作者のページに戻る



≪この世界と銀河と宇宙と・・・≫







第六話〜対峙する二人〜




イースペリアに向かった三人は、早々と砂漠を抜けランサへと到着しようとしていた。

「よし・・・っと、ここまでは大丈夫みたいね」

「ああ、そうだな・・・って、リオ? 大丈夫か!?」

アイシスが息を整えていると、横で目をぐるぐる回しながらぶっ倒れていた。

「え、へへ・・・大丈夫、じゃないかも・・・ よくみんなそんなにもつね」

「神剣の力をつかってなかったのですか!?」

フィスも心配そうに理緒の顔を見ている。

「いやぁ、使ってなかったら二人についてけなかったかも・・・」

「どうする、いったん休むか?」

「ううん、私のせいで作戦が失敗。なんてことになったらきっと秋月様が悲しむ、だからがんばるよ♪」

自分にヒーリングをかけながら立ち上がり、グッっと意気込む。

「よかった、ならいこう!」

「ええ」

再び三人は走り出すと、後方からたくさんの神剣の気配を感じる。


【・・・! 『求め』の気配が遠方から感じるぞ・・・理緒よ、行かないのか?】

突然、『問い』が『求め』が近づいてくるのを感じると理緒に声をかける。

「何言ってるの? 今の私達の目的は悠人さんたちと戦うことじゃないわ」

【・・・・・・そうであったな】

少しの間、何かを考えていたのかその後に返事を返す。

「アイシスの行ったとおり、ラキオス軍の先回りできたみたいね」

「ああ。 ・・俺は先に飛んでいってイースペリアに行く。戦いの気配を感じたら、他部隊と一緒にくるからな」

ハイロゥを広げると、アイシスは今走っている方角へ飛んでいってしまう。


「全くアイシスったら、こんな状況でも勝手なんだから」

「どうしてあんなに急いでたんだろ?」

「あの娘は、少しでも早くウルカ隊長に会いたいんだと思います。隊長ことはリオ様と同じくらい好きですから。
 無論、私もラナも同じですけど」

「あの蒼白い髪の娘ね・・・」

理緒は一度だけ見た、鮮やかな髪の色をしている娘を思い出す。

「あれ、でもあなた達の隊長なんだよね? どうして、そんな珍しげに話すの?」

「サーギオスでは、戦いが多く会話をすることなんてほとんどありません。
 アイシスやラナとも、リオ様が来る前まではほとんど話す機会はありませんでした」

「そうなんだ・・・」







その時、理緒は思った。






この世界は自分達の世界と比べて常識がまるで違うと、そう思った。




(これがこの世界の常識なの? 当たり前のことなの? 私にはわからない・・・・・)

「リオ様、私達のことなど気にかけることはありません。早く行きましょう、ラキオス軍が進行が遅いうちに」

「・・・・・」

その後は会話をせず、正確には会話ができず、ずっと無言で走っていた。


そして、イースペリアに向かうために通るダラムの街も通過し、イースペリアまであと少しだった。

「もうすぐ見えます。リオ様、身体のほうは大丈夫ですか?」

「・・・ええ、ぜんぜん平気よ」

そうこうしている内にイースペリアに到着した。

「さあ、参りましょう。早くウルカ隊長とアイシスに合流しなくては」

入り口にはここの警備にいる兵士のような男達が数人いるが、まるで戦意を失ったように怯えている。

(ここの護りにいたスピリット達もきっと、もう・・・・・)

フィスは恐怖に引きつっている兵士達に見向きもせずスタスタ歩いていく。 理緒もその後をついて行った。




・・・・・・・・・



・・・・・・



・・・・




――――イーペリア エーテル変換施設内、出入り口


「つきました。 この辺りに隊長たちがいるはずですが・・・」

フィスは辺りを見回しているのと裏腹に、理緒は嫌な寒気に襲われていた。


「ねえ、フィス。 ここって・・・何?」

「? ここですか、それはこの世界に存在するマナをエーテルというものに変換する装置がある場所です」

(確かに感じるマナの量がすごい。こんなものが暴走でもしたらとおもうとゾッするわね・・・)

