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≪この世界と銀河と宇宙と・・・≫






第一話〜二人の来訪者〜







〜西暦2008年12月〜


―――――学校の昼休み



キーンコーンカーンコーン・・・・・・

毎日の恒例のようにお昼チャイムの音が鳴り響く、そして黒い髪の少女が突然立ち上がり、

「よーし、今日こそは告白するんだから!」

元気な声が聞こえる、彼女の名前は本条理緒。長髪の黒髪でかなりの美少女である。

「・・・はぁ、理緒。あんたも懲りないわね、今日も行くの?」

すると、元気のいい声の隣からあきれたような声が聞こえる。

「何言ってるの、明。当然でしょ、私のこの思いは誰にも止められないんだから♪」

もうひとつの声の主は、香野明。理緒の親友であって、すごく仲がいい。

「・・・まあ、あんたがそう言うなら別にかまわないけどね」

「そうそう、じゃあ行って来るね〜」

そういいながら理緒は教室を足早に出て行く。







・・・お昼になって日課のように校内を動き回る生徒達、その中に理緒も歩いていた。


トッタタタ、ガララ・・・


理緒は目的の場所に到着したのかすぐにドアを開け出てくる生徒に声をかける。

「あ、ちょっと秋月さんって今いる?」

声をかけられた生徒は秋月と言う名を聞いてばつが悪そうに、

「・・・ああ、あいつなら教室にいないよ。 多分あの娘のところじゃないかな」





あの娘。




それを聞いて理緒は少し暗い顔になるが、すぐにもとの笑顔に戻って、

「そっか、ありがとう。 じゃあね」

そして、すぐにいると思われる場所に歩き出す。


「えっと、確かこのあたりだったかな。 ・・・・・あ」

目的の場所についた理緒は案の定探していた彼と一人の少女がいる。
理緒の思い人の秋月瞬と、もう一人は瞬がゆがんだ愛情を注いでいる高嶺佳織がいた。 

そしてそこには、たまに見かける光景があった。


「い、いやっ! 秋月先輩、放してください!」

「何で嫌がるんだ、僕が佳織に酷い事するわけないだろう? 佳織に聞いてもらいたいことがあるだけだよ」

「痛いっ!」

瞬が強引に佳織の手首を掴んでいる光景だった、その様子に理緒は戸惑っている。

(ど、どうしよう・・・いつもは周りの誰かが止めてくれてるみたいだけど今は誰もいないし・・・)

自分でとめようかと思って飛び出そうとしたそのとき、



「瞬、何している!!」



突然大きなもう一人の男の人の声が耳に入る。

「あ・・・・お兄ちゃん・・・」

その声の主は高嶺悠人。佳織の義兄だった。

「チッ! また貴様か、どうして僕と佳織の邪魔をする?」

「邪魔だと? よくそんなことが言えたもんだな、その手を離せ! 佳織が嫌がってるだろうが!」

「フン、なんだ? 佳織の本当の気持ちが貴様にわかるのか?」

この二人は対峙すると必ず小競り合いが起きる、理緒は瞬を探しているとよく見られる光景である。

「お、お兄ちゃん、大丈夫だよ。秋月先輩とお話してただけだから」

「そうだ、貴様はいちいち出てくるな」

「嘘をつくな! どうしてこんなやつを庇う!」


(やっぱりあの二人はほんとに仲が悪いのね、なんだか少し怖い・・・)

理緒はしばらくその光景を見ていて悠人にほんの少しの恐怖を抱く。

「それが貴様の本性だな、佳織を強引に従わせようとする、佳織は貴様のものじゃないんだ」

「何だと・・・?」

「貴様のしていることは自己満足だ。佳織を使って自分を肯定しようとしている」

「・・・お前が言えたことか!」

だんだんと二人の周囲に殺気が漂う、どうしようか悩んでいると理緒は佳織くらいの背の青い髪の少女をみかける。

(あれ? あの娘も・・・?)

その少女も自分と同じようにどうしようかオドオドしている。

そうしている間に二人の喧嘩が始まりかけたとき、佳織が止める。


「秋月先輩、もう行って下さい・・・・ お昼休みももうおわるし・・・」

「そうか、佳織がそう言うなら僕は退こう。 こんなやつのために貴重な時間を割く必要もない」

「佳織、僕はいつでも待っているよ・・・・・」


そう言って瞬は悠人の隣を通って理緒の隠れている廊下の曲がり角へ歩いてくる。

(わわ、こっちにきちゃう! どうしよう・・・!)

