ここは何処だ?暗い・・・そして寒い・・・俺は一体・・・。
暗闇の中に漂う俺の意識の中で光る物があった・・・あれは?近寄ると声が聞こえる・・・聞き覚えのある懐かしい声が沢山に。
「ユート、聞こえるのか・・・俺はお前と戦いたい。早く目を覚ませ」
そう野性的な声が言う・・これはタークか?
「ユート・・・起きないと・・・ダメ」
心配げな・・・アセリア・・・の声も。
「ユートさま、お願いです目を覚ましてください」
エスペリアの声もする・・・。
「ユート様ぁ・・・ひっく・・・お願い目を・・・目を・・・開けて・・・」
・・・・・泣き続ける少女の声も・・・。
俺は・・・一体?・・・そうだ。俺の名前は高嶺悠人だ。だが体が動かない・・・それにみょうダルイ・・・。そうか、俺はあの時殺されたんだな。佳織を助けると誓いながら、死ぬなと声をかけていながら・・・・。
『契約者よ・・・お前が目を覚まさないのならこの体をもらうぞ』
!!・・・・・まて・・・・・まってくれ『求め』よ。俺はまだ戦えるのか?それなら―――俺は戦う。その為に力を貸してくれ。
『・・・では早く起きろ、お前が目を開けないと私が困るのだ』
・・・・・?
一体どういうことだ?
『起きたら分かることだ契約者よ』
そして俺の意識は・・・何かに引っ張られるかのように・・・浮上していく。
「・・・ひっく・・・ユート様・・・」
「ヘリオン、そろそろ私は出撃の時間ですからユートさまのお世話を頼みますよ」
「あ、はい!」
「それと・・・貴方も無茶はしないように」
―――パタン・・・・
「・・・今日であれから二ヶ月・・・ユート様・・・」
わたしは今、ユート様の部屋にいます。あの後、わたしはエスペリアさんに泣きながら「ユート様の看病をさせてください!全てわたしのせいなんです!」といって頼み込んだからです。
実のところわたしはあれ以来ずっとこの部屋・・・ユート様の部屋にいます。朝起きて訓練後、すぐ看病をして・・・眠るのもこの部屋。部屋の床で座って眠ります。
あれからのラキオスには色々な事が起こりました。サルドバルトを制圧し北方五国制圧までは良かったのです・・・でも、そのあとのラキオス王が「余の国に勝てる者は無い!このままサーギオス王国に宣戦布告とする!」・・・なんていうことがなければ。
そしていまは戦争状態、宣戦布告の後直に城に賊が入り、ラキオス王の命を奪います。そして佳織様を攫っていきました・・・。
ユート様のいない今のラキオスはターク様が指揮を取り、戦争状態であるサーギオス帝国とは均衡をたもっていました。
ラキオス王が殺された後、レスティーナ様が女王となります。そして軍備を整え力を蓄えようとしますが・・・サーギオスは強大です。しかもこの時期同時にマロリガンも動き出し、戦争は混戦状態になりました・・・マロリガンにもエトランジュが存在したためです。そして彼らはわたしたちがヨーティア様を迎えに行く最中遭遇。そして戦闘も起きました。
「よぉし・・・アセリア、ヒミカ!疲れてるところを悪いが・・・もうひとつあの拠点を落とす!」
「・・・・ん、わかった」
「了解です!隊長殿」
「よ〜し・・・続けぇぇぇぇぇぇ!!」
賢者ヨーティアのいる場所に行くためには幾つかの砦を落とさないといけない。そしてタークが率いる部隊はマロリガン領の砦を落として行く。そんなときに彼らは現れた。
―――ザシュ・・・
タークが敵を倒す・・・と同時に上の岩場から稲妻が降ってくる。
全員それは避ける。そしてその降ってきた方向に1組の男女がいた。それはマロリガンのエトランジュ、獰猛な気を放つ少女と静かだがそれ故に強いオーラフォトンの力を感じさせる落ち着いた少年。
そして声をかけてくる。
