イースペリアの最期

 

 

 

 

 

 

 

 

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駿二の希望もあり、勝負は深夜に行われることになった。

 

曇り空で真っ暗な中、静かに試合の火蓋は切って落とされた。

 

「先手必勝!そりゃ!」

千夜を投げ放つ。レイは眉1つ動かさずに、飛んでくる短剣を静かに見ている。

 

「余裕かましてられんのも今のうちだ!夜の踊る舞台劇!

何もない空間から突然、1本の金色の直線を引っ張ったかのような光線が出現して、レイに向かって放たれる。

それをかわす。

 

 

瞬時にレイの四方八方から光線が次々と出現して、そのまま彼女に向かって一斉に放たれる。

まともに食らえば、蜂の巣だ。

 

駿二もあれから訓練を重ねて来たのだ。

ちょっとやそっとの相手には負ける気はしない。

 

だが、レイは攻撃のほんの僅かな死角に潜り込んで、前へ出る。

 

「あまいな。一回かわして終わりじゃないぜ!」

駿二は更なる追撃を仕掛ける。

 

短剣をレイの死角に潜り込ませて、レイを攻撃する。

 

「じわじわとゆっくり相手を追い詰めていく。それが彼の戦い方よ。さあ、レイはどうするのかしら?」

サレアが戦況を見守る。

他のスピリット達もエトランジェ同士の勝負を観戦している。

 

レイは武器も出現させずに流れるような動きで、何の前触れもなく突然出現していく光線を涼しい顔でかわし続けていく。

 

流れるような動きだ。攻撃の1つ1つを見て、コンマ一秒単位で戦況を分析し、全ての動きを捉えているかのようだ。

 

スピリット達もレイの動きに思わず見入ってしまっている。

 

『何やってるの?レイ?前に出て反撃しないの?』

 

(もう少しこのままで様子を見たいのよ。この後、彼がどう出るのか・・・。)

会話までかわす余裕がレイにはある。

 

レイの読んだ通り、一向に変化の兆しが見えないこの状況に痺れをきらした駿二は、攻撃を激化させることにする。

 

光線弾!

短剣から光線弾を作り出し、四方八方から発射されてレイに襲い掛かる。

レイはそれを流れるようにかわして、爆発の衝撃からも絶妙に届かない位置へと移動する。

 

駿二は攻撃の手を緩めない。光線弾を連続で発射させてどんどん追撃を仕掛ける。

 

レイは、まるで全てを読んでいるかのように、しなやかにかわし続ける。

爆発の衝撃にやられた様子もまるでない。

いつまで経っても、かすり傷1つ負わせられる気がしなかった。

 

「逃げるのだけは1級品だな。だが、いつまで持つかな?」

駿二は両腕を斜め前へと持ち上げて、身体を少し後方へ倒す。

駿二のお決まりのポーズで、スピリット達は密かにこのポーズに見惚れている。

レイも攻撃をかわしながら、つい見入ってしまう。

 

 

 

 

「ちょ・・・ちょっと?」

 

「す・・・すごい猛攻・・・ですね・・・。」

 

「下手したら、あの娘死んじゃうんじゃ・・・。」

 

「・・・駿二も意地になってしまってます。」

スピリット達は既に、安全な場所に避難して観戦している。

 

(まだだ、まだ攻撃の手は緩めないぜ。)

駿二は上手く攻撃のタイミングを計る。

 

(・・・今だ!)

オーラシャドウ!

 

グゥオアーーーーーーーーー!!

 

地面から凄い勢いで黒い霧状の塊のようなものが、火柱のように突き出てレイに襲い掛かる。

 

だが、それもかわされた。

・・・表情1つ変えずに・・・。

 

(何故だ!動揺するだろ普通!)

駿二は信じられなかった。

 

(まるで俺の心を覗いているかのようだ。)

レイは相手の心を読むことができる。

それによって、相手が次にどう動くのかくらい手に取るように分かる。

 

だが、心を読まずともその瞬間その瞬間で戦況を細部まで分析して、状況を正確に把握できるので、

相手にとっては心を読まれてるかのように感じ取れるのだ。

 

それに今のは、レイにとって攻撃のうちに入らない。

 

例え不意をつけたとしても、余裕でかわされてしまったに違いない。

 

駿二は知らないから無理はないが、最強のエターナルは伊達ではない。

 

その後も何度かどさくさに紛れて、不意をついてみたが結果は同じだった。

 

光線弾自体も、ますます攻撃を激化させていく。

 

一歩引いた視点から見ても、かわせる場所すらないように思われた。

凄まじい轟音が終始鳴り響き、衝撃の影響が外野にまで届いてくる。

にも拘らず、レイは服装1つ乱れていない。

 

「あれだけの猛攻を・・・。彼女はいったい・・・。」

 

「凄い・・・。」

スピリット達も驚きを隠せない。それぐらい激しい攻撃なのだ。

皆、関心してレイの動きに見入っている。

 

レイはその様子を横目でチラリと見る。

 

(大変なのは私じゃないよ。これだけの攻撃、維持する方が大変なんじゃない?)

