カツカツ・・・そんな足音と共に、動けないタキオスの元へ1人の男が向ってくる。
「?・・・誰だ?」
「俺だよ、タークさんよ」
いたのは光陰。体はボロボロ、切り札の使用で右腕はまったく上がらずそして全身の皮膚が爛れていた。
「・・・気が付いていたのか、ラキオスのエトランジュとしていたのが俺だと」
「まぁね・・・流石に2度もボロ負けしたんだ、あんたの太刀筋だって言うのは気が付いてたさ」
「・・・で、何のようだ?」
「俺のキャラじゃないんだが・・・負けっぱなしってのは、性に合わない。もう一度だけ戦わせてもらうぜ。あんたも傷だらけだがそれは俺も同じ、条件は五分だろ」
光陰の傷は技の反動、そしてンドゥシトラの最期の爆発に巻き込まれた為。タキオスに関してはユートとヘリオンに食らった傷で両腕は使えるが腹はざっくり切り裂かれ、足が動かない。
だが、タキオスの性格なら答えは1つだけである。
「面白い・・・受けてたとうか」
「そうこなくっちゃぁ・・・な!」
そして2人は戦う。
これはヘリオンとはかかわりのない戦い、光陰が意地を見せる、ただそれだけのための戦い。
2人の間で強烈なオーラフォトンの輝きが起きた。
・・・それから私とユート様、そしてエスペリアさんの部隊の3人は通路を駆けて行きます。
タキオス様との戦闘で時間を取られた為、私とアセリアさんがウイングハイロゥを使用して引っ張っていきました。
そして今・・・私達は法王テムオリンと対峙しています。・・・そのプレッシャーは同じエターナルとなっても変わらない位の・・・強大さを秘めていました。
彼女は余裕たっぷりの顔で私達を待ち受けていました・・・。
「おやおや・・・坊やたち、やっと到着しましたのね」
ユート様が前に出て神剣を構え。
「そこをどけ、テムオリン。俺は一刻も早く再生の暴走を止めるんだ」
「うふふふ・・・通りたいなら通ってもよろしいですわよ〜」
「!・・・なんだと?」
どういうことでしょうか・・・罠なのかそれとも・・・。
「貴方達が来るのをまってたのですよね・・・うふふ。実はたった今、『再生』の暴走を早めてみましたの。後せいぜい5分程度で『再生』は暴走いたしますわ」
「「「!!」」」
いま・・・なんて
「うふふ、本当は時深もここにいてくれればその顔が拝めましたのに・・・残念ですわ」
「くっ・・・エスペリア、アセリア、オルファここを頼む、そいつを止めていてくれ!ヘリオン頼む、俺を全速力で運んでくれ!!」
「は、はい!!」
私はハイロゥを広げユート様を抱きしめ、そして全力で向います。再生の間へと。
それを眺めるテムオリンその目に嘲笑の色を浮かべている。
「ふふ・・・無駄ですのに」
テムオリンは追ってきません、でも今はそれにかまう暇は無い・・・お願いしますエスペリアさんたち・・・。
「テムオリン!貴方はここで止まっていてもらいます」
エスペリアが槍をかざす、だが
「わたしは動きませんわ。坊や達の絶望の悲鳴をここでじっくり・・・じつくりと聞かせてもらいますから」
「やけに余裕なのですねテムオリン・・・」
すると、馬鹿にするかのようにこう言い放つ。
「当たり前ですわ。何しろここからあの間へはハイロゥを使用しても5分以上かかりますもの」
「!!・・・そ、そんな!」
「うふふ・・・その顔・・・絶望を感じているその顔は、やっぱり最高ですわね」
私は今―――全力で飛んでいる・・・でも。
「ユート様・・・残り後70秒・・・間に合いません!」
「くっ・・・お願いだヘリオン、間に合わせてくれ!!」
(お願いします!『闇薙』様・・・わたしに・・・刹那の刻を光速へと還る力を!!)
