「さぁって・・・いきますか!」
オレ達はアレスティナ首都の近くで止まっている。
最終作戦・・・。
ここからは迅速に行動しないといけない。
「みんな、頑張ってくれよ」
「おう、これで終わりにしようぜ」
光陰が剣を構えた。
「んじゃ、アタシ達は裏からまわっていくからね!」
「御意」
岬と光陰とウルカは東へと走っていった。
東から町を回って、城に侵入するつもりなのだろう。
「よし、オレたちもいこう!」
残りのメンバーが立ち上がった。
それぞれ剣を構える・・・壮観だな。
オレ達は走りだした。
「オルファ、頼む」
「りょ〜かい!え〜い!!」
スパァァァンッ!!
城下町上空で大きな爆発が起こった。
キャァァッ!!
敵襲だぁぁぁっ!!
などと城下町民の声が聞こえた。
あれによって国民を避難させる、という物だ。
「でりゃぁぁっ!!」
俺はカノンで入り口の門を叩き斬った。
ギギギィィィッ・・・
バタンッ!
扉はふたつに別れて倒れた。
「こっちだー!!」
「かかれーっ!!」
わんさか兵達が沸いてきた。
ざっと五百人くらい・・・多い。
だけど、きっとこの二人ならやってくれる・・・!
「叶さん、倉橋!頼んだよッ!!」
「オッケー、任せておいて」
「悠人さんたち、よろしくお願いします!」
二人は兵達に向き直った。
オレ達は左右の小道に入る・・・。
ダダダッ・・・!!
「よし、行こう!」
「ああ!」
城の入り口の前で合流したオレ達は、最後の兵達が出ていったのを見て城に侵入する。
「んじゃ、悠人チームは城を探索して、ワープ装置を破壊して」
「了解、そっちも無理するなよ?敵はアペリウス・・・みんなで倒せばいいんだ」
「おう。じゃあな!」
俺とメシフィアはみんなと別れ、上へと進んでいく・・・。
「いたぞーっ!!」
「ちぃぃっ!!まだこれだけ兵がいたのか!」
俺は兵の武器を破壊しながら進む。
武器をあっけなく壊された兵はそのまま戦意喪失して倒れてしまう。
そういう点ではカノンより蒼天の方が便利だ。
蒼天の特殊能力は、生あるもの以外ならなんでも紙のように斬ってしまう、というものだ。
武器だけ壊すのに、これ以上適任な剣はない。
ま・・・剣が二メートル以上あるから、壁とかも容赦なく切り裂いてますが。
「ふぅ・・・あらかた片付いたか。先を急ごう」
「うん」
オレ達は階段を上ろうとする。
ダダダダッ・・・!!!
「ん?」
物凄い足音の数を聞いて、その方向を見る。
「まてーっ!」
「にがさんぞーっ!!」
「げっ・・・」
オレ達は思わず引いてしまう。
あらゆる方向から兵達が迫ってきていた。
このままアペリウスに行けば、支障をきたしかねない・・・。
「相手するしかないか・・・!」
『その必要はないわよっ!!』
ピカッ!!
ドゴォォォォォンッ!!!
「!!」
いきなり光ったかと思うと、こんな室内ではありえない雷が炸裂して兵達を止めた。
「岬!光陰!ウルカ!!」
あらわれたのは、別働隊の三人だった。
「ここはアタシ達でやるわ」
「だからおめーは早くアペリウスを倒しにいけや」
「手前にお任せください」
「・・・よし、行くぞ、メシフィア!」
「ああ!」
オレ達は階段を上っていく・・・。
「ハァァァッ!」
ズバッ!
叶はラグナロクを一振りだけした。
しばらく何も起こらない・・・。
だが・・・
「ぐあああっ!!」
「うぉぉっ!!」
「がはっ!!」
振りぬかれた方向にいた兵達が突然気絶しはじめる。
「はい、次ッ!!」
「はぁぁぁっ!!」
ズバッ!
キンッ!
ズブッ!!
敵の中心で暴れている影が。巫女衣裳の目立つ倉橋だった。
敵を斬ったあと体をくねらせて剣をよけ、その兵を後ろ手で持った剣でさして引き抜く。
一連の動作にかかった時間は一秒もない。
「はぁぁっ!!」
ズバッズバッズバッ!
