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場所:ラキオス城 王の間

 

 

 

 

 

 

部屋には物があまり置いていない。けっこうシンプルな部屋だ。

 

そんな部屋の中に、王とオースがいた。

 

「オースよ」

 

「はっ!」

 

「これで余がこの地を支配することとなる。」

 

「………(くくく)」

 

「いつまでも落ちぶれた小国でいるつもりはない。」

 

王は一方的に話しかける。

 

「ふふふふ…、ははは」

 

王は気味の悪い笑いをこぼす

 

「ラキオス王…」

 

「ん?なんじゃ」

 

オースがつぶやくように声を掛ける。

 

「イルのことで良い策がございます。」

 

「本当か!!」

 

ラキオス王は狂気じみた表情になる

 

この部屋は暗く、一陣の冷たい風が吹き抜けた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           第一幕

 

『ヨフアルの差し入れと謁見で踊りましょ』

 

                        中編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所:スピリットの館 第一詰め所

 

 

 

 

 

 

 

 

リンがスピリットの館の前に立つ。槍は持っておらず手ぶらである。

 

「はぁ、第一詰め所は好きじゃないんですが…」

 

ため息をつきつつ、目の前にそびえ立つ館を見上げる。何度見ても立派だとわかる建物だが、今のリンにそんな余裕はなく、手に持っていた紙を見て今回の指令を確認する。

 

「エトランジェを連れてこい…か」

 

この指令が何を意味するのかはわかっていた。

 

もちろんエトランジェに『求め』を持たせるためである。そして、もう一つの目的は……見せしめだろう

 

リンは今瞳の先に何を見ているのだろうか…

 

「できればあの妖精の顔は見たくないんですけど……」

 

その言葉には偽りはない。リン自身その妖精を見た瞬間自我を保てるか心配だった。

 

「ただでさえ妖精が苦手なのに。オースめ私にこの役を回して…」

 

珍しく愚痴をこぼす。

 

このままでは埒があかないのでリンはしぶしぶドアをノックすることにした

 

 

ドンドン

 

 

「ラキオス王国軍兵士です!!妖精!扉を開けよ!!」

 

普段のリンには似合わない口調で館の中に呼びかける。

 

 

 

待つこと数十秒、エスペリアがドアを開けた。

 

「すみませんでした。どのようなご用でしょうか?」

 

エスペリアの顔を見た瞬間、リンの表情が変わった。

 

…よりによって(殺したい、殺したい!)」

 

殺意に満ちた表情でエスペリアを見つめる。手は小刻みに震えていた。

 

エスペリアはその目に耐えきれず視線を背ける。

 

「………」

 

「………」

 

お互いに言葉を交わさない。しかし一方的にエスペリアは怯えていた。

 

その時、その光景を見た青年がリンに飛びかかった。

 

「・・・・・」

 

「くっ」

 

いきなりの襲撃だったが、青年が大声を上げて飛びかかったため、避けることができた。

 

そして左に避けたと同時に青年の横腹に正拳をあてる。

 

 

 

ドス

 

 

 

「・・」

 

青年が奇声を上げて床に倒れた。

 

「ふぅ、エトランジェは凶暴ですね。兄さんも何で肩入れするのでしょうか?(ですが、おかげで落ち着くことができました。このエトランジェには感謝しないと…)」

 

リンは何事もなかったかのように息を整えて呟く。

 

「止めて下さい!」

 

エスペリアが叫びにも似た声で制して、青年の前に立った。

 

その目にはもう恐怖が無くリンの目を一点に見ている。

 

しかし、それは逆効果だった。

 

……邪魔だ、…妖精。そんな目で……貴様が……私を、見るなぁぁぁ!!」

 

その叫びは館中を駆けめぐる。その声は殺意がこもっていた。

 

リンの顔の表情を見て、エスペリアも青年も恐怖の顔に染まる。

 

とくにエスペリアに関しては顔面蒼白になる。

 

