悲しみの戦場

 

 

 

 

 

 

 

 

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大爆発が起こる直前、いち早く迫り来る危機に気付いた者がいた。

エスペリアだ。

 

だが、もう全員で逃げてる時間は残されていなかった・・・。

 

彼女が次にとった行動も、咄嗟の判断だったのである。

 

ゴォォォォオオオオオーーーーー・・・

 

バリアを展開しながら、大地を蹴ってリエラに向かって跳ぶと、全力で持って“献身”で受けようとする!

 

ギギギギィィィィィーーーーーン!!!

 

凄まじいエネルギーが、エスペリアの体に莫大な負担をかける!

 

「へぇ・・・あなたも仲間の為に命を懸けたりするんだ。」

そう呟くリエラは、どこまで冷酷非情だった。

 

ビキ・・・ビキビキ・・・

 

“献身”にヒビが入る。

 

「でも・・・残念ながら力不足ね。」

 

「く・・・。」

 

「え、エスペリアー!!」

悠人が加勢しようと、“求め”を構える。

 

「い・・・いけません・・・悠人様・・・このままでは・・・全滅です。」

 

「だからって!」

 

「バリアで・・・皆の命を・・・。」

 

「往生際が悪いわね。時には諦めも肝心じゃない?」

 

パッキィィィーーーーーン・・・

 

その時、“献身”が砕け散った!

 

悠人がほぼ、無意識のうちに広範囲にバリアを展開して、仲間を覆う。

 

ズバアッ!!

 

同時にエスペリアの体が、“天理”に貫かれる!

 

「か・・・く・・・。」

 

「エスペリア!」

悠人が叫ぶ。

 

ギィィィィィーーーーーーン!!!

 

悠人の張ったバリアとリエラの“天理”が激しくぶつかり合う!

「く・・・くく・・・。」

 

ビシ・・・ビシビシィ!

 

バリアに少しずつヒビが入る。

 

キィィィィーーーーーーーン・・・

 

耳を劈くような音と共に、リエラを・・・いや、エスペリアを刺し貫いている“天理”を中心に、凄まじい衝撃派と共に大爆発が発生!

 

ズッガァァァァアアアアアーーーーーーーーーン!!!!!

 

キュドドドドドドドドォォォオオオオーーーーーーーーーン!!!!!

 

ゴォォォァァァァァアアアアアアアアーーーーーーー!!!!!

 

「エスペリアーーーー!!!」

だがそんな叫びも、轟音にかき消されてしまう。

 

「ぐ・・・う・・・あぁっ!」

爆発で五体が吹っ飛んだかと思うくらいの衝撃が体中に走る!

バリアが衝撃を和らげてくれたとはいえ、リエラの渾身の一撃は凄まじかった。

 

即死しなかったのが不思議なくらい、物凄い攻撃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りの惨状は酷かった。

皆、倒れている。

 

「ハア・・・ハア・・・く・・・。」

何とか意識を繋ぎとめようと、必死で立ち上がろうとする悠人。

 

ス・・・

 

そんな悠人に、1人の少女の影が落ちる。

 

悠人の顔が死の恐怖に歪む。

 

リエラが、すぐ傍で見下ろしていた。

その手には、“天理”を構えている。

 

(俺達は・・・負けた・・・のか・・・。佳織・・・悪い・・・。)

観念した悠人は、目を瞑って死を覚悟する。

諦めたくはないが、どうしようもないことくらい世の中にはある。

 

「弱いわね、本当に。これだけ大勢いるのに、私に傷1つ負わせられないなんて。

光陰はあなた達を買い被っていたけど、私としては幻滅したわね。」

 

止めを刺そうと振りかぶるリエラ。

 

「く・・・。」

だがその時、リエラの一言が皆の何かを突き動かした!

半ば、意識を失っている状態でゆっくりと立ち上がるスピリット達。

 

それを見てリエラは、心底うんざりしたような顔を作る。

 

「私達は・・・あなたが言うほど・・・弱くはありません!」

怒りに燃えた目でリエラを睨みすえるセリア。

 

「ま、そう思うのなら否定はしないけど。」

肩を竦めるリエラ。

 

「で、この期に及んで何する気?死んだ仲間の敵討ちかしら?」

 

「う・・・あぁぁぁぁあーーーー!!!」

セリアの掛け声と共に、皆一斉に斬りかかる!