「あんたがラキオスのエトランジュ『流禍』タークって奴らしいな・・・、俺は無駄に戦いたくないんでね、良かったら引いてもらえると嬉しいが・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
少女はラキオスの兵士を・・・いや、タークの神剣を睨む。そして剣を振りかぶろうと・・・した所で少年に腕を掴まれて止められる。
「よせ、『空虚』よ、返答を聞いてからだ。で返事はどうかな?」
「俺の軍が押しているこの状態で引けというのか?『因果』の使い手よ」
「ああ、いっておくがこの部隊は稲妻部隊っていってマロリガンの最強部隊、あんたらでも苦労するぜ?」
「ふむ・・・」
「タークさま、ここは引きましょう。前後からの挟撃に加えて相手が稲妻部隊では危険ですアセリア達を呼び戻・・・」
「とりあえず・・・一騎打ちと行かせてもらおうか、俺は戦争の勝ち負けより強い奴と戦いたいだけなんでね」
「タ、タークさま?」
この答えはターク様の副官を務めていたエスペリア、そして敵のエトランジュ両方を戸惑わせまる。
「まいったね・・・、もし俺がそれを拒否して部隊を突撃させるならどうする?」
「部隊の指揮官が腰抜けなら俺は迷わず戦うが・・ね」
「はぁ・・・しょうがない『空虚』同時に仕掛けるぞ!」
「二対一か・・・俺はそれでもかまわん」
「まじかで見て分かる・・・あんたは強い、1人では勝てないからなっ!」
「自分の弱さをしっかり捕らえそれを計算して戦う・・・ふむ、頭は悪くないらしい」
「いってろ!いくぜぇぇぇ!『トラスゲート』」
そのエトランジュ2人の周りに強固なオーラフォトンで編まれた壁を作り出す。
「・・・疾れ稲妻、降れ雷神・・・『ライトニングブラスト』・・・」
それと同時に無感情な声が響く・・・『空虚』の持ち主である今日子が剣を振り上げる。それと同時に、大きなオーラフォトンの壁と天空から巨大な稲妻・・・。
「ふむ・・・防御と攻撃をしっかり分けている、そして共に強力・・・だが・・・『ダークプリズン』」
自身に黒いオーラをまとわせ・・・そして・・・雷がターク様に直撃します。煙がもぅもぅとあたりに立ち上る、それを見ながら『因果』の使い手である光陰は。
「―――終わったのか?意外にあっけなかった気がするが」
「・・・・・・・・・・・・・とどめ・・・・・・・・・・・・・・・。」
今日子が突然走り出す。
「!!・・・ちっ、『因果』よ、『空虚』を止めるぞ。」
『承知』
「・・・・・・・・・・ぁぁぁぁぁぁぁ!」
高速の突き、それは1つ1つが稲妻そのもの。それを砂煙に向かって放つ放つ放つ・・・・・・・そして高速詠唱・・・。
「『サンダーストーム』」
そして再び、さらに巨大な稲妻を打ち下ろす、今までの比でないほどの巨大な落雷、大地が震える。
「!!これじゃ・・・原型すら残ってないのかも・・・な・・・」
追いついた光陰はそう思っていた・・・だが・・・。
「―――それでおわりか?」
「「!?」」
砂煙からは無傷のタークが・・・・。
(こいつ・・・化け物か?)
「くだらんな・・・片方は神剣に意識を飲まれ、もう片方も知恵はあるが神剣の力不足。」
「くっ・・・。」
そして長大な剣を・・・・斜め後ろに置き構える・・・・。
「纏めて・・・吹き飛ぶがよい!」
剣から強烈な瘴気の嵐が発生し・・・2人を吹き飛ばした
「っ、がぁぁぁぁ」「くぅぅぅぅ」
そのすぐ後、稲妻部隊が撤退、呆然としてる私達をターク様が「このまま落とす」そういって立ち直らせ・・・そして砦を占拠しました。
ターク様・・・恐ろしいほど強いです。部隊にはそれを恐れている子もいますが、私には怖くは感じられません。なぜか私には優しい瞳を向ける為・・・・でしょうか?