そう心の中で呟いて、駿二の方を見る。

 

(ちっ、あいつやりやがる!いい加減決めねーと、俺の体力が持たねー。攻撃する方も楽じゃねーんだよ。)

精神の疲労が激しいようだ。その証拠に駿二は汗だくで、肩で息をしている。

 

(このまま俺の方がぶっ倒れるなんて、格好悪いにもほどがあるぜ。)

逃げ道を塞ごうと思って、攻撃のパーツを配置してもその前に逃げられてしまう。

 

「逃げてばかりいねーで、ちったー攻撃してきたらどうだ?それとも前に出るのが怖いか?」

痺れをきらした駿二は、思い切って相手を挑発してみる。

 

「そうね、そろそろこっちからも行かせてもらおうかな?」

意外にあっさりと挑発に乗ってくれた。

 

(ちっ、まずったかもしんねー。挑発したのは失敗だったか・・・!?)

ただでさえ、攻撃に気を配るのだけで精一杯だったのに、これからは防御にも気を配る羽目になったのだ。

はっきり言ってヤバイ。

 

「くっ!」

自分の周りに大量の攻撃のパーツ達を配置して、必死に防衛線を張る。

レイへの攻撃の手も緩めない。

 

「ぐぐ・・・。」

身体のあちこちが悲鳴をあげてきた。

そろそろ限界が近い・・・。

 

レイはフッと微笑むとその手に剣を出現させて、こちらに近づいてきた。

ゆっくりと・・・それでいて駿二の攻撃は見事にかわしていく。

 

駿二の眼には、まるで死神の行進に見えたという。

 

「くっ・・・。」

 

(どうしようもないのか・・・。)

諦めにも似た感情が湧いてくる。

 

『駿二よ。』

 

(何だ、千夜?)

 

『あれを使え。』

 

(あれって・・・まさか深夜の幻想曲・・・!?)

確かそんな名前の技だったはずだ。

 

『そうだ、もはやあれしかあるまい。おまえは今、誰の眼から見ても追い詰められている。

最後の手段だ。駄目で元々。どうせ負けるなら使ってから負けろ。』

 

(そう・・・だな・・・。いい機会だ。使ってみよう。あれなら勝てる!)

 

『過信はするな。』

 

(大丈夫だって・・・。下位の神剣なら逃れられないって、おまえ言ってたじゃねーか!

相手は第4位・・・行ける!俺はこの勝負・・・勝てる!勝てるぜ!!)

 

あれ程の強さ・・・本当に・・・第4位だろうか・・・。』

消え入るような小さな声で呟く。

 

(あん?)

 

『いや・・・何でもない・・・。気にするな。』

 

(あー、さっさとこの技を使っとくんだった。そうすりゃこんなに疲労が溜まることもなかったのによ!)

 

『早く使わないとあの少女が、来てしまうぞ?』

 

(わ、分かった!)

レイとの距離はだいぶ縮まっていた。激しい猛攻をかわしつつもその目は真っ直ぐ駿二を捉えている。

駿二の攻撃なんか眼中にないようだ。

 

「駿二、凄いよ。この短期間でここまで力をつけるなんてね。私の予想を超えてた。

駿二・・・もっと精進してね・・・。私・・・ずっと見てるから。」

その眼はどこまでも一途だ。

鈍感な奴じゃない限り、気付くだろう。

その眼差しはまるで・・・想い人を見る眼であるということを・・・。

 

だが残念ながら、駿二は鈍感な方に分類される人間だった。

 

「でも、駿二。試合である以上、始まったものは終わらせないとね。」

 

『わざと負けてあげれば、あなたの株が上がるかもしれませんよ?』

流星が茶化してくる。

 

(まさか・・・。どっちが上かはっきりさせておかないと・・・。それに駿二はそんなことされて簡単に落ちる人間じゃないよ。)

 

『そうかもね。どうやって止めを刺すの?瀕死に追い込むの?』

 

(とりあえず、苦しまないように気絶させるつもりだけど・・・。)

 

『なるほどねー、それが一番かもね。』

 

「じゃあ悪いけど、そろそろこの勝負を終わらせるね。」

 

「そうだな・・・そろそろ終わらせよう。あんたの敗北でな!」

突然、スゥと激しい猛攻が完全に治まり、不気味な静けさが辺りを支配する。

 

レイと駿二の間には静かに浮かんでいる千夜ただ1つ。

 

「これは?」

動揺ではない。素朴な疑問だ。

ただ何かが始まろうとしていることは分かる。

 

「ここまでやったのはあんたが初めてだ。お礼と言っちゃ何だが、俺の切り札を見せてやるよ。」

駿二がお決まりのポーズを取る。

 

「これぞ俺の最終奥義!」

千夜が11個に分裂してレイを取り囲む。

レイの頭上に千夜が1本配置されている形になる。

残りの10本で周りを固める。

刃の切っ先は、全てレイに向いている。

 

レイも『このまま放っても私に効かないのは証明済みよ。』などとは言わない。

最終奥義というからには、それだけで終わるはずがない。

 

「へぇー。」

だが、心は読まない。

せっかく面白くなってきそうなのに、そんなことをしたらお楽しみが半減する。

お楽しみはギリギリまでとっておかないと・・・。

 

キィィィィィィーーーーーーン

 

11本もの千夜が強く輝き始める。

 

深夜の幻想曲!!

