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マロリガンとの戦いは終わった・・・・、クェド・キン大統領以外は戦争を続ける勇気も無く・・・また、マロリガンの最強部隊の稲妻部隊、そしてエトランジュを奪われた以上戦うすべはなかったのだ。
 俺達スピリット隊はレスティーナの指示の元、マロリガンの制圧を急いだ・・・・、これが終わればいよいよサーギオスとの戦いだ。はやる気持ちを抑えつつ俺は仕事を続けた・・・。

「・・・へたれ。これは何処に運べばいいの?」

「へたれ〜♪」

「っ・・・おまえら毎日毎日へたれへたれいうな、こらぁぁ!」

 逃げる二ムたち・・・「・・・くす」とか笑ってやがる・・あついらめ

「ユートさま、遊んでないで速くこの物資を運んでください、5日後には法王の壁を崩すのですから」
 
 俺達と同じように物資を運んでいるエスペリアから注意される。
 今俺達は、マロリガンでの戦いで失われた部隊のスピリットの補充、そして長い戦争で使われる食料などの物資を補充していた。
 スピリットも食料を食べなくては完全な力は発揮できない、その為必ずこういう準備は行なわれる。
 もっとも前線を戦う一軍のスピリット隊は、エスペリア以外のものはいまだ戦地にいる。
 荷物を運ぶのは二軍以下のスピリットと参謀役でさっきまで会議を共にしていたエスペリア。そして人間の志願兵達である。
 人間の力はスピリットに対して大きく劣る、その為俺はこういう作業に彼らを振り分けていた。

「はぁ・・・はぁ・・・わ、わかったエスペリア。そういえば光陰達とマロリガンの軍はどうなっている?」

 それを聞くと・・・エスペリアはにっこりと微笑み。

「喜んでください、コウインさまのお人柄のせいかもしれませんが・・・一部を除き、稲妻部隊を含むマロリガンの全軍が我が軍に加わりました。ただいまスピリットの館の増館も予定されています」

「そうだったのか!!・・・光陰・・・ロリコンなだけじゃなかったんだな・・・見直したよ。」

「・・・おい、だ〜れがロリコンだって?」

 すると隣で作業していた光陰達がやってきた

―――ずびしっ!

「おまえ」

「変なことをいうな!俺はロリコンで無く可愛い子が好きなだけなんだ!!」

 すると・・怪訝な顔をしたエスペリアが。

「あの・・・ユートさまその"ろりこん"ってなんなのですか?」

「ああ・・・俺達の世界では幼女趣味で、幼い子供を見ると「はぁはぁ」と荒い息を立てる病気を持つ危ない奴のことだ」

「「!」」

―――ズザザザザッ・・・

 びくっと後ろに身を引くエスペリア・・・他のスピリットもその会話を聞いていたらしく恐ろしい物を聞いたという顔をしている・・・。
全員身を引く。

「ち、、、ちがうんだ・・・お、俺は・・・うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 涙を流して走り去る光陰・・・・ふっ哀れな奴。とりあえず恨まれたかもしれないが・・・・今日子が回復するまでオルファたちに手は出せないだろう・・・そうおもった。
 あの戦いの後、説明をした今日子は長い時間精神支配されていた影響で倒れずっとベッドに横たわっている。生活的には影響が無いがまだ剣を持って戦うほど回復はしていないらしい。
 その時、今の時間を知らせる鐘の音が鳴り響く。

「あっと・・・悪いがそろそろ例の時間だから出かける。・・・エスペリアはどうする?」

「わたしは既に済ませましたので」

「そうか、じゃあ後は任せた」

 俺は町の片隅にある共同墓地へと足を運んだ。

「あ、ユート様こんにちは」

「・・・・・・へたれもきたんだ」

 既に何人かスピリットが集まっていた、ある1つの墓の前で。墓には「タークここに眠る」そう書かれている。あの日結局タークは戻ってこなかった。探したが神剣の残骸もなく・・・体はマナに帰ったのだろう、そう思われていたために彼は死んだと思われた。そしてここに、何も埋まっていないのだが墓を作った。俺のいなかった二ヶ月でかなり信頼されていたらしく多数のスピリットが涙を流していた。

「ターク・・・あと少しで戦争が終わる。見守っていてくれ。」

 そして俺は墓から立ち去る・・・戦いの為に。

 

