「でもさぁ、あの王様がいきなり皆殺しなんてビックリしたよ」

オルファは夕食でそんなことを言い出した。

確かに、皆殺しを命令したのは初めてだった。

「それは・・・」

「もともと、あの王様はそういう性格よ」

「え?メルフィー・・・?」

「だって、エレキクルと戦争を始めた頃も、そういう皆殺し、計画されてたんだから」

「ええ!?」

「・・・」

メシフィアは目を逸らす。あまり触れられたくない過去だったようだ。

「けど、実際そんな動きは・・・」

「そう、結局は行なわれなかったわ」

「なら・・・なぜ?」

「それは・・・シルビアが・・・いたから」

メシフィアがどこか淋しく言った。

「シルビア・・・って・・・」

「娘がやめてくださいと言えば、父だって少しは考えるでしょう?そこで、私達が畳み掛けて、今まではそういう非人道的な作戦は回避できてた」

「でも、今はいないから・・・」

「そう。唯一止められる啓太もいなければ、国民をいきなり殺されて・・・もとの性格に戻ってしまったといってもおかしくはないわ」

「メルフィー・・・」

ずいぶん感情を込めないで話す。

嫌気がさしていた、そんな感じだ。

「だからこそ、私達がこうやってがんばってるんだけどね」

「そうですよね・・・これからも、きっと回避していけますよね?」

「エスペリア、その通りだよ。だから、諦めないようにがんばっていこう。な?」

悠人がそう言った。

「はい!」

エスペリアは元気良く答えた。それを見ていたメシフィア。

「・・・」

複雑な表情。

 

 

 

(ケイタは・・・何をしてるんだろう?)

魚を釣ってます・・・。

惚れた弱みというか、啓太と別れてしまったのは一週間前程度の事なのに、こんなにも胸を締め付けられているメシフィアがいた・・・。

 

 

 

 

 

 

「さぁてと・・・カノン?」

{なんだ?}

いつもどおりにぶっきらぼうな返事がきた。

「状況は?」

{カオストロがアレスティナの南部市街地を制圧した}

「ふぅん・・・被害は?」

{カオストロはナシ。アレスティナは、人に関してはないが、建物は少し破損したそうだ}

「それだけ!?どうやって制圧したのさ!?」

{武器を壊したり、気絶させたり・・・要は、おまえと同じだ}

「へぇ・・・誰がそんなことを?」

{・・・鈍感が。メシフィアに決まっているだろう。あと叶もいたらしいが}

「あの二人かぁ、あの二人なら可能なのかも」

{それと・・・一つ、嬉しくないニュースだ}

「え!?」

{今回、王からくだされた命令は、反抗してきた者は皆殺し、だった}

「!?」

{さらに、悠人たちがやらなければ、川に毒を流して毒殺・・・というのもあったらしい}

「なんで!・・・そうか、シルビア!」

俺はすぐにピンときた。

{そうだ。父をそこはかとなく諌めていた娘がいなくなった今、王は平気でそういう命令をするヤツに戻ってしまった。今まではなんとかなったが・・・いずれ取り返しのならない事になるかもしれないな}

「くっ・・・わかった」

{早く帰ってこいよ}・・・

 

 

 

 

 

「はぁ・・・そうか・・・」

俺は一気に重くなった体をドスッとベッドに捨てて、ボーッと天井を眺める。

「・・・」

「啓太?」

「・・・エルーナか」

「どうしたの?」

「別に・・・」

「戦争の事?」

 

ピクッ・・・。

 

「ふぅん・・・そういえばさ、この島に、一人だけアレスティナ出身の人がいるんだ。話してみれば?」

「・・・」

俺は立ち上がって、その人のトコロへ行く・・・。

 

 

 

 

 