「くっ(落ちつけ、僕が兄さんの迷惑を掛けるわけにはいかない)」

 

リンは目を閉じて何も見えない状態にして、落ち着きを取り戻す。

 

「……。スピリット隊に伝令!!一部隊をエトランジェの護衛として付き添わせ、正午にラキオス城に来られたし!!その時エスペリア・グリーンスピリットも同行せよとのこと。これはルーグゥ・ダイ・ラキオス王の命令である!!決して怠ることのないように努められたし。」

 

一気に説明を終わらし、令状を投げ渡し館を後にする。

 

森の中をひたすら歩くリンの表情は青ざめていた。

 

「師匠、僕は変われません………(リア…、僕は…)」

 

そのつぶやきが誰かに聞こえることはない

 

 

………

 

……

 

 

「・・・・・」

 

青年が何やら慰めるかのように声を掛ける。

 

エスペリアは床に座り込みうつむいている。

 

「ラスク様、私はどうすればよいのでしょう………(リア…、私は…)」

 

そのつぶやきは誰にも聞こえることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所:スピリットの館 第二詰め所

 

 

 

 

 

食卓にはお茶とお菓子が置いてある。部屋の中はその心地よい香りが漂っている

 

「おいしいですね〜」

 

まぁ、永アセファンなら一瞬で誰かわかる声がした。そうハリオンだ。

 

カップを置き、目の前に座っている二人の妖精を見た。

 

「えぇ、本当においしいわね。」

 

この声の持ち主はいくら永アセファンでもわかるのは難しいと思われるヒミカだ。(真のファンならわかるかも)

 

ヒミカは笑みをこぼして目をつぶる。

 

「…そうね、落ち着くわね」

 

この声の持ち主はヒミカとの見分けが難しいセリアだ。(個人的に)

 

セリアは前に置いてあるお菓子に手を伸ばす。

 

「…(このナレーションさんは、むかつきますね〜)」

 

「…(なにこのナレーション!失礼だわ。セリアと一緒にしないでほしいわ!!)」

 

「…(あとで覚えておきなさい!私をヒミカと一緒にするなんて!!)」

 

ハリオンはお菓子ほおばっている。(かわい〜〜〜)

 

ヒミカとセリアはお互いを見合って微笑んでいた。

 

 

トントン

 

 

その時ドアをノックする音が聞こえた

 

ハリオンが立ち上がり「はいはい〜」と言いながらドアを開けた

 

「あらあら〜、エスペリアじゃないですか〜」

 

ドアには少し顔が青ざめたエスペリアが立っていた

 

一生懸命笑顔にしようとしているのが感じ取れる。

 

そのことに察したハリオンは食卓に入らしてお茶をついできた。

 

「あっ、…どうも」

 

声には張りがない

 

「いえいえ〜、いいんですよ〜」

 

「それにしてもどうしたのエスペリア?」

 

諭すハリオンの横からヒミカが話しかける。セリアは何も言わないものの、気になるような瞳をエスペリアに向けている。

 

「………えーーと、任務を伝えに来たんですよ。」

 

歯切れが悪い。もちろん嘘ではなかった。来た理由は任務を伝えに来ただけである。だが憂いを帯びた表情は三人を心配させる。

 

「…エスペリア。何があったの?来た理由はそうかもしれないけど、何か辛いことがあったんでしょ」

 

セリアは淡々と言うが声には心がこもっている。

 

「……………」

 

エスペリアは何も答えない。怯えにも見える表情を漏らすだけだった。

 

「まさか、エトランジェが何かしたの?」

 

ヒミカが何かを察したかのように声をあげた。

 

「いいえ、違います。ユート様は優しい方です!!」

 

いきなり大声で否定するエスペリア。三人は目を点にした

 

「…えっ、あ、あのそう言う意味じゃ…」

 

エスペリアは慌てるが、もう遅い。ヒミカはニヤニヤしているのがわかる。

 

「エスペリア〜、そのエトランジェ様が優しいのはわかりました〜。で、何があったんですか〜」

 