そうこうしている間に、瞬は理緒の姿を見つける。

「・・・何だ貴様か、いつもいつも僕のところへ来るなんて暇なやつだな」

「あ、えっと、あはは・・・ そうだ! よかったらいっしょに食事しましょうよ、秋月さん!」

「いらん、自分の教室へ帰れ」

「えー、そんなこといわずに〜」


キーンコーンカーンコーン・・・・・


畳み掛けるように終わりのチャイムが鳴り響く、それを聞いた瞬はさっさと自分の教室へ帰っていく。

「あう・・・ 終わっちゃった〜・・・」

理緒は心の中でなきながら戻って行った・・・・・




・・・・・・・・・・



・・・・・・・




・・・・・





〜翌日〜


―――教室



「よ〜し・・・・・」

「今日こそ告白するぞーでしょ」

放課後になり理緒がいつもごとくしゃべろうとした瞬間に明に止められる。

「な、明! 私の心を読んだの!?」

「いやいや、いつもの日課になってるからわかるって」

本気で驚いている理緒に対して明は冷静に返事を返す。

「ほんと、あんたは秋月君LOVEね。その精神は尊敬に値するわよ」

「いや〜、そんなにほめられても〜」

「ほめてないって。でも、勿体無いわよね、理緒ってそんなに可愛いのにほかの男は見向きもしないもんね」

「明、いつも思うけど私ってそこまで言うほど可愛い? 嘘なんじゃないの?」

「だってあんたよく告られたりしてるでしょう。ないとはいわせないわよ」

「えー、だってそれは私みたいな女の子がこのみな物好きな男であって決してそういうわけじゃないよ」

「だいたい、秋月さんにあんなに詰め寄ってるのにあっさりスルーされちゃうし・・・・・」

「・・・基本的にあの人は他人とかかわらないタイプじゃない」

「うんにゃ、本当はやさしい人なんだって! 私はそれを知ってるもん」

「はいはい、そこまで言うならもう止めないわ。
 やるんだったら最後の最後までいっちゃいなさいよ、途中で投げ出したら承知しないんだから」

「わかってるって、じゃあ行ってきま・・・」

「あ、そうだ。 ちゃんと高嶺君に演劇がんばってやってって伝えといてよ」

「・・・高嶺君って高嶺悠人さん?」

「そうだけど?」

「おんなじクラスだったっけ?」

理緒は真顔で疑問符を浮かべている。

「もしかしてあんた、今まで知らなかったの・・・?」

「え゙!? あ、いや、そんなことあるわけないでしょ、えへへ・・・」

「知らなかったのね・・・ いいわ、私は今回の演劇の監督になっちゃったから、
 主役様にはぜひともまじめにやってもらわなくちゃね」

「まあ、いつも眠そうな顔してるけどやるときはちゃんとするんだけどね・・・」

「そうかな? 私が見るときはいつも怒ったような顔してちょっと怖いイメージがあるんだけどな」

それはそうだ。大体、理緒が悠人を見るときは瞬と対峙しているときなのだから。

「とにかく、ちゃんと伝えといてね。それに彼にくっついてればあんたの探してる人にも会えるんじゃないの?」

明はちょっと冗談のように言う。

「あー、それは考えてなかったな。明、ありがとう、いってくるね!」

そうかと思い明は迷わず悠人を追いかけていく。

「え、まさか本当に・・・? ま、いいか」



・・・・・・・・・・・



・・・・・・・



・・・・・




「えっとぉ、確かここから出たから・・・・ どこかな」

探そうと思い外に出たのはいいものの、見失ってしまった。

「髪がぼさぼさでやる気のない顔の高嶺悠人さんはと・・・ あ、いた!」

特徴のぼさぼさ頭を見つけて理緒はすぐに声をかける。

「高嶺悠人さん発見です!」


「・・・ん? 何だ、俺に用か?」

突然声をかけられた悠人は当然の反応を返す。

「あれ、誰かと思えば本条じゃないか?」

「え、私、高嶺さんと話したことあったっけ?」

今まで同じ教室だったこともわからなかった理緒は知られていてびっくりした。

「話したことがあると言うか・・・ いつも昼休みになると元気な声をあげるからな。
 うちのクラスなら誰でも知ってるんじゃないか?」

「え、えぇ・・・? え〜!」

それを聞いた理緒は顔を真っ赤にする。

「わ、私そんなに元気いっぱいだった!?」

「ああ、いつも今日こそは・・・ って意気込んでたな」

悠人はジェスチャーを交えながら説明する。

「は、恥ずかしい・・・・・」

(・・・・・あれ? でも、それだけなのかな・・・?)