 

まずは、正面から突っ込んで来たセリアを斬り捨てるリエラ。

 

「く・・・。」

セリアの体がゆっくりと倒れていく。

 

続いて、ヘリオン・・・シアー・・・ネリー・・・全てを容赦なく斬り捨てていく。

 

それでも、皆倒れない。

 

だがリエラは、焦りの1つも浮かべずに返す刀で次々に斬っていく。

 

「止めろ・・・。」

悠人がボソリと呟く。

だが、リエラは軽く聞き流す。

 

やがて立てなくなった者から倒れていく。

 

「止めろ・・・。」

震える声で、訴える悠人。

だがリエラには届かない。

 

最後にオルファとナナルゥが斬り捨てられた時、悠人の中の何かが弾けた。

 

もう止めろーーーーー!!!

ついに悠人の怒りが爆発!

 

だがリエラは、悠人などまるで眼中になし、と言わんばかりに“天理”をクルクルと回転させ始める。

 

かまいたちのような衝撃派を発生させて、スピリット達の五体をバラバラに裂く気だ!

 

うぉぉぉぉおおおおおおおーーーーー!!!!!

計り知れない憎悪が、悠人を支配する。

それが“求め”の限界以上の力を引き出す!

 

憎悪に駆られたまま、リエラに向かって突進する!

 

「っ!!?」

かまいたちを放ってから、悠人の攻撃を防ぐのは不可能と判断したリエラは、攻撃対象を悠人に変更して、“天理”で受け止めようと構える。

 

ゴォン!!!

 

重い音が辺りに響いて、その衝撃が周囲に発生する。

 

「く・・・ぐく・・・。」

悠人の憎悪によって、“求め”の力が増大していた。

 

リエラが歯を食い縛って、2人の力を互角に留めている。

 

「うぉぉぉぉおおおおおおーーーーー!!!」

“天理”と“求め”が重なっている部分を中心に、莫大な力が籠められた丸い球体が発生したかと思うと

それが勢い良く広がって、あっという間に2人を飲み込んで大爆発が再び発生!

 

ズドドドドドドォォォォオオオオオオーーーーーーーン!!!!!

 

 

 

光と土煙に遮られて何も見えない・・・。

 

 

 

だが、それも徐々に晴れていく・・・。

 

 

タ・・・タ・・・ドサッ・・・

 

悠人が2歩3歩と後退したかと思うと、地面に崩れるように倒れたっきり動かなくなる。

 

 

 

 

 

リエラはと言えば、衝撃に耐え切れずに吹っ飛ばされた所を光陰に抱きとめられる。

 

「く・・・。」

リエラがヨロヨロと立ち上がる。

血を袖で拭う。

 

ラキオス隊は、全員死んだように倒れたまま誰1人として動かない。

 

「ふぅ・・・。」

リエラが軽く息を吐くと、今度こそ終わらせようと“天理”を構える。

重傷を負っているリエラの、“天理”の切っ先の方向が定まらない。

 

と、それを遮る者がいた。

“因果”がリエラを遮っている。

 

リエラが光陰を睨みつける。

 

「これ以上、勝手なマネはしないでもらえるか、リエラ。」

 

「今が絶好の機会だと思うけど?」

 

「大将には、まだだと言われている。それに悠人とは、俺が戦いたいんだ。これ以上を望むなら、命令違反で大将に報告させてもらうぞ?」

 

「そうなったら、マロリガンから逃げるだけの話よ。・・・まあいいわ。

実を言うと、マロリガンが勝とうが負けようがどうでも良いのよね。マロリガンに勝ってもらわなければならない理由なんてないし。」

 

「じゃ、マロリガンに引き返すぞ?」

 

「ご勝手にどうぞ。でも、いいの?皆その辺に、転がってるのに?」

リエラが確認してくる。

 

「ああ・・・空虚も・・・いいだろう?四神剣は、俺が必ず破壊する。最後には、俺もおまえに捧げてやる。だから、この場は引いてくれ。」

 

「・・・・・・。」

空虚は何も答えない。

 

「死ぬなよ、悠人。這い上がって来い!」

そう言って、3人は消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、しばらくしてのこと・・・。

 

「悠途さん・・・。」

どこからともなく、時深の声が聞こえてくる。

だが、気絶している悠人には聞こえていない。

 

「悠人さん・・・しっかりしてください・・・悠人さん・・・。」

悠人達の体が、温かい光に包み込まれる。

 

「辛いとは思いますが・・・乗り越えてくださいね。私がいつも見守っていますから。その時が来るまで・・・。」

悠人は、初めて仲間を失った。

しかも2人も・・・。

 

たった1人のスピリットによって、壊滅的なダメージを受けたのだ。

悠人達にとって、今までで最大の試練となるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあてっと。いつどのタイミングで駿二と悠人達が、合間見えることになるのかしら?

