宿敵登場!?

 

 

 

 

 

 

 

 

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「メギリン将軍、ご報告がございますー!!」

1人の男が、慌しく部屋に飛び込んできた。

 

「どうした?騒々しい。」

 

「じ、実は・・・先程捕らえました男が、こんな書類を隠し持っていたことが判明しまして・・・。」

 

「見せろ。」

そう言って、将軍らしき男が書類を受け取って目を通す。

 

「・・・・・・これは・・・。」

それっきり、将軍は黙り込んでしまった。

 

「これは、我が帝国始まって以来の重大事件です!」

 

「打倒帝国・・・だと?身の程知らずな輩だな。よし、その男を尋問しろ。この計画に関わりのある者は、1人残らずひっとらえるのだ!」

 

「はっ!」

男が敬礼して下がっていく。

 

「帝国の高官にも、この組織のスパイが紛れ込んでる可能性もあるな・・・。いや、この帝都にも奴らの地下組織があるやもしれん。」

将軍は、傍に控えていた女性に命令を下す。

 

「副将軍よ、聞いたな?すぐに行動に移れ。国境付近の警備も固めさせろ!」

 

「畏まりました!」

副将軍も一礼して下がっていく。

 

「帝国の安全は、私が守る。それが・・・私の使命だ。」

将軍は窓の外を一瞥する

 

 

 

 

 

先程捕らえられた男は、ガイ達と似たような任務を受けて各国を走り回っていた連絡係の1人である。

これで、打倒帝国が一番知られてはならない国に漏れてしまったことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミューギィは更に夢を見続ける・・・。

 

 

 

その時がやってくるまで・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、後どのくらいで帝国に着くの?」

 

「まずは、あの谷を越えなければならない。大声立てるなよ、雪崩がくる。」

見ると、山間に細い道が通っている。

 

両脇は見上げるような崖になっており、上のほうには今にも崩れ落ちてきそうな雪が分厚く降り積もっている。

 

「こんなところで、戦闘になったら厄介ね。」

 

「そこは、貴様の能力で雪を瞬時に溶かすことで凌げるだろう?それ以外に貴様の存在価値などあるものか。」

 

「な!?・・・全く、本当に素直じゃないんだから。」

ガイはそっと溜息を漏らす。

 

「何で俺が、貴様のようなヒヨッコを連れて歩かなければならんのだ?」

 

「そのヒヨッコに負けたのは誰だったかしら?私、記憶力悪いから分かんなーい。」

この2人は、何かと口喧嘩を始めなければ気が済まないのだろうか?

などとボンヤリ思う“陽光”であった。

 

だが“希望は”、ミューギィの肩を持って口喧嘩に参加してくる。

 

『本当よねー。ミューギィがヒヨッコなら、そのヒヨッコに負けたあなたはそれ以下ってことじゃない。』

 

「ぐ・・・貴様ら・・・言わせておけば、調子に乗りおって・・・。」

ミューギィがクスクス笑い出す。

心底楽しそうだ。

 

決して、ガイをからかって楽しんでる、ということではない。

 

こういうやり取りのできる相手がいるって、とても良い事なのではないかとふと思うのだ。

何だか随分久しぶりのような気がする。

こんなに楽しかったのは・・・。

 

こういう一時は、大事にしたいと思う。

 

今までは頼れる相手が、いや知ってる人が1人もいなかったから、という理由だけでガイについてきていたが、

今は一緒にいると楽しそうだからついていきたい、と思えるようになった。

 

決して好きになったというわけではないが、ミューギィの中でガイのイメージが昇格した一時であったのは間違いない。

 

「何が可笑しい。一度俺に勝っただけで、余りいい気になるなよ。」

ガイが鋭い視線を向けてくる。

 

「あら、私とガイの愛称って最悪だったのを忘れたの?太陽を隠すだけで、簡単に勝てるわよ?」

 

「くっ・・・。」

 