そして今、この国にヨーティア様が加わっています。賢者と呼ばれルほどの博識な方、数々の発明でラキオスの力となっているようです。
そんな今までの二ヶ月を回想しつつ私は、この二ヶ月ずっとしているようにユート様の傍で看病していました、すると・・・。
「・・・っ・・・・・・ぐっ・・・」
(はっ・・・)
「くっ俺は・・・かお・・・り・・・を・・・」
(・・・ユート様はこんな時でも佳織様のことを・・・)
「元の世界に・・・皆と・・・」
この二ヶ月間、こういう風にうなされているときがあります。佳織様と元の世界に帰る、そういうことが。いままでは我慢していました。でも私は我慢できずにこの言葉をいいました・・・。
「お兄ちゃん、起きてください。一緒に元の世界に帰りましょう。」
わたしは・・・・佳織様として話しかける・・・あまりにもつらそうだから。あの日以来うなされて目の覚めないユート様はずっとこの様子でした。佳織様も今は攫われていて連れてこれない・・・・・・わたしは佳織様の代わりとして話しかけながら手を重ねました・・・すると。
「か・・・おり・・・・・・・・・・・・・・佳織!!」
―――ぎゅっ!
(えっ!?)
―――ぐいっ!
(きゃあっ!)
―――――――――――――――――――――――――――――――なんで私は・・・抱きしめられているのだろう・・・・・・・・・混乱から立ち直った私は・・・恥ずかしくて離れようとしたけど。
「佳織・・・」
ユート様が離してくれません。
あぅ・・・困りました。でも嬉しいです・・・いえ困ってるんです・・・混乱してます・・・私。
顔が赤くなってきました・・・・・そんな時。
「っ・・・ここは?」
「え・・・?」
「館・・・それに・・・ヘリオン・・って!何で抱きしめてるんだ俺は!うわわわわわっ!ごめん、すまん!!」
「きゃあぁぁぁぁ!いえ!!ユート様が悪いのではなくって・・・、私こそすみません!!」
お互いに謝りつつ、慌てつつ、混乱しつつ・・・・・。
「い、いや・・・まぁ取り敢えず状況の説明を頼む。」
「は、はい」
* それを見つめる4つの目*
「・・・ユートって眠っていても女の子に抱きつくんだ。」
「でもよかったです。起きてくださいました!」
」
「んー、確かに起きてくれたのはいいけど。・・・眠りながら抱きつかれるのは怖いかも。」」
「にしても姉様、あの2人何慌てているんでしょう?」
「・・・2人とも純情すぎ。見てるこっちが恥ずかしくなる・・・行こっか?クゥ。」
「あ、待ってください姉様〜。」
(ヘリオンの体が心配できたけどもう平気だよね。)
私は詳しく状況を説明しました。ユート様が眠っていた2ヶ月間にあった出来事、それをこと細やかに。佳織様が誘拐されたと聞いたときは「佳織が!」といって外に走り出そうになりましたが、慌てて止めました。
「・・・そうか、それじゃ早く復帰しないとな」
そういい体を起こそうとしたとした、でも。
「ダメです!ちゃんとまだ休んでいてもらわないと」
「といっても怪我はもうないしなぁ・・・、逆に体が硬直しすぎているから動かしたいんだがダメか?」
「ダメと言ったらダメです!・・・それに私は・・・もう二度とあんなユート様・・・ひっく・・・見たくないんです!」
(『求め』の言っていた、困るって言うのはこのことか・・案外いい奴かもな)
と俺は心の中で苦笑した
「・・・わかったよ、ヘリオンだから泣き止もう・・・な?」
そういって子供をあやすかのようにわたしの頭を撫でてくれる
「・・・ひっく・・・ひっく・・・ひん」
それからわたしたちは暫く、そのままその場で向き合っていた・・・・会話もなく見つめていた・・・・そしてエスペリアさん達がもどってきて死ぬほど茶化されました・・・あぅあぅ。