初めに
*注* この番外編では、新キャラが2名ほど出てきますが、そのうちの1人はちょっと他では見られない、相当独特な性格をしております。
人によっては、生理的に受け付けない方も出てくるかもしれません。
そう言う場合は落ち着かせて、心に余裕を持たせてから広い気持ちで読まれるのがベストかと・・・。
まあ、サアーッとでも良いので是非目を通してやってください(笑)。
因みに“その1”となっていますが、これっきりの可能性も結構あります。予めご了承ください。
サーギオスのスピリット達その1
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――マロリガン戦が開幕する少し前のお話――
「きゃうっ!」
「てっ!」
駿二はサーギオス城の廊下で、出会い頭に誰かと衝突してよろける。
「いったーーー。」
その女の子は、尻餅をついてぶつけた所を摩っている。
長い黒髪が特徴で、2つに分けて下げている。
ラキオスのスピリット、ヘリオンを知っている者が見ればその容姿に驚くだろう。
ヘリオンを丁度、グラマーな大人の姿にしたような女性だった。
「何だ、おまえは?」
ギロッと睨む駿二。
「す、すみませんすみません。今度からは気を付けますからー。」
頭をペコペコさせて謝る女性。
「ふん・・・。」
駿二は鋭い視線で、目の前の女性を射抜くとスタスタと去って行ってしまう。
「あ・・・。」
女性は思わず呼び止めかけて止める。
歩き去っていく駿二をボーッと眺める女性。
「何やってんの、サリオン?」
「へっ!あっ!いえ!何でもないですよー!」
サリオンと呼ばれたその女性は突如、背後から声をかけられて慌てる。
見ると、レッドスピリットであろう女の人がサリオン・ブラックスピリットを見ている。
「あの人がどうかしたの?」
「え!?ど、どういうことですか!?」
「何か、出会い頭に衝突してから呆けたように眺めてたから。」
「って、いつから見てたんですかー!?」
「最初から。大体、さっきからずっと一緒にいたんだから当然でしょ?」
「はうっ!」
「全く、早くウルカ隊長の所に行くわよ?」
「あの邪悪な雰囲気の人、誰なんでしょうね?」
「知らないの?あの人が、最近フラリと現れた新しいエトランジェ様よ?」
「え?じゃあ、あの人が何とかのシュンジ様ですか?」
「千夜でしょ、千夜。頼むから何とかのシュンジ様なんて格好悪い発言、当の本人の前で言わないでよね?」
「い、言いませんよ。幾ら私でも・・・。」
「さ、早く隊長の所に・・・。」
「ちょっと、1人で行っててください!」
「は?」
「私、ちょっと・・・用事が・・・。」
「へーーー、ほーーー、さては一目惚れですなーー?」
レッドスピリットがニヤニヤ笑ってくる。
「い、いけませんか!?あの邪悪な感じが堪らなくいいんです!
邪悪で、冷酷そうで、えーとえーと・・・と、とにかく!そんな感じがいいんですよ!!」
「ま、あんたにはピッタリかもね。」
「でしょでしょ?ピッタリでしょ?優しい人だとか、正義だとか、そう言うのは個人的に合いませんから。
私としては、むしろ全く逆な人がいいんです!」
サリオンの、そのキラキラと澄んだ瞳が、少しずつ変わってくる。
「どんな時にも、クールで無慈悲に全てを斬り捨てるような人♪彼の通り道には、幾千幾万もの屍が転がっているであろう・・・みたいな♪
その真逆の博愛主義者は、個人的に嫌悪感を覚えてしまいますね。
甘々な性格で、ありもしない理想を掲げて。そう言うのを見ると殺してやりたくなってきます。」
頬の横で両手を合わせるサリオン。
その目は、ちょっとヤバイ。
あっちの世界に逝っている。
「あんたって、本当その性格直した方がいいわよ?」
「リリィだって、料理は毒でも入ってるんじゃないかと思う程強烈に下手だったり、その料理で何人もの数え切れない程の犠牲者を出したり、
大事な作戦会議の時に1人だけあくびをしてつまみ出されて恥をかいたり、寝言が激しかったり・・・。」
リリィ・レッドスピリットの赤っ恥話を延々語り続けるサリオン。
既にサリオンにスイッチが入ってしまっている。
ゴンッ!!
