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 空は純粋な青一色の空。
 地上には緑がかった大地が覆う。
 ・・・本来は。
 この世界は平和だった。
 そう、エターナルという存在が現れる前、この世界を分けて暮らす2つの種族が、住まう場所を、争いの起こらないように分けていたから。
 片方は有翼人・・・背中に人の身をも飛ばすほどの翼を生やし、空を故郷とした一族。
 もう1つは半人半馬の亜人・・・草原を駆け、勇敢にこの世界に巣くいし魔物を叩きのめす一族。
 この世界の創世神話からこの2種の種族は、この世界を覆い尽くすように増え、そして栄えていた。
 だが、今は・・・・・・
 
 ここは王城。
 とはいっても翼人の住む為に高い位置に入り口があり、人間の住む城という概念からは少しかけ離れている。高さは小さなビル程度で、周りに生やした木々を支えに上に行くほど大きくなっている逆方向の円柱のような形をした建物。崩れないのはこの世界の技術の一種が作用しているからか。
 その建物の最上部、本来王が座る椅子―――ただし背もたれはない、翼を傷めるから―――には小さな子供が座っている。その周りを囲うかのように木を素材に作り上げて魔法で強化しているウッドアーマーを着込んだ衛兵が4人。そして高価なドレスを着込んだ高貴な雰囲気を強く漂わせる30台半ばの女性の姿があった。
 女性は言う。
「ほ、本当に私たちを守っていただけるのですね・・・勇者様」
 酷く不安げな・・・ なにか物音が被さっていたら聞き取れないほどの小声で呟き、手を合わせて祈っている。
 他の衛兵達、そして子供・・・10歳くらいの少年も同様に女性が勇者と呼んだ人影に懇願するかのような・・・祈るような視線を向ける。
「ご安心を。我々カオスエターナルが貴方達をお守りします」
 その人影は人々を安心させるように強くそういった・・・微笑みながら。
 この若者は他の人々とは外見、服装などがまるで違う。まるで異世界からきたかのように・・・
 鎧として銀色のブレストプレートを身につけ、手や足などは動きの邪魔がされないように小さめの防具を着ている。左手には大きな円形の盾を持ち頭にはサークレットという額を守る装飾品を身につけている・・・全ての色は銀で統一されていた。腰には剣を刺していたが、まだ戦闘ではないので抜く気配はなかった。
 彼は我々・・・といったがこの王の間にはこの7人以外の姿はない。
「で、ですが・・・。本当にあの魔人達に勝てるのでしょうか・・・?」
 今度は衛兵からそう問いかけられた・・・
 やはり皆不安なのだな・・・と若者、『白洸』の永遠神剣の持ち主である、『白の騎士』クライフ=エルザムは思った。内心の思いとは別に笑みを絶やさぬままに・・・
 この世界へクライフをリーダーとして5人のカオスエターナルがやってきたのは7日前。すでにその時には草原の民である半人半馬の一族は滅び、翼人の一族もこの世界の中心といわれる都市を除き死に絶えていた。
 破壊を行なったのは3人の魔人らしい。彼らは7日単位で1つの都市を破壊して回っているのだそうだ・・・じわじわと苦しめるかのように必ず7日の猶予を与え、殺す・・・その後都市をこの世界から消滅させる。
 もちろん抵抗しなかったわけではない・・・いやむしろその抵抗は激しいものだった。
 だが・・・その3人は次元が違った。そもそもロウエターナルに対して生身で挑むこと自体が勇気でなく、ただの蛮勇である。
 翼人達の王も親衛隊500と共に魔人討伐へと出かけたが・・・戻らなかったという。・・・誰1人として。
 そして残された王妃は悲しみを堪えて民を守るために降伏の書を持たせた兵を魔人へと送り戦争を止めてもらおうとした・・・だが無駄だった。文字が読めない以前の問題であろう、使者として書を持たされた兵士はたどり着く前に黒き刃に引き裂かれたという。
 今この城に残るのは、もしもの為にと王が残していた衛兵4人。あとは王の息子と王妃、そして無力な女子供老人達であった。
 疲弊していた翼人達は、「貴方達を守るために神の世界よりやってきました」というクライフの台詞1つで信用された・・・そして今この現状となっている。
 約束されたこの都市の破壊までは時間もない為、3手に人手を分けることにした。
 1つはこの世界の要となっている永遠神剣を守護する隊、もう1つは城外で捜索、待ち伏せする隊、もう1つはこの世界で唯一残された王の子の命を守る隊。
 王の子はクライフが守り、他の隊は2人ずつの構成で散ってもらう。
 情報通りだとすると、魔人は2人が都市の破壊を、1人が都市の中枢の重要人物の抹殺をするらしい。だがここがこの世界で最後の都市ということは既に要へと向っているだろう・・・という予測で要の守護にも人手を分けたのだった。
―――ぎしっ
「!・・・皆さん下がっていてください。魔人の気配が感じられます」
 そう余裕を込めた言葉のまま呟く。
 クライフは気づいてないが頬に汗が滑り落ちていた。
 魔人の1人が来たのがわかる・・・これは誰でもわかるだろうと思われた。気配を隠す気をなく堂々と正面から現れる気なのだろう・・・それはつまり自分の強さに絶対の自信をもっているということか。
 暫くすると足音も聞こえてくる。カッ、カッという足音が響く・・・
 王の間にいる衛兵や王妃たちは息を潜めている。まるで声をだしたら死んでしまう!というほどに怯えの表情を浮かべながら・・・
 ・・・足音が止まった。
 ギィィィ・・・という音を立てて扉が左右に大きく開かれた時、そこには1人の黒いジャケットを着た男がいた。
 黒の上下の服を着込みその上からさらに襟の大きいジャケットを着ているためか口元は見えない。左手には青白い光を発する大きな神剣を持ち、右手はジャケットのポケットに収まっている。