辺り一帯が振動して、揺らめき始める。

 

景色がどんどん歪んでいく。

 

「捕らえた!あんたもう逃げられないぜ!!」

レイの足元にはいつの間にかブラックホールのようなものが出現しており、これがレイの動きを封じているのだろう。

封じることができれば・・・の話だが・・・。

 

全てが面白いように歪んでいく。

 

幻覚なのか、否か。

否だとすればとてつもなく強大な力が働いていることになる。

 

各千夜から発生する超音波のようなものが、辺りの景色一帯を歪めていく。

 

 

 

そのうち幻覚のようなものが見え出した。

あたりの景色も幻想的な世界へと変化していく。

幻想にしては、妙にリアルだ。

 

五感、神経全てが狂ってしまいそうだ。

 

 

この技は、相手の動きを封じた上で幻想世界に閉じ込めて、

最終的には幻想世界ごと相手を魂諸共、消滅させるという恐ろしいものだ。

 

 

千夜は暗闇の中なら、上位永遠神剣にも匹敵する力を引き出せるのだ。

 

「さあ、諦めて降参しろ!でなきゃ死ぬぜ?」

駿二は勝ち誇ったように言う。

 

『降参するの?レイ?』

時空が悪戯っぽく問いかけてくる。

 

(降参すると思う?)

 

『思わなーい。それじゃどうするの?あっさり破ってみせて、あの勝利を確信した顔が歪む様を眺めるのも一興かもよ?』

 

(うーん、他の人ならともかく駿二に対してだけはそんなことはしたくないの。

あくまでも彼が、“ギリギリのところで敗れた”って言う演出を考えてるんだけど・・・。)

 

『普段のレイなら問答無用なのに・・・。やっぱりずっと片思いしてきた相手を苛めるのには抵抗がありますか・・・。』

苛めるって・・・。

 

(あのねー、片思いは余計でしょ。それにこれから相思相愛の仲になって行くんだから。)

 

 『ふふ、そうですね。』

 

(さてと・・・とりあえずこの試合を終わらせようか。)

レイはゆっくりと剣を頭上に掲げる。

 

「まだ諦めねーのか?」

 

「うん、ごめんね。あなたの勝利で終わらせるつもりはないのよ。」

軽い調子で言う。

 

「しかし、どうこうできないだろう?悪あがきも程々にしないと見苦しいだけだぜ?」

 

「まあ、どうせ戦うなら全力を出さないと・・・。あなたもそう思ったからこそ、この技を披露したんでしょう?」

 

「・・・・・・。」

駿二は答えることができなかった。

それは、精神力が限界に達していることもあるのだが、ここまで粘って負けるのは本当に気に食わない。

 

ピィィィィィィーーーーーーン

 

レイの剣から莫大なマナが放たれて、幻想世界にヒビを入れていく。

 

その顔も歯を食い縛ってるように見えるよう、上手く演出する。

こちらも限界ギリギリまで力を引き出しているかのように見えるように・・・。

 

「何!?俺の幻想世界が!?くそおっ!!」

駿二もここが踏ん張りどころと言わんばかりに足掻く。

 

千夜の1本1本に限界以上の力を込めていく。

 

だが、ゆっくり・・・ゆっくりと幻想世界が崩壊していくのが分かる。

 

(後もう一歩力を引き出せれば、崩壊を止められんのに!その一歩が・・・詰められない。)

だがそれすらもレイの演技によるものだ。

“後もう一歩力を引き出せれば”と思わせるよう、上手く力をセーブしているのだ。

 

なまじ恐ろしく強大な力を持ち合わせているがために、こういう微量な力の調節は返って神経を使う。

だが、さすがはレイ、簡単にそれをこなしていく。

 

「ぐく・・・くっそーーー!!」

 

(千夜!後・・・後もう少しだけ力を引き出せねーか?)

 

『これが限界だ・・・すまない・・・。』

 

(負ける・・・のか・・・?)

