次の日の朝、俺は外で軽く体を動かしてみた。
（２ヶ月も寝ていたから体が上手く動かないか）
なぜか『求め』の力は戻っている。少し訓練すれば戦場に戻れるだろう。そう思った。暫くして訓練の時間が終わったらしく、訓練場からスピリット達の姿が消えていく･･･､俺も一回屋敷に戻って朝食後、城へと向った。
「――――――――――――――と、いうわけでこの天才が仲間入りしたんだよ。ユート君」
「は、はぁ･･･」
目の前に変な人がいる･･･、俺はそうおもったがこれでも天才科学者として有名らしい。･･･だらしない格好をした変人にしか見えないんだが｡
「ユート｡病み上がりなのにすみません、こんな事態になってしまって」
「･･･いえ、俺がやられていて寝込んでいたのがわるいんですから･･･」
俺は今、城の会議室でいままでの戦況を聞いていた。予想とは裏腹に俺無しでもなんとかなってはいるらしい･･･とはいえそれは相手も本気を出していないから、ともいえたらしい。
また、ヨーティアとイオの加わった話、それと佳織を瞬が攫ったこと、ラキオス王の死、レスティーナが女王に即位したこと、それと･･･タークからマロリガンに光陰、今日子がいるということ教えてもらう。
ちなみにヨーティアの自己紹介が異様に長かった･･･というか現在も続いているが、誰も聞いていない。
「それで･･･俺はこれからどうしたらいいんですか？」
「暫くは休養を込めて第二スピリット隊の隊長として戦っていてください。いまタークがマロリガンを攻略しているのでその間、サーギオスを牽制していてください。」
第二スピリット･･･つまりは第二軍、予備戦力ともいえるか。アセリア達以外と組めということらしい。
「･･･俺はマロリガンとの戦いに参加できないんですか？」
「明日、マロリガン首都に攻撃を仕掛けます。既に途中のエーテル兵器はヨーティア様が処理しましたので、残る敵は敵の最強部隊「稲妻部隊」とクェド・キン大統領の親衛隊、そして･･･マロリガン防衛軍ですが、それと戦ってる間にサーギオスに攻撃されるのが一番厄介なのです。････わかりますね？」
確かにこの国のスピリットの数では大国２つを同時にはきつい、俺に牽制させようというのもわかる。だが･･･。
「･･･レスティーナ女王、俺を光陰や今日子と戦わせたくないんですね。それで･･･。」
「それもあります。貴方をご友人と争わせたくないというのも、ですが本当にサーギオスを止める人員がいるのです｡」
「それは平気でござる」
「「「！！」」」
いつの間にか、壁際に1人の黒スピリットが佇んでいる。腕を組んで俺たちをじっと見つめている。
「な、お前はあの時･･･イースペリアで会ったスピリットの･･･」
「手前の名はウルカと申します。わけあって本国を捨てこの国にきたのであります」
「目的は、なんですか？あの国の一般兵のスピリットは殆ど全て自我がないとも聞きます。それなのにあるということは部隊長クラスですね？」
「漆黒の部隊の隊長をして申した･･･。漆黒の翼ウルカの名前はご存知ありませぬか？」
それを聞きレスティーナは驚く･･･他の何人かも聞き覚えがあるらしく驚いていた
「それでは貴方があの･･･。それで私たちの国に寝返るのはなぜです？理由次第では聞き入れますが」
「そちらの御仁･･･ユート殿の妹君の佳織様がユート殿の力になれというからです。」
「！･･･あんた、佳織を知っているのか？」
「世話役をして申した」
「なるほど･･･それにしてもどうしてあんたが寝返るんだ？頼まれたからだけではないだろう？」
「今のわが国は･･･『魔』に侵されて申す･･･。このままでは佳織様や私の部下たちまで死んでしまう･･･それが耐えられなかったのです」
『魔』とはただの比喩だろう。何かよくないことが起きている為に、この国へと助けを求めにきたのかもしれない。
「･･･わかりました、その瞳は嘘を言ってるようには見えませんし取り敢えず信用しましょう。それで、どうして心配ないのですか？」
「瞬殿は･･･ユート殿と光陰殿との戦いを見るのが今の楽しみ、邪魔はしないでしょうな･･･」
「･･･瞬らしい考えだ･･」
胸糞悪くなってくる･･･、あいつは俺達が争ってるのをきっと一等席で見ているのだろう。
「･･･わかりました、それではユート貴方はタークさんと･･･二方向から攻めてもらいます。そして･･･」
そして････マロリガン攻略戦となった。