『ガイ、余りこの話は穿らない方が・・・。』

陽光が口を開く。

 

(そうだな、余り蒸し返したくはない。)

ミューギィを一瞥すると、1人でさっさと歩き出す。

 

「あ、待ってよ。」

ミューギィも慌てて後を追う。

 

「ついてくるな!ヒヨッコ!」

いつものクールなイメージをかなぐり捨てる。

 

「何言ってるのかしら?約束を忘れたの?」

 

「ちっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「野宿!?」

 

「そうだ、旅の基本だろ?そうそう都合良く宿など現れるわけがないだろう。」

ミューギィは、信じられないと言うような顔をした。

 

「え・・・だって・・・こんな谷のど真ん中で・・・。寝てるときに雪崩でも来たらどうするのよ?」

 

「そんなに心配なら、貴様が一晩中起きて見張ってるなり、1人でさっさと先へ行くなりすればいいだろう?俺はここで寝る。」

そう言い放つと、さっさと横になる。

 

ミューギィは一瞬呆けた後、ガイの腕を掴んで強引に立ち上がらせる。

 

「納得行かないわ!もう少し先へ進みましょう。こんな寒いところで、眠れるわけないじゃない!」

 

「我侭な女だ。」

 

「か弱い女の子に野宿は病の元よ?」

ガイは目を見開いて、心底驚いた顔をする。

 

「貴様が・・・か弱い・・・女の子・・・だと!?」

そう言って、ガイは下を向いて肩を震わせて、歯を食い縛るかのように忍び笑いを漏らし始めた。

 

「な、何が可笑しいのよ!」

ミューギィもガイを相手にすると、ついムキになってしまう。

 

「精々男勝り、にして欲しいものだな。男勝りな女に宿など必要ない。」

ガイもミューギィに対しては、クールさを若干失ってしまう。

口喧嘩仲間・・・という言葉が一番しっくり来るだろうか?

 

「何ですってーー!!コラ、ガイ!!今日と言う今日は許さないわよ!?」

ミューギィは、逃走を開始したガイを追いかけ始める。

 

 

 

 

 

しばらく追いかけっこを続けた後で、2人はどちらからともなく笑い出した。

 

 

ガイは、逃げ回りながら笑っている自分に気づいてハッとなる。

 

「な、何を俺は笑っているのだ!バカな!」

そう言って、つい立ち止まってしまった。

 

「追いついたわよ、ガイ!」

ガイがすぐ目の前に迫ったミューギィに気付くよりも先に、彼女のビンタが頬に飛んできた。

 

バッシィィィーーーーーーン

 

気持ちの良い音が辺りに響く。

ガイの顔には、見事に真っ赤な紅葉のマークがついている。

 

ガイが呆ける。

 

「わっ、ちょっとやりすぎちゃった。ごめんね、痛かった?」

余りに良い音に、ミューギィが少し焦る。

 

ガイは返事もしないで、ミューギィを張り倒す。

 

パシーーーーン!!

 

「きゃっ!」

地面に叩きつけられる。

ミューギィは、すぐに顔を抑えながら立ち上がる。

 

「お、女の子に向かって何するのよ!?」

 

「黙れ。」

ミューギィを一瞥して、殴られた頬をさする。

 

 

 

凄く痛そうだ。

 

 

 

 

 

その日、ガイは遂にミューギィに対して口を聞いてくれなかった。

 

元々、それ程心の強くないミューギィが、一晩中沈んでいたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の日差しがガイの顔を照りつける。

そよ風が吹いたかと思うと、ガイがパチッと目を覚ました。

 

すぐ傍に、思いつめた表情のミューギィがガイを覗き込んでいた。

 

「あ、あの・・・昨日は・・・ごめんなさい。勢い余っちゃって・・・。」

ミューギィがチラッと顔を見る。

さすがに、もう紅葉のマークは確認できなかった。

 

だが、ガイは一言も口を聞かない。

 

ミューギィが沈む。

 

ここが、“希望”の我慢の限界だったようだ。

 

