り声が聞こえる。  先程の事で、アルフィアがまたもリアから説教を受けていたのだ。    『今日は、何時もより激しいな・・・』  それを横目に聖矢は、食卓に着き  テーブルに広げられていた新聞を手取る。  「・・・はぁ〜・・・」  新聞に書かれている文字を見て、深い溜息を吐く聖矢。  『・・・三日程度の勉強じゃ理解でき無ぇよな〜』  「お〜い。リア!?」  心の中で、愚痴をこぼすと、聖矢は食堂で説教の真っ最中のリアを大声で呼んだ。   ガミガミ!!     「え!?あ!はい!   アルフィア!今日の所はこの程度にしておきます。   以後気をつけるように!良いわね!?」 ・・・コク。  疲れた顔をして、アルフィアは、静かに頷いた。  「リア!?早くしろ!待つのは嫌いなんだよ!」  「っ!?はい!ただいま!?」  アルフィアに強い口調で、威嚇するリアを再び聖矢が大声で呼んだ。  それを聞いたリアは、慌てて聖矢の待つ広間へと駆けて行った。  そして、それを追う形で、聖矢の料理をお盆に載せ、アルフィアが後に続いた。
††††
 「な、何でしょうセイア様!」  「・・・読め」      ・・・ガサ。  息を切らせ表れたリアに、後ろ手に新聞を持ち、朗読するように命令する。  「は、はっ!よ、喜んで!?」  聖矢の命令を聞き、リアは一度敬礼をしてから、聖矢から新聞を受け取り広げ、朗読し始めた。  「ゴホン!え〜。ラキオスの謁見の間で執り行われた、妖精(スピリット)の実戦披露の際に損壊した謁見の間の   修復は建築士達の昼夜を問わぬ働きにより、後二、三日で復興の予定・・・」 ・・・トボトボ。  新聞を読むリアの後ろから、アルフィアが、肩を落としながら、緩慢な動作で聖矢の食事を運んで来た。  「・・・アル」  「(ビクッ!)」  「・・・コーヒーも頼む」  アルフィアに向けてリアに見えないように、サムズアップしながら、コーヒーを頼む聖矢。    『セ、セイア様・・・私を助ける為に・・・』   ・・・コト。  「・・・濃いのをな」 ペコリ。  「♪・・・♪・・・」  お盆を置き、聖矢に一礼してから、スキップしながら、キッチンへと向かうアルフィア。  その顔は先程の落ち込んでいたのが、嘘の様に、とても晴れやかだった。 ガシャーーン!!  「うーーーー!!」 ・・・ ・・・・ ・・・・・プル・・・プル! グシャ!?  「アルフィアーーーー!!!」  「はぁ〜・・・トジ。・・・いただきます」  聖矢は、アルフィアのドジッぷりに、一つ大きな溜息を吐いてから、アルフィアの冥福を祈るように  両手を合わせてから、ついでに、料理となった者達に一礼して、アルフィアの作ったサンドイッチを口に運んだ。  「・・・マズ・・・。18点・・・」    そして、何時もどおり、アルフィアの作った料理は・・・。  いまいちだった。  『あいつの料理はどうして、作る度に点数が減って行くんだ?』   ガブ!  「・・・ブフッ!・・・残すの、は・・・俺のプライドが、ゆる、さん!!」  聖矢は、余りの不味さに噴出しそうになるのを片手を当てて、我慢すると、一気に流し込んだ。  そして、お盆に載せられた残り、五つのサンドイッチを睨む聖矢。    「・・・すぅ〜・・・。リア!?人が飯食ってる時に、後ろで説教するな!   不味い飯が更に不味くなる!   アル!?さっさとコーヒー持って来い!!」 バァン!!  そして、後ろでアルフィアに怒り心頭と言ったリアに怒鳴り散らし  更に、テーブルを乱暴に叩き、アルフィアに不味いサンドイッチを流し込むためのアイテムを再度要求した。  〔ビクッ!!〕  「は、はい!?申し訳ありません!!」   ペコペコ!!  姿勢を但し、聖矢に勢い良くお辞儀をするリアと  申し訳なさそうに、頭を下げ続けるアルフィア。  「午後からの予定もあるんだ!お前らも油売ってないで、食え!?」  「は、はい〜!!」  余程、アルフィアの不味い料理に苛ついたのか、しばらく聖矢は、とても不機嫌だった。
