接触
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「駿二、入隊手当てが入ってるわよー。」
サレアはそんな明るい声と共に、ノックもせずに駿二の自室へと入ってくる。
「サレア、ノックくらいしたらどうだ?」
「ほらほら、このお金でパーッと遊んで来なさいよ。何か、任務があるわけじゃないんでしょ?」
「今のところな。ま、館に篭ってても仕方ねーし、町も見てみてーしな。ちょっくら行ってくる。」
「はいはーい。・・・それでさー、駿二ーー。」
「あー、駄目だ駄目だ。」
「まだ、何も言ってないわよー。」
「その顔を見りゃ誰だって分かるっつーの。奢って欲しいんだろ?」
「うっ!」
「図星だな。悪いけど俺はケチなんだ。諦めな。」
「お願いお願いお願い!」
「駄目駄目駄目!」
「良いじゃない一回くらい。」
サレアはしつこく食い下がる。
「しつこいぞ、貴様!」
「こんなにいっぱいあるんだから、そんなにケチケチしなくてもー。いつか損するわよ?」
「ほれ。」
駿二は金を突きつけてやる。
「わーい、ありが・・・。」
“ありがとう”と言い切ることができなかった。
掌に乗ったのは、本当にチッポケな小銭だけ。
サレアが放心してる隙に、駿二はそそくさとその場から逃走する。
「ったくよー、子供かあいつは?しょうがねー奴だ。」
町を適当にぶらつきながら、ぼやく駿二。
「せっかくの機会だ。この世界の食い物をたっぷりと堪能してやろうじゃないか!」
手頃な料理店を発見して、中に入る。
朝っぱらなだけあって、客は少ない。
「何がいいかなー。・・・ってなんじゃこりゃーーー!?」
メニューを見た途端、思わず大声を出して周りからの注目を集めてしまう。
「あ、いや失礼。」
(っと、これは参ったな。千夜、何とかしてくれ。)
『自分で考えろ。』
千夜から返ってきた返事は冷たいものだった。
しかし、駿二が戸惑うのも無理はない。ここの見せのメニューには、料理の絵が一枚も飾ってなかったのである。
名前だけでは、どんな食い物なのか見当もつかない。
仕方がないので、割かし格好良さそうなネーミングの料理を注文してみる。
―― 結果 ――
見事に撃沈。
とんでもなく辛いのである。
「うっっわっ!何だよこれ!?めっちゃ辛っ!!」
ヒーヒー言いながらも何とか完食。
そのまま逃げるように店を出る。
以後、絵のない料理にはまず手を出さなくなった駿二であった。
それからいろいろな店に立ち寄ったりしながら、時間を潰していく。
元々独りだったので、孤独には慣れている。連れが欲しいとかは欠片も思わなかった。
「ん?今、見たことあるような奴が・・・。」
見知った顔が通りを曲ったような気がして、後を追いかけてみる。
そこには、店に売られている奇妙な彫刻の彫られた髪飾りをボーッと眺めている少女がいた。
アズマリアが持っていた奴と、お揃いの髪飾りだ。
「何やってんだ?リエラ?」
「わっ!急に声かけないでよ。ビックリするじゃない。」
「その髪飾りがどうかしたか?」
「べ、別に?」
「あっそ。ま、俺はあんたに用はねーから。たまたま見かけたから、何やってんのか見てみただけだ。」
それだけ言うと、さっさとその場を立ち去ろうとする。
「私も特にあなたに用はないんだけど?」
駿二は、無視してその場を歩き去ろうとする。
途中こっそり肩越しに振り返って見ると、またあの髪飾りを眺めていた。
(アホか。欲しいんなら欲しいって素直に言やいいのに。)
肩を竦めて立ち去っていく。
「ね、ねぇ!」
突然、リエラが声をかけてくる。駿二は、面倒臭そう振り返る。
「あの・・・その・・・な、何でもない!」
「じゃあ、いちいち呼び止めんなよ。」
何を言いたいのか分かるが、駿二は親切な男ではないので無視してそのまま立ち去っていく。
その後姿を黙って見送るリエラ。
(私、何くだらないことで意地張ってんのかしら。髪飾りのお金くらい貸してもらえば良いのに。
・・・ううん、駄目よ駄目!知り合いでも何でもない男に・・・!)