「ここか」

そこには簡素なプレハブくらいの大きさの家があった。

「すいませーん」

「・・・なんじゃ?」

中から出てきたのは、おじいさんだった。

「アレスティナ出身ということで、話をしたいんですけど・・・」

「・・・もしや、おまえさんが大川啓太か?」

「そうですけど・・・」

「そうか・・・!なら、話してしんぜよう。入れ」・・・

 

 

 

 

 

「茶はないが、我慢してくれ」

「いえ。それで・・・アレスティナの事について、聞かせてください」

「・・・ワシは、これでもアレスティナの精鋭部隊長を努めていたのだ」

「へぇ・・・」

おじいさんは遠い目をしながら話し始めた。

「ワシは国のためを思って、日々修業を積んでおった。そして、賢君とされる、今の前の王様・・・アレスティナ様に忠誠を誓っておった。だが・・・そんな日常も、壊れ始めた。あの日・・・いや、ヤツが来てから・・・」

「ヤツ?」

「今のアレスティナの王・・・アペリウスだ」

「アペリウス・・・」

(たぶん、ソイツが異世界の人々のリーダーだな)

「突然現れたソイツは・・・まず、アレスティナ様を殺した」

「え!?」

「クーデターだった。どこから引き連れてきたかわからないような従者数人と共に戦って・・・その圧倒的戦力差のなか、ワシら正規軍は負けた。そして、アレスティナ様の首を取ったアペリウスは、新しい国王となった」

「・・・」

「当然、賢君であったアレスティナ様にクーデターなどとありえるハズもない。そして、アレスティナ様の元で一致団結していた国民も、誰が裏切った?などと疑いを持ちはじめ・・・段々と、バラバラになっていった」

「・・・そうですか」

「さらに、税を引き上げ、徴兵令を厳しくし、国民にこれ以上ないというほどの貧困を与えた・・・そこで、見兼ねたワシと数人の上官で、アペリウスを討ち取ろうという陰謀を企てた。だが・・・」

「だが・・・?」

「うまくいかなかった。打ち合せ通り、ワシがアペリウスの部屋へと入ると・・・そこには、一人の上官が殺されていて、他の上官はアペリウスについていた・・・」

「つまり・・・アペリウスが一人の上官を殺し、強かったから、裏切られた・・・というわけですか」

「ああ・・・そして、ワシはこのジパングへと送られた。ワシの家族は・・・皆、殺されたらしい・・・ぐっ・・・」

おじいさんの乾いた目から、涙があふれだした。

忠誠を誓っていた主君が殺され、仲間にも裏切られ、ここまで落とされた悔しさや悲しみがあるのだろう・・・。

俺が、理解できるはずもない、何かが・・・。

「その後、平和な国だとして有名だったアレスティナが、一番危険な国に変わったのは言うまでもないだろう・・・?犯罪一つなかったあの国が、今では強奪や殺しなどが毎日起こっているらしい・・・ワシのいた頃のアレスティナは・・・戻らないんじゃよ・・・もう・・・消えてしまったんじゃ・・・アレスティナ様が死んだ時に・・・な」

「・・・諦めるんですか?」

悔しかった。そんなことをさせてしまった、俺が・・・。

「なに・・・?」

「おじいさん!あなたはアレスティナを、元の平和の国に戻したいんでしょう!?だったら、諦めちゃダメです。アレスティナは、きっと戻ります・・・あなたのいた頃の国に」

「どうして・・・?」

「俺が、あなたのアレスティナを引き継ぎます」

「なに・・・?」

「今まで、俺は自分が原因だったから、とか・・・そういう義務感で戦争を終わらせよう・・・そう思ってました。でも・・・あなたの話を聞いて、それだけじゃダメだってわかりました。俺は、みんなの願いを叶えるために戦います。元のアレスティナに戻ってほしい・・・そういう願い、きっと、今のアレスティナの国民も持ってると思います」

「・・・」

「だから、決して諦めないでください。生きて、あなたの目で、元に戻ったアレスティナを見てください。それが、俺が戦う約束です」

 