先見で未来を見ちゃっても良いけど、それじゃ面白くないものね。」

 

『ラキオス勢にとって、最悪のタイミングに合わせるよう、運命を操ればもっと面白くなるのに・・・。』

 

「それもいいかもね・・・。さーて、どうしよっかなー。」

レイは楽しそうに呟く。

 

『まあ、どちらにしても・・・最悪のタイミングはたった今、過ぎ去ったように思いますけど・・・。』

 

「時間を巻き戻して、やり直すって手もあるわよ?」

レイは相変わらず楽しそうに、傍から見たら突拍子もないことを呟く。

 

『そうしたら、確実にレスティーナの理想は潰れるわねー。どうするのー?』

瀕死の悠人達を駿二が目の当たりにして、生かしておくわけがない。

 

悠人達が駿二に皆殺しにされれば、当然ラキオスの軍事力はなくなるわけで・・・。

 

「うーーん、迷うなー。どの未来も捨てがたいし・・・。」

レイはあくまで、遊び感覚である。

未来を遊び感覚で取捨選択するなど、神でも成しえないに違いない。

 

『ま、でもこれ以上はただ見守るだけに止めるんじゃなかったんですか?』

 

『固いこと気にしちゃ駄目だよ、流星。それに既に少しだけ手を加えちゃったじゃない。』

今、駿二はレイに無意識ごと操られるがままに、マロリガン方面を目指している。

そのことを言っているのだろう。

 

「ま、今のところは成り行きを見守りましょうか。」

 

『全てはあなたの思うがままに・・・。』

 

『右に同じ。』

時空が楽しそうに流星に同意する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう体の調子は良いのか?」

翌朝、光陰は一晩中治療を受けていたリエラを尋ねてきた。

 

「ええ。」

簡単に返事を返すと、ベッドから起き出した。

 

「すっかりいつも通りよ。」

 

「だから言ったろ、悠人達は侮れないって。調子に乗るからだ。・・・って言おうと思ったんだけどな。」

光陰が頭をかく。

 

「その調子じゃ、言えないじゃないか。」

冗談っぽく笑みを浮かべる光陰。

 

リエラがクスリと笑う。

 

「大将には、何て報告したの?」

 

「気になるのか?」

 

「それはそうよ。次第によっては、ここから逃げないと行けないし。」

 

「大丈夫だ。おまえに不利な報告はしてない。」

 

「そう。ま、そうじゃなかったら私がこんな所でのんびりしてるわけないか。」

 

「ま、最終的には悠人を殺さなかったわけだしな。今回は、目を瞑ってやる。」

 

「あら、あの後で天に召された可能性もあるんじゃない?」

 

「それはないな。悠人は、必ず這い上がってくるさ。必ずな。」

 

「ヤケに自信満々ね。何か根拠でもあるの?」

 

「ない。」

はっきりと、即答する光陰。

 

「だろうと思った。」

リエラは、苦笑する。

 

「なあ、リエラ?」

 

「何?」

 

「ラキオスは・・・憎いか?」

 

「さあ・・・別に憎くはないけど。」

そう言われても、光陰は大して驚かない。

リエラなら、そう答えるだろうと思ったからだ。

 

だが、深く突っ込んでみることにする。

 

彼女なら、そうしても大丈夫だろう。

 

「イースペリア崩壊の引き金を引いたのは、悠人達だ。」

 

「知ってるわよ、それくらい。大抵は、憎むんだろうけどね・・・。」

少し遠い目をするリエラ。

 

「私は特別・・・って言うのかな?故郷を滅ぼされても、それほど精神的ショックは受けなかったな。

あの当時の私にとっての大事な物って言ったら、アズマリアただ1人だったからね。

他には・・・強いて挙げるなら、イースペリアそのものかな。そんな感じ。」

 

光陰はいつもと違う雰囲気で、語り出すリエラを黙って見ている。

 