今度は三方向に一回ずつ振りぬく叶。
「ぐあああっ!!」
「うあっ!」
「ぐっ・・・!」
つぎつぎと倒れていく兵。
「な、なんだこの二人・・・異常に強いぞ!?」
「お、オレ達が勝てるはずねぇじゃねぇか!!」
弱気を見せはじめる兵達。
「最近の男性は弱くなられたのですねぇ」
時深が相変わらず恐ろしい程の速さで敵を斬りながら言う。
「倉橋が強すぎるんでしょ?恐ろしい女だねぇ」
叶がおどけながら言った。
それにムッとする時深。
「こんなカワイイ巫女さんになんてこと言うんですか!この衣裳だけでも世の中の男の半分は落とせるというのに!」
「イヤ、それはないから。そこまで巫女好きが多かったら世の中モテたい女、みんな巫女だって。そんなに巫女がいたら神様どうなっちゃうのよ?巫女人口大増加ってかんじ?」
「大体、叶さんの方が強いじゃないですか!ホラ、兵士のみなさんも叶さんのせいで引いてるじゃないですか!」
「違うわよ。私の強さと魅力にメロメロなだけよ」
「それこそ自惚れです!」
放っておくと喧嘩を始めてしまいそうだが、そこまでフザけるつもりは二人ともないようだ。
「ハァァァッ!!」
「次ッ!!」・・・
「ハァァッ!」
ズシャッ!
兵を鎧の上から切り裂くレイナ。
すぐさま次の敵へと襲いかかる。
「でいっ!!」
メルフィーの剣は雷が宿っていた。
カシッ!
カシッ!
メルフィーは鎧を叩くようにして剣を振るった。
バチィィッ!
「ぐああ!!」
「う、うおぉ!」
雷の剣に触れた兵は、感電して倒れる。
「えぇい!アークフレアッ!!」
オルファの手から光線が放たれた。
ボガァァァッ!!
「ぐおおぉ!?」
「うあああ!!」
突然爆発し、城全体がゆれた。
「どんどん行きます!」
「レイナ、頑張りすぎないでよ!?」
「そうだよ!みんなで生きて帰るんだから!」
「だからこそ、ここで敵を通すわけにはいきませんから!」
ズバッ!!
レイナは一振りで二人を斬る。
「ゼウス!」
{はい!}
ゼウスが雷を纏った。
「破空断ッ!!」
レイナがゼウスを振るう!
シュバァァッ!!
雷を纏った大きな風の刃が敵へと飛んでいく。
バシュッ!
ザパァァッ!!
「うお!!」
「うああ!!」
前方にいた兵士が次々倒れていく。
「続けて!電陣!!」
グサッ!!
レイナは床にゼウスを突き刺した。
そこから敵へ向かって亀裂が走っていく・・・。
レイナは人差し指を立てた右手を挙げる。
「せいっ!!」
ドゴォォォッ!
手が振り下ろされる動きと同じく雷が落ちた・・・。
「ここか・・・?」
「そうみたいですね」
悠人達の目の前には、大きい、青い球体がコードで機械に繋がっている装置がある部屋だった。
「これを壊せばいいんだな?」
{おそらく、あの青い球体が装置の心臓部だろう。あれを壊せばもうワープできなくなる}
「よし・・・破壊しよう。粉々にだ」
悠人は青い球体に剣を突き付ける。
シュッ・・・!
「!?」
悠人はすぐに別の方向に聖賢を構えた。
「・・・!おまえは!」
「あれ・・・?啓太の・・・」
そこにいたのは啓太の・・・兄貴だった。
「あれ?生きていた・・・んですか!?」
啓太の兄貴は、カノンとラグナロクに並ぶ、永遠神剣第一位ブラスト『悪光』に取り込まれ、啓太が破壊したが間に合わなくて、亡くなったはずだ。
だが、現に目の前に啓太の兄貴は立っている。
「ソノソウチヲハカイサセハシナイ・・・」
「!?」
しゃべっている声がおかしい。
機械的で、人間味がまるでない・・・。
「ユート様・・・」
「どうした、エスペリア・・・?」
「あの方は・・・人間ではありません。ましてや・・・啓太さんのお兄さまでもありません」
「え?」
「・・・魂が、ありません。あの体を操っているのは・・・」
「永遠神剣だ」
「本当か!?アセリア」
「あの剣だ」
アセリアが指した剣は、まがまがしい紫色をしていた。
「あれが・・・」
「ワレハ永遠神剣第三位・・・『戒光』デアル・・・聖賢ヲイタダク!!」
バッ!
戒光は一気に悠人に詰め寄ってきた。
「くっ・・・!」
すぐさま飛びのいて避ける悠人。
「ど、どうすれば・・・!」
悠人は倒していいものか迷っていた。
あれはおそらく本物の体・・・!!
「ユート様・・・!」
エスペリアが二人の間に入る。
キィィンッ!
「ジャマヲスルナッ!!」
「きゃぁっ!!」
かろうじて受け止めるも、戒光に物凄い力で吹き飛ばされ、壁にぶつかるエスペリア。
「エスペリア・・・!!許さないっ!!」
アセリアが兄貴に切り掛かっていく。
「ダメだ!アセリアッ!」
「ヨワイ!!」
キィン!!