すると、どこからともなく声が聞こえてきた。


「・・・リオ、フィス!」

アイシスの声だった、その方向を向いてみると数人のスピリットがいた。

「アイシス、やっと見つけたわ。・・・それと、ウルカ隊長。エトランジェ様のリオ様と共に参りました」

「あ、えっと・・・隊長のウルカさんだよね、私は理緒。前にもあったけど、とりあえず」

「ウルカで結構です、リオ殿」

「ならそうさせてもらうわ。ねえ、ちょっと聞きたいんだけど、やっぱりここにいたスピリット達って・・・」

おそるおそる事をきいてみると、予想通りの答えが返ってきた。


「ああ、ここにいたスピリット達はみ〜んな俺達がぶっ殺したよ。やりがいがなくて、つまんなかったけど」

「・・・そう」

アイシスが残念そうに話すその姿を見て理緒は呆然とする。



「・・・リオ殿、少し話があるのですが」

「え、何?」

急にウルカが理緒に声をかけてくると、神剣の気配が多く感じられる。



「・・・! リオ殿、この話は後ほど必ずいたします」




そう理緒に告げると、ウルカは気配の下方向へ走っていく、アイシスや他のスピリット達もそれに続く。

「あ、私もいかなきゃ・・・!」

理緒もあわててその後に続く。




・・・・・・・・・・




・・・・・・・




・・・・




―――――エーテル変換施設中枢


「なんだ・・・これ?」

イースペリアに到着したラキオスのエトンラジェ、悠人が紡ぐ。

「これがエーテル変換施設の中心部、すべての動力中枢です」

メイド服を着たグリーンスピリット、エスペリアが疑問に答える。

「こんな大きなものをどうやって破壊するんだ?」

「マナ吸引装置を破壊すれば、吸収ができなくなりすべて停止するはず・・・です。
 ユート様、アセリア、辺りの警戒をお願いします」

「・・・わかった」

悠人とアセリアはエスペリアが操作盤につくのを見送ると警戒を強める。




「この気配・・・『求め』だわ」

理緒はみんなの後を追いながら、考える。

【もう我らが近づいていることも、気づいているだろう。 ・・・気をつけろ、相手はあの神剣『求め』だ】

『問い』からも警告の声が聞こえてくる。

「わかってる。 ・・・! ウルカと誰かが戦っている・・・?」

【この気配は『求め』のものではない・・・だが、強い力を秘めている】

「いそがなきゃ!」



・・・俊足でいち早くついたウルカはアセリアと交戦していた。


「少しはできる・・・ならばっ!」

「・・・っ!」

ウルカは居合いを放ち、アセリアの神剣を弾く。


「ハッ、タッ・・・ハァァァァ!」

「!!」

目にも留まらぬ速さの連撃をアセリアに浴びせ、足に攻撃をかすめる。

「アセリアッ!」

悠人もわって入ろうかと思ったが、とても自分の入れるレベルではなかった。


「どうして帝国がここに!?」

操作盤にいたエスペリアが焦り顔で叫ぶ。

「帝国? あいつは帝国のスピリットなのか!?」

「はい、あれは漆黒の翼ウルカ。 サーギオス遊撃隊最強のスピリットですっ!」

「そんな奴なのか!? アセリア、下がるんだ!」

悠人の叫びはむなしく、アセリアに届くことはなかった。

ガキィンッ!

「駄目です! アセリア、いくらあなたでも・・・!」




理緒はやっとのことでフィスに追いつき、声をかける。

「フィス! みんなは?」

「私とあと前方にいるアイシス以外はもう戦いに行ったようです。 ウルカ隊長が今も交戦中です!」

「・・・っく、早くしないと・・・!」





悠人は自分も戦うべく、力を集中していた。

(俺がやらないといけないんだ・・・! 暫く持たせられれば・・・)

すると、ウルカについていたスピリットの部隊がなだれ込んでくる。

(来たっ!!)