「・・・そうか・・・君が・・・君なら、きっと・・・やってくれるのだろう・・・な」

おじいさんの様子が変だ。目の焦点があっていない。

 

「おじいさん?」

「最後に・・・君に会えて、良かった」

「ちょ、最後!?」

「ワシが話したのは・・・何年も前の話じゃよ」

「ってことは・・・何才なんですか!」

「70じゃよ・・・もう、十分生きたさ」

「何言ってるんですか!」

俺は倒れるおじいさんを抱える。

「まだ死んじゃダメですよ!あなたは元に戻ったアレスティナを見る義務があるんですから!」

「その理想は・・・今もアレスティナで苦しんでいる・・・人達に見せてやって・・・くれ」

「おじいさん!」

「参ったな・・・君に夢を託したら・・・ワシはもう・・・やることがない」

ゆっくり目を閉じていくおじいさん。

「まだやることがあるでしょう!!」

「ふふ・・・さらばだ。若き頃のワシにそっくりな・・・若武者よ」

「ちょっと・・・おじい・・・さん・・・」

グッと腕に重みがかかった・・・。

俺は、力なくうな垂れるおじいさんをゆっくり床に寝かせた。

「・・・おじいさん、俺・・・がんばるからさ。元の平和なアレスティナ・・・戻してみせるよ。異世界のヤツら・・・追い出してさ。だから、安心して・・・見ててくれよな」・・・

 

 

 

 

 

「・・・本気?」

島のみんなが砂浜に集合していた。

いつのまにか、俺はこんなにもジパングに馴染んでいたんだなぁと思う。

「よぉ、大川ァ・・・いくらなんでもむちゃだろう?」

「バルパス、それでも、俺は行くよ。今まで世話になったな」

「よせよ・・・照れるだろ?」

「はは・・・。みなさんも、お元気で」

「待って」

「え?」

いきなり女性に呼び止められた。確か、キャメロンだったな。

「はい、これ」

「これは・・・」

俺は保存の効く食料を渡された。

「数日かかるから、栄養も取らないと」

「・・・ありがとう」・・・

 

 

 

「啓太」

「エルーナ、結構世話になったな」

「ええ。かなり世話したわ」

「・・・」

「がんばって。あなたならできるわ」

「・・・おう」

「それと、たまには遊びにきて」

「もちろん!」

「最後に・・・絶対に、生きて」

「・・・誓うよ。エルーナ」

「よし、がんばってね!」

「おう!」

「絶対にまた遊びにこいよ大川ぁ!」

「おう!もちろんだバルパス!」

俺はイカダを押して海へ入る。

ザパァァァッ・・・

「さぁて・・・ちゃんと着いてくれよ、イカダ号」

俺は大きな大きな海へ、帰るための一歩を踏み出した。

ジュブジュブ・・・

「ん?あぁぁぁぁ!!み、水が!」・・・

大丈夫なのだろうかね。

この先・・・途中で沈んだら、シャレにならないな・・・。

 

 

 

 

 