 そして・・・・それから5日後、俺達は法王の壁の前に立っていた。

「これが・・・法王の壁か」

「はい、ここを突破して、さらに内壁である秩序の壁を崩します。そうすればサーギオス本城での決戦となります」

「ユートがんばる」

「おるふぁもがんばるよぉ〜パパ♪」

「よし、それじゃ突破するか。全軍・・・」

 ・・・と、エスペリアがそれを制して俺に言う。

「お待ち下さいユートさま、既に内部へと黒スピリット部隊を派遣しております。内部の混乱を確認後、攻撃を仕掛けるのがよろしいかと。いま、我々とサーギオスの戦力は我々の方が上です。たしかに力押しでも勝てますが、冷静に対処することを私は望みます」

「わかったよ、エスペリア。それで・・・潜入したのは誰と誰だ?」

「はい、ウルカさまの隊とファーレーンの隊そしてヘリオンの隊とローゼスの隊それとマロリガン出身のファーナの隊です」

 それを聞き・・・俺は顔をしかめる。

「ウルカ達は分かるが・・・ヘリオンはまだ指揮官としては無理なんじゃないか?真面目で一生懸命なのは分かるが・・・力が足らないと思うが。」

「ふふっ・・・あの子のことが心配なのは部屋で抱きしめていたからですか?」

 俺は慌てる・・・エスペリアらしくない、その瞳には悪戯をする子供のような光が・・・。

「って、馬鹿違う冷静な意見だ!それに俺にとっては妹みたいとしか思ってないし・・・」

 それを聞き今度は「はぁ・・・」とため息を。

「・・・ユートさま、鈍感ですね」

「・・・へたれは今日も鈍感」

「鈍感〜♪」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(なんで俺がおちょくられないといけないんだ。)」

(というかそれだけ言いにここに来た二ムとクゥって一体・・・)

「話を戻しますが、おそらく平気です。彼女の力は既にファーレーンと五分近い力に育っています。ユートさまの眠っている間に力をめきめきとあげましたから」

「そうか・・・」

 そういい・・・俺は巨大な壁を見つつ・・・・壁の内で戦っているヘリオン達のことを考えていた。



「ちぃ・・・手前がこちらを引き受ける、先に右部隊を叩いてくだされ」

「くぅ・・・まさかこれほど早く発見されるとは・・・ローゼン、ヘリオン貴方たちの部隊が敵をここで食い止めて!あそこは私とファーレーン隊で潰します!」

「は、はい!」

「了解!」

 ・・・・・凄まじい戦いでした・・・・かなりひっそりと進入し、法王の壁とその後ろの拠点、リレルラエルを混乱に陥れる任務・・・それだけのはずだったのです、ですがさらに後方の拠点からも援軍が来ていたらしく・・・・私達は囲まれてしまいました。
 向かってくる敵部隊の数はおよそ・・20部隊。4倍の兵力差では逃げることしかできません、一応戦地をわざと法王の壁から外し、本体へと援軍を派遣する合図をしたので・・・任務は完了。後は生き延びることです。

「ち・・・参る!『星火燎原の太刀』」

 ウルカさんは鋭い切り込みで敵の一部を崩そうとしている。だが敵5体ほどを蹴散らしたすぐ後をさらに敵の後続が狙う・・・あぶない!

「『アイアンメイデン』」

 咄嗟にウルカ隊の誰かが援護をしようとしましたが・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・死ね!」

「!!」

 そこを狙うように・・・敵が!?

「ぐぅ!?」

 倒れるその少女・・・・・それに止めを刺しそのスピリットが・・・私に向かって来る!?

「・・・おねがい!」

 覚えたばかりの最上級スキルの1つ・・・

「『バニシングハイロゥ!!』」

 深淵の闇が敵の部隊を包む、包む、包む・・・・・くっ・・・。

(ダメ・・・このままじゃ止められない・・・。)

 どんどん体内がマナを消費される、その成果は敵のハイロゥを使用不可にすること、でもこれはこの場では諸刃の剣でした。
闇に包まれながらも敵兵が迫る・・・、こんな邪魔な行動を敵も黙って見ていてはいてくれません。

「危ない!はぁぁぁ『月華の投擲』敵をけちらせぇぇぇぇぇぇ!」

 ローゼンさんの援護攻撃・・・助かった。でも・・・これで敵の注意は今度はローゼンさんに向いてしまった。

「ふっ、はっ、たぁ!」

 チャクラムを自在に手で操り斬り倒す・・・そう、投げる暇がないんだ・・・、それに気づきファーレーンさんが援護に移ろうとする・・・もう部隊として全員生きてるのは私の部隊しか残ってない・・・ここはわたしも向かわないと、そう思った時。