 

カアーーーーーーーッ

 

眼が痛くなるほどの眩い光に、包まれて何も見えなくなる。

 

「く・・・。」

 

スピリット達も手で眼を覆って、眼を光から守る。

 

身体がふらついてくる。

ついに駿二の精神力が限界を超えてしまったようだ。

意識が朦朧としてくる。

 

薄れ行く意識の中、自分の幻想世界が完全に崩壊したことをおぼろげに悟ると、そのまま倒れ込んでついに意識を手放してしまう。

駿二が意識を失ったことにより、千夜も1本に戻ってガランと床に落ちる。

 

(光が・・・晴れる!)

 

サレアは勝敗の行く末を黙って見守る。

勝敗は決したことが何となく分かる。

 

「立ってるのはどっちでしょう?」

エルフィーも勝敗が決したことを悟ったようだ。

 

「分からない・・・。」

光が晴れていく・・・。

 

 

 

そこには、意識を失った駿二がレイに膝枕されているのが見えた。

レイは無言で、そっと駿二の髪を撫でる。

 

「駿二!」

スピリット達が一斉に彼の元へと駆け寄る。

 

「大丈夫、気絶してるだけだから。それより、彼の部屋へ案内してくれる?運んでいくから・・・。」

 

「分かりました。レイさん、こちらです。」

レイは、駿二を抱きかかえるとエルフィーにスピリット達の館へと案内されて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駿二をベッドに寝かせると、傍の椅子に腰掛ける。

 

『駿二は、結構強くなっていましたね。』

 

(そうね・・・。)

会話が続かない。

 

「これで良かったのかな・・・。」

思わず声に出る。

 

『何がですか?』

 

(駿二は、エトランジェになって幸せかなってね。)

 

『レイが珍しくしおらしい・・・。』

 

(茶化さないの。)

 

『レイ・・・急にどうしたの?』

 

(ううん、ただ・・・何となく気になってね。)

 

『いいんじゃないの?別に不幸になってるようにも見えないし・・・。

第一、レイ。あなたの幸せを掴むためには仕方ないじゃない。まだまだ第一段階でしょ?』

 

(そう・・・ね。私自身の幸せのためにもやり遂げないと・・・。ううん、絶対にやり遂げる。

その決意が揺らいでるわけじゃないのよ。・・・例え、駿二自身が望まなくとも・・・。)

 

その眼には苦渋の決意が見える。

だが、それも一瞬だった。

 

(私らしくないか・・・。)

 

『ところで、レイ。気付いてますか?サーギオスの謎のエトランジェ?』

 

(ええ、あれはただのエトランジェじゃないわね。エターナル。どうせロウの手の者でしょう。)

レイは窓の外を見る。

 

(イースペリアに真っ直ぐ向かってるわね。明日には到着するかしら。)

 

『到着したらどうするの?』

 

(なるようになるでしょう。明日は駿二の初陣となるわね。

訓練と実戦の違い、嫌というほど知るでしょうね。

まあ、彼は正義感の強い男じゃないから、そんなに苦悩することはないと思うけど・・・。)

 

『正義感が強いと、大変ですものね。』

 

(正義感なんて言葉、この世界には必要ないものね。)

 

『そうね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あくる日、駿二はスピリット達に叩き起こされて、戦場へと飛ばされた。

 

 

 

サルドバルトが帝国の後ろ盾を得て、イースペリアを攻めて来たのだ。

 

 

永遠に来なければいいと思っていた初陣の日が、遂に来てしまったのだ。

 

ザンッ!

 

赤い血が辺りに飛び散るもすぐにマナへと返っていく。

 

(これで3人目。)

生き残るのに精一杯なのか、スピリットを殺しても特に感情は湧いて来ない。

 

初めてのことだから、初の人殺しが後で響いてくるのかもしれないが、今は何も考えないでいられるのが救いだった。

戦場での迷いは即、己の死に繋がる。

生き残りたいなら、相手の都合などを考えてはいけないのだ。

 

 

 

太陽の下では戦力は落ちるとはいえ、駿二もエトランジェ。簡単には殺られない。

それでも千夜のサポートがなければ、とっくに殺されていたかもしれないが・・・。

 

短剣では間合いが狭いため、その分不利なのだ。

暗闇でないと千夜を空中に浮かべることはできない。

 

それが彼の弱点だった。

 

「くっ!」

相手の方が、圧倒的に数が多いため徐々に後退せざるを得なくなっていく。

 

(あいつらは生きてんだろうな?)

 

『今は自分の事だけを考えろ。死ぬぞ?』

 

(分かってるよ!)

味方のスピリットも次々と倒れて、マナへと返っていく。

その中に親しい顔がないのがせめてもの救いだ。

 

「一番隊が全滅した。守りが破られた!」

一人のスピリットが慌てた様子で、隊長である駿二の下へと報告に来る。

 

「くそっ!一時城へ撤退するぞ!」

 

「いえ、奴らはエーテル変換装置へと向かったとのことです。」

 

「何!?」

駿二は良く分からないが、エーテル変換装置とは何やらとても大事なものらしい。

何が何でも死守してくれと言われていた。

もし、あそこの守りが破られたら・・・。

 

「エーテル変換装置だ。そこへ行くぞ!」

 

(ったく、戦闘なんてしたことねー俺が、満足な作戦なんかたてられるか!)