この少しのやりとりで空気が和む。エスペリアもため息をついて笑みをこぼした。

 

 

 

「実はですね、…この指令を伝えに来たのがリン様だったんです」

 

「「「えっ?!」」」

 

戻った空気が一気に暗くなった。

 

三人ともこんなことが起きるとは思っていなかったからだ。

 

その理由は、普通伝令を伝えるのは一般の兵士であり、リンのような位の高い兵士が伝令役をするなどあり得ないからである。

 

「よりによってリン様が…」

 

セリアが呟く。

 

三人いやほぼ全員の妖精はリンがスピリットを憎んでおり、エスペリアに関してはそれ以上の感情があると言うことは知っていた。もちろんその理由は本人とエスペリアしか知らないのだが…

 

「………(あらあら〜、イルなら何とかしてくれに〜。も〜)」

 

「………(まったく、イルは何をしてるのよ!!)」

 

「………(本来ならイルが気づいて何とかしないといけないのに。)」

 

「………」

 

静寂が館を包む。冷めたお茶の香りがするだけだった。

 

その後、エスペリアは三人一組である一部隊の護衛をハリオン達に頼んで第二詰め所を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所:城下町 兵士詰め所へと続く道

 

 

 

 

 

 

指令を終えたリンが道をとぼとぼと歩いている。

 

「まったく、僕も本当に進歩がありません…」

 

その表情は憂いに満ちている。

 

先ほどの行動をリンは後悔していた。いくら恨んでいるからって、あの行動は軽率だった

 

リンが首を振る。自嘲に満ちた笑みをしていた。

 

その時…

 

「リン様ーー」

 

「あっ、リン様だぜーー」

 

小さな女の子と男の子がリンの姿を見て嬉しそうに走ってきた。

 

「おはようございます、二人はいつも元気ですね。」

 

「うん、いっつも元気だよー」

 

「元気は俺の取り柄だかんな。」

 

リンが挨拶をすると二人ははしゃぐ。

 

リンは街の人気者だった。子供達からはその凛とした姿に惹かれ、親たちはその礼儀正しさに惹かれているのだ。

 

「ねぇ、リン様。今度剣を教えてよ〜」

 

「剣ですが…。理由は何故ですか?剣は人を傷つけますよ」

 

「おれは家族やみんなを守りたいんだ!!リン様頼むよ〜」

 

「…わかりました。今度一緒に訓練しましょう。」

 

「ほんと、やったー」

 

男の子は飛び跳ねて喜ぶ。

 

子供達、特に男の子の信頼は絶大だった。

 

国民にとってリンは英雄と言っても過言ではなかった。

 

「お兄ちゃんだけずるいー。リン様ー、私も何かしてよーー」

 

「何かと言われても…」

 

その光景はとても微笑ましい光景だった。

 

しかし、リンにとってこの状況はとても好きではなかった。

 

兄であるイルは街から敬遠され、自分だけ信頼されるのは耐えられなかった。

 

だが、兄はいつも笑顔で「せめてリンが国民の心の助けとなってくれ」と言っている。

 

何故自分を嫌う国民を大切にする考えは理解できなかった。だからこそ、リンがイルを信頼する理由となっているのだが…

 

「では、何かして遊びましょうか?(ふぅ、人生は大変ですね)」

 

いつのまにか子供は10人近くいる。親もちらほらいて、挨拶の機会を伺っている。

 

今日も街は平和だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所:兵士詰め所 イルの部屋

 

 

 

 

 

 

部屋は静寂を保つ。

 

「………」

 

イルは読書をしていた。本には『賢戦論』と書かれている。

 

 

ペラ

 

 

聞こえるのは時折本をめくる音だけだ。

 

………

 

……

 

 

 

パタン

 

 

「ふぅ、そろそろかな。」

 

イルは本を閉じて空を見上げる。太陽は真上に近づきつつあった。

 

隊服に着替え、細身の剣を持ち外に出る。

 

