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エターナルの日常・ユウトと宇宙戦艦


 天を貫いて光の柱が立ち上る。
 ゲートと呼ばれる世界と世界を繋ぐ門だ。
 俺はゆっくりとその中に足を踏み入れる。フワリとした浮遊感とグラリとする独特の感覚

(乗り物に弱いやつなら酔うなあ)

 そんなどうでもいいことを考える。
 今回は単独任務だった。いつもは隣に居るはずのパートナーが居ないのは……まあ子育てに忙しいんだけど

『ユウトよ、よほどなのだな……』
(うるさい! 移動中はすることが無いんだから仕方ないだろう)

 気にしていることを指摘する相棒の『聖賢』に反論してやる。いや、実際暇なんだけど……


 今回の任務はロウエターナルの介入で戦争状態にあるらしいので止めてこいとの事、指令の内容が適当なのは俺の直接の上司のせいだ。


 考えているうちに門の出口が近づいて来た。マナに分解されていた体が再構成される。
 俺はゆっくり目を開けた。


 目の前には……



 何もなかった。

(はい?)

 声に出したはずが声にならない


 空気も無かった。


そう!


目の前に無限に広がる大宇宙!



飛び交うビーム!



炸裂するミサイル!



巨大な人型機動兵器



そして300メートル以上はあろう超巨大宇宙戦艦


目の前では宇宙戦争の真っ最中でした。



(グフッ……息できね……)


 じたばたじたばた


 じたばたしたらぐるぐる回って大変気持ちが悪かった。


『お、お、お、お、落ち着け! 落ち着くのだ! ユウト』
(お前も焦っているじゃないか! ぐはっ、死ぬ、何とかしろ!


 俺の魂の叫びに聖賢はオーラフォトンでバリアを展開する。


「ぶはっ・・・聞いていないぞ! こんなことは!」


 俺はとりあえずバリアの中で叫んでみた。そして戦争を止めろといわれていたことを思い出す。


「と言うかコレを止めるのは無理があるだr・・・」




ズドンム。

 俺のセリフは飛んできたミサイルでかき消された。


「ちょっと待て! なんで俺が狙われるんだよ!?」


 俺はクルクルと吹き飛ばされながら聖賢に愚痴った。いい加減回りすぎて気持ち悪くなっている。

『ユウトよ、忘れるな。こいつらはロウエターナルの介入を受けている』

 なるほど忘れていた

「で、どうするんだ?」
『知るか!』

 相棒から帰ってきたのはなんとも頼れるお言葉であった。





一方そのころ
 太陽系連合軍旗艦ブリッジにて

「宇宙空間になぞの物体?」

 太陽系連合軍のタフト提督は遠くでじたばたしてぐるぐる回る光る物体を目にして文字通りひっくり返った。

「あ、アレは一体なんでしょうか? 提督」

隣の副官もひっくり返っていた。


と、とりあえずミサイル」
「は、はい! とりあえずミサイル」


 律儀に繰り返す副官、発射管からミサイルが射出される。


数分後
 原形をとどめたまま宇宙遊泳するユウトを見て彼らは再びひっくり返ることになる。



再びユウト



 とりあえずオーラフォトンを噴射して姿勢の制御に成功した俺はビームの雨の中を逃げ回っていた。

 掠っただけでも死にそうな気がするのであえて受けてみようとか思わない。

「ぬあぁ! 死ぬ、絶対死ぬ!
『う、うるさいぞ、ユウト』

 聖賢もかなり焦っている。いや気持ちはわかるが・・・

 その時、目の前に人型の機動兵器が顔を出した。



『あ゛』



 目が合っちゃいました。



一方そのころ
 機動兵器のコックピットにて


 カトー大尉は目の前でぐるぐる回る光る物体に近づいた。

「アレは何なんだ?」
一、異星人の秘密兵器

二、実はただの隕石

三、見た目、凶悪なグロイ物体


 三だけは勘弁して欲しいところだった。

接近する、さらに接近……

 目の前で回転がストップ


 正面、目が合った。


―回答、学生―


「なんでやねん!」

 とりあえず故郷の伝統的突っ込みを入れてみる大尉であった。



さらに一方そのころ
  旗艦ブリッジにて

「て、提督」
「ど、どうした」
 冷静になったタフト提督は副官の慌てぶりにビクッと振り向いた。

「前線のカトー大尉から映像入電!」
「モニターに出せ」

 正面のメインモニターにデカデカと映し出されるユウト。

 ……沈黙
「あー……学生か?
学生ですね」

 ……再び沈黙


『なんでやねん』

 ちなみに提督の奥さんは日本人らしい



再びユウト


 俺はゆっくりと顔を上げる…
 カメラアイがこちらを見つめている
「えーっと…なあ、聖賢…この場合どうしたら良いんだ?」

 こんな時こそ冷静な相棒が頼りである。
『う、うむ…と、とりあえず挨拶だ』


 相棒、めちゃくちゃ混乱していました。


「そ、そおだよな…こ、こんにちは」


ミサイル飛んできました。


「のぉああ…死ぬ、今度こそ死ぬ」
 俺はオーラフォトンを一気に噴射して離脱する。
 さらにもう一発追ってくる。

 そのミサイルのボディに不吉なマーク…


 たぶん原子炉とかについているアレ

「マジで?」






ピカッ……ずどーん







 数秒後、光が消失した。
俺は……あれ?