駿二は、一部のスピリットを連れて、エーテル変換装置へと急ぐ。

残りは城の守りに回す。

 

 

 

 

 

「エーテル変換装置自体の守りが、あなた一人だけで大丈夫なんですか?」

ローゼアが神剣を構えながら、邪悪な笑みを浮かべる。

中に侵入して来たということは、外の守りは破られたようだ。

 

「まあ、私にとってはこの国がどうなろうがどうでも良いんだけど・・・。」

駿二がここに残って、戦うことを決意した以上、レイも付き合うことにしたのだ。

と言っても常に駿二の様子を見ているから、何かあったらすぐにでも彼の元へと飛んでいける。

 

本当は駿二の傍にいたかったが、彼が隊長権限を行使したためここの守りに飛ばされたのだ。

まあ彼女の場合、傍にいずとも駿二を守れるから不承不承それに従っただけだが・・・。

 

「大方、ここまで侵入されることはないと踏んで、ここの守りを手薄にしたのでしょうが、残念ながら戦力不足でしたね。」

 

「始める前に、聞いていい?」

 

「何なりと・・・。」

 

「あなた、ロウエターナルでしょ?」

次の瞬間、ローゼアの顔に驚愕の表情が浮かぶ。

 

「図星か・・・。」

 

「何故それを・・・。!!?まさかあなたも・・・エターナル?」

 

「ご想像にお任せするわ。まあ、あなたここで消えるんだけど・・・。」

レイはその手に剣を出現させる。

神剣の力ではない。あくまでレイの有翼人としての力を使っているだけだ。

それでも目の前の相手には十分過ぎる。

 

ローゼアごとき、どうにでもできるがレイは斬殺することに決める。

 

ローゼアは声も出ない。

ありえないほど強大な力だった。

神剣の気配は感じられないにもかかわらず・・・。

 

あまりの力の前に思考回路も停止。完全に固まってしまう。

初めてのことだった。

 

レイはローゼアを一刀両断にしようと頭上に掲げる。

とその時だ!

 

カァーーーーッ!

 

辺りに強い閃光が迸ったかと思うと、そこから一人の巫女服の少女が現れる。

 

「何やってるの?ねぇ、何やってるの?」

喉を風邪で痛めたかのような、少し掠れた声である。

 

「い・・・いえ・・・その・・・こ・・・これから・・・し・・・始末を・・・。」

ローゼアがうろたえる。

 

「あなたが勝てる相手かしら?自分の力量は見極めなさないっていつも言ってるのに・・・。

私が助けに来なければ、今頃殺されてるわよ?」

 

「も、申し訳ございません・・・。リーダー・・・。」

 

(リーダー?)

その言葉に疑問符を浮かべる。

 

ロウのリーダーはミューギィのはずだ。

会ったことこそないけれど、聞かされていたミューギィの特徴と目の前の少女は、どう考えても一致しない。

第一、宿命を所持していない時点でミューギィではない。

 

ローゼアはロウエターナルではないのだろうか?

 

だが、レイにとってはどうでも良いことだった。

 

「で、では私はどうすれば・・・。」

 

「撤退しかないわ。私でも敵わないだろうし・・・。」

 

「リーダーでもですか?」

 

「二つの第1位永遠神剣を所持してる、化け物に勝てる人がいるかしら?」

 

「なっ!?」

これには二人して驚いた。

 

「二つの第1位に認められるなんて・・・。信じられません・・・。」

 

「でも、事実。」

 

(気配などは完璧に封じてあるはず。それを気付くなんて・・・只者じゃないわね。)

レイは巫女服の少女に関心するも、ここで確実に殺しておかなければならない相手だと確信する。

ローゼアとは桁違いに強いけれど、自分に比べれば大したことない。

 

シャラアーーーン

 

それに気付いた巫女服の少女は、永遠神剣であろう錫杖を地面に突いて、美しい音を奏でるとローゼアを連れてこの場から離脱する。

レイは、彼女らが既にこの世界にはいないことを瞬時に悟る。

 

(逃がさない。)

とそこに、こちらに向かって必死に駆けてくる複数の気配があった。

その中には、リエラやサレア・エルフィーもいる。

 

それを見た瞬間さっきのことはもう、どうでも良くなってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駿二達は、無事かしら?」

 

「分かりません。」

サレアはエルフィーと一緒だった。

 

とあるスピリットの報告から第一部隊が全滅したことを聞かされ、

何か嫌な予感がして勝手に戦線を離脱してエーテル変換装置へと先を急いでいた。

 

処罰は覚悟の上だ。

ただ急がないと大変なことが起きるような気がしてならない。

 

しかし如何せん、場所が遠すぎた。

 

「駿二は大丈夫かな?」

 

「え?」

 