拳をサリオンの脳天に叩き込むリリィ。
「きゃうううーー!!」
一度、スイッチが入ったらこうでもしないと元に戻らない。
赤っ恥話を蒸し返された恨みも、タップリと込められていたりする。
「ヒィィーーーン、酷いですー、痛いですよーー。」
涙眼でリリィに訴える。
「煩い煩い!行くったら、行くのよ!」
リリィは、ご機嫌斜めな様子。
「わわ、私は行きませんよー。それに・・・。」
サリオンが、人差し指をツンツンさせる。
「私は・・・戦場に出ませんから・・・。」
「そうだったわね、来ても意味ないか。本当あんたが神剣に心を呑まれるよう、上の連中が取り計らわないのが不思議で仕方ないよ。」
「呑まれない方が、都合が良いってこともあるのかもしれませんよ?」
サリオンが意味深なセリフを言ってくるも、リリィは首を傾げる。
「はあ?」
「あ、いえ。そう言う可能性の話です。では、戦場恐怖症の私の代わりにがんばってきてくださいねー。」
「なーにが、戦場恐怖症よ。大袈裟なんだから。ただ単に、臆病なだけの癖に・・・。
スピリットは戦いの道具なのよ?戦場に出ないスピリットは、差し詰めゴミ以下の存在のようなもの。
怖がってないで、戦場に出た方が良いと思うんだけどね。」
「どうせ、私は役立たずですからー。」
手を振ってリリィを送り出すサリオン。
その目は、邪悪な色に染まっている。
(ふふふ、精々命を落とさないようにしてくださいよ?・・・さあーってっと、あのお方にもう一度お会いしに行かなくては・・・。)
ルンルン気分でスキップしながら、駿二を捜し始めるサリオン。
(あ、いたいた。いましたよ♪)
瞬と何か軽く話しをしていたかと思うと、こちらに向かって歩いてくる。
(わわ、いきなり来ちゃいましたよ。どうしましょう!)
柱の影に隠れて、1人慌てるサリオン。
「ん、おまえは?」
駿二が冷たい眼で、柱の影でオドオドしているサリオンを発見する。
「あ、わわ、私は・・・私は・・・私は・・・サリオンです!サリオン・ブラックスピリット!
この神剣は、永遠神剣第4位・限界です!なな、何卒何卒よろしくお願いしますぅ。」
すっかり動揺してしまっていて、上手く舌が回っていない。
それにしても、スピリットで第4位とは・・・。
駿二や瞬よりも上である。
何事にも例外はある、ということだろうか?
「第4位?」
「あ、はい!何故か他のスピリットよりも位が高いんですよ。駿二様よりも上になってしまいますが、でも安心してください!
私は、戦場に出たことはありませんから!戦いに関しては、駿二様の方が間違いなく上です!妬まないでください!」
「ふん、そんなことで妬むか・・・。」
そう言い捨てるとスタスタと1人で歩き出してしまう。
「あ、わわ、まま、待ってくださいよー。」
「何でついてくるんだ?俺に用でもあるのか?」
「用って程のことでもないんですけど・・・そうだ!私が色々とこの国について案内してあげましょうか?
駿二様は、まだまだ来たばかりなのですよね?」
「いらん。余計なことはしなくていい。」
「そんなこと言わないでー。」
(シュン様もいいですけど、私としてはやっぱりシュンジ様の方に惹かれてしまいますねー。
残酷そうな雰囲気も持ち合わせてるのが、私の好みど真ん中ですー。)
「あの、ところでシュンジ様。何度か戦場にお出になられたことがあるんですよねー。その時の美談話でも聞かせてください。是非是非♪」
「おまえに、いちいち聞かせてやるような話はない。」
「えー、つれないんですねー。」
「もう、いいからどっか行け。」
「そんなあーーーー。」
レイは、面白くなさそうにその様子を眺める。
「全く、どうしてこうこの世界に来た途端、言い寄ってくる女が後から後から湧いてくるのかしら?」
『世の中、そうそう上手く行くものじゃないみたいね。どうするの?』
「・・・まあ、今の駿二が女に振り向くはずないか・・・。」
『様子見ですか?』
「私の描いたシナリオももう時期、実を結ぶはずよ。後もう少し・・・。焦る必要はないわ。」
『じゃあ、無理に彼女達を戦い合わせる必要なんかなかったんじゃないの?』
「まあ、もうここまでやっちゃったし。それに・・・。」
『それに?』
「面白いじゃない?リエラ達が、戦場で駿二と鉢合わせするその瞬間を想像して御覧なさいよ?この目で直に見てみたくならない?」
『・・・ま、余興くらいにはなりそうね。』
『全く、考えることがあくどいんですから。』
流星もクスクス笑う。
「そういう流星も見たいという欲求を抑え切れてないみたいだけど?」