††††
・・・午後・・・  食事を取り終え、しばらくしてから、リアは辺りを注意深くキョロキョロと何度も見渡し  目的の部屋に辿り着くと、静かに扉をノックした。 ・・・コンコン。  「・・・セイア様・・・参りました」  「ん・・・入れ」  小声で、部屋の主に告げると、部屋の中から聖矢の入室を促す声が掛かる。  それを聞いたリアは、再度辺りを見渡し、誰も居ないことを確認し、扉に手を掛けた。  「・・・失礼します」  「良く来た」  ベッドに寝転がりながら、ノートに目を通していた聖矢が、視線をリアに向け、労いの言葉を掛ける。  「あ、あの・・・セイア、様。今日は、その・・・早めに切り上げても・・・よろしいでしょうか?」  何時も歯切れの良い、リアが、両手を後ろに組み、俯き加減に聖矢に問う。  「・・・なぜだ?」  「はい。本日は、夕刻から、訓練がありまして・・・その・・・」  「ふぅ〜・・・。分った。なら早速始めるか」  「はい!よろしくお願いします!」  「・・・よろしくされるのは俺だ」    そう言って、聖矢はのそり、とベッドから起き上がり、テーブルの置かれた場所まで歩き  椅子に腰掛け、タバコを灰皿でもみ消した。    「おい。時間が無ぇんだろ?そんな所に居ないでさっさと来いよ」  「はっ!それでは・・・始めさせていただきます」  リアも聖矢にゆっくりと歩み寄る。  そして・・・。  ・・・・・・。  ・・・。  「今日はこちらの本で勉強しましょう!」 ぷる!ぷる!  「あの・・・セイア・・・様?」    リアは、後ろに組んでいた手を聖矢の目の前に出し、満面の笑みで聖矢にその手に持つ”絵本”を見せる。  だが、それを見た聖矢の拳は小刻みに振るえていた。  押し黙ったままの聖矢にリアは手に持つ絵本を横にずらし、聖矢の顔を見て問いかける。   ドカーーーン!!     「また!?絵本かよ!!手前ぇ!!俺をイクツだと思ってんだ?あぁ?コラ!」  「す、すす、すいません!!で、ですが!   その、屋敷にある古書や、日誌などは書体が乱雑だったり、難しいものでして!   こ、この様なものしか無いんです!申し訳ありません!!」  三日連続で”字”の勉強をよりにもよって”絵本”でする事となった聖矢はとうとうその怒りが爆発したのか  椅子から立ち上がると、リアの襟首を掴み上げ、声を荒げて睨みつける。  「だぁー!!ちっくしょ!良い!?もう何も言うな!寄越せ!クソ!?」  リアの説明を聞いた聖矢は、頭を掻き毟りながら、悪態を吐きながらも  絵本をリアの手から乱暴に奪い取ると、ドカッ!と椅子に腰掛け  不機嫌な顔をしながら、絵本に目を通し始めた。   シュボッ!  「え〜と・・・何々?ラキ・・・オス?王・・・国の・・・北・・・に位置す、る   リ・・・リ・・・これは何て読むんだ?」  「はいはい。どれですか?それは、リクディウス山脈。ですね」  絵本を読み始め、早速詰まった聖矢は、直に分らない所をリアに指し示し見せる。  「ふむ。なるほどな・・・リクドゥ・・・」  「リクディウス山脈です。セイア様」   「分ってる!?ちょっと間違えただけだ!クソ!?   ルクディウス山脈!には・・・りゅ・・・龍?なるほど、これは龍と読むのか・・・メモっとくか」    ・・・カリカリ。  絵本に描かれた絵と文字を見比べ、龍を指し示すだろう文字を見つけた聖矢は、早速その文字かどうかも  妖しい象形文字を見よう見まねで、ノートに書くと、その横に日本語で意味を書いてゆく。  「え〜と、最初から読むとこうか?   ラキオス王国の北に位置するリクディウス山脈には”龍”が住むと・・・言われて・・・いる?   どうだ?合ってるか?」  「はい!素晴らしいです!