「!!」
アセリアは、渾身の一撃を簡単に止められて驚く。
「ドイテロッ!!」
「うっ・・・ふあっ!」
アセリアはいとも簡単に吹き飛ばされた。
ドガッ!!
壁に激突し・・・アセリアの頭から血が流れる。
「くっ・・・!好き放題しやがって!」
「サァ、聖賢ヲヨコセッ!!」
「くっ・・・!」
悠人は必死に攻撃を流す。
仲間を傷つけた分、傷つけたい欲求と、啓太の兄貴の体という事実の理性が反発しあう・・・。
(悠人ッ!!)
「!?」
突然悠人の頭に声が響く。この声は啓太の声だ。
「ど、どうして・・・!?」
(戦闘に集中しながら聞けッ!今の状況は大体わかってる!)
無茶な要求だがなんとかこなす悠人。
「な、ならどうすればいいんだ!?コイツは・・・」
(斬れ)
「え・・・っ?」
とんでもない発言に驚く。
(俺は、そんな形だけの兄貴なんか、兄貴だとは思わない。俺は、優しくて温かくて・・・安心できる、俺の兄貴はそんな人だ。だから・・・悠人、君の手で斬ってくれ。そんな・・・偽物は)
「・・・いいんだな?」
(体は本物だろうが・・・ソイツは兄貴じゃない。別人なんだ。だから・・・斬ってくれ!)
「わかった・・・!」
悠人は瞬時に構えた。
「ム!?」
「でやぁぁぁっ!!」
バキィィンッ!!
迷いのない一撃は『戒光』を綺麗に砕いた。
「バ、バカナァ・・・!」
「人の弱みに付け込もうとしたらしいが・・・もぅ、啓太はそのくらいにはビクともしねぇんだよ。それほど、啓太は強くなった。おまえは・・・永遠の闇に帰りな」
「グッ・・・ウォォォォッ!!!」
『戒光』の欠片が聖賢へと吸い込まれていく・・・。
悠人はそれを見届けると、聖賢を収めてエスペリアとアセリアを起こしに向かった・・・。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「大丈夫か?今日子」
光陰は息の荒い今日子を気遣う。
「アタシの・・・心配してる・・・暇がある・・・なら、敵を・・・倒しなさい」
「それだけ強がれればまだ大丈夫だな。ウルカッ!」
「手前もまだ大丈夫です!」
「今日子、おまえは援護しろ。オレ達で突撃をかける」
「支援は頼みました」
「任せてっ・・・!」
光陰とウルカが敵に斬り掛かる。
「空虚・・・」
{なに?}
「ちょっと・・・無理させるけどいい?」
{平気}
口数少なくパートナーの了解を得る今日子。
「よし・・・はぁぁぁ・・・」
今日子が力を溜めていく・・・。
「サンダーストームッ!!」
ズガァァァッ!!!
雷がまるで濁流のように敵をたやすく飲み込んでいく・・・。
「うおぉぉ!?」
「光陰殿、大丈夫ですか?」
「あ、ああ・・・あいつ、まだこんな力が・・・」
真っ黒に焦げた通路を見渡す。
兵は感電してピクピクしているが、気絶しているようだ。
「はぁ・・・う・・・」
岬はその場に崩れてしまう。
「今日子!!」
光陰はすかさず駆け寄って抱き起こす。
「無理すんなって言ったじゃねぇか!一緒に帰れなくなったら意味ないんだぞ!?」
「へへ・・・でも・・・敵が片付いたし、万事オッケーじゃない?」
力なく笑う今日子。
「まったく・・・」
その顔を見て、呆れてしまう光陰。
「きっと・・・あとは、啓太がなんとかして・・・くれるよね・・・?」
「そうだな。後は、アイツに任せよう」
「ウルカもゴメンね?無茶させて・・・」
「いえ、平気です。それより、少しお休みになられたらどうですか?」
「そうだ。少し寝てろ。その間に敵がきたら、オレ達で対処しておくから」
「ゴメン・・・そうさせてもらうね?」
今日子はゆっくり目を閉じた。
相当無理していたのか、すぐに深い眠りについたようだ。
「さて・・・コソコソ隠れているヤツもいることだし」
「気付かれていましたか」
ウルカが光陰の鋭さに驚く。
「まぁな。ウルカ・・・絶対に今日子を守りぬくぞ?」
「ええ。もちろんです」
二人は剣を持って同時に駆け出した・・・。
「・・・アペリウス」
俺とメシフィアはアペリウスの部屋についた。
広々とした、謁見の間のようだ。
「来たか・・・カノン」
俺には目もくれず、最終形態のカノンだけを見ている。
強い・・・落着き払った動作、言葉遣い、気迫・・・どれもが今まで戦ったヤツらとは桁違いだった。
気圧されそうになる自分の心に鞭を打つ。
「アペリウス、おまえがどうしてカノンを欲しがるのか・・・聞かせてほしい」
俺は一番聞きたかった事を聞く。
シャルティが言っていた・・・世界を平和にすると。
「大川啓太・・・カノンに認められた唯一の人間か。冥途の土産に教えてやろう。世界を平和にするためだ」
やはりそうきた・・・。
なら、一体どうやるつもりだろうか?