「・・・・・・・・」
 その男、ロウエターナルらしき男はぐるりと見渡す。右目は見えないのか左目だけで見つめているその目線からは何故か寒気がするほどに冷たい気を感じる。
 エターナルであるクライフですらぞっとするその目線。そしてそれはクライフの予想外の自体を生んだ。
 突然衛兵の1人が叫び声を上げ、黒い男へと突進したのだ。
「う、う、うぁぁぁぁぁ!!」
 恐怖に駆られての行動か、奇声を上げながら手に持っていた槍を突く。
(し、しまった・・・)
 クライフは衛兵に武器を持たせたことを後悔した・・・うかつに近寄れるような相手には見えない、見捨てるしかないと思った。だが・・・
「・・・・・・・・」
 その男は何も反応しなかった。
 そして、槍も刺さらなかった。黒い男の体表に薄く輝く光の膜がそれを受け止めたということにクライフ以外は気づくことすら出来ないだろう。
「兵士さん、下がっていてください!」
 いまだ槍を持つ手を離さず、自分がなにをしたのかも理解していない衛兵へとそう声を掛けると「ひ、ひぃぃ」と叫びながら地面を転がるようにして逃げる。
 その黒い男はそれを冷たく見つめる・・・だが何故か蔑みの視線ではなかった。
 黒い男は呟く。
「・・・楽に死にたいか、苦しんで死にたいかを・・・選べ」
 チャキッ・・・っと神剣を翼人達へと向ける。
 ひぃ・・・と怯える翼人達・・・
 クライフはその間に体をいれる。
「僕を無視して勝手に話を進めないでくれますか?『魔人』さん?」
 微笑を絶やさずに片手で神剣魔法を詠唱する。すると翼人達を庇うかのように光の膜が彼らを覆う。これから戦う時にその余波で彼らが傷つかないように掛けたのだろう。
 そして黒い男は眉をピクリと動かし・・・
「・・・カオスの偽善者どもか」
 表情を変えずに呟いた言葉だったが、僅かに憎悪をこめているように聞こえる。
 その証拠に、その呟きだけで部屋にあった調度品の幾つかが割れたのだから。
 黒い男から発せられた気によって・・・
 自分に注意を向けられたのでクライフはより一層目の前の男を警戒する。油断すれば即座に殺されるほどに隙がなく、オーラも揺ぎない気配を保ったままだ。
「僕は『白の騎士』クライフ。勇者の名に掛けて貴方をここで討ち取ります」
 腰から『白洸』を抜き放つとその切っ先を目の前の男へと向ける。
 その名乗りに答えるかのように黒い男も・・・
「俺は・・・『破砕者』・・・混沌を切り裂く者・・・カオスの神剣を砕きし者。・・・俺の名前を知る必要はないだろう。お前達は全て消滅させるのだから・・・」
 そういって青白い光を放つ神々しい神剣を・・・構えなかった。
 ただ立っているだけ。クライフから見ても完全に隙だらけ。
 その余裕ぶった態度が癇に障ったのか。
「!・・・余裕ということか?いいだろう・・・なら、とくと味わえ!」
 口頭で神剣魔法を唱え始める。
―――神剣魔法・・・それはエターナルという超越者達が使いし神がかった力の事。神剣の持つべき力によりその力の大小は異なるが、それでも通常の民には扱えないほど莫大な力。
「マナよ、オーラフォトンへと変われ、一条の光となり・・・」
 黒い男は妨害しない・・・いや動く気配すらない。
 着々と詠唱は進む。
「我が敵へと突き刺され!《オーラフォトンビーム》」
 クライフの体内から輝くオーラが集まり、そして神剣に凝縮する。
 そして振るう!
 『白洸』から白い光が迸り、敵へと突き進む。
「・・・・・・・・」
 対する黒い男はそれでも―――動かなかった。
―――ゴウ・・・
 轟音が王の間に響き渡る。
「ひぃぃぃ」
「ひゃぁぁ」
 背後から翼人の人々の声を耳にしつつも、クライフは再度詠唱する。
 そして完全に命中したと思われる粉塵の中に再度解き放つ。
「―――《オーラフォトンビーム》」
 再び白い光が突き刺さる・・・
 再び舞い上がる粉塵を無視し、クライフは。
(まだだ!まだこんなものじゃない・・・!)
 初めに感じた相手の気は膨大だった・・・だからこそ今相手の油断しているうちに止めを。
 再び詠唱を開始するが・・・今度はさらに長い。
 翼人達は深く息を呑む。その光景を見るために集中している。
 2回にわたる神剣魔法の力の行使によりこの建物が揺れていることにすら気づけないほどに・・・
 先ほどと違い口頭の呪文だけではない、手を大きく振るい体全体を使って空中に呪印を描く。
「集えマナよ、集まり光の奔流となれ。彼の者どもを包み、究極の破壊を与えよ!―――《オーラフォトンノヴァ》」
 世界が―――白く染まる。
 それほどに激しい光の奔流は・・・全てを飲み込むかのように荒れ狂い、黒い男のいた辺りの空間へと突き刺さった。
 クライフは大量のオーラを体内から放出した為、神剣を地面に刺してそれに寄りかかるように蹲る―――流石に無茶だったのだ。
 上位の神剣魔法の2連打、そして連続で最高位神剣魔法の行使・・・いくら強い力を持つエターナルでも体に堪えるだろう。
 黒い男がいた空間の真後ろの壁は消え、青い空が見える。
 もうもうと立ち込める煙の中で動く影は見えなかった。
「や、やった!勇者様が勝った〜!」
「流石は勇者殿!」
 口々に褒め称える翼人たちを尻目に・・・クライフは何故か手ごたえのなさを感じて、己の手に握っている神剣へと目を向ける。
 そもそも彼は自分の力を過信せずに戦況を見極めるタイプであり・・・相手を確実に倒したという保障が得れるまでは油断はしない。だからこそ・・・不気味であった。
(手ごたえが・・・ない・・・?)
 再び彼は前方、ようやく粉塵のはれそうなロウエターナルの死体があるであろう場所を見つめる・・・するとそこには・・・
「な・・・!?」
 クライフは絶句する。
 そこには最初の位置から一歩も動かずにいた黒い男がいた。