頭の中で激しく葛藤してるうちに、駿二はどんどん歩き去っていく。
「・・・・・・待って!」
遂にリエラは叫んでしまった。
髪飾りの誘惑に負けたのだ。
リエラは誘惑に弱いところがあった。
だが駿二はあくまで、聞こえないフリを決め込む。
「待ってよ駿二!」
もう一度、大きな声で呼び止める。それでもシカトを決め込む。
「駿二、お願い!待って!!」
必死で駿二を追いかけて、袖を引っ張る。
「何だよ?」
「お願いがあるの。来て!」
有無を言わせず袖を引っ張って、先程の店の前まで連れて行く。
「お願い、この髪飾り・・・。」
しばらく眼をあちこち彷徨わせたが、一度軽く深呼吸して真っ直ぐ駿二の目を見る。
「欲しいの!お金を貸してくれない!?」
「悪いが・・・。」
ここに来て、ようやく自分達がかなり目立っていたことを悟る2人。
たくさんの視線がこちらに突き刺さっている。
(こいつが叫びだす前に逃げるべきだったか・・・。いや、その前にそもそも後を追ったりしなければ・・・。)
後悔先に立たずというやつである。
駿二はいらぬ誤解をされては堪らないと、野次馬どもに向かって声を張り上げようとした。
「青春ですねー。」
「あの二人、付き合ってんのか?」
など、恋人同士に見られてるようだ。駿二の顔が恥ずかしさで真っ赤になる。
だがリエラは今、そんなことは耳に入って来ないようだ。
真剣な表情で、真っ直ぐに駿二を見つめている。
因みに駿二は、神剣が短剣型で隠し易いというのもあり、エトランジェとは思われていない。
これ以上この場にいられなくなり逃げようかとも思ったが、リエラの目線に囚われて動けない。
「ち、ちょっと来い!」
頭が混乱してきた駿二は、次の瞬間リエラの手を引っ張ってその場から逃げるように、例の店の中へと逃げ込んだ。
「ハアハアハアハア、バカヤロウが。お陰で注目浴びまくりじゃねーか!」
「え?」
「気付かなかったのかよ!」
「それより、髪飾り・・・。」
「やなこった。人に貸す気はねぇよ。それにおまえ、あの日俺に何をしたか忘れたとは言わせねーぞ?」
「!!?・・・そ、それは・・・。その・・・あれも任務だったから。」
「任務ねー。にしても、詫びの一言もなしで人に物をねだるたー、随分じゃないか?」
「エトランジェは、1人だけでも国1つを滅ぼせる力を持ってるんだから、仕方ないじゃない。」
「あー、開き直られると余計に貸す気がなくなるな。それじゃあな。」
「ご・・・ごめん・・・。」
聞き取れないくらいか細い声で言う。
「あーーん?聞こえないな?」
「だから・・・悪かったってば!」
(こいつ・・・からかってみたら、意外に面白いかも・・・。)
駿二はふと、からかってみたくなった。
「あー、謝られとる気がせんな。」
クルリと背を向けて、歩き去ろうとする。
「・・・くっ、ごめんなさい・・・。」
「心が篭っとらんな。ただ単に、プライド捨てただけで心の底から反省してないだろ?それじゃ、駄目だ。」
図星だった。
リエラの手がブルブルと震える。
(やっぱこいつ、からかうと面白ぇーな。)
「ごめんなさい・・・。私が・・・悪かったわよ・・・。だから・・・。」
頭を下げて謝る。普段ならこんなことはしないが、ここまで来たらもうなるようになれだ。
屈辱には違いないが第一、そんな大層なプライドなんてものは特に持ち合わせていない。
ここが駿二の限界だった。
「ぶっ、ぐくくくくくくく・・・ひゃはははははははははははは!」
腹を抱えて笑い転げる。
「な、何よ!やっぱり、からかってたのね!人にここまで恥ずかしいことさせといて!許さないわよ!?」
「おいおい、今は俺の方が立場が強いんだぜ?