『ガイ!ミューギィがこんなに謝ってるんだから、いい加減に許してやりなさいよ!何よ、大の男が一発ビンタをもらったくらいで・・・。』

その途端、ガイが“陽光”をミューギィに突きつける。

 

「俺は顔を思い切り殴られたのは、昨日が初めてだ。許すつもりなどサラサラない。

世の中には、恐ろしく心の狭い奴がいるってことを知っておきな。」

 

そう言って、キンッと“陽光”を鞘に収める。

 

『ちょっとちょっと、幾らなんでも狭すぎよ!根に持ちすぎなんじゃないの!?こっちが下手に出てれば調子に乗って!』

ガイは“希望”すらも無視する。

 

『ミューギィ、こんな男にくっ付いていく必要ないよ!さっさとどっか行きましょ!』

ミューギィは自分の背後をそっと見る。

 

ガイから離れた後、自分はどこに行けばいいのだろう。

幾ら考えても答えなど出るはずもなかった。

 

ガイの他に、自分が頼れそうな人はいない・・・。

そのガイに突き放されたら、自分にはもう頼れる人がいない。

 

 

・・・・・・。

 

 

それだけでこんなに辛い気持ちになるだろうか?

 

頼れる人がいなければ、自分で頼れる人を捜せばいいのだ。

 

自分は最初から捜しもしなかった。

 

 

 

初めは、捜そうと言う気が起こらなかっただけだ。

知らない人だらけで、誰かに心を開こうとは思わなかった。

 

唯一、自分を助けてくれた人以外には・・・。

 

 

 

今は、どうだろうか?

 

ガイから離れることが怖い。

 

ミューギィにとって、ガイの存在は予想以上に大きかったようだ。

どんどん、ガイへのイメージがアップしていくのが何となく分かる。

言うなれば、頼れる兄貴のような存在・・・だろうか?

 

『ねぇ、ミューギィ!他にも良い人はいっぱいいるよ!違う人に当たりましょ!』

 

(それは・・・嫌!)

ミューギィは、“希望”の提案を真っ直ぐ拒否する。

 

『え?ど・・・どうして・・・。』

希望は驚きを隠せない。

 

(このままじゃ、苦しいから。)

 

『だったら尚更・・・。』

 

(そう言うことじゃないの。喧嘩したまま別れるなんて、絶対に嫌だから・・・。)

 

『ミューギィ・・・。』

“希望”も反論できなくなる。

 

だが問題は、目の前の石頭をどうするかだ。

“希望”に眼があったら、間違いなくガイを睨んでいるだろう。

 

「ガイ・・・もう一度・・・ごめんなさい。いい加減に許してよ・・・。お願いだから・・・。」

 

『ガイ、ミューギィが可哀想だから、いい加減に許してあげて。』

いつもの強い口調ではなく、説得を試みる口調に変わっている。

 

「行くぞ、陽光。さっさとこの書類を届けないとな。」

そんな2人を無視して、先を急ぎ始めるガイ。

 

『ガイさ、ちょっと意固地すぎやしないか?ちょっとしたおふざけから来たトラブルだろうが?何がそんなに気に入らないんだ?』

 

「・・・・・・。」

ガイは答えない。

 

『答えられないじゃないか。ガイはもっと大人な奴かと思ったが・・・。』

ガイがワシワシと頭をかく。

 

「俺にどうしろってんだ?」

 

『仲直りするんだ。じゃなきゃ、俺はあんたみたいな心の狭すぎる奴と旅するのヤだぜ?』

 

「くっ・・・。」

ガイは陽光を睨みつける。

 

「分かったよ。俺も確かに大人気なかった。この場は頭を下げといてやる。」

 

「何よ、偉そうにさ・・・。」

そう言いつつも、嬉しそうだ。

思わず涙が出そうになって、必死に堪える。

 

 

 

これを期に、ミューギィは積極的にガイに話しかけるようになった。

 