闇薙の永遠神剣としての力・・・様は1割秘めていると言いました。だからせめてその力を引き出して・・・その想いがわたしに力を与える。でも無理な力の放出はわたしの限界を超え疲労は極度に達しました。・・・体に負荷が掛かる・・・。
「60・・・50・・・見えまし・・・た・・・っ・・・くぅ」
そういった私は力尽きユート様ごと『再生』の前に落下しました・・・。
いま俺の目の前には雑魚が一匹と目的の再生がある。
「きたか・・・暴走まであと40秒。諦めるんだな。」
「く、そうはさせない・・・『聖賢』」
『分かっている!!ユートよ、ここに来るまでに既に力は貯めていた。全力で解放しろ!」
「・・・ぉぉぉぉぉおおおおおおお・・・『オーラフォトンノヴァァァァァァァ』」
光は瞬に向う・・・・。
「ふんっ・・・僕にそんなもので通じるとでも思って・・・?・・・まさか!!」
オーラの輝きは瞬を完全に避け、そのまま再生に向う。
無視されたことに怒る瞬は愚かにもそれを止めようとする。
「僕を舐めるなぁぁぁぁ・・・『オーラフォトンブレェェェェェェィィィィィク』」
黒い閃光を体に纏う瞬、それが黒い閃光となり俺の出した攻撃に追いついて消そうとするが・・・やはり雑魚だ、本命はこっち。
『ユート、これが本当に最後の力だ、受け取れ!』
「ああ・・・『コネクトヴィル』・・・いくぞ!」
そして俺は駆け出す・・・。
(雑魚に用は無い・・・目的は再生の破壊!)
「はぁぁぁ!!・・・消えろ!!」
そう言ったときと同時に、俺の放った技を瞬が消し去っていた・・・。そしてさらに「ちぃ・・・僕を舐めるな!」といい俺に突っ込むが・・・。
「砕け散れぇぇぇぇぇ!」
「させるものかぁ!」
そういい俺の剣の前に立つ瞬・・・そして俺は瞬の『世界』ごと『再生』を砕いた。
(・・・ぼ・・・僕を・・・無視するな・・・)
最後にそんな思念が聞こえた気がしたが・・・無視した。
(・・・10・・・9・・・8・・・7・・・6・・・あっ)
身動きの取れない私は、地面に倒れたまま『再生』が崩れる姿を見つめていました。スピリットの母・・・その最期を。
(間に合った・・・ユート様・・・)
そして『再生』破壊で煙がかかりまったく見えなかったところからうっすらと・・・人影がみえてきました。
現れたのはユート様。
私と同じように全部の力を使い切った為、剣を支えにこちらへと歩いてきます。
「ヘリオン・・・勝ったぞ」
「・・・はい。・・・しっかりと見ていましたユート様」
私は倒れたままの状態で、微笑むユート様へと微笑み返す。
目的・・・この世界を救うという目的が果たせたのだと安心した為。
その時
「あらあら・・・失敗作だったのかしらねぇ・・・この『世界』の坊やったら」
「!・・・テムオリン、どうしてここにいるんだ!」
すると「ふぅぅ」とため息を吐きながら。
「いえいえ、どうも時間になっても崩壊が起きないので心配になって見にきたのですわ・・・あの雑魚どもを蹴散らしてね。それにしてもシュンは不甲斐ない。・・・でもこれは好都合ですわね。まさかエターナルが2匹も無力な状態で転がっているとは・・・うふふ、その神剣のマナ、食べさせてもらいますわ。」
そういい杖を掲げるテムオリンだが。
「・・・もし止めを刺そうとする場合、その瞬間私の時詠が貴方を突き刺すでしょうね、テムオリン」
入り口に人影がさらに1つ・・・そこには時深様が立っていました・・・そして。
「すみません、悠人さん、ヘリオンさん私があんなことをしてたばかりに・・・」
「・・・なら今後へたれっていうのは止めてくれよ、それで許すから・・・」