たった三日で此処まで読める様になるなんて   すごい上達ぶりです。」  「うるせぇ〜。どうせガキでも読めるモノだろ?むしろこれさえまともに読めないのが恥ずかしい・・・」  「そんなことありません!!セイア様はこの世界の文字に触れてまだ三日ですよ!   それで此処まで読める様になるなんて!本当にすごいですよ!」  「・・・」  聖矢に向けて顔を突き出し、力説するリア。  リアの余りの剣幕に聖矢は、少々圧倒された。  「は!す、すみません!?私とした事が・・・申し訳ありません」    そして、リアは、聖矢が呆然と自分を見つめるのを見て、我に返り、椅子から立ち上がると  深々と頭を下げた。  「・・・なぁ?リア・・・お前。回復魔法とか・・・使え無いよな?」  「へ?あの・・・一体何のっ!?」  聖矢の質問に訳が分らず、聞き返そうと頭を上げたリアの  顎に手をかけ、気持ち持ち上げる様にして、リアの顔を覗き見る聖矢。    「セ!セ!」  突然の聖矢の行動にリアは、顔を自身の髪よりも赤く染め、目を白黒させた。  「・・・違う」  「え?あ・・・」  聖矢は、リアの顔をしばし見つめ、何か納得行ったのか手を離し、一言呟くと  再び絵本に視線を戻した。  逆にリアは、聖矢の手が顔から離れ、何処か残念と思う自分がいた。  「ゴ、ゴホン!あ、あ、あの!セイア様!!」  一つ咳払いして、自分の感情を振り払い、聖矢に声を掛ける。  だが、その声は少し裏返っていた。  「なんだ?」  「その・・・今の、は。何だったのでしょうか?それに”違う”とは、どう言う意味・・・なのでしょうか?」  パタン・・・。  「ふぅ〜・・・最近、夢に見るんだ」    絵本を閉じ、煙を吐き、テーブルに置くと、聖矢は一言呟いた。  「夢・・・ですか?」  「ああ。良く覚えて無いけどな」  「それは、どの様な夢なのですか?   差し支えなければ、聞かせていただけますか?」  聖矢の夢の内容に興味を覚えたリアは思い切って聞いてみた。  「そんなに覚えている訳じゃ無いけど・・・俺は、走ってるんだ夜の森を・・・」  聖矢は、静かに夢の内容を語りだした。
††††
    (ぜっ!ぜっ!)  俺はひたすら走ってるんだ。  何で走ってるのかも分らない。  どうして、こんなにも必死に走ってるのか分らない。  何かから逃げようとしてるのか?  それとも、何かを追いかけてるのか?  とにかく・・・夜の深い森の中を走ってるんだ。  (居たぞ!来訪者(エトランジェ)だ!)  (もう・・・た・・と、は・・・う・・・)  しばらく走ると、俺は、月を見上げてるんだ。  どうし様も無く悔しくて、胸を掻き毟りたくなる様な孤独感を俺を襲う。・・・けど  どうして、俺がそんな気持ちになるのかも分らないんだ。  そして・・・誰か分らないけど、俺を来訪者(エトランジェ)と呼ぶ声が聞こえて  その後ろから、姿の良く見えない、人型の影が何か喋ってるんだけど、良く聞き取れないんだ。  (きさまらぁあああ!!)  その影を見たら、俺の中にどす黒い怒りが広がって行くんだ。  まるで・・・昔に戻った見たいに・・・。  「昔・・・ですか?」  「ん?あ、ああ。昔・・・ちよっとした事があって、な・・・誰、彼、構わず   ケンカ・・・戦いを吹っかけては、夜が明けるまで殴り合いの日々を送ってた事が・・・在ったんだ」  「は、はぁ・・・」  「と、話が逸れたな・・・え、と。どこまで話した?」  「影に怒りを抱いた所ですよ」  「そうそう。それで・・・」  (聖矢・・・今日は、相手に掴まれた時に有効な技を教えるよ)  しばらく、影と戦っていると、突然、師匠が出てきたんだ。  もう訳が分らなかった。  でも、懐かしかった。  師匠が夢に出てくるのは久しぶりだったし・・・。  破門された俺の夢の中に出てきてくれた事が・・・嬉しかった。  