「はっ!!」






「やっと、隊長に追いついた・・・」

ようやく追いついたアイシスは自分の隣へ、悠人のフルパワーの一撃を受けた部隊が飛んでくる。


ズガァーン!


「・・・え?」

アイシスは信じられない光景を見た。 自分の仲間がたった一撃で葬り去られた光景を。



「あれが・・・『求め』の主・・・ 許さない・・・よくも俺の仲間達をっ!!」



翼を広げ、神剣の力を解放すると悠人へ向かって飛んでいく。

「アセリア!? ・・・! 何だ、このスピリットは!?」

ガギィィン・・・!

アイシスの拳が鈍い音を立てて『求め』に叩きつけられる。

(・・・っぐ、さっきの部隊の仲間か・・・ なんて重い一撃だ!)


「ユート様、作業が終わりました! 撤退しなければ!」

作業が終わったエスペリアが声を上げる。

「そうか・・・! アセリア、作業が終わった。撤退だ!!」


「・・・逃がすものかっ! ここで仕留めてやる・・・!」

「うわっ!?」

悠人が、怒りに駆られたアイシスに叩きつけられる。

「アセリア、撤退します!!」

その声に、大きく飛びのいて戻ってくる。


「・・・エスペリア、先に行ってくれ」

「そんな! 無茶です、ユートさま!」

「・・・ユート、駄目だ」

「大丈夫だって! いいから行け!!」

(このまま逃がしてくれるわけないだろうしな・・・・・)


そのまま撤退していく二人をみおくると前へ向き直る。

(あとは・・・どうするかな)

「許さないぞ、エトランジェ!」

アイシスがまた悠人へ襲い掛かろうとしたとき、





「アイシス、やめるのです」






「ウルカ、隊長・・・・・?」

アイシスの動きが止まると、ウルカは悠人のほうを見る。

「エトランジェか・・・?」

「・・・だったらどうする?」

「荒削り・・・しかし、いい腕はしている。 ・・・手前の役目は終わりました。これ以上戦うつもりはありませぬ」

「おいおい、先に仕掛けてきたのはそっちだろ?」

悠人は今にも襲い掛かってきそうなほど殺気だっているアイシスを見る。

すると、ウルカはやめるように静止した。

「貴殿の名と、先ほどの剣士の名を聞かせてはいただけませぬか」

「・・・俺は悠人。 あいつはアセリアだ」

「感謝します。では、また戦場で・・・」


もう任務は完了したと言う雰囲気で、ウルカが向かおうとしたとき、

「た、隊長! 今ここで倒しておかなくてはならないのではないですか!?」

静止されていたアイシスが叫ぶ。

「手前らの任務は攪乱。それを終えた今、戦う理由は消えたのです」

「そんな・・・しかし!」

キッっと悠人をにらみつける。 悠人はその殺気に恐怖を感じるほどだった。


「俺達の仲間が、あいつに・・・!」

「アイシス! いい加減になさい!!」

「・・・!?」

アイシスを叱る声に悠人も反応した。 なぜなら聞き覚えのある声だからだ。

「こ、この声って・・・まさか」

戦いがもう終わっていたのを知っていたように、ゆっくり歩いてくる。








「悠人さん・・・・・お久しぶりですね」

「・・・・・・理緒!?」



悠人は影から出てきた見覚えのある少女を見て、絶句する。


「この世界に、どうしてお前が・・・?」

「私も呼ばれたんですよ。 ・・・この世界に」

いつもどおりの笑顔で返すが、悠人は疑問だらけだった。

「なら、お前もこの戦争にかかわっているのか・・・」

「そういうことになりますね。 神剣もちゃんと持ってますし」

理緒はそういいながら、持っている神剣を見せる。

「あまり会いたくはありませんでした。 もう会うときがこないことを祈っています、悠人さん・・・」


理緒はそう告げると、アイシスをつれウルカとともに出口へ向かう。

(いったいどういうことなんだ・・・ウルカと一緒にいたということは帝国のエトランジェなのか?
 『求め』の言うとおり、俺にかかわったからこの世界に来てしまったのか・・・?)