「高嶺さんはそれ以外に私のこと知らないの?」

「悠人でいいよ。それより、それ以外ってどういうことだ?」

「え、いや、その・・・・・ なんでもないわ」

(やっぱり秋月さんと対峙しているときは彼しか見えてないんだな・・・・・)

それがわかって、疑問が解けた。

「まあいいか、・・・で、俺になんか用があったんじゃなかったっけ?」

「あ、そうそう! 私の友達からだけど演劇の主役、バッチリこなして下さい。 とのことです」

「友達・・・ っつーことは香野のことか、わかったよ何とかがんばれるようにしときます。
 逆らうと今日子並に怖いからな・・・」

「何か言いました?」

「い、いやなんでもない。 本条、俺に用があるのはそれだけか?」

「私も理緒でかまわないです。で、用はそれだけなの。長く引き止めてすいませんでした」

「了解。じゃあまたな・・・・」

悠人が背を向けていこうとした瞬間、あるものと目が合う。


「・・・・・・」

「・・・なんだよ」

「別に・・・ 佳織ならともかく、貴様に用などない」

そう、目が合ったのは秋月瞬。まさか明の言ってたことが本当になるとは理緒も思っていなかった。

「いつも言ってるけどな、佳織に近づくな」

「僕と佳織の問題に、どうして貴様などがしゃしゃり出る。 そのせいで、佳織がどれだけ迷惑していることか」

「佳織が迷惑・・・・ だと?」

非常に空気が悪い、周りの人間もとめようとはしない。

(ま、まただわ・・・ どうしよう、私なんかじゃ止められない・・・)

悠人の後ろにいる理緒は二人のやり取りを見守っていることしかできない。

「佳織は俺の家族だ。家族にお前みたいなやつが近づけば、警戒だってする」

「ふん、疫病神め。どれだけ佳織の幸せを奪えば気がすむんだ? 佳織は僕のためにいるんだ」

「僕だけが佳織を幸せにできて、佳織だけが僕を幸せにできる。昔からそうだったんだ、貴様が現れるまでは」

「・・・・・」

瞬は延々と自分の気持ちを主張し、悠人が断絶的に拒絶する。

「さっさと佳織を解放してくれ。僕にとっても、貴様に声をかけるのは苦痛なんだ」

「・・・・・ッ!!」

そう言い放ち瞬は悠人の横を通り過ぎ歩いて行く。

一方悠人は歯をかみ締めて、こぶしを強く握りしめる・・・

それに気づいた理緒はすぐに隣を通って見えなくなりかけた瞬を捕まえる。





「ちょっと秋月さん待ってください!」

「何だまた貴様か、本当にしつこいな」

「どうして秋月さんは、そこまで悠人さんを敵視するんですか?」

「どうしてかって? そんなのいつも僕の周りにいたならわかるだろう、あいつは疫病神だ。
 早く佳織から遠ざけないと佳織が不幸になる、それは避けないと・・・」

瞬は力強く語る、その気持ちに嘘偽りは感じられない。

「・・・で、でも、佳織ちゃんの兄の悠人さん、佳織ちゃんの幼馴染の秋月さんなら仲良くすればいいんじゃ・・・」

「あいつと僕が仲良く? ふ、だからお前は馬鹿なんだ。
 そんなことできるわけないだろう、あいつだってそんなことは微塵も思ってるはずはない」

「・・・・・」

そして、瞬は理緒に背を向けながら最後に言う。

「あいつは佳織の兄でもなんでもない、ただの疫病神だ。
 僕はそれから護るために行動しているんだ。 それだけのことさ・・・」

そう言って瞬は理緒の前から姿を消す。


「・・・・・私、何やってるんだろ」

「私はただ秋月さんが好きで話しかけてるはずなのに、何で悠人さんの仲なんか取り持とうとしてるんだろ・・・」

「私にとって秋月さん以外の人なんてどうでもいいのに・・・・・」

瞬がいなくなり一人残された理緒はちいさくそうつぶやく。



・・・・・・・・・・



・・・・・・・



・・・・




〜西暦2008年12月18日〜



「・・・ん〜、今日はいい天気! 何かいいことありそう・・・」

いつも変わりない朝日が理緒を照らす。
しかし理緒はこの時わかっていなかった、いいことがあるどころか悪夢の日であることを・・・

「さぁさ、元気よくいこ〜っと♪」

元気がとりえの彼女はいつものように陽気に学校へ向かう、そして・・・・

(あ、あの人って・・・?)