「私が失いたくない物は何?って聞かれたら、それくらいしか思い浮かばないわね。

でもあの日、それらを同時に失った。

普通は半狂乱になるなり、気が狂うなりするんだろうけど、私はあっという間に乗り越えられちゃった。」

 

「強いな・・・。」

何気なく口にする。

 

「そうかしら?あまり悲しめなかったし、涙も出なかった。強いんじゃない、ただ単に冷酷なだけよ。

“強い”のと“冷酷”なのを履き違えない方が良いんじゃない?私より、光陰の方がよほど強そうだけどね。」

 

そこで一旦区切る。

 

「アズマリアとイースペリアを失った今の私には、もう大事なものはない。

マロリガンだって、どうなろうがどうでも良い。ただ流されるままに戦ってるだけ。何が楽しくて生きてるんだろ・・・私・・・。」

 

天井を見上げるリエラ。

 

愚痴を零すのは、彼女には珍しい。

 

「ま、そう悲観することもないんじゃないのか。そのうち、何かあるさ。」

リエラは軽く肩を竦める。

 

「アズマリアとは、ただ単に幼馴染・・・ってだけじゃないんだろう?」

 

リエラが目を閉じる。

 

そして・・・

 

「良く分かったわね。さすがに、あなたは誤魔化せないか。でも、どうして分かったの?」

 

「あんたのような奴が、それほど大事な人間と言えば単なる幼馴染じゃ片付けられないと思ってな。」

 

「私に巣食っていた、心の闇を取り払ってくれた人がいたのよ。」

 

「それがアズマリアってわけか。ベタだな。」

 

「ま、そういうものじゃない。・・・ちょっと・・・昔話でもしましょうか。」

 

「良いのか?」

 

「まあ構わないわよ。アズマリアが死んだ今、私の過去を知ってる人はもういないわけだし・・・

1人くらいには知っておいてもらってもいいかなってね。」

 

「・・・悪いな、詮索する形になっちまって。」

リエラは、少し間をおいた。

 

「ここだけの話にしてよ?あなたは口が堅そうだから、特別よ?」

そう前置きして、リエラが語り出した内容は光陰にとって、とても想像もつかないような壮絶な過去だった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどな、その過去が今のあんたを作ったのか?」

 

「まあ・・・今の私の特性の土台くらいにはなったかもしれないわね。子供時代の環境ってのは、大事だから。

イースペリアに流れ着いた後で、私に戦いを教えてくれた訓練師の影響が更に、命を軽んじる冷酷な私を形成したとも言えるわね。」

 

「しかし・・・そんなタイプのスピリット・・・本当に存在するのか?ブラック、グリーン、ブルー、レッドの4種しか知らないが・・・。」

 

「おっと、その話は謹んでくれる?私はあくまでも、ブラックスピリットとして扱ってくれない?」

 

「ああ、悪い悪い。」

 

「ところで光陰、あの“求め”のユートに勝てる自信はあるのかしら?」

 

「さあな。」

光陰は目を瞑る。

 

理想を掲げる女王と、攫われた妹を助ける為に手を組んだ悠人の姿、更にはその理想に共感したスピリット達を思い浮かべる。

 

「ちぇっ、やっぱり俺じゃ主役にはなれないか・・・。クールな二枚目は、脇役って相場が決まってるからな。」

つい、口に出てしまう。

 

「あら、その物語で言ったら私は何かしら?故郷と親友を同時に失った悲劇のヒロイン・・・ってところ?」

リエラが楽しそうに、話に乗ってくる。

 

「それはないな。悠人達を主人公にするなら、その仲間を2人も殺したおまえは・・・差し詰め悪役ってところじゃないか?」

 

「あら、随分な言い草ね。そもそも戦いってこういうものでしょ?

ラキオスに侵略されてる国のスピリット達の視点で描いたら、ラキオスの方が悪役になるんじゃない?」

 

「そうだな。ようは誰を主役に描くかで、見方は幾らでも変わってくる。まあ物語に当てはめたら・・・の話だが・・・。」

 

「いずれは、この戦いも伝説とかになったりするのかしら?だったら、私もその伝説に登場したりしてね。

そうなった時の私の立場は、どうなっているのか少し興味が湧いてくるわね。」

 

「あんまり期待しない方いいぞ。どうせ悠人達が主役だ。その悠人達を阻む俺達は、出てきてもせいぜい悪役だな。」

 