ガイも前ほど、ミューギィを鬱陶しがらなくなっていた。

 

ガイとしても、少しずつ彼女を姉としてではなく、ミューギィとして見るようになってきた。

それでも、ついつい姉を連想してしまうが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「国境付近の警備は固めたな?」

メギリン将軍が、副将軍を呼んで問いかける。

 

「貴様も配備についておけ。特に神剣を持った輩には、注意しろ。下手に国内に入れるな。」

 

「畏まりました。」

 

「貴様は休憩室にて次の指示を待て。」

 

「はっ!」

副将軍が下がっていく。

 

それを見送ってから、将軍は一息つく。

 

「ふぅ、時期に一荒れ来るか。天下を分けた大戦争になるかもしれんな。

何せ、我が帝国を相手にしようというのだ。それ相応の勢力でなければ、所詮は絵空事に過ぎん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、帝国はこの道を真っ直ぐじゃないの?」

ミューギィは、看板を指差して言う。

 

ガイは明らかに、道からそれた所を歩いていた。

 

「おまえは本当に頭が悪いな。俺達は、敵の懐に潜り込むんだ。関所からどうどうと通るようなバカなマネなどするものか。」

 

「そっか。書類持ってるから、もし見つかったら一発で計画がバレちゃうものね。」

 

「こっちに秘密の地下ルートがある。ついて来い。」

ガイはミューギィを案内する。

 

(ガイが・・・私に・・・ついて来いって言ってくれた・・・。)

何だかとても嬉しかった。

今まで、ずっと自分を鬱陶しがってたのに・・・。

 

必死に動揺を隠しながら、彼の後を追う。

 

 

 

やがてガイが立ち止まると、ミューギィに振り返る。

 

「こっから先、見るもの聞くもの全てが最重要機密と心得ろ。裏切り者の末路など1つしかない。分かるな?」

ガイの目つきが変わる。

 

ただの脅しではない。

 

ゴクリと喉を鳴らす。

 

「怖いのなら、引き返せ。皆、この計画に全てをかけている。誰かが外に漏らしたらそれだけでお終いだ。

秘密を漏らせば死が待っていると考えれば、悪戯に情報を漏らしはすまい。別に不思議でも何でもない。」

 

ミューギィは拳を握る。

 

「だ、大丈夫。」

 

「声が震えているぞ?本当に良いのか?」

 

「大丈夫!」

今度は、はっきりと言い切る。

 

ガイは肩を竦めて、先を歩き出した。

 

ミューギィも黙って後をついていく。

 

 

 

 

 

やがて、ガイがキョロキョロと周囲を確認しだした。

 

そして、慎重に歩を進めていく。

 

「貴様の名は何だったか?」

 

「え?」

 

「貴様の名を一応聞いといてやる。」

 

「と、突然どうしたのよ!?」

ミューギィが動揺する。

 

「いいから答えろ。」

 

「って言うか、今頃になって何言い出すのよ・・・ミューギィよ・・・。」

言い返す気力もないのか、呆れたように言う。

 

「ミューギィ、俺達の同士になるとここで誓え。」

 

「へ?」

 

「同士でない者に、この先は見せられない決まりなのだ。」

 

「・・・・・・。」

 

「どうするんだ?俺はどっちでもいいんだぞ?嫌ならここでお別れだ。」

 

「同士って・・・何するの?」

 

「我らと一緒になって、帝国と戦う覚悟ができてれば、とりあえずはそれでいい。」

 

「・・・ここまで来たら、引き返せないわ。誓うからこの先も案内をお願い。」

 

「・・・その目、信用しておこう。」

 

(ガイ・・・どうしたんだろう・・・。いつも以上に・・・雰囲気が・・・。)

ガイは目の前の大岩の前でガサゴソやっている。

 

ゴモゴモと呪文のようなものを呟くと、大岩が動いて地下道がポッカリと顔を出した。

 

ガイは、ミューギィに声もかけないで、さっさと地下道に入る。

 