学校へ向かっていると、よく見知っている人物を見つける。

「秋月さん!」

「・・・また貴様か、よく会うな」

「えへへ〜、運命かもしれませんよ!」

「・・・・・・」

半分冗談、半分本気でいったが思ったとおりスルーされる。

「一緒に行ってもいいですか?」

「・・・・・好きにしろ」

「はいはい〜」

理緒はうれしそうに瞬の隣へ並んで登校する。

(うむ、やはり今日はいい日だ。 早速いいことが起こったのだ)

わけのわからない言葉遣いをして喜び学校へ登校する。




・・・・・・・・・



・・・・・・・



・・・・




「あ〜、もうついちゃった・・・」

一緒に歩いていると時間が早く感じるのかすぐに学校へついた感じがする。

「僕は自分の教室へ行く。貴様もさっさといくんだな」

「私のこと思って言ってくれるんですね、ありがとうございます!」

「・・・・・」

そうして途中まで二人で歩いていると、聞き覚えのある声がする。



「悠、またボーっとしてるけど・・・ 練習、できそう?」

「どうかな、起きた時よりは落ち・・・・・!?」

「・・・・・・・」

(あぅ、朝から気まずい雰囲気に出くわしちゃった・・・)

演劇の練習の話を今日子としていた悠人と瞬達がでくわす。

「・・・・ッチ」

瞬は悠人達の目の前で立ち止まり、理緒もそれに合わせてとまる。

「ちょ、ちょっと悠・・・ 無視しときなさいってば」

一緒にいた今日子が悠人に言う。

(岬今日子さん・・・ あんまり話したことはないけどこういう状況はよく出くわしたことはあるみたい・・・)


「邪魔だ」

「なに・・・・・?」

瞬が目の前にいる悠人へ向かって明らかな敵意を向けて言う。


ダンッッ!

頭に血が上っているのか悠人は瞬の胸倉につかみかかって身体ごとぶつけながら言う。

「言いたいことがあるなら、はっきり言え」

「おい、寄せ悠人!」

その隣にいた碧光陰も異常に気づいたらしく、とめにはいる。

「触るな」

「邪魔なのは俺じゃなくてお前だろ。お前のほうから消えろよ、瞬」

そういうと、悠人は腕に力を込め瞬を締め上げる。するとわずかに瞬の顔が苦痛に歪む。

「あ、秋月さん! 悠人さんやめ・・・」

理緒が止めようとすると、さらに悠人が力を込め締め上げようとする、そのとき瞬がにやりと笑う。


ドズッ

「うっ・・・・ ぐぁッ!」

「悠っ!」

(!!)

理緒はわずかに見えた、瞬が何か尖ったもので悠人のわき腹につきたてたのを。

「あ・・・・ かはっ・・・ぁ」

悠人は耐え切れず地面へ転がり痛みを訴える。

「ハッ・・・・ なにやってんだよ、だから触るなって言っただろ?」

「・・・・くぅ、ぐ・・・ 瞬・・」

「野蛮なことをするのは勝手だけど、格好悪いな、悠人」

ニヤニヤ笑いながら理緒の隣へ戻っていき、地面にいる悠人を見下す。


「・・・随分えげつない真似するじゃないか、秋月」


倒れている悠人を庇うように、光陰が瞬の前へ立つ。
光陰は理緒から見ればかなり大きい人なので、少しだけ恐怖感を抱く。

(近くで見るとやっぱり大きい、それにかなり怒ってるみたいだし・・・)


「仕方ないだろ? 先に手を出してきたのはそっちなんだからな」

「だからといって、携帯握って腹殴るなんて感心しないな。 ヘタすりゃ命にかかわるぞ?」

「ハッ・・・ よく見てたな。でも、仕方なかったって言ってるだろ。正当防衛だよ」

(!? じゃあ、やっぱりあの時見たのは見間違いじゃなかったんだ・・・)