『う・・・。』
流星が言葉に詰まる。
「ま、そう言うこと。サリオンとかいうスピリットには・・・そうね・・・どうせならこの娘にも、面白いシチュエーションを用意しておきましょうか・・・。」
『どんな?』
「それは、見てのお楽しみ・・・。」
サリオンは、駿二を適当な食堂へと連れ込んだ。
因みにスピリットの立ち入りは禁じられているのだが、サリオンは軽く無視する。
おいおい・・・。
「あ、何か美味しそうな料理が食卓に並べられていますよ?丁度お昼の時間なんですねー。一緒に食べません?」
「ここは、貴族どもの食堂だが?」
「そんな堅苦しいこと気にしない、気にしない。ささ、折角だから食べちゃいましょうよ。誰も見てませんし・・・。」
そう言って、サリオンは貴族様の料理を手当たり次第にがっつき始める。
復讐以外興味を失った今の駿二も、さすがにこの光景には唖然とする。
「ほおしはんへすかー(どうしたんですかー)?はへはひょうひょー(食べましょうよー)?」
「・・・後で殺されても知らんぞ?」
「はひ(はい)?」
サリオンは、口の中をモグモグ言わせながら、そこら辺の見るからに高級そうな肉を駿二の口に突っ込んでくる。
「むぐっ!?」
「むぐむぐ、ゴックン。」
サリオンはようやく口の中を片付ける。
「大丈夫ですよー。バレなきゃいいんですから。」
「いや、少なくとも何者かに食い荒らされたことだけはバレるな。」
口の中を落ち着けてから、口を開く駿二。
「私が食べたって分かりっこないですって。」
そう言いながら、今度は見るからに高価な酒瓶に手を伸ばしてガブ飲みを始める。
「酔っ払うなよ?」
(・・・って、何で俺はこんな愚かなスピリットに付き合っているんだ?くだらない。)
そう言って、食堂からさっさと立ち去ろうとする。
「待ってくださいよー。こんなに美味しいご馳走。そうそう食べられませんよ?
まずは酒でも飲んで、細かいことを忘れましょう、そうしましょう♪」
「待て、俺は未成年・・・ぶぐっ!」
次の瞬間、酒瓶を口に突っ込まれて、今まで口にしたこともない酒を体の中に大量に放り込まれていく。
「がっ、むぐっ・・・。」
酔っ払ってきたのか、段々と顔が赤くなっていく。
「あ、頭が・・・クラクラしてきた。」
サリオンの目が邪悪な色に光る。
「ふふふ、段々正気を失ってきましたねー。ささ、シュンジ様が完全に酔っ払うまで後何分かかるでしょう♪」
楽しそうに、酔っ払っていく駿二を眺める。
「い、いかん・・・このままでは・・・。」
い・・・意識が・・・。
「ふんふふふーん、ふーん。」
コックであろう男が、食堂へと向かって歩いている。
「ん、なんか食堂の方が騒がしいな?貴族達がドンチャンやってんのか?
いやいや、礼儀作法に煩い貴族に限ってそんなこと・・・。
いや、そもそもまだお食事の時間だということを報告していないのだから、来るわけ・・・。空耳だろうか?」
そう言って、食堂に顔を出したそのコックは目の前の悲惨?な光景に我が目を疑う。
「やれ踊れー、そら踊れー。そらそらそらそらーーーーー♪」
真っ赤な顔をして、盛大に酔っ払った1人の男が両手に酒瓶を持って酒を床にばら撒いている。
「いやーーん、シュンジ様ー。いい調子ですーー。体力付けには、この特別製お肉をーー。」
そう言って黒髪の女性が男の口に、貴族にしか口にすることを許されないはずの高級お肉を放り込む。
男が肉をがっつき始める。
まだ口に半分と入れていない状態で、酒瓶を口にあてがってガブ飲みし始める。
お食事のマナーを欠片も知らない、まさに田舎者丸出しの下品極まりない食べ方である。
酒が口にまともに入らずに、半分以上は喉を伝って、床に零れ落ちている。
「酒がたんねーろーーー(足んねーぞ)!!?もっれろーーーい(持って来ーーーい)!!」
「はいはーーい、ただ今ーー。」
女性が邪悪な笑みを浮かべている。
「もっともっと酔っ払って、良いひと時をお過ごしくださいませー。」
「いいろいいろーー(いいぞいいぞーー)、ジャンジャンもっれろーーい(持って来 ーーい)!!」
「はーーい、シュンジ様ーーー!!」
「ほらーー、貴様も踊れやーー!!宴会じゃ宴会じゃーーー!!」
駿二が、酒瓶を両手に持って振り回しながらサリオンを追っかけ始める。
「きゃーーー、きゃーーー!」
サリオンがドタバタと逃げ始める。
鬼ごっこが始まる。
因みにサリオンはちっとも酔っ払っていない。
自分だけは、酔わないように上手に酒を飲んでいるのだ。
せこい奴である。
「まれまれーーー(待て待てーーー)!!