「だって、今日が彼の初陣なのよ?いきなり隊長を任されて・・・。」

 

「それは・・・・・・信じましょう、彼の無事を・・・。」

そう言うエルフィーも不安を隠せていない。

 

「そう・・・ね・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイは二人の目を見て気付いた。

 

そこに友達や仲間以上の感情が、駿二に対して芽生え始めていることを・・・。

惚れた者を見る眼とはまた違うが、それにしてもきっかけさえあれば、恋心を懐くようになりそうである。

仲間以上恋人以下の関係と言ったところだろうか・・・。

 

たった数日の付き合いなのに、彼女達にしてみればその数日は大きかったようだ。

そのことに二人が気付いているかどうかは不明だが・・・。

 

だが、リエラは違う。

うっかり抱きついて以来変に意識してしまい、できるだけ駿二に近づこうとはしなかったみたいだが、

訓練場でパッタリと顔を合わせた時なんか、頬を真っ赤に染めてその場から逃げたのである。

男の人に自分が抱きつくなんて、考えたこともなかったのだろう。

 

完璧に駿二を男として意識し始めてしまっている。

 

レイにとっては内心穏やかではない。

 

 

 

昨日、成長した駿二をこの眼で直に見た瞬間、心が躍りだしそうになったが良く見てみれば、駿二の傍に女が一人。

しかも髪飾りまでねだっている始末。

 

その間に入ろうにも、何故か入れなかった。

人だかりができてしまっていたのもあるが、タイミングが掴めなかったのが大きな理由だ。

レイにとって周りの視線など大した問題ではない。

 

そしてリエラが駿二に抱きついたのを見た瞬間、頭の中が真っ白になったのは言うまでもないだろう。

その後、リエラが逃げるように走り去ってくれたお陰で、ようやく駿二の前に姿を現すことができたのだ。

 

思い出したくないことを思い出してしまった。

 

ぐっ!

拳を強く握り締める。

 

許せなかった。

 

自分がどれ程長い間、彼のことを想い続けてきたのか知らないくせに・・・。

たった数日の付き合いで図々しい。

 

このままでは全てがパアだ。

何とかしなければいけない。

 

とそこに誰かが入ってくるのが分かった。

レイは素早く考えを巡らせる。

 

(一緒にいられないようにすればいいのよ・・・。少なくともこれ以上想いが強くなるのを防ぐことができる。

駿二が私以外の人に恋愛感情を懐く可能性も激減するはず。)

 

そのためには、イースペリアという名の足枷から彼らを解放しなければならない。

マナ消失にて、一気に滅べば皆バラバラになるはずだ。

 

 

レイはラキオス王の陰謀を静観することに決めた。

自分のためにイースペリアを犠牲にする道を迷わず選んだのだ。

 

イースペリアごとき、無抵抗で他愛のない一本の花を容赦なく踏み潰すようなものだ。

その後、彼らがどこに下っていくのか、その配置も決めた。

そうなるように運命を動かすことも、自分なら簡単にできる。

 

後のことは知らない、どうでもいい。

駿二が自分で歩んで行けばそれでいい。

自分はそれを暖かく見守り続けるのだ。そうだ、そうしよう!

 

レイは決意を固めるとその場から姿を消した。

 

今侵入して来たのは、イースペリアの者でも帝国の手の者でもない。

先頭を歩いてくるのが、“求めのユート”だからだ。

自分がいてはラキオス勢の邪魔になるだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!新手か!」

エーテル変換装置へと先を急ぐ駿二達に、次々と敵兵が襲い掛かってくる。

 

レイが駿二の足止めのために、スピリット達を無意識ごと操って、配置したのだ。

 

だが、彼女らと戦っても命を落とすようなことはない。

後ろにいるのはあのレイ。

駿二が命を落とさないことも、全ては彼女がそうなるよう仕組んでいるから・・・。

 

ここで戦っている限り、マナ消失によって命を落とすようなことはない。

 

 

 

つまり、駿二がエーテル変換装置に辿り着くことはないということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エーテル変換装置で作業している悠人達の元に、1人のスピリットがやってきた。

 

 

ウルカだ。

 

エターナルであるローゼアがこの世界を去ったことにより、この世界の人々から記憶が抹消されて、

ローゼアが行うはずだった任務がウルカに回ってきたのだ。

 

 

 

ウルカとアセリアが交戦を始める。

 

 

 

 

 

リエラの部隊は、サルドバルトのスピリット隊の殲滅に成功する。

 

「ハアハア、さすがに疲れたわね。」

 

「さすがです。相変わらず強いですね、リエラ副隊長。」

リエラは元々、イースペリアの隊長を務めていた。

エトランジェである駿二の登場によって、副隊長となって駿二のサポート役を務めることになったのだ。

 

(駿二は・・・無事かな・・・。って、何考えてるのよ!?何で駿二の心配を真っ先にしなければならないのよ!)