「皮肉ね、していることは大して変わらないと思うんだけど・・・。」

あくまで、面白半分で言葉を続けるリエラ。

 

「ま、お互い殺し合いをしているからな。でもな、それに見合うだけの理想があって更に人がそれに共感した時、

彼らを視点にした物語や伝説ってのは誕生するものさ。」

 

「なるほど、確かに私には理想なんてものはないわね。人が私についてくるとも思わないし。」

 

「そういうことだ。悪役は大抵最後には、死ぬけどな。俺達はどうだろうな?」

光陰が冗談めかして言う。

 

「私は死ぬ気ないわよ。いざとなったら、仲間を見捨てて逃げることもできるし・・・。」

 

「あんたなら、何の躊躇もなくできそうだよな。」

 

「褒め言葉と受け取っておくわ。」

明るい笑顔を作るリエラ。

 

「ま、俺も簡単に死んでやるつもりはないさ。俺にはやらなきゃならないことがあるからな。」

 

「今日子って人のこと?私だったら、面倒だからさっさと見捨てるけどね。」

 

「あんたにとって今日子は何でもない存在だろうが、俺にとっては・・・。」

 

「今日子以上に大切な者は、どこの世界にも存在しない。でしょ?」

光陰が言わんとしていたセリフを、一字一句違えずに言うリエラ。

 

光陰が少し驚く。

 

リエラが肩を竦めて言う。

 

「ま、大体分かるわよ。あなたの口癖みたいだし・・・。」

光陰がますます驚く。

 

「そんなに何度も言った覚えはないけどな・・・。」

 

「ふふ、自分自身だから気付きにくいのかもね。今日子の話題になると、そのセリフが7割型出てくるわよ?」

 

「・・・参ったな・・・。」

誰かに揚げ足を取られたのは、これが初めてかもしれない。

 

「ま、好きにやれば?私には関係ないし・・・。あ、もちろん私の敵に回れば遠慮はしないつもりだけど・・・。」

 

「そのセリフ・・・そっくりそのまま返させてもらう。何をしようが、口出しするつもりはないが、

俺の邪魔をしようと言うならその時は容赦はしない。今日子のためにも。」

 

「私は基本的に冷たいのよね。あなた達がどうなろうがどうでも良いのよ。

逆に言えば、四神剣や親友さん達との問題に首を突っ込む理由もないってこと。

私の干渉は、当てにしなくて結構よ。ま、戦場で再びバッタリ・・・なんてことになったら、手にかけるかもしれないけど、

あなたの目的は彼らの死なのだから別に構わないでしょ?」

 

「まあ・・・な。だが、悠人とは俺が決着をつける。邪魔はしないでもらえるか?」

 

「言ったでしょ?私は冷たいって。そんなこと、私の知ったことじゃないわね。

早い物勝ちって形になるのかしら?まあ、彼らの命に興味はないけどね。」

 

「何を言っても無駄そうだな。あんたが悠人と出会わないよう、部隊を編成するしかないか。」

 

「好きにしてくれて構わないわよ?別に彼らと戦場で出会おうが、出会うまいがどうでもいいから。」

 

「あんた・・・その性格直さないと、友達できないぞ?」

 

「余計なお世話、とでも言っておきましょうか。」

 

光陰が目を閉じた。

 

(悠人・・・死ぬなよ・・・。)

 

心の中で、砂漠で致命傷を負ったであろう親友を案ずる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒミカ・レッドスピリット、エスペリア・グリーンスピリットの両名が戦死しました・・・。」

悠人は、レスティーナに力なくそう報告した。

 

彼女達がもうこの世にいないなんて、信じられなかった。

今も振り返ったら、すぐそこに2人がいそうだ。

 

他のスピリット達も元気がない。

 

「そうですか・・・。」

それでもレスティーナは、表情を崩さない。

 

「求めのユート。」

 

「はい。」

 

「これ以上の死傷者は許しません。各々、今回の戦いの反省点を踏まえ、わが国を勝利へと導いてください!

私達は負けるわけにはいかないのですから。」

 

レムリアだったら、もっと気の利いたことを言えたかもしれないが、一国の女王として面会しているのだ。

友達として馴れ合う関係ではない。

 

「分かっています。」

 

(そうだ・・・負けるわけにはいかないんだ。佳織のためにも!)