「・・・その平和とは、どんなふうに作るんだ?」
「そんなのは簡単だ。カノンの力をもってすればな。まず、戦争の中心人物を殺し、戦争文化を壊す・・・。それだけでも平和にはなるが、それだけでは平和がつづくことはない。故に、世界の人間から力を奪う。戦う能力がなければ、戦争は起こらないからな」
「・・・力を、奪う?」
「そうだ。人間の脳から、人へ力を向ける、という欲求を失わせる。そうすれば、二度と戦争は起こらない。全ての人間を私が操作するつもりだ。そうすれば、どの世界も永遠の平和がつづく。そう、人間の成長を止めてしまうつもりだ」
一見、革新家のような熱い理想・・・。
だけど・・・!!
「なるほど、大層な理想だ。でも・・・そんな自分勝手な理想を他人におしつけるな!統一されてしまった人達の意志はどうなる!?オマエの操り人形が増えて、作られた世界が増えて・・・それのどこが平和だ!?」
「・・・ふん、やはり、その程度の人間か」
俺の言うことなど戯言にしか聞こえないのか、アペリウスは興醒めしたかのように肩を落とした。
「そうやって、勝手に人間を作り替えるっていう発想が・・・なんでまちがってると気付かない!?」
「黙れ!この世界に新たな戦争を呼び込んだ人間が!!」
「確かにそうかもしれない・・・でも、アンタの考えは間違ってる!確かに、力があるから人間はそれを使いたがって、戦争を起こしてしまうのかもしれない。いや、戦争に限らず・・・でも、その後に人間はたくさんの物を得ることができる!人間の可能性を、アンタ一人が勝手に束縛するな!!どんな世界でも、アンタのオモチャじゃないんだ!」
「ならば、あらゆる戦いがはびこる世界を放っておけというのか!?」
たしかに、本当ならば止めるべきなのかもしれない・・・。
その世界の人間であれば。
「そうだよ!!なんでその世界の人間でもないアンタが戦争を止めるんだ!?確かに、戦争がいいとはいわない・・・むしろ、忌み嫌うべきものだ。だけど、それを終わらせるのも、その世界の人間であるべきだ!そうすることで、その世界はまた一歩前に進むじゃないか!そして、その行き着く先こそが、本当の平和なんだよ!!それを、アンタが勝手に世界を変えたせいで、その行き着く先さえも決められてしまった世界・・・それのどこが本当の平和なんだ!?アンタの箱庭の中だけの平和に何の意味があるっていうんだ!?」
「あらゆる戦いを無くす方法に、他にどんな方法があるというんだ!?」
そんなもの簡単に見つからない・・・。
でも、その戦いが誰かによって止められれば・・・それが広まれば・・・それが、平和への道なのかもしれない。
「そんなの俺が知ったことかっ!!でも、俺じゃない誰かが、その戦いのある世界の誰かが・・・その戦いを止める!その事に意味があるんだよ!それなのに、人間を勝手に作り替えて、自分の思い通りの、何の意味もない世界にすることが、どれだけ馬鹿げているのかわかってるのか!?」
「そのような甘い考えは好かない!!ならば、おまえは目の前で、助けられたハズの命を見殺しにしてゆけと言うのかッ!!!」
「っ!!それは・・・!」
俺は言葉に詰まってしまう。
命を失う瞬間が、どれだけ嫌なものかを知ってしまった俺には、そんな事できなかった・・・。
「何も言えないようだな」
「ぐっ・・・!」
・
・
・
「・・・そうだ」
隣のメシフィアが、いきなり声をだした。
「なに・・・?」
「・・・」
俺は突然のメシフィアの発言に驚いた。
タイミングではなく・・・言葉に。
「おまえのような異世界の者が見ていたのだったら、見殺しにしろ」
「貴様・・・ッ!」
アペリウスの顔に怒りが浮かぶ。
そのプレッシャーをものともせずに、メシフィアはアペリウスを見据えて言った。
「だが、見殺しにして、または、戦いのある世界に住んでいる人が、守ろうとしたけど誰かを殺されてしまって・・・それで終わりなわけじゃない。そこで、命の尊さを学び、もう二度とこんな思いをしたくない、させたくない・・・それに気付くことが、大切なんだ。それが、戦いを止める力になる・・・その力こそが、本当の平和を作るために、一番必要な物なんじゃないのか?そして・・・なにより、平和な世界を作る上で、大切な思いだと私は思った」
「ぐっ・・・!」
今度はアペリウスが言葉に詰まった。