頭を振って、あわててその考えを心の中で否定する。

 

「副隊長?エーテル変換装置は?」

 

「放っておいて構わないんじゃない?今から行っても間に合わないし、他の部隊が向かってるはずだから。

城の守りとかも大事でしょ?いったん城へ帰還しましょう。」

 

「分かりました。」

リエラの隊は、彼女の影響もあってか妙に落ち着いた奴が多い。

慌てず騒がず、かつ迅速に城へと帰還する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

任務を終えたウルカが手早く引き上げていく。

 

 

ラキオスもエーテル変換装置での作業を終えて、同じように引き上げていく。

 

 

 

レイはその様子を遠くから見ながら、その瞬間を今か今かと待ち構える。

 

 

 

駿二は、まだスピリットと交戦を続けている。

マナ消失が発生するまで、ここで戦い続けさせる。

倒したと思った次の瞬間には、また新たな敵が出現するのだ。

 

 

 

サレアとエルフィーは、エーテル変換装置に急いでいるがもう遅い。遅すぎである。

 

 

 

リエラはイースペリアの城を目指している。

城を拝むことはないだろうが・・・。

 

 

 

レイが仕組んだ運命の歯車が、彼女の思惑通りに少しずつ動き出していく。

その後の運命へと繋げるための駒も、もう既に配置してある。

レイは駿二を遠くから、少し罪悪感の漂う顔で見守る。

彼にはこの後、ちょっとした試練が待っている。

全ては自分の仕掛けた運命の軌道に乗せるために・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グォォォォォォオオオオオオーーーーーーン!!

 

遂にマナ消失が始まった。

 

それは、全てを飲み込んでいく。

家は粉々に吹き飛ばされ、人も消し飛ばされていき、イースペリアの全てが消えていく。

ある者は逃げ惑い、ある者はいもしない神に祈り、またある者はバリアを展開して身を守る。

だが、大抵は力不足で耐え切れずにマナへと返って行く。

 

 

 

レイは、その様を黙って静観する。

イースペリアが消えていくことに、何の感慨も懐いていない顔だ。

 

だが皮肉にも、マナ消失を引き起こしたのはレイではない。

あくまでも手を出さなかっただけだ。

 

自分だけは、汚れずに済んだのである。

 

 

 

ウルカは何とか逃げ切ることに成功する。

 

 

 

ラキオス勢も求めのユートの存在もあり、難を逃れた。

 

 

 

エルフィーはサレアを庇って重傷を負い、気を失う。

サレアも重傷を負うが、エルフィーに庇われたお陰か気絶だけはせずに済んだ。

 

 

 

城に帰還していたリエラは、仲間を守るため広い範囲にバリアを張ったため、防ぎきれずにサレアたちと同じように重傷を負ってしまう。

 

 

 

駿二も少なからずダメージを負ってしまった。

 

 

 

 

 

この日、イースペリアは壊滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきは凄かったですね。」

 

「そうだね、お姉ちゃん。」

 

「何人の命が失われたのかしら?」

愁いの表情を浮かべる女性。

 

「ねぇねぇ、お姉ちゃん?」

 

「何?ニム?」

 

「あそこに誰かいるよ?」

 

「え?」

そう言って、ファーレーンはニムントールの指差す方向を見る。

 

「あれは!?」

ファーレーンは慌てて駆け寄る。

 

「サレア!?」

サレアは気絶したエルフィーの肩を抱きながら、崩壊したイースペリアをあてもなく彷徨い歩いていたところ、

ニムントールに発見されたのだ。

 

「そのマスク・・・相変わらずね・・・ファーレー・・・。」

掠れる様に言葉を続けるも、遂に限界が来たようだ。

その場にドオッ!と倒れる。

 

「サレア!?しっかりして!?ニム、彼女を運んであげてくれるかしら?早く治療を!?」

ファーレーンが素早く行動する。

モタモタしてると二人とも死んでしまう。

 

「はーい。」

ファーレーンに対して、素直に返事をするとエルフィーを抱えあげる。

 

サレアはファーレーンが運んでいく。

 

「ねぇ、お姉ちゃん?」

 

「何?」

 

「この人達、知り合い?」

「ブルースピリットの方は知らないけど、ブラックスピリットはサレア。私がまだ幼かった頃、友達だったの。

彼女がスピリットの居場所を求めて別れて以来会ってなかったけど、幼かったサレアの面影が強く残ってる。」

 

遠い眼をして過去を語るファーレーン。

 

「ふーーーん。」

 

「さあ、ニム。ハリオンのところへ。」

 

「分かった。」

 

彼女達の出会いは偶然ではない。

ファーレーンとニムントールはレイにとって、サレアとエルフィーの2人をラキオスに配置するための駒に過ぎない。

だが、彼女達がそれを知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クォーリンは稲妻部隊を複数引き連れて、イースペリア方面へ偵察に来ていた。

 