「私は別に平気です、助けてくれてありがとうございます時深様。」
2人がそういったのを聞き、安心した時深様はテムオリンに向かい合うと。
「さて・・・どうしますかテムオリン?戦うのでしたら遠慮はしませんが。」
「・・・ふふ・・・しかたありませんね。今日のところは引き上げましょうか『年増のおばさま』おほほほほっ。」
そういい消えるテムオリン・・・良かったと思ったのもつかの間、俺は時深のやつあたりを受ける羽目になった・・・憎しテムオリン。
俺たちは崩れ去る神殿から倒れていたエスペリア達を回収し脱出した。途中光陰が倒れていて、タキオスの姿はきえていた、何があったのかはわからない。そして外にでると今日子達が全員無事で俺たちに駆け寄る・・・・ああ、終わったんだな。
その後・・・俺たちはラキオスでの新王国設立の宴に誘われた。ガロ・リキュアと言う新しい国家の誕生である。
いままでこういうことに招かれたことの無いヘリオンは緊張しすぎで、まるで俺と始めてあった時のようにあがりながら宴の席にいた。
小動物っぽく「あぅぁぅ」いっている・・・変わらないなぁ・・・。
・・・俺はあのラースの森でのことをエターナルとなる時に思い出していた、一瞬の邂逅だったために記憶に無かったのである。悪かったと思いながら俺は宴の中央で上がりまくって動けないヘリオンを救出し、喧騒から離れる為人気の無い・・・元俺の住んでいたスピリットの館へと移動していた。(ちなみに時深は酔っ払って話すら聞いてもらえないので放っておいたことを付け加える)
俺の部屋のベッドにヘリオンを支えつつ座り込む。
「ヘリオン・・・平気か?」
「はぅ〜〜〜〜あ〜ユートさまれふぅ〜♪」
がしっと抱きついてくるヘリオン・・・上がりまくってるだけかと思ってたが酒も飲まされてるなこれは。
「こ、こら酔ってるなヘリオン・・・まったくこんな子供に酒を飲ますなんて誰・・・(時深か・・・あいつめ)」
「ゆ〜とさま〜、こんやはここで一緒にねてもいいれふか〜」
酒を飲むと・・・ここまで変わるとはなぁ。さっきから俺に抱きついてきたり甘えてきたりしているし。俺は離れなさそうなヘリオンを仕方なく自分のベッドに寝かせた。
ふと思う・・・もう戦いは終わったのだ、平和な暮らしが待っている。ならヘリオンは残すべきなのか・・・と。
「・・・ヘリオン」
「・・・ふぁい?」
「俺と一緒でいいのか?」
それは俺と一緒に戦い続ける、そんな第二の人生でいいのか・・・そういう意味。
酔っている彼女には理解できないかも・・・と思った。
「・・・わたしはユート様だけの為にいるんです」
一瞬だけ真剣な顔に戻りそうはっきり言う、おれは彼女の頭を撫でつつ。
「俺もヘリオンとなら永遠の時を生きられると思う・・・」
この自分を慕い想う少女となら・・・、しばらくするとヘリオンはうつらうつらとしてきてまた俺にしがみ付いてきた。
「まったく・・・一緒に寝てあげるよ。だから今はゆっくりと・・・お休み」
「わぁぁい・・・ふふ・・・すー・・・すー・・・ユート様ぁ・・・大好き〜・・・すー。」
可愛らしい寝言を言うヘリオン・・・それを見つめ。
「ああ、俺もだよ・・・ヘリオン。」
ヘリオンの額に軽くキスをし、そして自分に近寄らせ一緒のベッドで横になる
(まぁしかし・・・明日の朝には慌てまくった顔を見させられるんだろうな・・・)
俺は彼女に永遠の時を生きると誓った。でもまだ妹のような感覚が抜けない・・・でも時間が解決してくれるだろう、俺達には無限の時間があるのだから・・・
そう思いつつ俺も深い眠りの中に落ちていった。
その夜の月はとても綺麗だった。
まるで精霊が俺達に祝福するかのように・・。