「戦争が起こるのは、きっとその思いを知らない人が多いからだ。だけど、そんな戦いを繰り返していくうちに、戦いの愚かさに気付いている人間の方が多くなる。その時初めて、その世界から戦いはなくなり、本当の平和が築かれていくんじゃないのか?」
「・・・」
俺はメシフィアの言葉に聞き惚れていた。
最初出会った頃、俺の事を遠慮無く刺したメシフィアが、こんなにまで・・・変わっていたなんて・・・。
更にメシフィアは続けた。
「一人の意志で作られた平和なんか意味がない。戦いをはじめようとした人を、みんなで止めて、平和を維持していく世界・・・それが本当の平和なんだろう」
・
・
・
「クク・・・確かにそちらが正しいようだな」
メシフィアの言葉を聞いて、どこかさっきより崩れた気がする・・・。
そんなこと・・・俺にはできなかった。メシフィアは・・・本当にすごい。
「アペリウス・・・」
「だが、それが実現した世界がどこにある!?何万年つづいている世界でも、戦いは起こっているのだ!!それはつまり、おまえらの考えが、実現不可能だと示している!そんな夢想を掲げて生きて、戦いがなくなっていれば、私だってこんな考えにはならなかった!だが、戦いがなくならなければ意味がないのだ!!夢想にすがって生きていく時代は終わったのだ!!」
その言葉で・・・俺は何か絶望したような気がした・・・。
そんな・・・おまえはそんな程度の想いで・・・!?
アレックス・・・グレイ・・・シャルティもカクインも・・・!!
彼らは・・・アンタに期待していたのに・・・!!
多からず少なからず、本当の平和を実現させてくれるんじゃないかって!!
なのに・・・おまえはそんな理由で・・・ッ!!!
そんな・・・妥協案程度なんかで・・・ッッ!!!!!!
俺はその言葉を聞いて、空しさをぶつけるかのように叫んだ。
「黙れッ!!!」
「!!」
部屋に、俺の怒鳴り声が響いた。
そんな言い分・・・認めてたまるものかッッ!!!
俺の中に怒りが生まれた。
「アペリウス・・・おまえは結局、信じられないだけじゃないか!!」
「信じられない・・・?」
「そうだよ・・・っ!誰も、何も信じられないから、自分一人が全てを統一してしまえばいい、なんて考えになったんだ」
「・・・」
「おまえは弱いッ!!人を信じられずに、世界の可能性を諦めただけじゃないか!!信じることがつらくて、逃げて、そんなおまえが、世界を勝手に作り替えていいワケがない!!」
「弱い?私が・・・!?」
「オレ達は、絶対諦めない!何万年かかろうと、何億年かかろうと、いつかきっと、その世界の人々が、自分たちで本当の平和を築く。そんな世界を、オレ達は絶対に諦めない。オレ達は、人間の可能性を信じるッ!!だから・・・おまえに世界とカノンを渡すワケにはいかないッ!!」
俺はカノンを構えた。
メシフィアも蒼天を構える・・・。
「おまえらとは、一生意見が合わないようだな」
「・・・そうだな」
アペリウスの気迫が増した。
とうとう・・・最後の決着をつけるときがきた。
「私とて、ここで退けない信念がある。勝負だ・・・っ!!」
アペリウスは剣を取った。
鋭く枝分かれした剣・・・その剣も、相当の永遠神剣のようだ。
「いくぞ・・・っ!!!大川ッ!!」
キィンッ!
「!!」
気付くと俺の目の前にいたアペリウス。
なんとかカノンで剣劇を受けとめた。
「でやぁぁっ!!」
ブシャァァッ!
「ぐ・・・おっ・・・!?」
受けとめきったはずなのに、まるでそのまま斬られたような痛みが俺を襲った。
鮮血が飛び散る。
体を縦に深く斬られた。
「ケイタッ!!」
ズザァァ!
俺はそのまま吹き飛ばされて、壁に激突した。
「許さない・・・っ!!蒼天!全部力を貸して!」
{了解!}
啓太を傷つけられて、一気に気迫が増したメシフィア。
「はぁぁぁぁ・・・っ!」
蒼天にオーラが宿る。
その刀身が見えなくなるほどの強いオーラ。
「蒼天!」
{クロノ・オリジン・アタックッ!!}
メシフィアが蒼天を振りかぶった。
「ぬ・・・!?」
ドガァァァッ!!!
そのオーラが鞭のようにしなり、床を叩くと、ものすごい爆発が起こった。
「うおおお!?」
アペリウスはその爆発に飲み込まれ見えなくなる。
「うああああ!!」
メシフィアはそのまま蒼天を切り上げた。
ズドォォォッ!!