本当は光陰がクェド・ギンに言われて偵察に来るはずだったのだが、

今日子の傍についていてやりたいであろう光陰の気持ちを察して、自分が変わりを申し出たのだ。

 

 

 

イースペリアの惨状は酷いものだった。

人間の遺体だらけ、家もほとんどが吹っ飛んでいた。

この分だと、スピリットも大勢命を落としたであろう。

 

「クォーリン、凄い惨状ね。」

 

「そうね・・・。」

 

「そろそろ撤収しない?これ以上ここにいても仕方ないよ?」

 

「そうね、マロリガンに引き上げましょう。」

と、瓦礫の傍に誰かが倒れているのを発見した。

 

クォーリンは思わず駆け寄る。

ドクドクと流れ出る血がマナへと返って行く上に、髪の色が黒いところを見ると、おそらくブラックスピリットだろう。

 

「まだ、息がある。」

 

「クォーリン、治療魔法を!」

 

「分かってる!」

クォーリンは治療魔法をかけて、傷を治してやる。

だが、眼を覚ます気配はない。

 

「どうする?」

 

「このまま放っておくわけにも行かないでしょう。連れて帰りましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、駿二は気の赴くままに日夜歩き続けた。

滅びたイースペリアなど見たくなかったからだ。

できるだけ遠くに逃げようと思った。

 

 

 

 

 

どのくらいの時が流れただろう・・・。

イースペリアが滅びてから、だいぶ経ったと思う・・・。

 

 

 

相当疲労が溜まっていたのか、遂に限界が来たようだ。

駿二は前のめりにゆっくりと倒れる。

 

「くそ・・・ハアハア・・・。」

(何が・・・どうなってんだ?何で俺がこんな目に合わなければならねぇんだよ?)

意識が朦朧としてきた。

と、その時誰かがこちらに近づいてくるのが分かった。

 

「こんなところに、人間が倒れているぞ?」

 

「待て、神剣の気配がする。エトランジェか?」

 

「まさか!?何故エトランジェがこのような所に!?」

 

「本当にエトランジェなら、シュン様に献上してはどうだろうか?」

 

 

(・・・何だ?こいつら・・・何を話してんだ?よく・・・聞こえねぇ。)

何やら相談していたかと思うと、1人のスピリットが俺を担ぎ出した。

 

俺の記憶はそこまでだった・・・。

後はどうなったのか、覚えていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どのくらい時が経ったのかは分からない。

 

(白・・・いや・・・銀髪・・・か?)

次に気がついた時、駿二に対して永遠神剣らしき物体を掲げている1人の男が、ぼやける視界の中、確かに移った。

その目は不気味な赤い光を帯びている。

 

その男は何かをブツブツ言っているが、良く聞き取れない。

 

 

 

その神剣から放たれる赤い光が、駿二の身体を包み込んでいく・・・。

 

(千夜、何が・・・どうなって・・・。おい・・・千夜・・・千夜!!?)

必死で呼びかけるも、千夜からは何の意思も伝わってこない。

神剣としての輝きも、赤い光に飲まれて失われてしまっていた。

 

ドックン・・・

 

心臓が大きく鼓動する。

 

この赤い光が、自分の中に秘められていた憎しみを広げていくのが分かる。

自分が自分でなくなっていく感覚に、駿二は恐怖した。

 

間違いない。

この男は、自分を支配しようとしている。

 

(おい、千夜!返事しろ!千夜!このままじゃ、俺が・・・。ぐあっ、うぐぅっ!)

駿二は、苦しみ悶える。

 

オォォォオオオォォオオーーーーーン

 

頭の中に、邪悪な意思が流れ込んでくる。

 

『千夜の意思は消え去った。おまえの魂、身体。全てをこの“誓い”に捧げよ。おまえは、今から我のものだ。』

 

 

 

 

 

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あとがき

 

 

 

 

謎の巫女服の少女

 

赤紫色の長い髪を持つ少女。

ローゼアがリーダーと呼んでいたことから、ローゼアよりも上の立場にあることが窺える。

錫杖型の永遠神剣を所有している。

 

 

 

 

 

 

今回は、ちょっと長めになってしまいました。

 

遂にイースペリアでのお話も終わりを告げました。

 

駿二達がレイの仕業によって、バラバラになってしまいましたねー。

 

 

 

説明が分かりにくかったかもしれないので、ここで補足を。

それでも分からなかったら、掲示板にてお願いします。

サレアとエルフィーがラキオスに下るために、レイが用意したのがファーレーンとニムントールというわけです(説明下手だなー)。

リエラと駿二の2人が、レイによってどこの国に下っていくのか・・・。

それは、次回以降ということで・・・。

つってもバレバレですが・・・。

 

ここからは、サラサラとお話が進んでいく予定です。

これからも、“虹色の輝き”をよろしくお願いします。

初めての作品ですが、できるだけ良い出来に仕上げるよう努力しますので。