「ヘリオンは左翼から突破!ここの状況をしらせて!」

「手前は右翼をひきつけます。さぁいきなされ」

 皆限界だと思ったのでしょう、そういい私に道を作ってくれる

(くっ・・・・・皆死なないで)

 わたしはハイロゥを広げて自分の部隊に指示を送りつつ左翼を突破しましたが・・・・。

―――ザシュ・・・

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 後方から誰かの断末魔の声が!・・・・でも引き返せない、伝えないと、全滅するから!
私はハイロゥに残りの全ての力を込めて本陣へと向かいます・・・でもその前に敵部隊が!

「生き残りがいたか・・・・ふふ・・・・お前たちも殺してシュン様に捧げてやろう・・・む?」

「はぁ・・・・たぁぁぁぁ!!」

「お、おぉ?」

 私は全力で斬りかかります、でも数が多いい・・・これじゃ抜けられない

 私達は頑張りました・・・でも敵部隊にかこまれ、部隊の子が1人・・・また1人と殺されていく・・・それでもなんとか突破しようとしました・・・でも。

「てこずらせてもらったけど・・・そろそろ。」

 すうっと剣を振り上げる敵兵・・・くっ、体よ、お願い動いて!
 今の私はハイロゥの力で浮いているだけ、全身傷だらけで泣きたいくらい・・・痛い・・・とても痛いんです。でも負けない!

「ユート様の・・・為に絶対に・・・」

「ほぅ・・・お前は悠人の知り合いなのか?」

「!?」
 
 ふと声が聞こえる・・・それは上空から。
 1人の精神を飲まれた黒スピリットに支えられて奇妙な格好をした少年が現れていました。

「はっ?こ、これはシュン様・・・どうしてこちらへと」

「なぁに、ただの暇つぶしだが・・・面白いことを考えた。そいつをよこせ」

「はっ!」


 3時間後・・・俺達は、法王の壁を突破。そしてリレルラエルの町まで軍を進めた。
 意外なほどに抵抗はなかった。
 特に青と黒のスピリットは敵軍に殆ど見かけない、別働隊がうまくやってくれたようだ。
 いまは拠点の制圧中である。

「ふぅ・・・案外たやすかったな、リレルラエルまでこんな短時間で決着が付くとは思えなかった」

「別働隊のおかげですね、ウルカたちが注意を引き受けていなかったらきっと苦戦したはずです」

「そうだな、それで・・・結局そのウルカ達はどうしたんだ?」

 すると、少し不安げな顔をして。

「・・・本来の作戦では別働隊は攻撃を仕掛け、直ぐ後方の森へと撤退し、我々がニレルへイムを責めるときに合わせて背後から強襲をする・・・なのですが、何かトラブルでもあったのかもしれません」

「そうか・・・よし、余裕のあるものはこの地の周りを調査してく・・・?・・・あれは・・・誰だ?」
 
 「え?」

 エスペリアも俺と同じ方向を向く、空中のある一点を。そこには白いハイロゥのスピリットがフラフラと体を揺らしつつ低空でこちらへと向かって飛んでくる・・・あの小柄な体躯は・・・。

(あ、あれはヘリオン!?)

 そしてそのまま地面に落下していく。低空とはいえまだかなりの高度だ・・・・まずい!