オーラが水しぶきをあげるように突き上がっていく。
その勢いでアペリウスを切り刻んでいった。
「でやっ!!」
切り上げた蒼天を天井に向かって突いた。
腕が止まると同時に、慣性の法則に従うかのようにオーラが蒼天から離れていく・・・。
そして、そのオーラは球体に変化していった。
「マキシマムインパクトッ!!!」
グサッ!
メシフィアはジャンプして蒼天を床に突き刺した。
ドゴォォォォオッ!!!
球体から物凄い勢いで、マナの濁流が落ちてくる!!
「ぐあぁぁぁっ!!」
そのオーラフォトンビームは床をどんどん削り取っていく・・・。
「はぁ・・・はぁ・・・」
{メシフィア、大丈夫?}
蒼天に心配されるほど、今のメシフィアは消耗していた。
「う、うん・・・」
メシフィアは肩で息を整える。
{!!メシフィア!}
「・・・え?」
シュバババッ!
何かがメシフィアを這うように動いた。
「な・・・に・・・!?」
ブシャァァッ!!
体のあちこちから血が吹き出る。
痛みと衝撃でメシフィアは倒れこんだ。
「う・・・く・・・!」
「調子に乗るな・・・っ!!あの程度で・・・くたばるかっ!!」
「アペリウス・・・!」
さっき、全ての力を込めた最大の攻撃を打ち込んで、てっきり倒したと思っていたアペリウスがそこにはいた。
かなりのダメージを食らっているようだが、致命傷にもなっていない。
「く・・・」
「これで・・・終わりだッ!!」
メシフィアは体が動かず、もう打つ手がない・・・と目を閉じる・・・。
キィンッ!!
「やらせねぇ・・・やらせるもんかっ!!」
俺はアペリウスの剣を受けとめた。
これ以上・・・失ってたまるかッッ!!!!
「うあぁぁぁっ!!!」
俺の背中から、二枚の白い翼が生える。
「!!それがおまえの本気か・・・!」
俺の翼を見て、目を見開くアペリウス。
「何か貫く、貫かなければいけない物を持っているのは・・・おまえだけじゃねぇッ!!」
俺はアペリウスに斬り掛かった。
「甘いわっ!!」
ズガァァァンッッ!
カノンがかわされて、床を砕く。
「うああぁぁあっ!!」
「!!」
俺はカノンを強引にアペリウスに持っていった。
「でやぁっ!!」
ブシャァッ!!!
ズザァァァッ!!
「くっ・・・」
「ちっ・・・!」
アペリウスの剣が俺の脇腹を掠め、傷を作った。
アペリウスはカノンを防ぎきれなかったらしく、右腕から出血していた。
「カノン・・・アイツ・・・」
{・・・強いぞ。永遠神剣に取り込まれていないからな}
精神的にも肉体的にも強い、そうカノンは言っている。
だけど・・・ここで負けられない。
俺はカノンを構えた・・・。
アペリウスも構えている。
「カノン・・・次で・・・決めるッ!!」
{おう!!}
「うあああっ!!!!!!」
俺の体全体に白いオーラが宿っていく・・・。
「うぉぉぉぉ!!!!!!」
アペリウスは赤いオーラを同じように宿らせた。
「アペリウスッ!俺はおまえを越えてみせるッッ!!」
俺の目の色が変わっていく・・・。
あまりのマナの集束に体に変化が現れているのだろう。隅々まで力が行き渡る・・・。
いつもの数倍・・・これならいけるッッ!!
いや・・・いくんだッッ!!!
深い青から、金色へ・・・。
「こい、大川ッ!!」
「うあああっ!!」
バギィィィッ!!
ドゴォォォォッ!!
剣同士が重なっただけで爆風が起こり、部屋を揺らした。
「ぐ・・・・うおぉぉぉ!!!!」
「ぐ・・・うああああ!!!!」
俺は一気にアペリウスの剣を押し返していく・・・。
「ぐ・・・ぐうあぁぁっ!!」
シュゥゥゥゥ・・・
アペリウスの赤いオーラが消えていく・・・。
俺はカノンに力を注ぎこむ!
ここで・・・決めてやるッッ!!
「カノン!」
{インフィニット・パッションッ!!!}
俺はカノンを地面に叩きつけた。
ドガァァァッ!!
床が爆発するように弾けた。
「う、おおおお!!」
アペリウスが爆発に巻き込まれる。
「でやあああっ!」
俺はオーラを纏っているカノンでアペリウスを切り上げた。
ズガァァッ!