 無傷?
「なあ聖賢」
『どうしたユウト』
「ここってマナ濃い?」

『ああ、相当濃い



OK。 もう核だって平気だ


一方そのころ
 太陽系連合軍旗艦ブリッジにて

「て、て、提督」
「な、な、なにか?」

 目の前で繰り広げられるステキな光景に思わず上擦った声で会話する提督と副官


「が、学生が戦艦を解体しています」
「き、きみにもそう見えるのか」

 目の前では高校の制服を着た学生に見える「何か」が光る棒をぶん回して解体作業を行っていた。
 敵も味方も次々とバラバラにされ脱出艇が旗艦に向かって全速で退避してくる。

『ご、護衛艦半数撃沈!機動兵器損耗率80%を超えました。』
「あ、悪夢だ…」

 次々と入る報告に副官が額に手を当てて呻いていた。

「…こ、光子魚雷だ! この際仕方が無い!」
「りょ、了解。」

 心の中で効かなかったらどうしようと思う副官であった。



再びユウト



 俺は聖賢を振り回し周囲を航行する人型兵器と戦艦を片っ端から解体していた。

「アッハハハハハハ…」

 妙に楽しいのは何故?

 レーザー(見えないけど)もビームも目の前で拡散し、ミサイルは聖賢の一振りで弾頭を切り落とす

 人型の機動兵器は手足を切り落とされてダルマと化し、戦艦は艦首から真っ二つ

『ユウトよ、我らに敵は無いぞ!』

 聖賢のテンションも妙に高かった。
 そして俺が細長いミサイルを一本切り落とした瞬間



周囲はものすごい光に包まれた。




一方そのころ
 太陽系連合軍旗艦ブリッジにて

「や、やったか?」

 タフト提督は目をぱちぱちさせて画面を見つめる。
 数秒たって光子魚雷の爆発による電波障害が回復、レーダー班が死に物狂いで索敵を行う

「も、目標…確認できません」

 ブリッジから歓声が上がった。

「提督、敵旗艦より入電。」
「モニターに回せ」

 モニターに映された敵艦隊の女性士官は青い顔で口を開いた。

『あ、あなたがた太陽系の力は解りました。お願いですから停戦させてください
「ま、待ちなさい! アレのことを言っているなら我々とは無関係だっ!」

 思わず弁解するタフト提督。
 女性士官はそのセリフの意味をしばらく理解できないようだった。

 しかし、数秒後にはその顔はさらに青くなっていた。

『で、ではアレは何なのでしょう?』
「我々にも不明だ」
『も、もしや他にも同じようなモノが存在するのでは…』


 この一言は効いた
 効果抜群だった。
 たった一人の学生……いや謎の物体に両軍の旗艦艦隊が壊滅的な被害を受けたのだ…
 不吉な想像が二人の提督を満たしていく

「停戦、しませんか?」

『よろしくお願いします』

  こうして歴史的な星系間和平条約が締結されることになるのだがそれはまた別の話…





 一方、ユウトは深宇宙を回りながら飛んでいた。


「なあ、聖賢」
『どうした? ユウトよ』
 俺はくるくる回りながら宇宙旅行を楽しんでいた。


 ウソです。
 ぜんぜん楽しくないです


「…帰りたい
『そうか。我もそう思っていたところだ』

 そして、俺の涙は宇宙空間をフワフワと漂っていくのだった。



この後

 俺がゲートを使って元の世界に戻るまで二、三日飲まず食わずで宇宙旅行を続ける羽目になったことだけ記しておこうと思う。




追記

 時深の持ってくる任務は二度と受けないことにする。






あとがきという名の言い訳


 おはこんばにちわ(謎)作者の雅楽斎ともうします。

 本日はこのような勢いで書いたつたない文にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
 この作品は無限に存在する平行世界の中に科学技術が極端に発達した世界があってもいいじゃないか! という仮定のもと成り立っております。
 よってこの後、ザウスさんから 「実は世界は七つだったのだぁ!」 とか言われると成り立たなくなります。


 ちなみにバリア張っても空気はどうすんだ? とか放射能は? とかいろいろつっこみどころはあると思いますが……


 そんなこと私が知るわけ無いじゃないですか! ああ、石は、石は勘弁してください〜

 細かいこと気にせずに全部大丈夫ってことにしとておいてください(ぉぃ

 ちなみに作中の提督さんとパイロットさんの名前は某絢爛舞踏祭から借りてきました。電波の送信元です。(笑)

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