ま、昔の話も含め、師匠の事とかも追々話す。   (ぎゃぁあああ・・・)  そして、師匠に教えてもらった技を反復練習していると  突然、俺の耳に劈く様な悲鳴が聞こえた。  ふと、周りを見渡すと、突然景色が真っ暗になってるんだ。    (聖矢・・・私はな、母さんに約束したんだよ)  後ろから、俺を呼ぶ声が聞こえたから、振り向くとそこには、父さんがいたんだ。  すげぇ嬉しかった。  ”あんな”事を仕出かしたのに、例え夢であれ、やさしい笑顔を俺に向けてくれた事が  本当に・・・嬉しかった。    (お前が二十歳になるまで後数年・・・私を嘘つきにしないでくれるか?)  父さんが俺に頭を下げて、お願いするんだ。  それは、昔あった事何だけど、その時の俺は、何か気恥ずかしくて、顔を逸らすんだけど  その時の俺も、俺の意思に反して、顔を逸らすんだ。  (し、仕方無ぇな!こ、後悔する、なよ!い、何時まで自分の息子に頭下げてんだよ!上げろ!恥ずかしい)  (・・・?父さん?)  昔の通りなら、その時、父さんは顔を上げて、俺に礼を言うのだけど  その時は、何も聞こえ無かったんだ。  だから・・・俺は、不思議に思って、振り向くんだ。  すると・・・。  (せ、せ〜い〜やーーー!!) ボォオオオオ!!!  (うぁあああああ!!!)  そ・・・そ、こ・・・には。  業火に・・・包まれて・・・俺、に  助けを求める・・・父さんの・・・姿が在ったんだ。  俺は、怖くなって、顔を背けた。  見てられなかった。  そして、視界がまた、暗転した。    (・・・)  音も、何も聞こえず。何も見えない。  本当に真っ暗な中に、俺は居るんだ。    (死ね・・・ない・・・まだ・・・死ね・・・ない)  (ごめん・・・とうさん。ごめん・・・かあ・・・さん・・・)  俺は、そこで仰向けになって、魂が抜けたみたいに  闇の中の一点を見つめながら  馬鹿みたいに何度も同じ事を繰り返してるんだ。  父さんへの謝罪と、母さんへの謝罪を・・・。  そして、まだ死ねない事を・・・永遠と繰り返してるんだ。        (大丈夫・・・ですか?)  俺以外誰も居ないはずの、孤独な闇の中に不意に声が聞こえるんだ。  綺麗な澄んだ女の声だった。  (直に・・・治します)  ソイツは、泣きながら、俺を抱き起こすと、小さく呟くんだ。  俺は、ソイツが誰か知りたくて、声を掛けようとするんだけど  俺の声は、出ないんだ。  俺は、ソイツに抱かれて、すごい安心した。  なんか、ソイツに抱かれていると、少しずつ、魂の抜け落ちた様な体に  力が戻って来るような気がしたんだ・・・。  でも、目が霞んでソイツの顔が良く・・・見えないんだ。  ただ・・・ソイツの目・・・涙に濡れた・・・ソイツの”赤い瞳”が酷く綺麗だったのは覚えている。  まるで・・・宝石みたいに綺麗だったんだ。  (誰だ・・・あんたは?なんで・・・泣いてるんだ?)   しばらくすると、ソイツが俺から、離れて行くんだ。  俺は、ソイツを離したくないと思って、ソイツに手を伸ばそうとするんだけど・・・体が動かないんだ。  責めて名前を聞きたくて、名を聞こうとするんだけど・・・声も出ないんだ。    (ま、待て!待ってくれ!?)  そして、消え行くそいつを追おうと四肢に力を込め様とすると・・・起きるんだ。  
††††