「今度は市街地西部ですか・・・」

「うむ。よろしく頼んだぞ」

「・・・はい」

メシフィアと悠人は、うんざりしてそのまま部屋を出ていく。

「・・・手配は済んだのか?」

「ええ。王の仰せのままに。ですが・・・いいのですか?」

「ふん・・・私の思い通りにならん駒などいらぬ」

王の側近が難しい顔をして言う。

「しかし、あのメンバーはこの国の戦力の中枢を担っています」

「何を言うておる。ヤツらがいなくなれば、あの作戦を実行できるであろう?」

「・・・」

「そうなれば、もはや戦力などいらぬ。どちらに転んでも私に被害はないしな!」

王はあざけるがごとく笑った・・・。

「と、いうわけで、少人数で西部の制圧に向かうことになった」

「なるほど・・・して、その制圧部隊は誰が担当することになるのですか?」

「そうだなぁ・・・オルファとかアエリアとか、魔法主体のメンバーは、無傷制圧には向いてないからすまないがダメだ」

「ぶ〜!」

オルファがブーイングするが今回は仕方ない。

「となると・・・そうだな。俺とメシフィアは決定で、今日子と光陰は守備に残して・・・アセリアかウルカ、どっちかついてきてくれ」

「・・・どうやって決める?」

「手前はなんでも良いですが・・・戦って勝った方が、というのは?」

「・・・ん」

二人とも剣に手をかける。

「ん、じゃねぇだろうが!んなことやってる暇もないし、隊長として許しません!もっと平和的なコトで・・・そう!ジャンケン!」

「ジャンケン?」・・・

 

 

 

ルールを教えるのに五分程度かかり、勝負は一瞬で決まった。

ジャンケンで勝っただけなのに、なぜかご満悦なアセリア。

「んじゃ、早速いきますか」

「今から?」

今は早朝。アレスティナに入るのは真っ昼間くらいだ。

「敵も真っ昼間から襲ってくるとは思わないだろ?そして、人が活動的になっている今なら、人も逃げやすい」

「・・・わかりました」

「建物の破壊はなるべく抑えて。あとご法度が国民を傷つけること。いいね?」

「了解」

「ん・・・任せろ」

おれ達はアレスティナへと出撃した・・・。

王の陰謀も知らずに・・・。

 

 

 

 

 

 

「・・・おかしいぞ?」

辺りは静けさに包まれていた。稼ぎ時の店も、なぜか閉まっている。

いや・・・誰かいるか?

「なんで・・・こんなに静かなんだ?」

「寝ているんじゃないか?」

「アセリア、今何時かわかるか?」

「・・・正午だ」

「・・・寝てると思うか?」

「・・・思わない」

「つまり・・・情報が漏れていたワケか」

「え?そうなのか?メシフィア」

「・・・しかも、仲間からだ。見当はついているが」

「誰?」

「悠人、くるぞ」

「む・・・!」

シュッ・・・。

いきなり目の前に現れた三つの影。

「・・・瞬!」

「くはは!まんまと引っ掛かったな!」

「引っ掛かった?」

「まだわからないのか?おまえらは裏切られたんだよ、王様に」

「なんだと・・・?」

「つまり、アンタらが今、ここにくるのをおれ達はアンタらの王様から聞いたんだよ。おまえらを殺してほしい・・・ってな!」

「!本当か・・・アレックス」

「ま、あの王様に言われるまでもなく、僕は貴様をコロスつもりだがなぁ!悠人!」

「くっ・・・!」

「それに、アンタらはコイツらも相手にできるか?」

「なに!?」

ザッザッ・・・

現れたのは、数えきれないほどの衛兵・・・。

 

 

「・・・なぁアセリア」

「なんだ・・・?」

「おれ達・・・もしかして、超ピンチってやつ?」

「・・・言うまでもなく」

「悠人、気を引き締めろ」

メシフィアは蒼天を構えた。アセリアも悠人もそれぞれ構える。

四面楚歌状態・・・。

(さて、どうやって切り抜けるか・・・)

「ここは、戦うよりも逃げるに集中しよう。必ず生きてカオストロに帰る」

「ん・・・」

「よし」

悠人たちは逃げ出した・・・。

しかし、逃げられなかった。

「くそっ・・・!」

すかさず衛兵が取り囲んで、厚い壁を作る。

「逃げようというのかい?負け犬」

「うっさい!」

キィンッ!

瞬の剣を受けとめる。

(お、重い・・・!)

以前よりも重くなった瞬の剣劇に驚く。

「どうした?」

「くっ・・・」

キンッ!

俺は瞬の剣を弾く。

「苦し紛れで耐えられるかッ!」

「っ!」

キンッ!