「くっ、アセリアあそこで落下しそうな子を受け止めてくれ!!」

「・・・・・・ん!」

 全力で飛ぶアセリア・・・頼む間に合ってくれ

 がしっ・・・・ぎりぎりで受け止めたアセリアはそのままこちらに戻ってきた

「エスペリア、悪いハリオンを呼んでくれ、彼女のキュアーがいる。かなり危険だ・・・!」

「わ、わかりましたユートさま。」

 アセリアが地面にヘリオンを置く・・・そして悠人の服をヘリオンは引っ張った

「・・・っ、動くんじゃない、今治療するからな!」

 酷い・・・なんて傷だ。

「ユ、ユート様・・・南西の・・・・・・・・っ・・・森でウルカさん達・・・」

「しゃ、しゃべるな・・・わかったから、セリアその地点に待機させていた援護部隊をもって救援にいってくれ!」

「了解しました」

「ユートさま、ハリオンをつれてまいりました」

「はぁ・・・はぁ・・・、ではキュアーいきます〜」

 癒しの光がヘリオンを包み込む・・・傷はふさがったみたいだな、俺は胸をなでおろす。

「ヘリオン。休んだ方がいい、部屋に運ぶよ」

 そしてヘリオンを持ち上げ、運ぼうとするが。

「・・・・・・・・っ・・・・・」

「?」

 おかしい・・・・いつもならこれくらいの行動でも顔を赤くするのに、いくら疲労で元気が無いとはいえ・・・・・そう思いつつ俺はヘリオンの顔を覗いてみた。

「・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・くっ・・・・・・・・。」

 苦しんでいる・・・これは一体・・・

「ヘリオン、怪我は全て治したはずだよな?」

「はい〜、もう平気のはずですが〜。」

 そういいつつハリオンも顔を覗く・・・そして顔色を変えた。

「エスペリアさん〜、これは・・・呪いです。」

「「呪い!?」」

援軍に向かったセリアが見た物は、全滅している敵兵士、そして生き残っている数人の仲間・・・・・・この戦いで生き残ったのはファーレーン・ウルカ・ファーナ・・・・そして呪いに侵されているヘリオンの4人だけだった・・・。




 あれから俺達は前線の指揮を光陰と今日子に任せ一時、元ダーツィ国王城に戻っていた。この戦いで軍全体の被害は小さかったが黒スピリット部隊とそれを指揮していたローゼンの死はかなり大きかった・・・・・。
そしていまもヘリオンとウルカ達3名が「呪い」に侵されてると聞いている。

「それで、ハリオンその呪いというのはなんだ?」

「はい〜・・・極稀ですが高位の神剣にそういうものがあるという話を聞いています。詳しいことは分かりませんが・・・このままですと確実に精神を壊されますね〜」

「・・・私も見たのは初めてです。ユートさま、現在秩序の壁の破壊はコウインさまたちが行なっております。その間に治療方法を探してみましょう」

「わかってる、俺もそうするつもりだ。そうでないと黒スピリット隊に大きな穴が開く・・・なにより陽動としてがんばってくれたウルカ達は見捨てられない!」

 そして・・・俺達は「呪い」という物の正体を探るべく・・・天才ヨーティアを呼び寄せ、話を聞いてみることにしたのだが・・・・。

「ん〜〜。ユート〜こいつはちっときびしいねぇ」

 ヨーティアはそういいつつ顔をしかめる。

「なぜだ?さっき原因は分かるっていっていたじゃないか?」

 そう、さっきはそういい自信たっぷりに治療法を探っていたのである。

「それはさ・・・これ、実は「呪い」っていうより・・・ん〜凡才のお前に説明するのは難しいな」

「対処法だけでいい、教えてくれ。厳しい、ということは無いわけじゃないんだろ?」

「わかった、・・・これはな、ユート。神剣の力が抜けていってるってことなんだ、だからそれを防ぐにはそれを止めればいい、簡単だろ?」

「?」

「それが、実は先例があったんだ。何十年か前にも同様の件があったからそれで直せると思っていたんだ。対処法の書かれている巻物も見つかった。さぁここからが問題だ、ユート」

 真剣な顔になるヨーティア・・・そして。

「この状態は極度のダメージを負っている所に、『誓い』の力が負荷として掛かっている、生き続ける限り少しずつマナを奪われる・・・。昔の対処法だとそのときは負傷したスピリットを不用品として処理・・・処刑したらしい」

「!・・・まさか対処法ってのは・・・殺せと?」

 首を振るヨーティア・・・ホッとしてた俺に。

「誓いを折れユート。呪いの元となるアレを折れば平気さ。ただ・・・期限は2日、一番からだの弱っているヘリオンの耐えられる期間はそれだけしかない」

「なっ・・・!?」

「わかるかいユート、さっき厳しいっていった意味が。これから攻める帝都サーギオス陥落までは2日半の予定・・・絶望的さ」

「・・・もう1つだけ教えてくれ、何故誓いの力が掛かっているんだ?」

 そう聞くとヨーティアが顔を歪め。

「簡単な話だ、戦闘の後わざと止めを刺さず苦しめる為、そのエトランジュっていうシュン本人がきたんだろうよ、まったく・・・嫌な奴だな」

 俺は・・・・・怒っていた。そこまでしてスピリットたちを痛めつける瞬に・・・そして、何も出来ない今の俺自身に・・・・・・。

「まぁ、ヘリオンは諦めるしかない、幸い他の子は5日間ほど持つ。おそらくあの子は無理して飛んでいた分疲労が多かったのだろうな


(くっ・・・・・・)