   「それで・・・私の顔を見て・・・」  聖矢の話を聞き、リアは、納得したように聖矢に声を掛けた。   シュボッ・・・。  「ああ。お前かな、と・・・思ったんだけど・・・何かが違った   悪いな・・・迷惑だったか?」    聖矢は、タバコを咥えながら、苦笑いを浮かべ、リアに謝罪した。  「俺は・・・」  「え?」  「その夢の”女”に・・・”恋”しちまった」    聖矢は、視線を灰皿に向けながら、リアに自嘲気味に溢した。   「俺の夢の中だけにいる存在かも知れないけど・・・   アイツが出てくると、すごく・・・安心するんだ」  「セイア・・・様」  「と、無駄話もここまでだ、勉強。勉強」  聖矢は、タバコを吸い終えると、再び視線を絵本へと戻し、勉強を再会した。  その後、リアは、何処か元気を無くした様な感じだった。  そして、一時間程して、聖矢が絵本を読み終えると、リアは立ち上がった。 ガタ・・・。  「セイア様。申し訳ありませんが、私は、これから訓練がありますので、失礼させていただきます」  「ん。悪いな、お前も何かと忙しいのに、俺の無理な頼みを聞いてくれて」    聖矢は、字の勉強の為に、自分の時間を削り見てくれた、リアに礼を言った。  「いえ。御気になさらないで下さい・・・。セイア様、一つお聞きたいのですが・・・よろしいでしょうか?」    退出しようとした、リアは、ふと、ある事を思い立ち、聖矢に質問してみることにした。  「なんだ?」  「はい、あの。どうして、いきなり字の勉強をしようと思ったのですか?」  「・・・やっぱり・・・迷惑だったか?」  「いえいえ!!滅相もありません!   ・・・セイア様は、この世界の言葉を喋る事も出来ますから、私生活に置いては、字を読めない程度なら   何も問題は無いと思ったものでして」  聖矢の呟きに、リアは慌てて、手を振り、否定すると、質問の意図を説明した。 シュボッ!  「あ〜。その・・・なんだ?分りやすく説明するとだな〜・・・その・・・」  何処か、照れくさそうに言いよどむ聖矢。  「ふぅ〜・・・アルの為だよ」  「は?アルフィア・・・ですか?」  聖矢の口から出た、言葉の意味が分らず、思わず、リアは、首を捻ってしまった。  「・・・ふぅ〜。そうだよ!あいつ、俺の言葉は分っても、アイツが何を言いたいか、俺は、分らねぇ!    それに、俺とお前が話してるのを恨めしそうに見ては、溜息を吐かれたら、こっちが悪ぃことしてるみたいじゃねぇか!?   だ、だから・・・責めて筆談だけでも・・・と思ったんだよ!?」  「そ、そんな・・・理由・・・ですか?」    想像もしていなかった聖矢の答えに、リアは、口をポカーンと開けて、聖矢を見つめた。  「ああ!そうだよ!悪ぃか!あ!?   俺は、バカだからよ、こんな方法しか思いつかなったんだよ!」  「そ、それでは、アルフィアに内緒で、と言ったのも・・・」  「ああ!あいつの為に勉強してると知られるのが、ハズかったからだ!?」    聖矢は、明後日の方向を向きながら、最早ヤケクソ気味にリアに、怒鳴りつけるように、答えた。  「・・・プ!ププ。アハハハハ!?」  聖矢の字の勉強を始めた理由を聞かされた、リアは、思わずその場で腹を抱え笑い出してしまった。  「んな!?手前ぇ!!ぶっ殺すぞ!!あ!?」  「す、すいません!?ク・・・クク!」    顔を真っ赤にしながら、身を乗り出し、リアを怒鳴りつける聖矢。  だが、リアは、何とか笑いを堪え様とするのだが、聖矢の顔を見ると、再び、肩を震わせた。  「手前ぇ!これから訓練だろが!もう良いから!とっとと出てけ!?」 バタン!!?  そんなリアを、少々乱暴に部屋から追い出す聖矢。  「クソ!言うんじゃ無かった」  リアを追い出し、無人となった部屋で聖矢を天を仰ぎながら、リアに話した事を後悔した。 ギィ・・・。  「・・・セイア様」  「な、なんだ!」  突然扉が開き、リアが顔だけ出し、聖矢に声を掛ける。  「頑張りましょう!アルフィアと・・・”話す”為に!?」  聖矢に笑顔を向けながら、リアは、拳を聖矢に掲げた。  「く!?あ、明日も・・・頼、む」  「はい!では・・・失礼します」   バタン。  リアに、背を向けながらも、聖矢は、サムズアップしながら、搾り出すように答えた。
††††