目的地は城…、ではなくヨフアルの店だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所:ヨフアルの店

 

 

 

 

 

 

「えーっと、護衛に一部隊が来ているはずだから4つだな。」

 

何個を買うかを決め、店長に頼む。

 

イルにとって待ち時間は苦痛だ。周りの目、声、全てが自分に向けられているのがわかる。

 

目をつむり、他のことを考えることによって、気を紛らわせる。

 

しかし、そんなことが無駄だと言うことは自分が一番よく知っている。

 

嫌なことは全て聞こえてしまう。

 

………

 

……

 

 

「イル様待たせたね。はい、ヨフアル4つ」

 

店長がヨフアルをイルに手渡す。

 

「どうもありがとうございます」

 

硬貨を手渡し店を出る。その後の店の話題はもちろんイルの陰口だった。

 

 

 

「ん?あれは…」

 

イルが店を出て少し歩くと、子供達の笑い声が聞こえてきた。イルは気になって声の方に向かうと見知った人物が子供達と遊んでいた。

 

「リン…」

 

その目には嫉妬と自嘲が込められていた。

 

「ふっ(俺は本当に情けない。兵士としても、兄としても失格だな)」

 

イルは逃げるかのように城へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラキオス城内 訓練所

 

 

 

 

 

 

 

 

ここに人気(ひとけ)はない。薄暗く、甲冑や剣、盾など置いてある。

 

ここ、ラキオス城内にある訓練場は地下にありは普段使うことはない。

 

兵士の訓練は外で行うため、雨などの場合以外には使わないのである。

 

 

 

 

 

誰もいないと思われたその場所に4人の女性がいた。

 

いや、正確に言えばスピリットと呼ばれている“もの”がいた。

 

「ねぇ、エスペリア。エトランジェってあんなに暴れる物なの?」

 

ヒミカがエスペリアに尋ねる。

 

「ヒミカ!ユート様にそのような口を聞いてはいけませんよ。ユート様は私が兵士に叩かれるのを見て助けようとしてくださいました。きっとそのことでお怒りになられていたのですよ。あの方は優しい人です。」

 

エスペリアがヒミカの言葉を注意した後、うれしそうに言った。

 

「ふーん、まぁいいわ。セリアはどう思う?」

 

注意されてもあまり気にしていないヒミカがセリアに尋ねた。

 

「…私は、あまり信用できません。」

 

セリアが目を閉じたまま答える。

 

「はぁ、セリアまで…。」

 

セリアの返答に首を振るエスペリア。

 

「セリアは相変わらずね。じゃ、ハリオンは?」

 

ヒミカがハリオンに尋ねる。

 

「わたしですか〜、そうですね〜、少しかわいかったですね〜。」

 

ハリオンの意味のわからない発言に苦笑する三人。

 

みんな仲が良いようだ。

 

 

コツ コツ コツ

 

 

足音が聞こえ四人の妖精が静かになる。表情にも厳しさが増す

 

しかしそれは杞憂に終わった

 

「あれ、護衛したのはヒミカたちだったんだね、久しぶり。エスペリアさんも元気でなによりです。」

 

足音の人物はイルだった。

 

イルはヒミカたちとの久しぶりの再会に自然に笑顔になる。

 

「なんだ、イルだったんだ。久しぶりね。」

 

ヒミカがほっとした後、笑顔で言った。

 

「…イル様、お久しぶりです。」

 

「イルさま〜、おひさしぶりですね〜」

 

セリアはイルの目を見ながら顔をほころびかせ、ハリオンは頬を染めてにこにこしている。

 

「イル様、私のことは呼び捨てにしてください!それにヒミカ!あなたはイル様になんて口のききかたを。すみませんイル様、ヒミカには私から後で言っておきますから…」

 

和やかな挨拶をエスペリアが消し去った。

 

「いや、エスペリアさんいいですよ。逆にセリアとハリオンが様を付けてることが悲しいぐらいだから。それにエスペリアさんも呼び捨てでいいですよ。」

 