悠人は考えをめぐらせ、戸惑いながらも施設を後にする。



・・・・・・・・



・・・・・・



・・・・




――――イースペリア街内


「・・・っく、リオ! どうしてやらせなかった!?」

つれられて出たアイシスが理緒に向かって怒鳴る。

「あの時点で戦っても意味はないわ。 『求め』は強い、いくらあなたが強いと言ってもね」

「だけど・・・!」


「二人とも、話はそれくらいにしておられたほうがよろしいでしょう」



会話をしていると、ウルカの冷静な声が聞こえる。

「・・・! この感じ・・・!?」

「リオ殿も気づかれましたか。 早くここを離れたほうがいいみたいです」

(何なの? マナが・・・あの場所に向かって吸収されていく・・・?)



コォォォ・・・・・


マナの流れが異常すぎるのを気づくのに時間は要らなかった。

「さあ、早く・・・!」

少し前は冷静だったが、やはり状況が非常にまずいらしく、平静を失っていた。

「では、手前がフィスを。 アイシスはリオ殿をお願いします!」

「・・・わかった」

二人はハイロゥを展開して、フィスと理緒を担ぎ上げ全力でイースペリアを後にする。

「マナ消失が・・・くる!」

ウルカがそういい終えたのと同時に、イースペリアのマナが暴走する。




ズゴゴオオオオオォォォ!!!




ものすごい轟音が響く中、暴走が理緒たちに迫ってくる!


「このままじゃ逃げ切れない・・・アイシス! 私を爆発のほうへ向けて!」

「何する気だ!?」

「いいからっ!」

そうするように諭すと、理緒は魔法を詠唱する。


「もつかどうかなんてわかんないけど、やらなきゃ・・・!」

「守りの範囲を限界までお願い! リフレクションッ!」


ジャキン、ゴオオ!


一瞬だが、リフレクションにふれた暴走は迫りが鈍くなる。

「やった!?」

「今のうちに参りましょう!」

チャンスを得て、全員最大速度でサーギオス方面へ向けて飛んでいく。



・・・・・・・・・



・・・・・・・



・・・・



―――――法王の壁内側


「ふぅ・・・なんとか助かったみたいね」

「ほんと危なかったな・・・」

みんなは呼吸を落ち着けると、ウルカが話を切り出す。


「落ち着いたところでリオ殿。 先の話をよろしいですか」

「ああ、そうね。 さっき聞きそびれちゃったもんね」

「はい。 ・・・話というのはこれから手前とリオ殿で、ラキオスへ向かう任務です」

「今度はラキオス? また随分遠いわね・・・」

「そのラキオスで現在、人質とされているカオリ殿という者をサーギオスへお連れすると言う任務です」

「・・・・・お連れというか、誘拐と言うことね」

「それのついでにラキオス城の王を排除、邪魔をするものも同じく排除をするというのが今回の任務です」

「それはついでなんだ・・・・・・って王の排除ってもしかして人を殺すの・・・!?」

信じられないようなことを聞き、理緒は言葉を返す。

「はい、それが手前らの役目ですので。
 ですが実際にやるのは、他の部隊のようですのでご安心を。 手前もあまり殺しなどしたくはありません」

「あくまで手前達はカオリ殿をお連れすること。 それだけです」

「・・・そう。わかったわ」



「隊長、私達はどうするのでしょうか?」

二人の会話をずっと聞いていたフィスが聞いてくる。

「これは手前達だけの任務。貴殿達はサーギオスへ戻るのが良いかと」

「そう、ですか・・・わかりました。アイシス、私達は戻りましょう」

「え? でも・・・」

「これは隊長とリオ様に課せられた命令。私達が出てもしょうがないわ」

「―――そうだな、じゃあまたな。リオ、ウルカ隊長」

アイシスとフィスは挨拶を交わすと、そのまま帝国へ戻っていく。



「では、リオ殿手前らも参りましょう」

「ええ、そうね」

そうして、理緒とウルカもラキオスの方面へ足を向け歩いていく。




・・・・・・・・・



・・・・・・



・・・




〜理緒がラキオスへ向かって数日後〜




カーンカーンカーン!!