波のようなオーラがアペリウスを空中に突き上げる。
「これで・・・・っ!!」
俺はカノンを、アペリウスに向かって薙いだ。
もちろんカノンは届かない・・・。
だが、オーラで作られた無数の刃がアペリウスを捉えて、次々切り刻んでは天井にぶつかって消えた。
天井近くまで打ち上げられ、ボロボロになったアペリウスが落ちてくる。
「終わりだアァァァァッ!!!」
俺がカノンを地面に刺すと・・・
ブワァァッ!
床に巨大な魔法陣が現われた。
キィィィィィィ・・・・・・
ドガァァァァッ!!!!!!!
魔法陣から爆発が起こり、城が崩れてしまいそうな程の揺れが起こる!
部屋全体を光で包むのには十分すぎる威力・・・。
俺たちはその爆発に呑み込まれていくのだった・・・。
「・・・負け、か・・・」
アペリウスは倒れていた。
その隣に、俺が立っていた。
そして、その隣にはメシフィア・・・。
俺の服は縦に裂け、メシフィアの鎧はもう使えない程崩れていた。
先ほどまでの戦いを残す物だ・・・。
「アペリウス・・・」
「・・・わかっていたさ」
「・・・」
「おまえらの・・・迷いのない言葉を聞いた時から・・・」
アペリウスは自嘲めいた空笑いをした。
「・・・そうか」
「・・・おまえらの言う、本当の平和・・・築いてみせろ」
「言われるまでもない。作るのはその世界の人々だけど・・・絶対に、オレ達で築いてみせるさ」
俺は即答した。迷うはずがなかった・・・。
「なら・・・私はおまらに任せて、消えるとしよう」
「・・・」
「さぁ、カノンの力を使ってくれ」
アペリウスは目を閉じた・・・。
「・・・わかった。カノン」
{ああ}
俺は何をするかわかっていた。
俺はカノンを天井に向けて投げる・・・。
カノンは空中で白い球体になっていく・・・。
俺の手には、実体のない光の剣がある。
「・・・さよなら。アペリウス」
俺はその光の剣を横に薙いだ。
そして・・・アペリウスの体へ静かに刺した。
{さらばだ・・・誇り高き、アペリウスよ}
「{コネクティング・フェイト}」
シュバァァッ・・・
白い球体のカノンから、白い二本の光線がアペリウスを打ち抜いた。
アペリウスの体がマナの塵となっていく・・・。
俺が落ちてきたカノンを受け取ると、アペリウスの体は消えていた・・・。
ダダダダッ・・・!!!!
「啓太っ!アペリウスは・・・!?」
悠人が部屋を見まわす。
だが、アペリウスはいない。
「倒した・・・のか?」
「・・・まぁな」
「そうか!やったじゃねぇか!!」
ゴゴゴゴッ・・・!!!!!
突然城がゆれはじめた。
「な、なんだ?」
「・・・この感じ、叶さん!」
時深と叶さんがうなずいた。
「悠人さん!まさか・・・青い球体を破壊したんですか!?」
「え?ダメ・・・だったの?」
おもいきり破壊してきたようだ。
「あれは空間安定の装置です!なんで普通の機械を壊さなかったんですか!?」
「ご、ごめんなさい・・・」
悠人は小さくなって謝った。
だが・・・それではどうしようもない。
「倉橋、どうなってるんだ?」
「簡単に言うと、空間が歪んで、ブラックホールができつつあるんです!」
「なに!?このゆれはそのせいなのか!?」
もしかして、とてつもなくヤバいことになるんじゃ・・・?
「このままでは、この世界が全て闇に吸い込まれてしまいます!」
「な!それじゃ・・・防ぐ方法は!?」
「・・・啓太さん、あなたならわかるはずです」
時深の冷静な一言で、俺はすぐに我に返った。
「・・・!」
俺は自分が握っている物に気付く。
「倉橋、まさか・・・」
メシフィアが倉橋に聞いた。
それは・・・
「カノンで、このブラックホールを抑え込むんです」
「・・・時深、そんなことして啓太は大丈夫なのか?」
城は今にも崩れそうだというのに、誰もが騒がず聞いていた。
次の言葉を・・・。
「確率は・・・かなり低いです。九割、ブラックホールに飲み込まれるでしょう」
「!!そんな危険なのやらせるわけにいかねーだろ!!」
光陰が怒鳴る。誰もが光陰と同じような目をしていた。
だけど、このままだと・・・せっかく勝ち取った世界が壊れてしまう。
「・・・九割なんだな?」
「え?」
「十割じゃねーんだな?」
俺は倉橋に確認すると、カノンを地面に刺した。
「で、でも危険なことに変わりはありません!」
「・・・みんな、悪いな」
みんなの体が突然光りだした。
いつも使っていた・・・瞬間移動の予兆。
「!!啓太ッ!!」
誰もが何をするかわかっていた。
そして、それがどれだけしてほしくないことか・・・。
「啓太君・・・」
叶さんが何かをうったえるような目で見てくる。