 ジャケットのポケットに突っ込んでいた手が今は前方に出されて、その部分にオーラの輝きが見える。剣は構えないままの状態でいる。攻撃前と何一つ変わらずに傷一つ無い男がそこにはいた。
 ・・・いや、1つだけ成果があった。黒い男の髪はわずかに乱れていた。それが先程の3連撃の唯一の成果だった・・・
「・・・・・・・・くだらない」
 吐き捨てるようにそう呟く男は上げていた手を下ろす。
 そして・・・ゆっくりと近づいてくるその姿はまるで悪鬼。
 数歩ほど進み・・・初めてその男は神剣を構えると何かを詠唱・・・
 それを見てクライフは一歩大きく下がり、翼人たちを庇うように強固なバリアを展開する。
 だが―――遅い。
「死ね―――《オーラフォトンデストロイア》」
 その言葉と同時にその男の周りに5つの黒いオーラフォトンの塊が浮かぶ。そしてそれは凝縮され物質と化すと敵対する物へと振るわれる・・・処刑斧となる。
 ぶんぶん・・・と回転して迫るその斧は死神に等しいだろう。
 だが・・・クライフには止められる自信があった。前方へと意識を集中、先ほど無傷で耐えられた借りを返すかの気持ちで受け止めようとした。
 だが・・・
「なっ?」
 5つの処刑斧は彼だけを避けるかのように軌道を逸らして背後の6人へと向かい・・・
「ぎゃっ」
「ぐえっ」
 6個の肉片がばら撒かれる。
 びちゃびちゃという嫌な音がする。
 切り刻まれる翼人達・・・肉片は数え切れないほどの数まで散らばる。
 それを呆然と見つめるクライフ・・・
 それに対して黒い男は彼に向けて挑発するかのように・・・こう言う。
「守れなくて残念だったな・・・偽善者」
 冷たい目で呟くその言葉に・・・彼は切れた。
 翼人達の居た辺り、既に原型を留めていない赤い水溜りから目を離してゆっくりと振り返る。
 一声吼えると高速で神剣魔法の詠唱を開始していく。その呪文は『白洸』独自の物なのだろう、複雑な詠唱と共に神剣に強い・・・強い力が篭るのが感じられる。
 初めからこれを使えばと思うだろう・・・だがこれは威力が大きすぎて周りに被害が飛び散る危険性がある為に、自ら使用を禁じていたのだったが今は関係ない。・・・敵しかいないから。
 守るべき人たちを殺されたから。
「紡がれるは陽光より齎されし光の糸。天地の恵みが合わさりその力は神をも砕かん」
 黒い男はじっと・・・それを見ているだけ。
 呪文は進む・・・
「螺旋の如く突き進み、敵を砕き、大地を白に染め上げよ!―――《ホワイトダスト》」
 呪文の最後の方はまるで雄たけびの様で聞き取ることはできないだろう。
 しかしその呪文の意味はともかく威力は・・・誰にでもわかる。
 彼は神剣を頭上高くに掲げてさらに跳躍する。
 翼人が使う為に天井が高いのが幸いした、剣は突っかからずにすんでいる。
「・・・・・・・・我、打ち消す、始原―――」
 黒い男は慌てもせず頭上をみあげつつ、静かに・・・詠唱する。
「うぉぉ!!」
 ブンッ・・・と大きく振るわれた神剣からは螺旋状のオーラフォトンが生み出され、それは黒い男を狙う。
そしてそれはぶつかる。ただし着弾点は黒い男の前方、何もないはずの空間に当った。
 ミスではない証拠に当った箇所から強烈な光が生み出され始める・・・これは現代兵器で言うのならクレイモアだろう。地雷のように周辺一体を廃塵と化すのだから。
 着弾点を中心に死の炎を撒き散らす魔法。
 圧倒的な熱量と爆音は世界を一時的に白に染める―――だから《ホワイトダスト》
「―――《アストラル》」
 だが・・・その一言により攻撃は無意味となった。
 集められたオーラフォトンはマナへと還元されてさらに四散させられる。
 黒い男が振るったたった1振りの剣閃で・・・
 切り裂いたのは空間。
 男の目の前に生み出された空間の狭間へと白の炎は呑まれ・・・そして消えた。
 すたん・・・と地面に着地したクライフは呆然とそれを見つめるしかなかった。
 今の技は彼の神剣の最大の奥義であり、もっていたマナ全てを注ぎ込んで放ったのだからこれ以上の攻撃はできない。
 ならせめて仲間が救援に来るまで・・・そう思い彼は再び剣を構えるのだが。
 突然黒い男が神剣に耳を当てる仕草をしてぼそぼそと囁いている・・・それは通話なのだろう。黒い男は仲間と話をしている。
 その会話は・・・
「タキオスそっちは終わったな。ならそのままこの世界の核を破壊してくれ。・・・メダリオは・・・もしかして遊んでいるのか?テムオリン様の命令だ。カオスエターナルのゴミをいたぶるのは止めてさっさと殺せ」
 と、その男は言う。
 特に「カオスエターナルのゴミ」という時の言葉はまるで・・・虫けらにしか思ってないほどに残酷に。
 そしてクライフは絶望を感じる・・・頼りにしていた味方、それが全滅していると聞いたから。
 そうしているうちに男は神剣から耳を離して再びクライフの方へと顔を向ける。
「なんだ・・・まだ逃げ出していなかったのか?」
 最も逃がす気はないがな・・・と付け加える。
 悪趣味である。この男は彼が逃げ惑う姿を見たかったというのだから。
 クライフは何か手はないかと考えつつじりじりと後ずさる。
「くっ・・・貴方の好きにはさせない」
 そしてたった1つだけ手段を思いつく。
「はぁっ!」
―――ざしゅ・・・
「・・・む」
 黒い男は微かに苦い顔をする。
 彼は自分のみに神剣を差込み自害したからだ。
「ちっ・・・虫けらの分際で」
 これでは神剣から直接マナを奪えないではないか。・・・と思った。
 本来ならここで極限までマナを吸い取り神剣そのものを消滅させようとしたのだが・・・逃げたらしい。
 黒い男はこの世界から消えていくクライフに一瞥し、翼人達の居た場所を見る。
 彼は今までの悪鬼の表情を変え、悲しそうな顔で・・・「すまない」と呟く。
 そして彼は神剣魔法の何かを唱え、それを地面へと叩きつけた・・・
 