まあ、ここまで恥ずかしいことを大衆の面前でやってしまった後で、髪飾りを諦めるってんなら話は別だが・・・?」
リエラに対する怒りの感情は、これで払拭だ。
十分返させてもらって、すっきりした。
「う・・・うう・・・。は・・・はめられた気分・・・。」
逆にリエラは、屈辱に身体が震える。
「さーて、髪飾りだが・・・どうしよっかなー?貸してやろうかなー?・・・やっぱ止めた!」
最後の言葉にカチンと来る。
このまま逃げるなんて許さない。
「ちょっと!人を散々からかっといて、それはないわよ!?」
「でも、この金はあくまで俺のであって、おまえのじゃねーし。」
「う・・・ぐぐぐ・・・。」
「ま、浅はかな自分を呪うんだな。」
そう言って、駿二は出口に向かって歩き出そうとする。
「ま、待ってよ!ここまでさせといて、それは酷いんじゃない!?」
「貸すか、貸さないかは俺に決める権利があるだろ?」
「どうしても欲しいのよ、あの髪飾り。一目見て気に入っちゃって。ねぇ、私につけたら似合うと思わない?」
手に入らないと思うほど、人は欲しくなるものだ。
押し問答しているうちに疲れてきたのか、ここに来ていつもの勝気な態度はなりを潜めた。
駿二も最初は拒むが、結局拝み倒される形で髪飾りを買いこまされてしまう。
スピリットって皆こうなのだろうか?
(しかも高ーし。俺のバカ・・・。)
リエラは、嬉しさ満面の顔で髪飾りを額につける。
(こいつも結構女の子っぽいとこがあんだな・・・。)
そんなことを何気に考えていた時だ。
「ありがとう駿二!」
嬉しさのあまり我を忘れたリエラは、駿二に思わず抱きついてしまう。
「ぐっ。」
今気付いたが、こいつ・・・かなり“でかい”・・・。着痩せするタイプか!?
「あっ!」
リエラも慌てて離れる。その顔は真っ赤だ。
「その・・・ありがとう。本当に・・・。そ、それじゃ!」
駿二から逃げるようにその店を走り出ると、見えなくなった。
女性に抱きつかれたことのない駿二は、放心状態である。
やがて店員の人がこちらを微笑ましそうに見ていることに気付き、駿二も慌てて店を出る。
店を出た途端、見知らぬ少女に声をかけられた。
「あ、こんにちは。あなたがイースペリアのエトランジェ、“千夜のシュンジ”でしょ?」
「俺を知ってるのか!あんた誰だ?」
長い銀髪の少女が髪をサアーッと優雅にかきあげると、優しく微笑む。
「私はレイ。これでもエトランジェなの。イースペリアに所属したくて、この国のことをいろいろ調べていたのよ。
それであなたのことを知ったってわけ。同じエトランジェとして、会ってみたくてね。」
「俺に会いたい?」
「ちょっとした好奇心から。いけないかしら?それで?この国はどう?良い国?」
「ああ、いや・・・整理させてくれ。つまり君は別の世界から来たってこと・・・だよな?」
「ええ、そうよ。」
レイという少女は、そっと胸元のペンダントを掬う。
その飛び出た胸元につい眼が行ってしまう。
(うっ、こいつの胸もかなりバカでかいなー。って何考えてんだ俺は!抱きつかれたお陰で変に意識しちまってる!?)
頭の中の妄想を必死で振り払う。
「この子は永遠神剣第4位・時流。時流のレイよ。よろしくね。」
『安直なネーミングね。時空と流星の頭文字を繋げただけじゃない。』
時空が突っ込む。
(うるさいわね。名前なんてどうでも良いでしょ。どうせ偽名なんだし。)
永遠神剣第4位・時流というのは当然のことながらハッタリだ。
「怪しい雰囲気がプンプンするんだが?何か用か?」
「あ、別に怪しいものじゃないからそんなに警戒しないで。」
「つっても、いきなり知らない奴から声をかけられて、警戒するなって言われても無理だぜ?」
「・・・・・・。」
言い訳じみたことをするのが面倒になったレイは、自分の能力を使って警戒心を駿二の頭の中から取り去る。
(うーんと、どうしようかなー。せっかく会ったんだし、何か・・・何でもいいから会話を!)
「え、えーと・・・あなたはどこの世界から来たの?」
「地球って知ってるか?そこから来たんだよ。」
「あ、偶然ねー。私もそこから来たのよ。」
『嘘ばっかりですね。』
流星がおかしそうにクスクスと笑う。
(仕方ないじゃない。話の調子を会わせる為には・・・。知らないなんて言ったら、そこで会話が途絶えるでしょう?)