・・・翌日・・・ ・・・カチャ。 ・・・シュボッ。  「ふゅぃ〜・・・。今日も良い天気だ。・・・ん?」  『アル?なにやってんだ?あいつ?』  日課の訓練を終え、タバコを咥えながら、窓を開けて、煙を吐く聖矢。  汗ばんだ額に当たる、そよ風がとても心地よく。  今日もさんさんと輝く太陽を見て、笑顔を浮かべる聖矢。  そして、ふと、下を見下ろすと、玄関から、周囲を慎重に見渡しながら、何処かに行こうとする  アルフィアの姿が目に入った。   キョロキョロ・・・キョロ!  「ふぅ〜・・・」  周囲を見渡し、誰も居ない事を確認し、アルフィアは、大きく息を吐いた。  そして、意を決した様に、いそいそと何処かに向かう  その手には、バスケットが握られていた。  『・・・?ピクニックにでも行くのか?・・・ま、詮索はするまい』  聖矢は、不思議に思いながらも、指して気にする事無く、去り行くアルフィアを見つめて、心の中で思った。   コンコン。  「入ってま〜す」  「失礼します!」    聖矢が、ノックの音に答えると、リアが扉を開き現れ、何時も通り、部屋の外で元気に一礼してから入室してきた。  今日は、勉強の時間にはまだ早い時間だったので、聖矢は少し、疑問に思いながらもリアに椅子を勧めた。  「で?どうした?こんな時間に?まだ、勉強の時間には早いと思うが?」  「はっ!そのことなのですが、本日は、王宮の方で大事な会議がありまして   私は十二妖精部隊(ヴァルキリーズ)の副総隊長として   出席しなくては、なりません・・・ですから・・・」    そこまで言って俯き、聖矢から視線を外し、申し訳なさそうに、言いよどむリア。  「・・・分った」  「え?」  だが、そんなリアに、聖矢が一声掛ける。  聖矢のその言葉を聞き、思わず顔を上げて、驚いた顔をするリア。  「今日は、俺の勉強が見れないって言うんだろ?分らないところは、まとめておくから   明日でも良いから見てくれれば良い。心配せずに行って来い」  「は、はっ!ありがとうございます!?」  聖矢がリアの言いたかった事を、代弁し、快く了承してくれた事に感謝したリアは  立ち上がり、聖矢に対して、敬礼で感謝を示した。 シュボッ!  『・・・堅苦しい奴だ』  などと、心の中で、思いながら再び、タバコを吸い始める聖矢。
††††
       「・・・ごち・・・そう・・うぷ!・・・さま・・・でし、た」  アルフィアが、作って行った昼食を根性で食べ終わり、食後の挨拶をする聖矢。  たかが、昼食だと言うのに、まるで、猛者との一戦を終えた様な疲労感だった・・・。  そして、食後の一服にと、タバコの箱に手を伸ばす聖矢・・・だが。  「・・・あれ?」  箱を逆さに振っても出てくるのは、カスのみ・・・そう、聖矢は当等、手持ちのタバコ全てを吸い終わってしまったのだ。  「・・・しまった!?どうしよう!こんな事ならもっと節約しとけば良かった」  顔を両手で覆い、酷く落ち込む聖矢。  先程リアが、出て行く前に、聖矢の灰皿の中に在ったシケモクも全て片付けられていた為、聖矢の手持ちは本当に  無くなってしまったのだ。  「仕方無い、コンビニに買いに・・・ちょっと待て!?」  頭をカキながら、何時もの様に当たり前の事を口にして、ある事に気付く聖矢。    「ここは異世界だ!コンビニも無ければ、自販機も無ぇじゃねぇか!?」  今更ながらに、自分の置かれた状況に気付く聖矢。  ヘビースモーカーの聖矢にとって、タバコが吸えない事は、居、食、住を失うことより  絶望的な事だった。  「いや!待て!街に行けば、タバコを売ってる店ぐらいあるはずだ!いや!?在る!頼む在ってくれ!!」  自分に言い聞かせるように、聖矢は、叫んだ。  それは、正に神さえ恐れぬ男が、神に祈る程の窮地だった。  「そうと決まれば金だ!金!うぉおおお!!」 バタタタ・・・!!!  聖矢は、神速とも思えるスピードで、自室に戻ると、自分の持ち物を漁り財布を引っ張り出す。    