 それから1時間ほどあとだろう、テムオリンが迎えにとやってきた。
 彼女は無邪気な笑みを浮かべつつ崩壊するこの世界を見つめて。
 ころころと無邪気な童女のような顔で微笑むこの少女、それが彼らのリーダーテムオリン。ロウエターナルの無数にある陣営の1つを司る少女。
 満足げな顔で彼女は後ろに立つ部下へ振り返り。
「ご苦労様でした3人とも」
 そういって労う。
 それに対してメダリオがすぐさま彼女の足元へと跪くと。
「もったいないお言葉です・・・テムオリン様」
 そういって彼は自身の神剣『流転』をテムオリンの前へとかざし、敵エターナルより吸い取ったマナをテムオリンへと献上する。
 さらにタキオスも剣の手入れの手を止めて。
「今回の任務は楽でしたな。雑魚が5匹いたようですが我々の敵ではありません」
 にっ・・・と笑みを浮かべるタキオス。
 
 最後に・・・都市を破壊してできた大穴をじっと見つめていた黒い男が振り返り。
「我々はテムオリン様の為に戦っているのですから」
 そう、宣言した。
 他の2人も頷く。
 そしてテムオリンは、崩壊していく世界と優秀な部下を見つめて微笑を浮かべた。
 こうしてまた1つロウエターナルに世界が潰される。
 だがこれは秩序の名のものに行なわれた善なる行為。
 彼らにとってはそうなのだから・・・