「シュンジ様 ーーー、私はこっこでっすよーーー♪」
サリオン、楽しそうである。
「食らえーーー、酒瓶攻撃ーーー!!!アルコールオーラフォトンショット!!うりゃうりゃうりゃーーーー!!!」
ドピュドピュッ!
手にしている酒瓶を交互に突き出して、中の酒をサリオンに向かって飛ばし始める。
「きゃーーー、当りっませっんよーーーシュンジ様ーーー!!」
それをヒョヒョイッと身軽にかわしていく。
「こしょくなーーー(姑息なーーー)!!」
因みにコックさんは、未だに放心状態を貫いている。
駿二がフラフラと目を回し始めた。
その様子を見たサリオンは、酒瓶片手に駿二に近づくとそれをバシャバシャッと駿二に振り掛ける。
「やっららーーー(やったなーーー)!?」
今度は駿二がサリオンの腕を掴むと、逆にサリオンに頭から酒をぶっ掛けてやる。
「きゃうっ!やりましたねー、シュンジ様ーーー!」
今度はサリオンが追っかける番だった。
「私の番ですー!!」
サリオンが酒瓶を両手に持って、今度は逆に彼女が中の酒を駿二目掛けて飛ばし始める。
すっかり酔っ払っている駿二は、かわせない。
見事に全弾まとも食らってしまう。
「うぅーーーー、おこっりゃりょーーーー(怒ったぞーーーー)!!」
男が空になった酒瓶を放り捨てて、新たな酒瓶に手を伸ばすとテーブルの上に飛び乗る。
ガッシャアアーーーーン!!!
皿や料理が飛び散る。
「おっろ(おっと)!?」
男が派手にスッ転んだ。
ガシャガシャーーーーン!!!
料理が飛び散る。
顔を上げた駿二の顔面には、料理が張り付いていた。
「なんら、ころれーるるは(なんだ、このテーブルは)?ふらけやがっれ(ふざけやがって)!!」
駿二は、立ち上がると思いっきり机を踏みつけた!
その瞬間!!
ドガシャアアーーーーン!!!
テーブルが見事にひっくり返って、全ての料理がぶちまけられる!
駿二も床に叩きつけられて、そのまま失神。
「はぅぅぅーー、シュンジ様ー。大丈夫ですかーー?」
サリオンが失神した駿二に慌てて駆け寄る。
「あうーー、ちょっと悲惨すぎますねー。誰かに見つからないうちに撤退しなければー。」
「もう、見つかっている・・・。」
サリオンの前に仁王立ちしている1人のコック。
その顔は、まさにブチギレている。
「貴様らーーーー!!!」
「きゃうっ!まま、待ってくださいー。わわ、私は悪くないんです。」
「何が、私は悪くないんです、だ。さっきからずっと見ていたぞ!?
おまえスピリットだな?知っているぞ?サリオンとかいう戦場に出ない、クズスピリットだろ?」
「く、クズ・・・。」
「そう、クズだ!戦場に出ないばかりか、貴族達にお出しする大事な料理を台無しにしやがって!!」
サリオンの目が邪悪な色に変わる。
「でも、コックさん。私知ってますよー?あなたがこっそり悪戯でデザートに、辛いものをタップリと投入して、
そのデザートが自分に回ってきて酷い目に遭ったこととか、
○○歳になるまで毎日のようにオネショをしていたこととか、コックになるのに10回も試験に落ちたこととか・・・。」
延々コックの赤っ恥話を繰り広げるサリオン。
それにしても、こんな情報どこで仕入れるのだろうか?