 数時間前の光景・・・

「さぁ『誓い』よこの倒れるゴミどもに呪いをかけろ・・・そうだ・・・悠人が苦しむようにじわじわと・・・じわじわとマナを奪え。」

 そうして私と生き残っていたウルカさん達に何かが掛かり・・・。

「ふふふ・・・さぁ帰るか。ただ殺すよりもこの方が面白い・・・悠人の苦しむざまが目に浮かぶ・・・はーっははは。」

 その後わたしは弱った体で城に向ったんです・・・みんなの意思を無にしない為に・・・。


―その夜―

(秩序の壁の破壊は終わったらしい、光陰たちはいまサレ・スニルに集まり最後の戦いの準備をしているそうだ・・・そして2日後攻勢にでる。このままならウルカ達は助けられる、だがヘリオンは明日死ぬ・・・くそっ!)

 悩んでいる俺、その悩んでる部屋はイースペリアの城の内部に作られた医務室、そこに負傷したスピリットたちが横たわっていた。

(どうしたらいい・・・考えろ・・・考えろ・・・)

『・・・契約者よ・・・』

(なんだ『求め』?)

『助けるのなら1つ手がある・・・のるか?』

(!!・・・どんな手だ・・・?)

『簡単だ、他のスピリットの力を吸い取・・』

―――だんっ・・・・・

 俺は剣を壁に叩きつける。

(まともに聞いた俺が馬鹿だった・・・つまり・・・他の味方を生贄にしろと?)

『・・・話は最後まで聞け、主よ・・・。死ぬほど吸い取らなくてもいい・・・この者と縁の深いスピリットの力を少しもらう・・・そして我をこの者に持たせるがいい』

(そうしたらどうなるっていうんだ・・・?)

『この小娘の命1日だけ永らえさせよう』

(・・・なぁ、それは本当なのか?)

『ああ、保障しよう契約者よ』

 そして俺は・・・ハリオンを呼んできた。

「はい〜。なんですか〜?」

 事情を説明する・・・このままだとヘリオンは死ぬと、そして助ける為に他のスピリットのマナがいると。そこまではなすとハリオンはにっこりと笑い

「はい〜、私でよければ喜んで〜。」

「助かる。じゃあ『求め』・・・頼む!」

 そういうと同時に神剣がハリオンの体に突き刺さる・・・光がどんどん剣に溜まり

『もうよい、そして我をこの黒妖精に刺すがいい。』

 言われたままにハリオンの体から剣を引き抜いて眠っているヘリオンの手に『求め』を持たせた。・・・すると神剣の光がどんどん注がれていく・・・。次第に顔色が良くなっていく。

「これでへいきなんですね〜?」

弱弱しい声でハリオンが声をかけてくる。不思議なことにハリオンの体に傷はまったく無かった。


(これで大丈夫なんだな?)

『・・・・・・・・うむ』

 何処か疑問を感じているという口調の『求め』それに不安を抱いたため。

(おい・・・その「・・・・・・・・・」はなんだ?)

 求めからは返事が返ってこない・・・しかし俺にはもうどうすることも出来ない。そのまま前線に向かう為ウイングハイロゥを持つ精霊を探しにいった・・・。
 その頃、悠人の立ち去った医務室にて。

「ヘリオンちゃん・・・がんばってね」

「・・・・・っ・・・・・ユー・・・・ト様・・・・」

 励ますハリオンへ寝言でそういうヘリオン。

「この子ユート様のことを・・・」



 2日後俺は部隊に戻っていた。

「よお悠人、あの子らの様子はどうだった?」

「・・・今日中に瞬の求めを砕けば・・・助かる」

「そうか・・・ならがんばらんとなぁ。よしっ最終決戦といこうぜ!」

「ああ!・・・俺は絶対に瞬の『誓い』を砕き佳織・・・そしてヘリオン達を助ける!!」

 そして・・・サーギオスとの戦いが始まった。

 戦況はラキオス有利、というよりも敵の戦力は殆ど無かった。だがウルカから事前に聞いた話では城内部に特殊部隊が潜んでいるらしい。俺は城を包囲した後城内に部隊を5つ編成、少数先鋭でそれぞれのルートで瞬がいるはずの玉座に向かうことを決めた。そして・・・・・・。