 

 

 

どういう成り行きがあったのかは、分からない。

だが気がついたら、ラキオスの第一詰め所に運ばれていたのだ。

 

どういう経緯があったのか、誰も知らないらしい。

 

 

謎だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠人達は謁見の間で解散すると、第一詰め所へと帰った。

 

屋敷中を捜し回ってみたが、いつもいるはずのエスペリアは見つからなかった。

 

「くそ・・・。」

自分が殺してきたスピリット達と親しい関係にあった者も、同じ気持ちを味わったのだろうか。

そんな自分が、こんなことを思ってはいけないのかもしれないが、寂しいものは寂しいし辛かった・・・。

 

リエラに対する憎しみがメラメラと燃え上がってくる。

戦いなのだから仕方ない、の一言で片付けることはできなかった。

 

「くそおおおぉぉぉおおおおーーーーー!!!」

 

ダアンッ!!!

 

机に思いっきり拳を叩きつけた!

 

 

 

 

 

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あとがき

 

 

 

 

 

 

長くなるのでここの部分はもっと、チャッチャッと片付けてしまいたかったのですが、誰がどう見ても物語として疎かにできない所ですよね?

 

つまり長引いてしまいました・・・。

できるだけ早く駿二を登場させたかったのですが・・・すみません・・・自分の力不足です。

 

リエラの過去を臭わせるシーンを描きましたが、実を言うと出そうかどうしようか随分悩みました。

 

いろいろとこちらの都合というものがありまして、この伏線は消してしまおうかとも思ったんですが、より物語を面白くする為にも絶対出した方が良い、という結論に落ち着きまして思い切って出してみました。

 

どうでしょうか?

リエラというキャラクター、書いてるうちに何となく人気の出なさそうな性格に仕上がってしまいましたが、これで彼女に少しでも好感が持てればと思います。

 

彼女の性格は過去が影響してるのか?という問題ですが、本人も言っていた通りそれだけが全てではありません。

元々の性格が現在と近かったのが、過去のとある事件をきっかけに、それに拍車をかけたということです(相変わらず説明が下手だ・・・)。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

 

 

 

本当のこと言うと、ホークネスが書きたかったアセリア関係の小説はもう1つだけあったんです。

 

“出雲”という組織が地球にあるらしいです。

そこは永遠神剣に対抗する力を得るため、異能力者達を集めているとか何とか・・・。

 

この“異能力者”達を使って小説を描いたら、それはそれで面白いのではないかと・・・。

ですが、当時思い浮かんだのはたったそれだけです。

 

“ミューギィの夢物語”“神と名がつく者達”以上に展開や設定が纏まらなく(というより、全くと言って良いほど何も思い浮かばなかったため)、

さっさと廃案にしてしまいました。

 

ですが忘れかけていた頃に、ふと思い出したしてしまいました。

そう言えばこんな小説も考えたな、と。

その時になって、

『ファンタズマゴリアの世界で、異能力者達が永遠神剣、つまりスピリット達と異例の戦いを繰り広げたら

今までにない小説が出来上がるのでは!?』と。

 

時代設定?

当然、悠人達がファンタズマゴリアに召喚された辺りです。

でなければ面白くありませんから。

 

 

 

 

この場を借りて、少し紹介したいと思います。

登場人物や諸々の設定、序盤のストーリーなんかをちょっと・・・。

 

 

 

注意1・作者の気力が持たなかったり、他の小説でネタを使い切ってしまえば小説自体、ここのサイトに出ない可能性もあります。

予めご了承ください。

 

注意2・設定なんかは、当然変更される可能性もあります。

そういうのが気に入らない方も、ここから先は見ないでください。

 

注意3・この小説が登場するのは、他の3作品がひとまず落ち着いてから。

つまり、随分先のことです。

作者の気がコロッと変われば、もっと早く登場する可能性もありますが・・・。

 

 

 

それでは・・・。

 

 

 

 

 

 

アザリー・クリエイン

 

黄金色の3対の雄大な翼を持った、金翼人と呼ばれる一族最後の1人。

オレンジがかった赤色の長い髪に翠色の瞳を持った、とびきりの美少女。

様々な世界あれど、完全に滅亡してしまった金翼人最後の1人ということで、

叢雲率いる出雲という組織に厳重に保護されている。

彼女が心を開いているのは、自らが想いを寄せているミストただ1人という

究極の人見知り少女。知らない人には、コミュニケーションをとることすらしない。

普段は大人しく控えめな印象を与えがちだが、

ミストの前でのみ元来の明るい自分を出せる。

優しげな外見をしているものの、およそ優しさとはかけ離れた性格をしており、

ミスト以外の人には基本的に冷酷非情。

 