すぐさま下から切り上げてきた瞬を止める。

「ぐぅぅぅ!」

「どうした?それとも、これが限界か?」

こんなにも力の差があったなんて・・・!

「おらおらおら!!」

「くっ!ちっ・・・!」

俺は流れるような、でも重い瞬の攻撃をいなしながら後退していく。

「ナメるな・・・!」

ブンッ!

俺は反撃を始める。いつまでも攻められていたらそれだけで疲れる。

「うらぁぁ!!」

「遅い!」

ドォンッ!

求めはからぶって地面を砕く。

「くそっ・・・!な!?」

俺が顔をあげると、そこに瞬はいない。

(マズい!見失った!)

俺は急いで辺りを見回す。

「どこだ!?」・・・

 

「こっちだ」

 

「!?」

突然後ろから声がした。

キィンッ!

「ぐぐ・・・!」

「ほぅ・・・反応速度があがったな」

瞬の剣をギリギリで受けとめた。

以前だったら斬られていただろうな・・・。

そう思うと冷や汗がでた。

「だが、弱い!」

いきなり瞬の剣が光った。

「ぐはっ・・・!」

いきなり腹に衝撃が走った。おそらく瞬に蹴られたのだろう。

「!?」

「死ね」

 

次に見たのは目の前にある、憎しみに歪んだ瞬の顔だった。

 

ブスゥッ!

「がっ・・・かはっ・・・!」

瞬の剣が深々と俺に刺さる。

「ふん・・・ザコがっ!」

「へ・・・へへ」

「!?」

瞬は剣を抜こうとしたが、剣はピクリとも動かない。

「啓太がくれた・・・雪辱のチャンス・・・このまま逃してたまるかっ!」

俺は求めを逆手に握り、そのまま瞬へもっていった。

ブシャァッ!!

「ぐあっ!!」

瞬が切れた頬をおさえる。

「ふは・・・やったぜ・・・ぐっ・・・!」

俺は痛みに耐え切れずかた膝をつく。

傷が深すぎる・・・!

「コノヤロォォォォ!!よくも・・・よくもぉぉぉぉ!!」

「ぐっ・・・これまで・・・なのか・・・」・・・

 

 

 

 

 

「・・・くっ」

「ふはは。エレキクルの青い牙はその程度か!」

アセリアの攻撃を簡単にいなすアレックス。

アセリアの顔には焦りがあるにたいして、アレックスは汗一つかいていない。

優劣は明らかだった。

「大技が出せない今、純粋に剣で勝負してコレか?」

「まだ・・・!」

アセリアは下からアレックスを切り上げる。

「無駄だ」

アレックスは苦もなくそれを受けとめた。

キィンッ!

「ぐぐ・・・!」

「へっ、その程度か。ちっとも楽しめねぇなぁ」

キィンッ!

アレックスはアセリアを力任せに吹き飛ばす。

「っ!」

「オラオラオラァッ!!」

アレックスの重い攻撃がアセリアを襲う。

なんとかいなすが、だんだん手が痺れてきた・・・。

(賭けてみる・・・!)

「ウラァァッ!!」

アレックスが大きく振りかぶった。

「ていっ!」

「ん!?」

小柄な体型を生かして、アレックスの懐に入った。

トンッ・・・!

存在の柄で軽く腹を突く。

「うおっ・・・?」

アレックスの態勢が崩れた。

「はあぁぁぁぁ・・・!」

キィンッ!

ズバァァァッ!

「がはぁっ!!」

アセリアの高速の太刀がアレックスに入った。

(決まった・・・!)

アセリアはアレックスを確認しようと振り向く。

だが・・・

「なーんてな」

「っ!?」

「おらよっ!!」

「ぐぅっ!?」

アレックスの剣が、アセリアの脇に入った。

ズザァァァァッ!