突然警告音が鳴り響く。

(侵入者? まだ明るいのに!?)

「お、お兄ちゃん・・・! この音って・・・」

「ああ、何か起こったらしいな・・・」

悠人達は数日後、サルドバルトまでも制圧して北方全土がラキオスの支配下になった。
その功績の褒美として、レスティーナ王女が佳織を解放してくれた。

そして、悠人は久しぶりの佳織と再会して街の見物から帰ってきて佳織と会話をしていると、敵襲がやってきた。

(おい、バカ剣! 何事だよ!?)

【・・・・・・どうやら敵が来たようだな】

【数が多い。それにどれも強く、中でも一つは我に匹敵する強さだ。契約者よ、油断するな】

(くそっ、敵ってなんだよ。場所は?)

【城のほうだろう。寸前まで気配を感じなかった。相当の手練れだろう】


「佳織は地下室に入っているんだ。俺は城のほうの様子を見てくる!」

「お兄ちゃん・・・うん、わかった。絶対帰ってきてね」

「当たり前だろ! じゃあいってくる」

悠人は佳織にそういうとすぐに王城へ向かった。




そうして、悠人はアセリアたちと合流して今回の敵の話をしていた。

「もしかして狙ってたのは、オルファたちじゃなくて王様たちだったりして・・・」

話し合いをしているとオルファが的中発言をする。

「!?」

「まさか・・・!」

「ユート様! 急ぎましょう」

「ああ・・・!」

(・・・そうだ、今日のスピリットは人を殺しているんだ!)



・・・・・・・・



・・・・・・



・・・



――――館周辺の森の中


「ようやく、ラキオスについて任務開始したってことになるわね・・・」

理緒は森の中で待機していた、それは作戦遂行のため悠人の足止め役だった。

(私達の作戦通りことが運べば、必ず悠人さん達はここを通る・・・・・)



苦悩していた。


また彼と対峙するのかと思うと。



(―――今度は絶対に戦いを免れることはできないみたいね)

【理緒、あの漆黒の妖精が目的の場所へ向かったぞ】

「そう・・・・だったら、そろそろね」

【そうであろうな。『求め』の気配をすぐ近くに感じる、他の妖精たちと一緒だ】

「・・・・・・」








(あそこを焼き払われたりしたら、佳織が・・・!)

ウルカと一戦交えた悠人達は館の方角へ向かったので全力で追う。




・・・館が見えてきたその時、森の影から・・・・!




バザァァァ!




「!?」

「はっ!」

森の影から、理緒が飛び出してきた。 悠人は辛うじてその攻撃に防御することができた。

「・・・・・・・」

「・・・理緒!? いったい何処から、気配を全く感じなかった・・・」

「このまま通り過ぎさせてあげたかったのですが、私も任務ですので仕方ありません」

理緒は館を背に後ろへ飛びのく。

「どうして俺達に剣を向けるんだ! どうして俺達と戦わなきゃいけない!?」

「今さっき言いましたよね。これは任務なんです・・・」

「だからといって何で・・・元の世界だったら俺達不通の友達同士じゃないか。
 それなのになんで友達同士で殺し合いなんかしなきゃいけないんだ!?」

「・・・・・悠人さんにも守りたいものってありますよね、たとえるなら佳織ちゃんとか。
 私にもあの国に守りたい人がいるんです。それはどんなものよりも変え難い、だから・・・・・」

「ここを通すわけには行きません」

「く・・・!」



「ユート様、お気持ちはわかりますが早くしなければカオリさまが!」

「ユート、早く・・・!」

「・・・っ! わかった、みんな行くぞ!」



理緒は一人に対して、悠人達は四人。数はかなり不利な状況である。

「いっくよ〜。マナよ、神剣の主として命ずる。その姿を火球に変え敵を包み込め!」

「ファイアボールッ!」


ゴォォォォ!