 

 

ミスト・アイギス

 

見た目は普通の人間と変わらないが、超人的な肉体を持っている特殊な一族の生まれ。

ミストは知らないことだが(あまりのショックに、その時の記憶を失ったため)、

その一族も金翼人に滅ぼされてしまい今はない。

その時に不老の魔法をかけられてしまい、以来年を取っていない。

見た目は17歳前後。金髪深紅眼の少年。

一族が滅ぼされてからは放浪の旅を続け、出雲に流れ着いたという苦労人。

そこでアザリーと出会う。

 

 

 

夏・白鳥(しらとり)

 

言わずと知れた夏小鳥の2つ年上の姉。悠人の先輩でもある。

妹の小鳥と違い、あまりしゃべらない少し無口な性格。

妹と同じように悠人に惚れ込んでいる。

無口なくせして人を自分のペースに持ち込むのが得意で、

アザリーとミストをファンタズマゴリアへと巻き込んだ張本人。

 

 

 

ルナー・ホワイトスピリット

 

サルドバルトのスピリット隊を纏めている。サルドバルト最強のスピリット。

輝かんばかりの純白の美しい長髪に、赤紫色の瞳を持っている。

普段はクールで相当のキレ者。冷静沈着に戦況を分析する彼女を尊敬する者も多い。

だが私的な場では人が変わって、のんびりやでドジな一面も・・・。

料理が破壊的に下手で、料理オンチはルナーの前ではタブーとなっている。

戦闘中に私情は挟まず、完璧主義な所がある。

ファンタズマゴリアでミストと最初に出会ったスピリットで、

ミストに一目惚れしてしまっている。

ミストの方もルナーが気になるらしく、その為アザリーとの関係は最悪。

 

 

 

永遠神剣第6位・裁き      契約者:ルナー・ホワイトスピリット

 

形状は双剣で人格は男性。本能の方が強い。

電気を操れる能力があり、空虚に比べると威力は劣るものの即効性が非常に高く、

大変使い勝手の良い神剣。

 

 

 

永遠神剣第4位・断罪      契約者:ルナー・ホワイトスピリット

 

形状は裁きと同じく双剣で人格は女性。

非常に攻撃に優れた神剣で、攻撃能力は第4位の神剣の中でも最強クラス。

癒しの力も秘めており、守りも決して不得手というわけではない万能型。

 

 

 

サナリア・ブラックスピリット

 

イースペリア最強のスピリットと謳われたルナーのライバルで、何度も戦ったことがある。

青がかった黒髪の少女でそのため、時たまブルースピリットに間違えられることも・・・。

正義感が強く、困ってる人を見ると放っておけないお人好しな性格。

ルナーと違い、料理も上手い。

新しい料理を生み出すのが、趣味。

 

 

 

永遠神剣第4位・窮地      契約者:サナリア・ブラックスピリット

 

人格は女性。形状は、珍しい双子剣。

片方が壊されてももう片方が残されている限り、修復が可能。

どんな窮地に追い込まれても決して心を乱さない、諦めないことが契約者にも求められる。

窮地に追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮する神剣。

サナリアとの同調率はかなりのもので、それだけ力を発揮できる。

 

 

 

それでは、キャラ紹介の最後に重要かつ大物悪役の設定をば・・・。

 

 

ルーグ

 

       このお話の大物悪役になる予定。アセリアゲーム本編でも暗躍?している、

とあるキャラの双子の兄弟。

秘密の地下組織を密かに造り出して、そこで怪しい実験を繰り返している。

何をしているのかは、ネタバレにつき伏せさて頂きます。

 

 

 

夏白鳥のせいで、ファンタズマゴリアに召喚?されてしまったアザリーとミストの2人は、そこでルナーに出会い、サルドバルトへ・・・。

ゲーム本編では、サルドバルトはラキオスに早々に敗れ去りますが、作者の力が及べば後々まで生き残らせて、オリジナルのお話を組み立てたいと思っています。

 

お話の中身は、“虹色の輝き”とはまたタイプの違う、シリアス(恐怖関連)になる予定。

 

 

まあ、まだ設定段階ですのでどうなるかは分かりませんが、今の所の設定はこんな感じです。

 

是非、期待していてください!