イルが苦笑しながらエスペリアに言った。

 

「…いいですかイル様、私たちはスピリットです。スピリットなのです…(それに、あなたはリン様の兄なのですよ)」

 

目に光を宿さずに、エスペリアはイルに言う。

 

エスペリアには幼なじみという概念は無く、たとえそれが強い絆だとわかっていても、

所詮は人間とスピリットだと考えているので、ヒミカたちがイルと仲がよいのを快く思っていないのである。ましてや、リンの兄である、エスペリアの恐怖の対象である。

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「少し、質問しても良いですか?」

 

少しの沈黙の後、イルが口を開いた。

 

「私に断る権利はありません。なんでしょうか。」

 

エスペリアは少し罪悪感にかられながらも淡々と言った。視線はできるだけイルを見ないようにする。

 

「ありがとう。質問はね、エスペリアさんから見て、俺たち兵士はこの国の何に役に立ってるか教えて欲しい。」

 

イルはエスペリアの目を見ながら尋ねた。

 

「…この国を守っています。」

 

エスペリアは返答に一呼吸遅れながらも答える。

 

「…この国を守っている。その方法はスピリットが戦場へ行くのを激励することがこの国を守ることに繋がっているのですか?それともスピリットに命令を伝えることがこの国を守ることなのかな?」

 

イルは悲しそうな自分の表情を悟られないように目をつぶる。

 

「そ、それは…」

 

エスペリアは返答に困る。なぜならイルが考えていることと一緒だったからである。

 

そう、イルは自分たちがこの国にいても必要なく、スピリットこそが国に大切であり必要だと思っているのである。

 

 

 

ハリオンたちもイルの思いに気づき、顔を見合わせる。

 

 

 

「イルも変わらないわね♪」

 

「…えぇ、あの人は…あの人です」

 

「そこがいいところなんですよね〜」

 

ヒミカは笑いながら、セリアは誇らしく、ハリオンはくねくね?しながら言いつつそれぞれの表情をみて苦笑する。

 

「わかりました。イル様の考えは否定しないことにします。ですが、私の思いも変えるつもりはありません。(何故いつもこの人はこんなことを言うのでしょう?)」

 

イルはエスペリアの表情が少し緩んだ気がした。実際こんなやり取りは過去何回も経験していることであった。

 

「(少しは気持ちを伝えられたかな)あっ、そうだ。みんなにヨフアルを買ってきたんだ。」

 

イルは手に持っていた4つ袋をみんなに渡す。

 

「ありがとう、イル。」

 

「…ありがとう」

 

「ありがとうございます〜」

 

「わ、私は……。」

 

ためらうエスペリアにヨフアルを押しつける。

 

「あ、ありがとう…ございます。」

 

観念してエスペリアもヨフアルを受け取る。

 

「じゃ、また。エトランジェのことを聞こうと思っていたけど、俺は少し早く行かないといけないから。」

 

そのときハリオンが「あっ」っと声を漏らす

 

 

タッタッタ

 

 

しかし足音を響かせイルは階段を登っていってしまった。

 

結局ハリオンの声はイルに届かなかった

 

「………(も〜、イル〜。一緒に食べようと思ったのに〜)」

 

ハリオンは頬をふくらませる

 

………

 

……

 

 

「イルもやるわね、自分の分をエスペリアにあげるなんて。」

 

ヒミカが階段の方を見て言った。

 

「えっ、これはイル様ご自分の物だったのですか。」

 

エスペリアが驚く。

 

イルが何のためらいもなく自分にヨフアルを渡したので、元々あげる予定だったと思っていたのである。

 

「…本来は一部隊で来るはずでしたから。」

 

セリアは少し怒っている。

 

「セリア〜、自分以外の人が優しくされたからって嫉妬しちゃダメよ♪」

 

ヒミカがにやにやしながら煽る。

 

「…そんなこと、思っていません。」

 

セリアが表情を変えないように努め、『熱病』を手に持ちヒミカを追いかけ回す。

 