「それじゃ、俺はそろそろ帰るよ。じゃあな!」
このままだとなかなか解放されそうにないので、
強引に会話を打ち切って立ち去ろうとする駿二だが、レイは簡単には逃がしてくれない。
「あ、待って。あなたはどこに住んでるの?案内してよ。」
駿二の横に並んで歩き出す。
「いや、あのな・・・。」
「ねぇ、駿二・・・。」
レイから笑顔が消えた。前を向いて遠い眼をする。
「あなたをずっと・・・ずっと見てた。」
「え?」
「あなたは覚えてないと思うけどあなたは昔、私と一度会ってるのよ。」
駿二の眼を一途に覗き込んで、寂しそうな笑顔を作る。
駿二は何も答えることができない。
(会ったことあったっけか?しかし・・・嘘を言ってるようには・・・見えないな・・・。)
「その時から、遠くでずっとあなたを見守り続けてた。信じられないかもしれないけど・・・。」
ずっと言いたかったことだ。あの時以来・・・ずっと・・・。
「あんたは・・・俺の・・・何だ?」
「・・・そんな大した関係じゃないよ。それに、あなたにとっては忌まわしい記憶だと思うから。」
忌まわしい記憶・・・そう聞いて思い当たる節は、駿二にとってたった1つしかない。
家族を失った・・・あの日・・・。
封印しておいたはずの記憶が蘇る。
「お母さん、後どれくらいで着くのー?僕もう飽きちゃったよー。」
幼い頃の自分と、そのすぐ傍に腰掛けてる父と母とそして・・・姉さん。
どこだったかは、思い出せない。
電車の中のような風景に少し似ているが、それよりも大きい。
・・・飛行機の中だろうか?
・・・思い出せないが、駿二の中では確定している。
くだらないおしゃべりをしながら、退屈な時間を過ごしていたことだけは覚えている。
それが僕の覚えてる、最期の生きた皆の姿だった。
その後のことは思い出したくもない。何が皆を襲ったのか嫌でも分かる。
飛行機事故・・・それしか考えられない・・・。
「まさか!?あの事故は・・・あんたの仕業だってのか!!」
駿二が導き出した結論は、レイにとって考えられないものだった。
「ご、誤解しないでよ!あれはただの事故よ!私には何の関係もないわ!」
駿二は疑いの眼差しを隠そうともせずに、目の前の少女を睨みつける。
「嘘をつけ!だったら何で俺に興味を持った!
あんたのせいで俺の家族が死んだから、責任を感じて償いたいとか、どうせそんなとこだろう!?」
「違うわ!だいたい私のせいだっていうなら、わざわざこの話を穿り返すわけないじゃない!」
必死に反論する。あらぬ誤解を受けて、怨まれては堪らない。
駿二は今にも掴みかかりそうな勢いだ。
「あんたの主張より、俺の主張の方が筋が通ってるな。」
駿二が凄む。
「私じゃない。私はたまたま居合わせただけ。私は、あの時あなたと・・・。」
「黙れ!」
『駿二、落ち着け。この者は嘘は言っていない。』
(何でそんなことが分かる?)
『目を見れば分かる。大体飛行機事故を起こしたとして、あの少女に何の利益がある?』
(んなこと知るか!)
「駿二、私は本当に違うの。信じて。」
必死で訴えるレイの目は純粋そのものだ。とても嘘をついてるようには見えない。
「じゃあ何で、あの飛行機は墜落したんだ?それがはっきりと分からない限り、あんたを信じることはできねー。」
それを聞いて、レイは眼を閉じて俯く。
『レイ・・・。』
流星も何て声をかけていいか分からない。
時空も意外な展開に言葉を失っている。
レイを傷つける駿二が流星も時空にとっては許せなかった。
が、何も言わない。駿二の悪口を言ったところで何にもならない。
「あのね、駿二。聞いて。私はあの時にあなた・・・。」
「あっ!駿二!いたいた、捜したんだよ!」
肝心なところで、話の腰を折られてしまった。
「サレア・・・。」
「こんだけじゃ、何にも買えないわよ!私は子供じゃないんだからね!」
朝っぱらのことを言ってるのであろう。駿二からもらった金をちらつかせる。
「もらえるだけありがたいと思え!」
「だって、何だかバカにされてるみたいで面白くないんだもの・・・。」
「バカになんかしてねーって。考えすぎだ!」
そう言いつつ駿二は、リエラには高い買い物をしてやった事実を、(その話し振りから)サレアが知らないことに安堵していた。
レイは二人の会話を見ながら、能力を使って先程の会話を消去(なかったことに)しておく。