だが、ミューギィがいつまで経っても地下道に入ってこないので、仕方なく声をかけてやる。

 

「グズグズしてると閉まるぞ?」

 

「あ、うん!」

慌てて後を追う。

 

 

 

 

 

地下道は、とても人が出入りするような場所とは思えないほどの、天然の洞窟だった。

だが、岩の隙間から微かに光が零れ落ちており、真っ暗というわけではない。

 

2人とも一言も発さない。

 

時々、ネズミやコウモリのような生き物が通り過ぎる。

 

 

 

そのうち、向こうの方に一点の光が見え始め、そこには1人の男が立っていた。

 

「ガイか?」

その男が声をかける。

 

「そうだ。他に誰がいる。」

 

「それより、後ろの女は誰だ?」

 

「新入りだ。」

 

「仲間である証を見せろ。」

そう言って、男は一枚の絵を床に敷く。

 

その絵には、1人の偉そうな小太りの男が描かれていた。

 

ガイはそれ(絵の男の顔)を躊躇なく踏みつける。

 

「我らに自由あれ。」

合言葉のようなものだろう。

 

「・・・良し。」

男が頷く。

 

「これは?」

ミューギィが疑問を懐く。

 

「この絵の男が、帝国の現皇帝だ。覚えておけ。他でも仲間の証を証明しろと言われたら、同じようにしろ。

合言葉も忘れるなよ。それをしなきゃ、殺されても文句は言えん。」

 

「立ち話もなんだ、さっさと入れ。」

男が後ろの扉を開いて、手招きする。

ガイは無言のまま手早く入る。

 

ミューギィは何故か躊躇っている。

 

「さっさとしろ、のろま。」

 

「の、のろまって言うことないでしょ!?緊張してるのよ!」

 

「アホが・・・。」

頭をかいて、ミューギィを放って行ってしまう。

 

「待ってってば!全く、すぐ先に行っちゃうんだから!」

 

『協調性のない奴・・・。』

“希望”もミューギィに同意する。

 

 

それを見て、慌てたミューギィも急いで後を追った。

 

2人が入ったのを見て、男は素早く扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質素なつくりの地下室に、簡易な椅子と机が用意してある。

いかにも洞窟の中に家具を置いただけのような、単純な部屋だ。

 

そこに1人の無精髭を生やした初老の男が、2人を出迎えた。

 

「ガイ、何の用だ。ついでに聞くが、後ろの女は誰だ?おまえの彼女か?」

 

「ついでって何よ、ついでって!」

思わずカッとなる。

 

「はっはっはっはっはっはっはっはっ!」

男が豪快に笑う。

 

「貴様、その前に否定しなければならんものがあるだろうが?」

 

「否定しなければならないものって?」

ガイは溜息をつくと、男の肩を掴む。

 

「勘違いするなよ。こいつは彼女でも何でもない。ただのオマケだ。」

男って何で皆、こうも無神経なのだろう。

オマケとは酷い言い草である。

 

・・・え?・・・でも彼女って・・・。

そこまで考えて、ハッとなる。

さっさと否定しておかないと、いらぬ誤解を受けかねない。

 

「そ、そうよ!彼氏とかそう言う関係じゃないから、妙な誤解しないでよね!」

 

「遅い・・・。」

ガイにそう言われて周りを見る。

 

2人の女性が、ミューギィに歩み寄ってくるのが分かる。

そして、コソッと耳打ちしてくる。

 

ねぇねぇねぇ片想いなの?そうなの?私応援しちゃうわよ。」

 

がんばってね!諦めないで!