「あ〜〜もう何でこんなに敵がいるのよ!これも全て光陰のせいだからね!」

「って・・・俺にそんなこと言われても俺はしらねぇって」

 そんな会話をしつつ、敵を次々倒していくエトランジュのバカップル・・・。

「・・・敵は全て・・・処理完了の模様です。」

 そうナナルゥがいうと・・・。

「よぉぅし、次いくぞ!ロリコン光陰!」

「お、お前だから違うって俺はお前一筋・・・・」

「あんたがオルファちゃんのお風呂覗き見してるの見たんだからね、あたしは!」

「うぐぅ、いや、誤解だ!きっとそれは悠人だ!そうただきっとそうに・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 別の場所では。

「炎よ我が神剣に宿れ『ファイアエンチャント』」

 その刀身に炎の精霊を宿らせたヒミカが敵を切り裂いていく。後方からはクゥの『ブリザード』の支援が、二ムントールも防御は平気と判断し、槍を構えるト攻撃へと移っていた・・。

 他の部隊、アセリア・オルファリル・エスペリア、悠人・ハリオン・ネリー、セリア・『不運』の緑スピリット・シアーの三部隊もそれぞれ順調に瞬に向かっていた・・・。

―――ぎぃぃぃぃぃ・・・

 重い音をして門が開く。そこには・・・瞬、それを守る4人の親衛隊らしき者達がいた。いずれも深くフードを被り、顔を隠している。

「やぁ・・・悠人・・・待っていたよ。」

 そういう瞬の目は・・・・なんだ・・・・こいつは本当に瞬なのか?

「その『求め』破壊させてもらおうか?」

「瞬!これだけの人数に囲まれて平気ですむと思っているのか?そっちが『求め』を破壊する前に俺達がお前の持つ『誓い』を砕く!」

「・・・ふっ・・・ふふふふ・・・はーっははははは!」

 突然笑い出す瞬・・・・・おかしい・・・・瞬は俺に対し敵意を持っていたがその今の目は『求め』にしか注がれていない・・・・。

「悠人、俺に任せとけ・・・おい瞬!佳織ちゃんを返してもらおうか?流石にエトランジュ3人相手はきついだろう?」

「・・・・・・?・・・君は・・・誰だ?」

「!?」

「ユートさま・・・。もしかすると・・・」

「ああ、神剣に飲み込まれている」

 ただし完全には飲まれていないだろう。その手に佳織を抱いているのからもそれは判る。

「・・・ってこたぁ・・・切るしかないわけか」

 気まずそうに光陰がいうが・・・その瞬間。

「カオリをかえせぇ!『あ〜くふれあ』」

 いつの間に詠唱していたのか・・・・オルファが前にでて魔法を放つ・・・だが。

「・・・反鏡」

 瞬のそばにいた4人のフードをかぶった者達のうちの1人が、手に持った神剣を円を描くように振るう。オルファの魔法を・・・跳ね返した!?

「くっ『プロテクション』!」

―――業火・・・アークフレアの炎を全て受け流す。

 咄嗟に光陰が防ぐが・・・あんなことをするスピリットは始めてだ・・・。

「メダリオ・・・そう焦らなくてもいいよ・・・。あんなものじゃ僕には傷ひとつつけられないからね。」

「はい。」

 すっと下がる・・・男!?

「瞬・・・お前以外にもエトランジュがいたのか・・・。だから強気でいるんだな」

 こう考えると他の4人もエトランジュだろう・・・これは予想できなかった、だが早く倒さないとヘリオン達が危険だ、ここは・・・・。

「ねぇ悠人・・・僕はもう君なんかに興味はないんだ、大人しくその剣を渡せば・・・見逃してあげるよ?」

 無視する・・・。

「・・・おい、馬鹿剣!最後の戦いだ気合を入れろ!皆・・・いま敵は5部隊いるト考えろ、それぞれが敵1人ずつと対峙して倒す!いくぞ!」

 俺達は掛ける!時間がない。・・・だが・・・。

「くぅ・・・強い・・・」

「くっ・・・全力で止めても・・・防ぎきれないなんて」

「オルファの魔法も全部はじかれちゃうよぉ〜」

 メダリオという男はいう・・・。

「めんどうなのでそろそろ・・・死んでもらえますか?良い悲鳴を上げてくださいね。」



 クゥリンが叫ぶ!!