オルファが魔法を詠唱して、火球が理緒へ迫ってくる。すると・・・・・

「・・・マナよ、我が声に従え。オーラとなりて、我に迫るモノを反射する力となれ」

「リフレクションッ!」

理緒は左手をかざし、迫りくる魔法を撥ね返す。

ズガァン!


「・・・え、きゃぁ!」

「オルファ!? 大丈夫か!?」

「大丈夫だよ、パパ。ちょっと熱かったけど平気」


「てやぁぁぁぁ!」

ガキィン、ガンッッ!

オルファの魔法の後、アセリアが続き剣撃を繰り出す。

「アイシスと同じくらいの攻撃の重さ・・・いえ、それ以上か・・・!」

「だけど、負けるわけには行かない。 たぁぁぁ!」

鮮やかな長さの『問い』の刀身を利用して、アセリアの攻撃を流しながら隙ができたところへ攻撃をかける。


「させませんっ!」

アセリアに隙ができたと思って、勝負をかけるがエスペリアの介入で理緒の攻撃は弾き飛ばされる。

ガィンッ!

「・・・っ」

理緒は攻撃が苦手なため、勢いよく攻撃した反動ですこし体がよろめく。


「いくぞっ!!」

ズダン!

エスペリアに弾かれ、隙ができたところを見計らって悠人が攻撃を仕掛けてくる。

「・・・・・!」

(流石に・・・四人を相手って言うのは無理があるわね)

【・・・あきらめる気か?】

(冗談。あくまで私の役目は足止め、もう少し堪えればいいだけの話だからあきらめるなんて事しないわよ)

【そうだな。だが、『求め』の一撃には気をつけろ。我は防に優れているといえど、まともに当たれば致命傷だ】

(わかってるわ・・・!)

ガギィィンッッ!!

どうにか悠人の攻撃もしのぎ、態勢を立て直す。

(よし、あとはプロヴィデンスを使って・・・・・)

と、魔法を詠唱しようとしたその時、



「・・・!」

(この感じ・・・もう、ここに入る必要はないみたいね)




「・・・悠人さん。もう戦いは終わりにしましょう、これ以上は無意味です」

「何・・・だと? それはいったいどういうことだ!」

「そんなことより、今あなた達は急いでるのではなかったのですか?
 早くしないと大変なことになるかもしれませんよ」

「・・・そうだ、佳織! みんな、行こう!」

悠人は仲間達に号令をかけると理緒の横を通り過ぎていってしまう。




「ウルカはもう佳織ちゃんを連れて行くことできたのかな・・・・・」

(秋月様の伝言を悠人さんに伝えるって言ってたけど、何か嫌な感じがするのよね・・・)

そこが引っかかっており、様子を見に行こうと足を向けたとき・・・



ズゴォォォォ・・・・・・!



【理緒、あの妖精の元へ急げ・・・! 『求め』の力の増幅が異常だ・・・】

ギィン!

頭に強い警告音が響く。よほどすごい力なのだろう、感じる力がビリビリする。

「・・・やっぱり良くない予感って言うのはあたるものね」

『問い』の力を集中しながら館へ全力で向かう。




「殺す・・・・・『誓い』を・・・瞬を・・・!!」

ウルカから瞬の伝言を聞いた悠人は、瞬もこの世界にいると気づき憎悪が増大して『求め』に意識を呑まれていく。


バシュゥ、ゴォォォォ!!


