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第1章       Syuya in Wonderland

 

第1話 Where am I ?

 

 

 

 

 

―不明

 

城の庭を2人の男が歩いている。

それぞれ手には槍と灯りを携えていた。

「しかし……いきなりアレ(・・)の辺りで突然光が、なんて信じられるか?」

一人が尋ねた。

「さあな。どちらにしても異常が無いか確認するのが俺たちの仕事だ。何も無ければそれでいい」

「それもそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―不明

 

「……う」

瞬はゆっくりと目を開けた。

それとともに意識が覚醒していく。

自分が倒れていることと、顔に妙な違和感を感じた。

ゆっくりと床を手でなぞる。

そして、その正体が床ではなく草むらであることに気付くまで少し時間がかかった。

ここは……どこだ?

ようやく体を起こし、立ち上がる。

見れば月明かりの下で平らな石を敷き詰めて作られた道が草の上を走り、そのむこうには西洋の古城を思わせる巨大な建造物のシルエットが目に入った。

「ここはどこだ?」

今度は声に出してみた。

記憶をたどるが、どう考えても自分がこんな場所に来た覚えはない。

とりあえず辺りを歩いてみようかと思ったその時。

突然2つの人影が現れた。

驚く瞬が目にしたのは、それぞれが槍と灯りを携え、軽装の鎧を身にまとった2人の兵士。

相手の存在に、瞬以上に驚いた2人は一瞬硬直する。

だがすぐに槍を瞬に向け言った。

何者だ! 貴様、どこから入った?

その剣幕に思わず瞬は身を硬くした。

瞬には兵士の言葉の意味が解らなかった。

それどころか今までに聞いたことのある言葉、そのどれとも大きくかけ離れた音の連なり。

一体何が起こっている?

まるで理解ができなかったが、確かな身の危険を相手の様子から感じ取ることは容易だった。

瞬は身を翻すと一目散に走り出す。

 

が、10数メートルほど走ったところで何かに足をとられ、地面に叩きつけられた。

すぐに立ち上がって後ろを見るとそこには真っ赤な、いや、真紅の剣が台座に突き立てられていた。

自分の姿はすでに2つの灯りに捕らえられ、足音は近づいてくる。

瞬は迷うことなく剣を引き抜いた。

その瞬間に剣は光を放ち、瞬を包み込んだ。

 

「それに触れるな!」

兵士の1人が瞬に向かって行く。

今度は言葉が解ることを瞬は不思議に思いながらも、体は自然と動いていた。

優雅とも言えるほどにゆったりと兵士とすれ違う。

「―!?」

兵士は振り返ろうとしてありえないものを見、声を上げた。

いや、上げようとしたが、その声が出ることはなかった。

彼が最期に見たものは‘逆さまの世界’。

ゆっくりとその首は地面に落ち、体はやがて膝をついた。

「っ…っ…」

恐怖のあまり声すらまともに出せず、腰を抜かしたもう1人の兵士。

瞬はその兵士へ一歩一歩近づいて行く。

いまだかつてないほどの高揚感と‘力’を感じていた。

今の僕にできないことなんてない。

やっとの思いで瞬に背を向け、走り出そうとする兵士を瞬が貫いた。

低い呻き声とともに倒れる兵士。

 

瞬は虚ろな目で中空を見つめていたが、やがて目の前の光景に凍りついた。

そして改めて知る。

今、自分が何をしたのかを。

その手からスルリと剣が音もなく落ちた。

頭を抱え、人形のように首を横に振りながら後ずさる。

数歩下がったところで何かにぶつかり、振り返る。

それは、首から上を失った兵士のカラダ。

「ッ!? ――――!!」

声にならない声だけが静かな月夜に虚しく響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―同じ頃

不明

 

「ここはどこ!? 俺はどこにいる!? それに瞬は!?」

秋也は森の中にいた。

もちろんそんな所に来た覚えはなく、瞬もいない。

「訳わかんねぇ!」

頭を抱えて空を見上げる。

すでに日は落ち、夜空には雲ひとつなく、満月が浮かんでいた。

「……さてと」

一通り騒ぐと、秋也は軽くため息をついた。

「騒いでてもしょうがない。本当に困った時こそ落ち着け。常に心に余裕をもって…っと」

近くに落ちていた鞄を拾い、自分自身に言い聞かせながら木の根本に座り込む。

ポケットから懐中時計を取り出してふたを開く。

月明かりを頼りに何とか文字盤を見ると針は8時半少し過ぎたあたりを指していた。

そして思い出したように鞄からケータイを取り出し電源を入れる。

浮かび上がった画面の日付は‘12/18 PM8:32’、秋也が最後に時計を見てから約3時間が経過していた。

しかも圏外。

「マジかよ……」

つーか暑…い?

マフラーとニット帽を外して丁寧にたたみ、ケータイと共に鞄へ戻す。

一度深呼吸をして再び空を見上げた。

そこには相変わらす満月が輝いていた。

「ん? あれ!?」

秋也はようやく、このおかしな状況の中の決定的な異変に気が付いた。

空には相変わらず満月が浮かんでいる。

最後に見たのは2日前の半月。

しかしそれは下弦の月、つまり欠けていく(・・・・・)月だった。

「ここは……どこだ?」

改めて問を口にするが、無論答える者はいない。

 

「――――!!」

今度は何!?

不意に静寂を引き裂く悲鳴を聞いて、秋也は気配を殺しながら辺りを歩き始めた。

すると誰か ‐秋也と同じ制服を着た少年‐ が倒れているのを見つけた。

駆け寄ろうとしたが別の気配に気付いて身を隠し、木の陰からそっと様子をうかがう。

と、1人の青い髪の少女が少年を抱え、翼を広げて飛び去って行った。

あまりの光景を目にして秋也は倒れ込む様に木に寄りかかった。

そして自分の額に手を当てる。

「何だよ、アレ? 女?」

たった今見たものを信じられず、ひとつひとつを声に出してみる。

そうでもしなければとても冷静さを保つことはできそうになかったのだ。

【あの…】

「青い髪で鎧着てて、それに剣? いや待て、それよりもっとおかしな…つーか飛んだ? しかも羽!?」

いや、もうすでに秋也は冷静さを欠いていた。

自分に呼びかけてくる‘声’にもまったく気付かないほどに。

【もし…】

秋也は頭をかくとその場に座り込んだ。

「待て待て待て。それは置いといて……いや置いちゃダメだろ! ……じゃなくて。今の、高嶺か?」

先程見た少年が自分の見知った人間であったことでようやく思考が一旦落ち着く。

「何であいつがこんなところにいr…【人の話を聞きなさい!】」

「!?」

ようやく‘声’に気付いて視線を上げる。

目の前には白く優しい、月のように光る羽根が浮いていた。

【少しは落ち着きましたか?】

尋ねる声に返事は無い。

秋也は落ち着くどころか完全に思考停止してしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―木々の枝がそよぐほどの風さえ吹かない、とても静かな満月の夜。

―‘彼女達’は出会う。

―その運命を共にすることとなる少年と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

to be continued…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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