主力キャラのエスペリア、アセリア達はタークの部隊へ、俺の部隊は殆ど二軍の集団である････任務としてもターク達の援護という意味が強い、だが俺が先に光陰達に会わないと･･･。
「よう、セリア、ハリオン、ヘリオンしっかりユートを守ってやれよ、そいじゃなユート。先にいってくるぜ。」
そういいタークは去る･･･一刻ほどしてから･･･
「よし、俺達も出陣だ、マロリガンを落とすぞ！」
「「おー！」」
そして･･･砂漠へと進軍する････。
「ふぅ･･･はぁ･･･ふぅ･････はぁ･････｡」
(こ、これは、、砂漠ってここまで､きついのかよ)
「ユートさま、平気ですか？」
そうセリアはいうが････キツイ･･･だが弱音は吐けないな
「ああ、平気だこのまま進むぞ！」
「はい」
今部隊は2つに分かれている、供に40人ものスピリット部隊、こちらにはセリア、ヒミカ、ハリオン、ファーレーンなどが部隊長として指揮をしている。ニムントール、クゥリン、ヘリオン、ネリー、シアーはそれぞれの部隊に収まっている。今の俺の部隊は 俺、ヘリオンそしてラギという緑スピリットの少女、見た目はヘリオンと同年齢程度の長い髪の少女だ。セリアから聞くには実力的にはなかなからしい。
俺はわざと無意味な拠点に向う･･･光陰のことだ、今日子をどこか安全なところに置いてる気がする。
だからこそこういう位置の拠点にいるのでは･･･そう思いある拠点へと向おうとした俺だったが･･･その必要もないらしい。
「さて･･･俺の勘が当たった･･･かな？」
砂漠の中、剣を向けるのは1人の少女―――今日子。
「･･････････････････････････死ね」
そういって襲ってくる。その瞳は何も移していない、神剣に意識を飲まれた少女が襲ってきた。
そしてその頃････今日子を安全なところへ残したと思っていた光陰は稲妻部隊を率い････ラキオスの主力部隊と対峙していた。そして、光陰は敵の先頭に見知った顔を見つけたのである
「あんたは････。よぅ、またあったな」
「お前は･･･ふっ、あのときにエトランジュか。どけっ！俺は雑魚に用は無い！」
「まぁそういうなって･･･今日はあの時とは違う、今日子を抑えなくていいぶん戦いやすいさ」
そういいながら近づく二人･･･緊張が高まる･･･
「ほぅ･･･なら証拠を見せるがいい」
「ああ･･･いくぜ！『ワールウインド』」
光陰は『因果』を振るう、この地で修練を積み覚えた上級アタックスキル。それは剣を回転させ風を起こしながら敵に突き進み、己が身を１条の矛へと変える技･･･
―――ガッガガガッ･･･ガｯ･･･
光陰の剣、ダブルソード型･･･両端に巨大な刃のついた剣がタークの体を斬りつける、しかし黒きオーラフォトンで作られた壁で全て弾かれる。
（やはりこの程度じゃあ･･･とまってくれんよな･･･でもまぁここまでは予想道理！）
「続けて･･･くらえ！」
最初にワールウインドでの強烈な一撃の後、『因果』という武器の特性(２つの刃)を利用した多段攻撃････これには流石に裁ききれず･･･
「む･･･闇よ集え『ダーク･･･」
「させるかよっ！」
詠唱を止める為に高速のオーラでの攻撃････本来『因果』にオーラフォトンを攻撃とする力はない、だが一時的に敵の目をくらます程度の力なら発生させられる！
「ふっ･･･やるな･･･」
「あんたも･･･なぁぁぁ！!」
ぶつかる二人･･･暫く戦いは止まらない、周辺ではエスペリア達の部隊と稲妻部隊の激しい戦闘が繰り広げられる････。
稲妻部隊･･･ラキオスの軍と同様に感情をもったまま白きハイロゥを持つ精霊達、数は少ないがその力はエスペリア達に匹敵する。その為かなりの激戦となっていた。
俺達と今日子との戦闘は短時間で方がついた。戦闘後に正気を取り戻した今日子はグェド・ギン大統領の企みを教えてくれる･･･いそがないといけない、それに光陰にもあわないといけない、今日子がいるいまなら仲間になってくれる！そう信じているから････
「ぜぇ･･･ぜぇ･･･やっぱり強いな･･･あんたは」
「お前もよくやると思うぞ･･･まさか第六位程度にここまでてこずるとはな･･･だがそろそろ飽きた、どいてもらおう」
「ちぃ『因果』よ、周囲にあるマナをオーラフォトンの光に変え、全て受け止めよ！『オーラフォトンバリア』！」
「ぬるい！秘剣『━━━！』」