オーラフォトンのサークルが広がり、仲間達も心配の表情をする。

「ユ、ユート様・・・! いけません、神剣に心を呑まれては・・・!?」

「エスペリアお姉ちゃん、危ないよ! 今パパに近づいちゃ・・・!」




【まずいぞ、このままだとあの『求め』の担い手の仲間の妖精たちまで被害を蒙る事になる】

「なんですって!?」

到着した理緒は悠人の力の増幅を見ていた。

「だったら、守らなきゃ・・・誰にも死んでほしくないから!」

【まて、そんなことをして意味があるのか? それにあの漆黒の妖精のほうは、ほうっておくのか?】

理緒は見上げると佳織を抱えているウルカを見つける。

「放っておくわけないでしょ! どっちとも守るのよ、意味なんてないわ」

【我には、お前の思考は理解不能だ】

「そんなのどうでも良いわ。早く力を貸して!」

【・・・どうなっても知らぬぞ】

ジャキィィン!


神剣の力を解放し、悠人達の下へ向かう。


「滅びろぉぉぉぉぉ!!」

ヒュオォン!

集中し終わった悠人は地面へ力をたたきつける。

「・・・! 手前のハイロゥの中へ、決して放さぬよう!」

「!!」

悠人の強靱な攻撃が、ウルカへ迫る。


(・・・! 佳織ちゃんを、ハイロゥへ隠し自分もそれに包んだ! あれなら、これで・・・・・!!)

「マナよ、我が声を聞け。 彼の者に集い、すべてを退ける衣となれっ!」

「プロヴィデンスッ!」


ズゴゴゴォォォ!

ウルカ達を包むハイロゥが、さらに強固になり悠人の攻撃受け止める。


「そして、こっちも! 撥ね返せ、リフレクションッ!」

ジャキン・・!

反射壁を張り、アセリアたちを守る。




「三人とも平気!?」

「え・・・? オルファ達を守ってくれてる・・・?」

「・・・・・・」



「大丈夫、みたいね。よかった・・・」

【身体は平気か・・・?】

「ちょっと辛いけど・・・こんなんでやめてたら到底、秋月様は守れはしないわ」

【・・・強く、なったな】

「えへへ・・・・・」

そうして、暫くすると悠人は落ち着きを取り戻し今度は自分のやってしまったことに後悔する。


「悠人さん・・・・ウルカ! 先に佳織ちゃんを連れて行って頂戴。私も後からすぐに追いつくわ」

「・・・承知」

気を失った佳織を連れて、ウルカは飛び去っていく。


ウルカが無事いけたことを確認すると、悠人に近づき・・・

「悠人さん、心を強く持ってください。秋月様のことはわからなくないですが、
 だからといって『求め』の意思の呑まれて大切なものを失ったりしたらどうする気ですか?」

「理・・・緒? やっぱり、お前も・・・瞬の仲間・・・なのか?」

「はい、そうです。私はサーギオス帝国のエトランジェ、『問い』のリオです。
 佳織ちゃんのことは心配でしょうが、安心してください。秋月さんは佳織ちゃんを傷つけたりしません」

「では、私はこれで。ウルカに追いつかないといけないから失礼します。
 ・・・・・それと、私が言えたことじゃありませんが力を使うときはもう少し周りを見た方がよろしいです。
 でないと、知らず知らずの内に自分の仲間達を傷つけることになるかもしれませんから」




そして、話を終えた理緒は、ウルカの後を追うように走っていく・・・・・・






第六話〜対峙する二人〜 終わり




⇒第七話〜誓いの守護剣〜











〜〜〜アトガキ〜〜〜


どうも、板ちょこです。

今回の話、微妙(微妙か?)に本編とずれているところがありましたが、
それは理緒がいるから運命が変わったと言うことにしておいてください。 お願いします・・・すいません。

それと最後の理緒の行動は、必要ないんじゃないか?と思うかもしれませんがそんなことはありません。(多分)
確かに悠人の攻撃されたのはウルカだけだけど、あれだけ大きな力なら仲間もきっと被害にあったはずです!
・・・と、超私的な意見すいませんでした。

瞬君があまり出てないのは仕様です・・・次回から良く登場することでしょう。
では、また次のアトガキでお会いしましょう〜・・・・・




作者のページに戻る