「エスペリアさん、イル様はね〜、こういう人なんですよ〜♪」

 

ハリオンがヒミカとセリアのやりとりを見て、にこにこしながらエスペリアの方を向く。実は一番嫉妬しているのはハリオンだったりする。

 

「ふふ、本当に変わった人ですね。」

 

エスペリアがハリオンの目を見て、微笑みながら静かに言った。

 

その目にはスピリットとしての誇りの光が少し輝いて見えた。

 

 

 

 

しかし輝いて見えたのはその一瞬であった。

 

そう彼女が来た理由は護衛ではなかったからだ。

 

「………(ユート様すみません。ラスク様私は、私は…)」

 

彼女の瞳にはスピリットという概念の目に戻っていた。

 

………

 

……

 

 

「…では、エスペリア。私たちは戻るわね」

 

セリアはエスペリアに声を掛けて階段を上っていった。

 

「じゃあね、エスペリア」

 

ヒミカも手を振ってセリアの後を追った。

 

残ったのはハリオンとエスペリアだ。

 

「………」

 

「………」

 

二人は何も語らない

 

「………」

 

「………」

 

「エスペリア」

 

「はい?」

 

ハリオンが真面目な顔でエスペリアを見る

 

「辛いことは〜、いつでもありますけど、楽しいことは〜、それ以上にあるんですよ〜。それにですね〜、辛いことはイルが何とかしてくれんですよ〜。ですから〜、これから起こることも、きっとイルが助けてくれますよ〜」

 

「………私の任務を知っているんですねハリオンは。それにそれほどまでにイル様を信用しているのですか?」

 

なかなか人間を信用することに思い切りがつかないエスペリアの表情は怪訝だ。

 

「えぇ、私は〜、みんなのお姉さんですから〜。何でも知ってますよ〜。それにですね〜、私は〜、いつでも彼を信用してますよ〜。」

 

「………そうですか」

 

歯切れは悪い。やはり信用することに抵抗があるようだ。

 

「ふふっ、大丈夫ですよ〜。では、私も戻りますね〜」

 

ハリオンは自分が伝えるべきことは伝えたので階段を上がろうとした。

 

「ハリオン」

 

その時エスペリアが呼び止めた

 

「どうしたんですか〜」

 

「心配してくれてありがとうございます」

 

エスペリアの笑顔は、いつもの笑顔に戻っていた。

 

………

 

……

 

 

ハリオンが笑顔で階段を上った後、そこにいるのはエスペリア一人である。

 

「『大丈夫!!何とかなります!!』か、…ふふっ」

 

『献身』を握りしめ階段を上った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラキオス城内 一階通路

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少しもったいなかったかな。」

 

『ヨフアル大好き人間二号』の称号を持つイル(一位は某女王様)がヒミカたちと別れ、ぼやきながら階段を登ったところにオースが立っていた。

 

手には棒を持っている。

 

オースの周りを禍々しい風が通るのを感じた。

 

「くっくっく、イル様、スピリットと仲がよいのもほどほどにしていただかないと、部下に示しがつきませんよ。」

 

オースが、にやっと冷笑を浮かべる。

 

「そんな示しはいらない!お前が何を考えているのかは知らないが、これは俺の問題だ。口出しをするな!」

 

イルが棒から目を離し、オースに怒りをあらわにする。

 

もともと感情的なイルはスピリットのことになると余計にそれが目立ってしまう。

 

「所詮道具は道具。変えられない運命ですよ。イル様が何を思い入れしているのかはわかりませんが、それ以上深入りすると周りに誰もいなくなりますよ。隊長の任に就くということは周りの信頼も必要なのではないのですか?」

 

オースが怒るイルを尻目に挑発をする。

 

「信頼?必要ないね。年齢で人を判断するような部下を信頼しろだと?!笑わせるな!!それにな俺を止めさせたければ、そのように王に頼んでみればいい。鬼才と謳われているんだろう。」

 