「ヨッシ!?まだ、三万もある!!これで買える・・・だけ・・・」   プル・・・プル・・・!!  「天下のゆきっつぁんもこの世界じゃ唯の紙切れだ!!クソ!?」   ガシャン!!  本当に、本〜当に!今更ながらに、異世界に居る事実に  思わず、地面に財布をおもっいっきり投げつける聖矢。  「・・・ん?・・・待て・・・よ?」  投げつけた財布に付いているある物を見て、聖矢は在ることに気付いた。  そのある物とは・・・。  「この鎖・・・シルバーだよな?・・・売れるんじゃないか?」  聖矢は、アクセサリーとして、付けていた、純銀の鎖を見て、確かめる様に口にした。  「そうだよ!コイツを売って金にすれば良いんだよ!!ハハ!オッシャ!そうと決まれば   俺の、コレクションを失うのは惜しいが、”背に腹は変えられない”!?ビバ!シルバーアクセ!!」  暗闇の様などん底の中で、一条の光を見つけた聖矢は、自身が見につけてこの世界に持ち込む事が出来た  リング、ネックレス等を一箇所に集める。    「良し良し。これだけ在れば、ゆきっつあん数枚クラスの金にはなるだろう」  自慢のコレクションを見やり、笑顔を浮かべる聖矢。  聖矢の前には、リングが五つ、ネックレスが二つ、バックル一つ、チェーンが二本、ピアスが三つが並べられていた。  どれも元の世界では、一万を超えるモノばかりだった。  「さて、と。それでは、街に繰り出すとしますか」  聖矢は、命綱とも言うべき、シルバー達を、小さめの麻袋に詰めると、一路街へと繰り出した。
††††
・・・同刻、城の地下・・・  コツ・・・コツ・・・  ランプに灯された僅かな明かりを頼りに、少女は、一段一段確かめながら慎重に、地下へと通じる階段を下りていた。  「は、ふぅ〜・・・」  地上の光が届かぬ地下深くに辿り着くと、石畳に覆われた広い場所に出ると、少女は小さく息を吐いた。  そして、一息ついた少女は、周りをランプの明かりで照らし、見渡した。  『ぅ〜・・・何時来ても・・・気持ち悪いです〜』  何十年も日の光に晒されず、深い闇に覆われ、ジメジメとし、如何にも不衛生極まりない、そう・・・牢屋を見渡し  そんな感想を抱いた。   『でも・・・お仕事だし・・・”彼女”も心配だし・・・頑張ろう』  少女は、一つ気合を入れると、幽霊でも出そうな薄暗い闇へと、一歩踏み出した。  その時・・・ バシッ!?  「ぎゃぁーーー!!」  「(ビック!!)」  突然、静かな闇の中に、女の悲鳴が木霊する。  イースペリアの牢屋が地下に造られた理由が”これ”である。  罪人、侵入者などを、拷問に掛ける際の悲痛な叫びが外に漏れないようにする為である。  『ごめん・・・なさい・・・ごめんなさい』  少女は、両手を胸の前で組、両目を強く瞑り、祈るように心の中で謝罪を繰り返した。   バシ!!バシ!!ドゴ!!  「ぎゃーーー!!がは!?」  少女が祈る度に、聞こえる拷問の繰り返される音と、悲鳴が周りに反響し、耳に聞こえてくる。  少女は、震えながらも、耳を押さえ、その悲痛な叫びから逃れる事はしない・・・。  その声を聞くことが、少女が今出来る、囚われの身となった者へ出来る全てだから・・・  だから、少女は決して、逃げる事はしない、自分の”儚き夢”の為にも、今行われている  行為は、受け入れ無ければいけない現実なのだから・・・。 コツ・・・コツ・・・。  一頻り少女は、謝罪を繰り返すと、再び歩き始めた。  目指すべき”明日”の為に・・・。