理緒は先ほどのことが真実だと知り、状況を見守る。

「僕を妬むものも多いし、それなりの準備はしてる。 簡単な格闘技の練習をしてみたり、
 多少の重りを仕込んでみるとかさ」

「・・・・ぅ、お前はっ!」

ようやく、調子を取り戻してきたのか悠人は、足を震わせながらも立ち上がる。

瞬はそれに一瞬驚いた顔をするが、すぐに悠人を小馬鹿にしたセリフを言う。

「おや、大丈夫かい悠人。 だいぶ顔色が悪いようだよ?」

「そういう、お前も・・・・ 顔が引きつってるな」

「よしなってば、悠・・・」

今日子に止められようとするが悠人はかまわず瞬に目を向ける。
そして、一歩踏み出したところに光陰が悠人の腕をつかみ静止させる。

「離せよ・・・・ 光陰!」

「やめろ、悠人」

その後も光陰はあきれた様に、

「ったく、秋月も悠人もその辺にしておけ。学校で殺し合いでもしたいのか?」

「そうだよ。あんたも悠も顔あわせるといっつもこうなんだから」

二人にそういわれ瞬はいつものつまらなそうな顔に戻り、

「ふん・・・・ 相変わらず弱いやつらは群れる」

掴まれた襟元をきれいに戻し、行こうとすると、

「そうだ・・・ 僕の言いたいことを言ってやるよ、悠人」

「・・・・・」

「佳織はお前といたら絶対に幸せになれない。どこかにいなくなるほうが彼女のためだ」

「またそれか。たまには違うこと言ったらどうなんだ?」

「佳織の事がなければ、貴様に話すことなんてない」

そうして悠人に力強い視線を向け、

「いいか・・・・ 佳織の面倒は僕が見る。 絶対にそのほうが言いに決まっているんだッ!!」

「はっ! それだってパパにお小遣いをもらってだろ。 くだらないことをいうのも大概にしろ!」

「・・・・話は終わりだ。 僕としたことが飛んだ時間の無駄遣いをしたな」

「なんだとっ!」

「あまり手間を取らせないでくれよ。佳織さえ解放するなら、どこで誰と群れてようが見逃してやるからさ・・・
 あははははは・・・・・」

「誰が、佳織をお前の好きにさせるかよっ!」


「・・・・・行くぞ、理緒」

「え、はい! ・・・?」

突然、名を呼ばれ理緒は後へついていく。

そのとき悠人は始めて近くに理緒がいたと気づくのであった・・・。


(あれ? そういえばさっき・・・?)