平常心を保とうとするが、挑発に耐えきれず逆に挑発をしてしまう。

 

「くっくっく、その必要はありませんよ。では私は先に謁見の間に行きます。ごきげんよう、イル様。(父親と同じ死に方ができなくて残念だな。)」

 

何も言わなくなったイルを見て顔を嬉しそうに歪ませて去っていった。

 

イルにはオースがもう何らかの手を打っているのはすぐにわかった。

 

一筋の汗が頬を伝わるの感じた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台裏  題『ゆったり』

 

 

 

 

 

セリア「…ふぅ、疲れた。」

 

ハク「え?あまり出てなかったのでは…」

 

セリア「…」

 

 

   グサ

 

 

ハク「がはっ」

 

 

作者ハイペリアへ。セリアは神剣に付いた血をふき取りにお手洗いへ。

 

 

ヒミカ「おつかれー、って誰もいないね。(なんかゴミがおいてありますね…)」

 

ハリオン「あれ〜、本当ですね〜、どうしてなんでしょうか〜(じゃまですね〜)」

 

リン「(結構売れたな)みなさんおつかれさまです。」

 

ヒミカ「あ、リン様おつかれー。(今お金を隠したような…)」

 

ハリオン「リン様どうも〜。私は〜、休憩室にいるみなさんにお茶入れてきますね〜」

 

 

ハリオンはゴミ(作者です(涙))を持って休憩室へ。

 

 

リン「今のうちに後編の予告でもしようか。」

 

ヒミカ「そうですね。じゃ、リン様お願いします。」

 

リン「僕は後編の出番は少ないのでヒミカさんお願いします。」

 

ヒミカ「………(それはひがみです)」

 

 

リン、イル達がいる休憩室へ。

 

 

ヒミカ「えーっと、…では私が後編の予告をします。

    後編ではユート様が『求め』を持ちます。

    実はこの話、バーンライト攻略で一区切りになっているので、

    一話一話がとても細かくなっているんですよ。

    ではそろそろお別…」

    

 

 

エスペリア「ちょ、ちょっと待ってください。」

 

ヒミカ「エ、エスペリアどうしたの?」

 

エスペリア「なぜ私の出番がないんですか?

      私だってユート様との馴れ初めを説明したかったのに。」

 

ユート「え、この話ってそんなの出てきたっけ?」

 

ハク「ちょ、ちょっとユート君、まだ君普通に話しちゃだめだよ。」

 ↑

ハリオンにリヴァイブをしてもらいました。

 

 

ユート強制退出。エスペリア、ユートに同行。

 

 

ヒミカ「何だったんでしょう?」

 

ハク「さぁ?ヒミカさん、あとはやっておきますから、休んでいいですよ。」

 

ヒミカ「わかりました。あと、出演料はラキオス信用金庫に振り込んでおいてくださいね。」

 

ハク「…はい。」

 

 

ヒミカ休憩室へ。

 

 

ハク「(がんばれ自分)それでは少し反省を。

   どうも言葉使いがわかりません。読んでくださっている方々に、

   不満をつのらせていると思います。

  (以外にエスペリアが難しい。ユート以外にはどんな口癖なのだろうか?)

   本当にすみません。では、みなさんが少しでも笑顔になれるように祈り、

   後編へ続きます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『次回主要場面』

 

 

 

 

 

 

 

 

「エトランジェはこの国の守り手だ。丁重に扱え!」

 

 

 

 

 

まさか、戦わせる気だな!!

 

 

 

 

 

ユート様、やりますね。ですがここからはスピリットの戦い方をお見せいたしましょう。

 

 

 

 

 

王よ、エトランジェの訓練をイル様に託してはいかがですかな?

 

 

 

 

 

これからはウィー家の時代だ!!

 

 

 

 

 

そうでなければこのような愚かな者が王になれるわけがないからだ。

 

 

 

 

 

イル、最低限のことはしましたよ!!

 

 

 

 

 

など…

では、また会いましょう

 

 

 

 

 

 

 

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