それは企業秘密ということで・・・。
「あなたの恥ずかしい思い出の数々を、皆さんに公表して差し上げましょうか?隠し事は良くないですしー。」
邪悪な笑みを浮かべる。
「ま、待て!分かった、悪かった!あまりでかい声で言わないでくれ!!」
コックがサリオンに泣きつく。
「えーー、どうしましょっかーーー。」
意地悪するサリオン。
今まで、こうして数多くの人間やスピリット達を言いくるめてきた、差し詰めサリオンワールドである。
「こ、今回のことは見なかったことにしてやるから、どうかバラさないでくれ!!頼む!!」
サリオンにすがりつくコック。
「もう、しょうがないなー。今回だけですよー?」
「くそ・・・。」
「何か言いましたー?」
「い、いや何でもない!!」
コックが食堂から逃げていく。
(なるほど、サリオンだけは怒らせてはならないと言う暗黙のルールがあったが、こういうことだったのか!?恐ろしや恐ろしや。)
こうしてこの事件?は、人知れず幕を閉じた。
当然この後この事件の責任を取らせらたのは、あのコックである。
哀れ・・・。
因みに駿二は駿二で、極度の二日酔いに苛まれたという・・・。
――そして時が流れる――
「行かれるんですね、シュンジ様。」
サリオンがシュンとしている。
「何だ、またおまえか。」
駿二は、今日マロリガンへと遠征するのだ。
独断である。
それを悟ったサリオンは、こうして城門で待っていたのだ。
「私は行きませんけど、お気をつけてくださいね。」
「俺が死ぬか。復讐を終えるまで俺は死なん。」
「シュンジ様。憎い奴らに遠慮なんかいりませんよ!?
ズバズバーっと、屍に変えてあげてください。それがあるべきシュンジ様のお姿ですから。」
サリオンの目が邪悪に染まる。
「変な奴だ・・・。」
サリオンの目が邪悪な雰囲気を帯びていく。
「ふふふ、そうですか?まあ、良く言われますよ。シュンジ様が派手に戦うお姿を想像しながら、お帰りをお待ちすることにします。」
「ラキオスは、必ずこの手で討ち滅ぼしてみせる。どのような手段を用いてでもな。」
駿二の眼が憎悪に染まっていく。
それをウットリしながら眺めるサリオン。
「さすがはシュンジ様です。私が見込んだだけあります。もっともっと邪悪に染まっちゃってきてくださいね。ふふふふ。」
「・・・やはりおまえは飛び抜けて変わっている。」
「いいじゃないですか、私のことなんて。それより、シュンジ様もお命だけは落とさぬよう・・・。」
「当然だ。」
そう言うと、駿二はその場を立ち去っていく。
「どうか、お気をつけて・・・。」
ある種、残酷さが滲み出た笑顔で駿二を見送るサリオン。
(変な女に関わったな。まあいい・・・。そう言えば、名前何て言ったか?・・・ま、どうでもいいか・・・。)
何気に酷い駿二であった・・・。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
サリオン・ブラックスピリット
ヘリオンをそのまま大人にしたかのようなスピリット。長い黒髪を二つに分けて編んでいる。
だが、性格はヘリオンよりも子供っぽい所がある。
普段は少しオドオドしているように捉えがちだが、ちょっと・・・というかかなり毒のある性格をしており、
一度スイッチが入ると果てしなく、邪悪に染まっていく。オドオドした自分を演じてはいるが、ふとした拍子に本来の自分が滲み出てしまう。
戦場に出ないのは、自分の命が何より可愛いから。サーギオスや仲間の為に命を懸けるのがバカらしいと感じているため。ただそれだけ。
それでもこのスピリットがサーギオスで、のほほんと暮らしていけるのにはやはりちょっとした理由がある。
どこから仕入れたのか人の秘密を上から下まで知り尽くしており、それで相手を追い詰めるのが彼女の武器であり楽しみでもある。
レイやリエラと違い、こちらは今のワイルドでダークな方の駿二に一目惚れしている。
永遠神剣第4位・限界 サリオン・ブラックスピリット
スピリットにしては、高位である。この神剣の特性については、現時点では伏せさせて頂きます。因みに日本刀のような形をしている。
リリィ・レッドスピリット
リリィと同じくサーギオス所属のスピリット。ウルカやソーマの直属の部下。
サリオンの性格を知り尽くしており、一緒にいることも少なくない。
炎を神剣に纏わせて戦う魔法剣士タイプで、レッドスピリットには珍しく前衛タイプ。
そのためソーマのお気に入りの1人で、重宝されている。
今回初登場のサリオンですが、こいつは作者が突然思い立った奴です。
性格付けをしているうちに気に入ってしまい、このまま眠らせてしまうのは勿体無いと思い、こういう形で書いてみました。
如何だったでしょうか?
今までにないタイプだと思うので、サリオンに対する反応が気になる所です。
肯定的な意見、否定的な意見。
是非、感想をお寄せください。
善悪で簡単に区分してしまう見方もありますが、善悪で判断するのだとするとサリオンは、悪に属します(笑)。
悪役のスピリットっていないので、結構良いとホークネスは思っておりますが・・・。
どうでしょう?