「あのぉ、秋月さん。 私のこと名前で呼びませんでした?」

「何のことだ? 気のせいだろ、時間をとらせるな」

そう言ってさっさと一人で行ってしまう。

「気のせい・・・ だったのかなぁ」


そうして学校の放課後へとなっていった・・・



・・・・・・・・



・・・・・・



・・・・



〜西暦2008年12月18日〜


――――帰り路


「さて、今日もいつものように終わったし帰ろうかな」

「あら、理緒。あんたが秋月君に関わらないなんて珍しいわね」

「・・・うん、まあ、ちょっとね」

朝のこともあってちょっと近づき難かったので理緒は昼にも行ってなかった。


「そういうわけだから、またね。明」

「・・・・・うん、じゃあね」

そういい終え、理緒が教室から出ようとすると明が、


「・・・理緒」

「? どうしたの?」

突然呼び止められ不思議そうに振り向く。

「えっと、その・・・ 気をつけてね・・・・・」

「急にそんなこと言うなんてどうかしたの? いつもの明らしくないよ」

「そう、よね・・・ うん。気にしないで、じゃあま・・・バイバイ・・・」

また明日と言おうとしたのか途中で言葉を切り、明はセリフを変える。


「・・・・・? うん・・・バイバイ」

不思議な思いを残しながら理緒は教室を後にする。



・・・・・・・・・



・・・・・・



・・・・



理緒は校門を出ようとしていると不意に佳織をみつける。


「佳織ちゃん・・・?」

「・・・あ、理緒先輩」

佳織の声をかけた理緒に対して普段どおりの返事が返ってくる。

「佳織ちゃんももう帰るところなんだね」

「はい。ちょっと帰りに今日ちゃん達に言われて、神木神社に寄り道するんですけど」

理緒と佳織は会う機会も多くよく話す仲になっていた。名を呼ぶときも下の名前で呼んでもらっている。

「・・・ふぅん、神木神社か。私も久しく行ってなかったわね」

「よかったら理緒先輩も一緒に行きませんか?」

佳織は理緒の事を思って誘ってくれている、それは理緒もわかっているが・・・

「ごめん! 今日は付き合えそうにないの」

「わかりました。残念ですけど・・・ じゃあさようなら」

「うん・・・ ほんとにごめん。 またね」



・・・・・・・・・・



・・・・・・・




・・・・・




「はぁ・・・特に用事もないのに私なんで断っちゃったんだろ」

佳織と別れ、そのまま帰り路を歩いている理緒は少しだけ後悔をしていた。



【・・・・・それはお前が無意識に拒絶しているのではないのか?】



キィンッ!

ため息をついていると突然強烈な頭痛と頭の中に声が響く。

「・・・っ痛! 何なのいきなり・・・?」

意識して辺りを見回すと誰もいない、誰かに声をかけられたわけでもないのかと思い歩き出す。

(何だったんだろ今の声、それに頭もなんか痛いし、気分も良くない。 ・・・体調悪いのかな)

「はぁ・・・今日はせっかくいい天気なのに、いいことがあったのは朝だけかぁ・・・」

すると理緒はまた大きなため息をつく、しかし次に目を開けると理緒にとって幸せの光景だったかもしれない。




「あ、秋月さん!」



そう、目を開けると瞬が自分の5メートル先くらいに歩いていたのだ。 理緒はすぐに追いかける。

「ふん、やはり貴様か」

「えへ、私がくるってわかってたんですか?」

理緒は自分の事をわかってもらえてうれしそうに聞く。

「もう日課になっているようなものだからな、僕だってなれるさ。それに・・・・・」

「それに?」

「僕に自分から声をかけてくるなんて貴様くらいだからな・・・・・」

瞬はボソリとつぶやくように言う。

「え・・・?」

「・・・僕としたことがくだらないことを言った、忘れろ」

「あ、はい・・・」


・・・・・その後二人は無言のまま歩いていた、沈黙から話し出しそうと理緒は現在悩んでいる。

(うーん・・・ このまま無言のままでもかまわないんだけど、なんだか気まずい・・・)


「本条」

思考回路をぐるぐる回していると、以外にも瞬から声をかけてきた。

「は、はい!」

どうしようかと悩んでいた理緒は瞬から話してきて、思わず声が裏返る。

「貴様はいつも僕の所へくる。なぜだ?」

「・・・・・?」

突然良くわからない質問をされ理緒は首をかしげる。

「えっと、それっていったいどういう・・・?」

「言葉のとおりさ。僕の周りの人間どもは側にくるのはおろか、声をかける事さえするものはほとんどいない」

「それはすべて妬みや憎しみが原因だ、育ちの悪いやつらが考えそうなことさ」

「・・・・・・」

「内面を隠して表面上を良く見せる人間もいるが、すぐにわかるものだ。
 だが、貴様はそんな素振りを見せない。内面にもそんな感じはしない、僕にはそれがわからない」

「話は戻るが、なぜ貴様は僕のところへくる? 何が目的だ?」

「・・・・・」

理緒は知らなかった、瞬がそこまで自分の事を見てくれていたことを。
いつも軽くあしらわれ自分のことなど気にも留めていなかったのだと、だけど今は自分のために問いかけている。

「・・・別に私は、見返りを求めてあなたの近くにいるわけじゃありません。だけどしいて言うならば・・・」

「秋月さん。あなたの側に少しでもいたいから・・・・かな」

「僕の側にいたいから? わからない、僕の側にいるだけで何の得があるんだ?」

いつも闇の中にいた彼は理緒の言葉を信じなかった、いや信じれなかったのだろう。

「愛は見返りを求めないもの。秋月さんは覚えてないのかもしれないけど、私一度あなたに助けられたんですよ」

「僕が貴様を・・・?」

そんなことしたか? という顔になる瞬。





〜高校の入学式時〜



――――式が終わり移動中の廊下



ザワザワザワザワ・・・・・

式が終わり生徒達があわただしく移動している、その中に理緒がいた。



「わあ、やっぱりここって広いなぁ・・・ 迷いそう」


ドンッ!