「奥義『コール・サモン・コールド』・・・凍れぇぇぇぇ!!」

「・・・はんっ!『不浄』よ蹴散らせ」

 氷の柱が砕け防御に回っていた二ム、そして接近中のヒミカともども吹き飛ばされる・・・・。

「・・・・・む、鞭型?クゥ、私が防御に徹するから・・・お願い!」

「はい!二ムお姉さま!」

(お姉ちゃん・・・がんばる!)

 セリア隊も「子供」と対峙しなぜか身動きが取れていない・・・そして

「『ワールウインド』―――『ゲイル』―――『ゲイル』!!」

 光陰の重い1撃が三連打で叩きつけられる・・・だが。

―――ガッガガッッ・・・ガッ

 まったく効果が・・・無い・・しかしこの感覚はどこかで・・?そう光陰は思いつつもさらに剣を振るった。

「どいて光陰!新技『ライトニング・ハリセン・アタ――――ック』」

ハリセンといってはいるが、実際は光陰をぶちのめす時のように剣に稲妻を乗せた一撃、1激の破壊力が一瞬だけ『因果』をも越える・・・・だが。

―――ガキッ・・・・・・

 纏いし外衣、それにも黒いオーラフォトンを纏わせているのだろう、それを突破できない。

「くっ・・・なんて硬いのよ!」

「考え無しに攻撃するな今日子・・・作戦を考えて攻撃しないとやられるぞ!」

「っ・・・そうみたいね!悔しいけどあんたの言うとおり動くわ!」



───そして

「瞬・・・決着をつける!『ホーリー』」

 力を増幅させる俺専用の術。足元にオーラフォトンを展開・・・力がみなぎる・・・・これならいける!

「馬鹿剣・・・マナの光をオーラフォトンに変えろ・・・『誓い』を砕く光となれ・・・いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!『オーラフォトンビーム』」

 巨大な光・・・・今までに感じたことのないほどの力が『求め』から湧き出る・・・そうだお前も奴が憎いんだな・・・なら俺も力を貸す・・・・この一撃で破壊する!

―――ヴォォォォォォォン・・・
 
 巨大な光の矢が迫る・・・それに対し

「それが貴様の最大の攻撃か!?その程度で僕を倒せるとでもおもったのかぁぁぁぁぁ!『オーラフォトンレイ』」

 同じ位の巨大な闇の矢二人の間でぶつかり・・・・そして・・・

―――ピキ・・・パキ・・・・

(くっ?『求め』壊れるな!奴を破壊するんだろう!)

見ると同様に瞬の持つ『誓い』にもひびが・・・・。

―――パキ―――ィン!

二本の永遠神剣は共に砕け散った・・・・・酷く小さな乾いた音を立てて。

「つっ・・・くそっ剣がないせいで力が抜ける・・・」

 俺はひざを付いていた・・・『求め』を砕かれた今すでにエトランジュとしての力は無い、だが瞬も同様だ。そしてこのままならハリオンたちで取り押さえる、そうすれば戦争は終わる・・・・そう思っていた・・・だが。

―――パキペキミシ・・・・バシ・・・・ミチピキ・・・・

(・・・?・・・何の音だ?)

 俺は顔を上げる・・・・

「―――な!」

 そこには異様の怪物と化した瞬がいた。

「ば、ばかな・・・僕は・・こんなこと・・・望んで・・・ぐぎっ・・・」

 瞬の体が溶ける・・・そして再生した後の瞬は・・・すでに人ではなかった。

「うふふ・・・まさか予定が狂っていても『世界』ができるなんて・・・本当によい駒でしたね、うふふふふふっ」

 今までセリア達と戦っていた少女が始めて喋った、そしてこういう。

「では、後の始末は『世界』に任せて戻りましょうか。タキオス、メダリオ、ミトセマール戻りますわよ」

「「「はっ!」」」

 その後・・・俺たち、いや俺以外の者達が瞬に挑んだ・・・だがまったく歯が立たない・・・・最終的に、俺たちは『門』を自力で開いて現れた時深に救われた。俺たちのまったく敵わない怪物を次第に追い詰め・・・撃退した。
 そして・・・俺の目の前にやってきた時深に頭へ札を張られ・・・俺の意識は闇へと落ちた。

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