「・・・夢か」
 黒い男・・・いや、今は白いシャツとジーンズだけでそうはいえないが・・・彼は目を覚ました。
 完全に目を覚ます為にシャワーを浴び、頭をすっきりとさせる。
 朝食は取らないでコーヒーだけ口にする。
 そして着替え終えると部屋を出た。
 自室の扉を閉める・・・。
 そこで、ふと違和感を感じる・・・真横にいるべき存在がないということに。
 彼はふっ・・・と苦笑する。
 いなくて当然だ。彼女は今、眠っているのだから。
 そして彼は歩いていく・・・回廊を。
 暫く進むと大きな扉が見え、彼が近づくと共に大きな音を立てて自動で左右に開いていく・・・ 
 その部屋、中央の玉座に1人の少女が鎮座・・・いや浮いていた。
 その左右にメダリオ、タキオス、ミトセマールの3人がいる。
 彼は黙って歩き・・・テムオリンまで後数歩の位置へと止まりそこに跪く。
 そして・・・
「朝早くご苦労ですわね。『破砕者』ユウト」
 テムオリンのその言葉に顔を上げ、彼も喋る。
「いいえ。テムオリン様の為ですから」
 その表情はあの世界にいたときと同様に冷たい。
 だが・・・信用しているのだろう。
 彼・・・ユートの瞳にはテムオリンに対する信頼の色が浮かんでいるのだから・・・ 
 ここにいる男はロウエターナルの1人にして『聖賢』の使い手、悠人。
 『聖賢者』の名を捨て、『破砕者』となった者。
 秩序の名の下に第3の人生を歩むものである・・・







☆あとがき☆

 内容に関して―――気にしないで下さい。
 取りあえずはヘリオンルートの続きであり本編です。
 2部と3部は見る必要なく読めるように書いて行きたいと思います・・・といっても未熟すぎですが。
 舞台はファンタズマゴリア後4周期後の世界です。
 ちなみに、続きを送るのがいつになるかは不明です。

  

 

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