「きゃぁ!?」

考え事をしながら歩いていると人の波に押され倒れ込んでしまう。

「いたたた・・・ わ、きゃ!」

小柄で華奢な理緒に人の波が気にも留めず押し寄せてきて、ぶつかり合う。

その時、彼女の運命を変える出会いがあった。

「どけ、邪魔なやつらが! 僕が通る、さっさとどけ」

大きな声がする、その声の主は秋月瞬。 周りにいる生徒達が移動しながらも道の脇へ下がっていく。



「ふん、価値のない人間どもが・・・・・ん?」

人が退いていくのを見ていた瞬はひとりだけ座り込んでいる女子を見る。

「いたた・・・ 全く、・・・え?」

「邪魔だ。貴様も早くどけ」

「あ、はい! っ痛・・・!?」

なんと理緒は倒されたショックで足首を痛めたらしくまともに立ち上がることができない。

「何だ怪我でもしたのか? なさけないな」

理緒は知らない男子からいきなりそんなことを言われ死ぬほど恥ずかしかった、無理にでも立とうとすると、

「ほら、僕はさっさとそこを通りたいんだ。立て」

彼は手を差し伸べていた。 周りの生徒達も信じられないような光景を見てひそひそ話している。
しかし、理緒はそれに戸惑っていると、

「さっさとしろ、グズは嫌いなんだ。僕を怒らせたいのか?」

「す、すいません!」

あわててその手をとり立たせてもらう。立ち上がって横へずれると瞬はすぐに歩き出し理緒の前から去っていく。


「おいおい、あの秋月瞬があんなことをするなんてな」

「ああ、俄かに信じられないぜ・・・・・」

生徒達が理緒を見ながらしきりに会話をする。

(・・・? あの人の名前なのかな)

「秋月瞬さん・・・・・か」

理緒は頬を赤らめ彼が行った方向をじっと見つめている。





「こういうことがあったわけです。 思い出しましたか?」

と、理緒の昔の話が終わり瞬が話し出す。

「・・・なるほど、あの時僕が通るのを邪魔した愚か者女は貴様のことだったか」

「これで秋月さんの問いの答えにはなったのかな」

「ああ、僕の問いの答えはなんとなくわかったような気がする」

「その答えって?」





「・・・・・貴様と一緒にいるのも悪くない。そういうことだ」



「・・・え゙!?」

「僕の一番は佳織に決まっているが、貴様の存在も悪くはない。
 喜べ、僕が存在を認めたのは佳織と本条、貴様だけだ。誇ってもいいぞ」

「え、えっと、その・・・・・」

理緒は赤面し、俯く。その時、明のいった言葉が頭に浮かぶ。




『やるんだったら最後の最後までいっちゃいなさいよ、途中で投げ出したら承知しないんだから』


(最後までやる・・・・・そうよ、告白なら今しかない!!)

「秋月さん!」

何かを決意し、顔を上げ真剣なまなざしで瞬を見る。

「な、なんだ?」

さすがの瞬も俯いてたものがいきなり顔を上げ大きな声を出せばびっくりする。

「私、入学したあの日からずっとあなたのことが・・・・・・!?」

理緒の愛の告白・・・をしようとした直後二人を包む光の柱が現れる。

「何、だ!?」

「これっていったい・・・? あ、秋月さん!」


「ぐぅ・・・!? 頭が・・・がああぁあ?!」

光の柱に包まれた途端、瞬は苦しそうに頭を抱えながら叫びだす。

「大丈夫ですか!? しっかりしてください・・・!」

大声で叫んで側へ向かおうとするが、体が思うように動かず手足をばたつかせることしかできない。

「あがぁ・・・! 佳織ぃ・・・! 本・・じょ・・・う!」

「秋月さん・・・・!? っぐ、けほ・・・え、何、急に・・・?」

先ほど感じた頭痛がぶり返してきて、理緒を襲う。



「私は、秋月・・・さんの側にいるん・・・ だから・・・っくぅ・・」

バシュウゥゥゥゥ・・・・・




そうして二人を包んだ光の柱はこの世界から消えてしまった・・・・・





第一話〜二人の来訪者〜 終わり




⇒第二話〜手にした剣〜





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