 

「だ、だから違うって!否定が遅れただけで・・・。」

ガイは、そんなミューギィに哀れみの視線を送っておく。

 

 

 

「ところで、ガイ。何か用があるからこそ、こんな遠い所まで来たのだろう?早く用件を言え。」

そんなミューギィを尻目に、無精髭の男がガイを促す。

 

「そうだったな、これを・・・。」

ガイは男にあの書類を渡す。

無精髭の男が、その書類に目を通す。

 

「そうか、遂に来たのか!いよいよ立ち上がる時が!」

男の目が輝く。

 

「決起は大体3ヶ月後だな。まだ十分時間に余裕はあるな。ガイ。」

 

「何だ?」

 

「調度良い所に来てくれた。先日、仲間が偶然上位永遠神剣を発見したのだ。」

 

「何、本当か!?」

 

「ああ。それに協力を仰げれば、戦力は飛躍的に増大する。

そこで、仲間を何人か送らせたのだが、誰1人として契約に成功した者がいなくてな。」

 

「そこで俺に行けと?」

 

「ああ、おまえには神剣を扱うべき才能がある。ひょっとしたら、おまえとなら契約が成功するかもしれん。

おまえの実力は、誰もが認めている。」

 

 

 

その言葉を聞いたミューギィは、そっとガイの顔色を伺う。

彼女はガイの脆さを一番良く知っていた。

 

太陽の下でしか戦えないという致命的な弱点を・・・。

 

ガイは表向き変化はないが、内心では必死に動揺を隠しているはずだ。

 

 

 

だが、ガイとしても新たな神剣と契約が成れば、簡単にその弱点を克服できる。

 

挑戦する価値は十分にある。

悪くはない話だった。

 

「分かった。行こう。それはどこにある?」

 

「待て。口で説明するより、地図を見てもらったが早い。」

無精髭の男が、地図を渡す。

 

「バツ印が付けてあるところに、例の神剣が眠っている。来て早々悪いが、早速行ってもらいたいのだ。」

 

「何かあったのか?」

幾らなんでも、急ぎすぎだろう。

 

「帝国の連中にも見つかったんだ。急がないと、アチラの手に渡ってしまう。

そうなってしまっては、戦況は始まる前から圧倒的に不利だ。」

 

「何!?ならば、グズグズしてる時間はないな。」

ガイは、身を翻すと早足で元来た道を引き返す。

ミューギィも置いてきぼりを食らわないよう、急いで後を追う。

 

こんなのばっかりだ。

ガイは自分を待ってはくれない。

 

 

ちょっとショックだった。

 

 

 

 

 

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あとがき

 

 

 

 

 

 

“ミューギィの夢物語”が、書いてるうちに展開や設定等が定まってきました。

ラストまで大体決まってます。

 

1つ、注意して欲しいのはこの物語はガイの復讐を描きたいわけではないので、そう言う展開を期待するのは危険です。

 

そう言う展開を期待しすぎると意外な展開に戸惑うかも・・・。

まあ、こういうストーリーもありかな、程度に考えてくれると幸いです。

 

悠人達は、この物語に登場しないのかって?

登場する予定です。

ただ“虹色の輝き”同様影は薄いです。

 

 

 

ここで1つお詫び。

 

最初は“神と名がつく者達”が恋愛小説になる予定でしたが、書いてるうちに変わってきてしまいました。

 

“神と名がつく者達”は、途中から冒険ものの色合いが強くなり、このお話ではミューギィの恋に主点がおかれてきてしまったというか何というか・・・。

 

このお話のジャンルはと聞かれれば、“恋愛”なのか?

というとホークネスとしてはそうは答えません。

 

ジャンルはまさに“物語”です。

特にジャンルを定めることなく、1つの物語を描いていきます。

 

 

後、残りの2作品と世界観はリンクするのか?という点ですが、少なくとも“虹色の輝き”とはリンクしません。

展開上、絶対に不可能なので・・・。

リンクさせた方が面白そうですが、無理な物は無理です。

“神と名がつく者達”とのリンクですが、今の所その予定はありません。

展開次第では不可能ではないので、前向きに検討したいですね。

 

 

“ミューギィの夢物語”は、執筆が進んでいるのでひょっとしたら更新のペースが予定より早くなるかもしれません。

 

これからも何卒よろしくお願いします。