これで自分に対する憎しみも消えてくれるはずだ。
「って、あれ?隣の娘は?」
今頃になって気付くサレア。
「ああ、えっとー・・・誰だっけ?」
レイは思わず、ずっこけそうになる。
「レイよ・・・。しっかり覚えててよね。」
「私はサレア・ブラックスピリット。見ての通り、駿二とは知り合いよ。」
サレアは早速、自己紹介する。
そして2人は、レイを館へと案内していった。
「へー、イースペリアのエトランジェにねー。女王様にお願いしてみたら?きっと歓迎してくれるよ?」
レイがイースペリアへの加入を検討していることを、サレアにも打ち明けた。
「早速、謁見してみる?」
「うーん、その前にちょっと・・・。」
そう言ってレイは、駿二を見る。
「戦ってみたいんだよね。私の力が、エトランジェに対してどれ程のものなのか見てみたいのよ。」
本当は駿二の力を試したいだけだ。
「どうするの、駿二?」
「まあ、別に構わないぜ。俺もエトランジェとは、一閃交えてみたかったりするんだよな。最初に比べて随分、強くなったと思うし。」
「そう、それじゃあ決まりね。」
「じゃあ、訓練場に案内してあげる。こっちよ、レイ。」
―サーギオス帝国―
「ほう、ラキオスにイースペリアでマナ消失を起こさせようと言うわけか?」
「はい、シュン様。」
“誓いのシュン”の前に一人の小柄な少女が跪いている。
「全てはおまえの策謀か・・・・。」
「ええ、ラキオスには私達の思惑通りに動いてもらいます。是非そのサポートを。」
「いいだろう、ローゼア。行ってこい。スピリットどもも好きに引き抜いて行って構わないぞ?」
「はっ。」
跪きながら、ローゼアと呼ばれた少女は瞬を盗み見る。
その眼は、相手を敬うものではなく明らかに見下している。
底知れない何かがこの少女にはあった。
「コホン。」
傍に控えていた一人の男が、自分の存在をアピールするかのように咳払いを1つ。
「エトランジェ同士の会話は済みましたか?」
「何だソーマ?おまえがここにいる必要などないんだぞ?」
瞬が不機嫌を露にする。
「そうもいかないでしょう。エトランジェには見張りが必要ですからねぇ。」
「見張りだと?僕は選ばれた存在だ。選ばれし者は何をしても許されるんだ。見張りなど必要ない。思い上がるのも大概にしろ!」
「おやおや。」
ローゼアは口喧嘩する二人には、興味なしといった風にさっさと謁見の間を立ち去る。
「ふん、相変わらず気に食わん女だ。」
瞬はつまらなそうにぼやくと、謁見の間を去る。
「はっ!分かりました、ローゼア殿。」
「任務は以上です、ウルカ。それでは、イースペリアに行きましょう。準備の方は良いですね?」
「はっ!手前はいつでも・・・。」
「それでは行きますよ。」
ウルカを含めて、15人程度のスピリットを引き連れてサーギオス城を出る。
(気になるのは、イースペリアのエトランジェですね。エトランジェは4人のはず・・・。
これをきっかけに計画に狂いが生じなければいいのですけど・・・。)
ローゼアは永遠神剣らしき物体を撫でる。
(まあ、杞憂ですね。所詮はエトランジェ。邪魔になるようなら消せば良いのですし・・・。)
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あとがき
ローゼア
薄茶の髪を持つ、謎の少女。サーギオスのエトランジェを名乗っている。
底知れない雰囲気を醸し出している、不気味な少女。
イースペリア編も次回で幕を閉じる予定です。
これ以上話を引き伸ばすと、グダグダな展開になりかねませんので・・・。
段々と、キャラの性格なんかが見えてきた頃だと思います。
ツンデレ・・・だったっけ?作者が最近、偶然知った言葉。
最初はツンツンしてても、一旦打ち解けると、デレデレになるという・・・。
リエラは・・・それに見事に当てはまるキャラクターです。
セリアほど言葉に棘はないですが、それでも知らない人には冷たい態度をとります。
だが、何かきっかけのようなものがあれば、打ち解けることも可能です。
デレデレとまでは、ならないかもしれませんが・・・。
そう言うキャラクターに仕上がる・・・予定です・・・。
次回、意外な展開になる・・・はずです!
案外、予想範囲内の展開じゃねーか、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが・・・。