「ぐ･･･うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」
吹き飛ばされる光陰･････その体は10メートル近くを飛ばされ、そして落ちる。
意識はない。完全に気を失っているようだ･･･。
そしてタークは周りの戦況を見ると、ほぼ全ての戦闘は終わっていた。稲妻部隊に関してはユートの頼みで捕獲できるなら捕虜として連れて行ってくれと頼まれていたが･･･両軍共に1／3以上死んでいるこの戦いではどれだけ残っているのか･･･。
･･･っと、エスペリアがやってくる。
「タークさま、この方はユートさまのご友人らしいので捕獲でお願いします。」
「わかった、アセリアよ、こいつを地下牢へ連れて行け。それと否妻部隊よ、戦闘は終わりだ！お前達のリーダーは既に倒された！」
「ん･･･了解した。」
「なっ･･･コウイン様がやられている！？」
ざわざわ･･･とざわめく敵兵士。
このエトランジュが倒れたためだろう、殆どの敵のスピリットは戦意を無くした。
そして戦闘が終わり負傷者の手当てなどに走るものがでてくる。それを見つめながら。
(さて･･･あとはマロリガンを落とすだけだな。ここらで力を貸すのも止めにするか)
そう考えていた。
「それでは参りましょう。タークさま」
「･･･よし全軍聞け！！このままマロンガンを落とすのだ！!」
「「「わ――――」」」
そして私達はマロリガン首都を守る敵部隊を全て撃破、最奥に潜む大統領クェド・キンと対峙した････彼の目的は操られていた行動をよしとせず、自由を取り戻すこと。その為にこの世界を破壊すること。
俺には操られていた行動･･･その意味は分からない。
だがその瞳には理性の光がある。狂気に走った行動とは思えない。
そして彼はこの世界を崩壊させるべくサルドバルトと同じ方法の･･･そしてさらに強い永遠神剣の暴走をもくろんでいた。彼は白いスピリットを造り息絶えその白スピリットを倒した後から再び物語りは動きだす･･･。
「駄目ですユートさん〜ボクの力でも暴走は止められません」
「くそっ･･･ここまで暴走されていては、制御は無理か･･･くっ」
「ユートさま、このままではこの世界が消えてしまいます」
焦るエスペリア････皆焦っている････だが対抗手段が･･。
(どうすればいい、考えろ、考えるんだ、悠人！！)
その時、タークが声を掛けてくる。
「たった１つだけだが･･･手段がある」
「なにっ！どうすればいい！？」
「簡単だ、この暴走してる剣は四位･･･ならば同レベルの永遠神剣を用い全力で爆発を押さえ込むのだ。その剣の力を全開放し全てを守りに注ぎ込む」
「そうか、そんな手が！」
俺は早速試そうとする･･･するとその腕をタークが掴み。
「ただし･･･押さえ込んだ人間はほぼ確実に死ぬだろうな･･･」
「それでもこの世界を消すわけにはいかない･･･馬鹿剣頼む力を貸･･ぐっ!?」
手刀でユートの首を叩き眠らせるターク････。
「ふん･･･お前に死なれると泣く奴がいるからな。･･･エスペリアこいつを運んでいけ、俺がこの暴走を止める」
「で、ですがタークさまそれでは貴方が･･･」
「他に手が無い･･･ユートにもし生き残ったら一度どちらが強いか戦おうとでも伝えてくれ。皆早くにげろ！巻き込まれるぞ！」
そして駆けていくエスペリア達････だかヘリオンは悲しげな瞳を向けまだ･･･留まっている。
「ターク様･･･」
「ふっ･･･ヘリオンお前も逃げるんだ。安心しろ、必ず死ぬといったが俺は例外さ、俺に不可能は無い。さぁ逃げるんだ。」
崩れていく施設････確かにもう時間が残っていないようだ････。ヘリオンは最後にタークを一目みつめ･･･そして駆け出した。
「そうだ･･･それでよい。･･･さてまだこの世界を崩すわけにはいかん･･･『無我』よ！貴様の力でこの神剣をその存在ごと･･･消滅させよ！『空間切断』！」
そういうと･･･剣が変化し･･･さらに巨大な剣となった。それがその永遠神剣の本来の形。
それをタークが振るうと･･･剣と共にその場の空間全てが削れて行く･･･。
消えていく永遠神剣････そして暴走はどんどんおさまりそして･･･そのときにはタークの姿は消えていた。後から確認に来たものの話ではタークの剣の残骸もタークの姿も発見できなかったらしい。
この日、ユートは再びラキオスのスピリット隊隊長になる･･･。