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ガツ!!  「吐け!!公国の所有する妖精(スピリット)の総数は!!」 ドゴ!!  「がふっ!?・・・」  「部隊の配分は!?」   バシン!!  「がぁ!!・・・」  「吐け!?吐け!!吐けぇえええ!!!」 バシ!!ドゴ!!ガヅ!?  「ぐぶぅ・・・き、貴・・・公等・・・に、喋る・・・事は・・・何も・・・無い!」  「こ・・・のっ!汚らわしい妖精(スピリット)の分際で!!」 グワッ!! チリン!チリン!  「っ!?」  天井から降りる鎖に両手を拘束され、吊るされる妖精(スピリット)の少女の言葉に  切れた兵士が手に持つ棍棒を大きく振りかぶった時だった。  突然、鐘の音が響き渡る。  兵士は、血走った目と共に、音のした方に振り替えた。  「・・・(ペコリ)」    そこには、イースペリアの緑妖精(グリーン・スピリット)に与えられる  若葉の様に美しい緑に染められた戦闘服に身を包んだ一人の少女が立っていた。  振り返った兵士に、少女は、丁寧にお辞儀した。  「ちっ・・・」  兵士は、一つ舌打ちすると、少女を吊るす鎖を支える、滑車のブレーキへと手を伸ばした。   ガツン!! ジャラララッラ!!  「っ!?」 ドザっ!!  「ぐあッ!!」  男が、何の予告も、躊躇も無く、滑車のブレーキを力任せに、下ろすと天井の鎖が緩められ  少女は、勢いよく石畳へと叩きつけられた。     「ぅ〜!!」      ガチャガチャ!!   ガシャン!!  それを見た緑妖精(グリーン・スピリット)の少女・・・アルフィアは  慌てて、牢屋の鍵を開けると、急いで、少女へと駆け寄った。     「・・・ふん!おい!今日の所は、この辺で引き上げる。   そいつをしっかり治療しておけ!!」  「・・・(コクリ)」  アルフィアは、少女を抱き起こしながら、背中越しに、怒鳴り散らす兵士へと、頷いて返事を返した。    「明日も、明後日も・・・そのまた明日も、貴様が吐くまで、俺は、止めんぞ?   とっとと、貴様の知っている事を吐いてしまえ!?そうすれば、楽に殺してやる・・・分ったな!!」  男は、牢屋の外に出ると、アルフィアに抱かれる、黒妖精(ブラック・スピリット)の少女に  吐き捨て、そのまま、大股で歩き去って行った。  「ぅ〜?ぅ〜ぅ?」   ユサユサ・・・  「ぅく・・・かたじけ・・・ない」  「ぅ〜ぅ〜!!」 プルプル!?  アルフィアは、少女の返事に、頭を振り否定で返すと、少女の腕を取り、その掌に指で何かを伝えようと文字を書き始めた。    『・・・ごめんなさい。何もして挙げられなくて・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・』  「な、何を・・・申され、ます。私の、命があるのは、貴方の・・・お陰で、す。謝らないで・・・下さい」  アルフィアの謝罪に対して、少女は、力無く笑みを浮かべ、感謝を込めて、ゆっくりと、つまりながらも、必死で言葉にして伝えた。  その言葉を聞き、再び、少女の掌に文字を書いてゆく。  『・・・直に、治し・・・ます。私が貴方に・・・して、挙げられる・・・のは・・・これぐらい・・・ですから・・・   申し訳・・・ありま・・・せん。貴方が・・・痛めつけられる・・・苦しみを・・・永らえ・・・させて・・・ごめんなさい。』  「ふ・・・良い、のです。私は戦友と約束、を・・・交わしました。まだ、死ぬ・・・訳にはゆき・・・ませぬ。   日々・・・この命が・・・在る・・・事に、貴方の・・・優しさに・・・感謝・・・して、います」  アルフィアの腕に抱かれながら、少女は、敵国の妖精(スピリット)である、アルフィアに  対して、敬意と感謝を精一杯込めて、言葉として、声に出して、伝える。  アルフィアの敵味方を問わぬ、限りない優しさに、喋る事の出来ぬ少女に、自らの声で、その思いを伝える。  そこからは、二人の間に、敵、味方を超えた確かなる信頼関係が窺えた。        

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