「大丈夫です。安心してください」
「・・・本当に平気?」
「心配性なんですから。俺がウソついたことありました?」
すると、叶さんはふっと笑った。
「そうね。そうだったわね!んじゃ・・・がんばりなさい、啓太君!」
「はい!」
俺はつよく頷いた。
「啓太ッ!」
「悠人、俺は死なないさ。だからみんなのことは、またしばらく任せる」
俺は悠人に微笑んでそう言った。
「オイ、コラッ!!」
「光陰、たまにはこーいう気取ったマネしてもいいだろ?」
光陰にウィンクする。慣れないせいで両目瞑った気がするが、まぁいい。
「啓太・・・」
メシフィアがすがるような目で俺を見ていた。
俺はその顔を吹き飛ばすように、笑って返した。
「大丈夫。祝勝会にまでは帰る。最後の最後で自分を犠牲にするような、誰かを悲しませてしまうようなヤツにはならないからさ」
「・・・信じてる」
メシフィアはコクッとうなずくと、さっきまでの表情から一変して、カラっと爽やかな笑顔を向けてくれた。
俺の、大好きな笑顔・・・それだけで、俺はもっと力が出せる気がした。
「キスは、その時までお預けな?」
「・・・うん」
「じゃぁな!」
「啓太ッ!必ず帰ってこいよ!?」
悠人のその言葉を最後に、みんなは消えた。
「さぁ、カノン・・・始めようか」
俺はカノンに右手で触れた。
{・・・恐くないのか?}
カノンが確認してきた。
・・・わかってくるくせに。
「俺の心がわかるんだろ?」
{・・・ふっ、そうだな}
俺とカノンは軽く笑った。
この世界を終わらせてたまるものか・・・。
シルビア
おじいさん
兄貴
アエリア
その人達の希望を、こんなつまんない結末にしてたまりますか!
俺はカノンに力を入れた。
「大川啓太の名において命ずるッ!!永遠神剣最上位、『天使』・・・カノンよ!!全力を持ってこの歪みを抑え込めッッ!!!」
カノンから白い光が広がっていく・・・。
その光は城全体を包んだ。
グォォォォ・・・!!!
その光は、ブラックホールに押し返され、膨れたりしたが、だんだんと小さくなっていく・・・。
ザパァァァッ!!
その光が小さくなり消えると、白い光を放つ羽が世界中に舞った。
その様子に、人種も国籍も関係なく、誰もが見惚れていた・・・。
これが、全てに決着がついたという証だった。
羽が地面に落ち・・・静かに消えると、気を取り戻したかのように・・・
再び世界が動きだした。
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永遠神剣第三位『戒光』・・・兄貴の体を乗っ取って、力をつけようとした永遠神剣。他の神剣を取りこもうとする
欲が強かった。悠人の一撃で粉々に粉砕される。
メシフィア最終技『クロノ・オリジン・アタック』
メシフィアが蒼天の力を全て引き出して使える技。オーラを自由自在に操り、鋭い刃にしたり爆発を起こす。
メシフィアは、オーラの刃で攻撃→床に叩き付けて爆発→切り上げて波のオーラで刻む→
オーラを敵上空集める→オーラフォトンビームでフィニッシュという技。
このオーラが普通のオーラとは違い、敵の防御を初撃で崩すため、空間を歪められない限り
確実に敵を殺傷する。広範囲のために威力も絶大。
啓太最終技1『インフィニット・パッション』
啓太がカノンの力を限界まで引き出して使える技。上記の技と非常に似ている。
啓太は、オーラの刃で攻撃→床に叩き付けて爆発→切り上げて波のオーラで刻む→
無数のオーラの刃を作りだし、それを放って刻む→魔法陣による絶大な破壊力を持つ爆発
でフィニッシュという技。威力はクロノ・オリジン・アタックの数倍。
こちらは、オーラが敵の防御を初撃で崩すだけでなく、力を引き抜くので、
空間を歪められない限り確実に敵を殺傷する上に体に力が戻る。
といっても、カノンの能力で空間が歪められる事はないので、防御手段はない。
広範囲のために、威力も特殊オーラによる効果も絶大。
啓太最終技2『コネクティング・フェイト』
カノンを投げて、特殊なオーラの塊にする。啓太は光の剣を持っていて、それで敵の動きを止める。
その光の剣は剣だけでなくどんな形にもなれるうえに、いくらでも増やす事ができる。刺さるとその物体の『時』を止めてしまう。
意思を持っているかのように敵を追いかけるので、適当に投げてもかならず敵を攻撃し、刺さって動きを止める。
特殊なオーラになったカノンがその敵を光線で射抜くと、強制的に、どんな者でもマナに還してしまうという技。
光線はもっと荒々しく射抜くはずなのだが、啓太が未熟なためにそこまでの技にはならなかった。