そのまま地面を転がっていくアセリア。

「がはっ・・・」

「俺があのくらいでやられるとでも思ったか?あんな軽い太刀、意味がねぇんだよ」

「ぐ・・・」

「あばよっ」

「くっ・・・ふあっ・・・!!」

ズバァァッ!

倒れているアセリアに、アレックスの切り上げた太刀が入った・・・。

 

 

 

 

 

「また会えたね、メシフィア」

「・・・私は会いたくなかったな」

喜んでいる顔をしているグレイを見て、吐き気がした。

「ふふ・・・これで、容赦なく君を壊せる」

「容赦?前回はヤラれたくせに」

「あれは本気じゃなかったからね。いくよ!破壊してあげるよ!!」

「キモい・・・ていっ!」

リーチが反則的に長い蒼天を振るう。

「おっと」

それを軽くジャンプして避けるグレイ。

「ふふっ」

「!」

一気に懐にまで入られた。

(速いッ・・・!)

すかさず蒼天を戻して、グレイの脇を蒼天の根元で捕らえる。

「はぁぁ・・・!」

そのまま蒼天を持って、回転しはじめる。

「ぐっ・・・!うあっ!」

遠心力でグレイの腹に蒼天が食い込む。さらにどんどん蒼天の根元から離れていく・・・。

ズザァァァッ!!

グレイが地面を転がる。

「ふぅ・・・」

シュウゥゥゥ・・・

「!!しまった・・・!」

グレイの体が溶けた。

つまり・・・

「こっちだよ、メシフィア」

ガシッ!

「ぐっ・・・!」

メシフィアの首を絞めるグレイ。

剣で戦うよりも、格闘戦の方が勝てると踏んだのだろう。

実際、接近戦では蒼天は使いにくいタイプだ。

分裂で囮を作っておいたのだろう。

「ぐっ・・・!」

メシフィアは蒼天の柄でグレイの腹を突く。

「ぐっ・・・でも、その程度じゃ私の力はゆるまないよ」

ギギギ・・・更に絞めあげるグレイ。

(い、息が・・・!苦しい・・・!)

{メシフィア!}

(くっ・・・てやっ!)

メシフィアは蒼天を逆手に持って、自分の背中を斬るように振るう!

「おっと」

ザシュッ!

寸前でグレイがよけ、メシフィアは自分の背中を斬ってしまう。

「ぐっ・・・はぁ、はぁ・・・」

{大丈夫?}

「なんとか・・・強いっ・・・!」

「今更気付いたのかい?・・・さて、そろそろケリがついただろう」

「何がだ・・・?」

「ホラ、見てみなよ。君の仲間」

 

「・・・!」

 

悠人は倒れ、関節を刻まれている。アセリアに至っては、アレックスに座られているのにピクリともしない。

「くそっ・・・!」

メシフィアは二人を助けようと向かう。

シュッ・・・

「っ!」

ザパァァッ!

メシフィアの腕から血が吹き出た。

「誰が行っていいなんて言ったのかな?」

「グレイ・・・!」

「きみたちはバカだよねぇ。たいした力もないくせに、仲間に頼って、結局はお互いの足をひっぱる」

「そんなこと・・・ない!」

「ふぅん?」

「仲間がいるから・・・がんばることができる・・・!」

「じゃぁ、君のそのがんばりも私が壊してやる」

二人のグレイが襲ってきた。

「ぐっ!」

一人のグレイを受けとめると、もう一人のグレイが後ろに回った。

「避けられない・・・っ!」

ズシャァァッ!!

「うあっっ・・・!!」

背中をおもいきり縦に斬られた。

そして・・・

 

「これで、終わりだね」

 

前のグレイが、右肩から切り下ろす。

ブシャァァァッ・・・!

「ぐっ・・・うあ・・・」

そのまま力なく倒れていくメシフィア・・・。

 

 

 

 

 

「ぐああああ!!」

「もっと苦しめ、もっと壊れろォォォォッ!!」

容赦なく俺の関節を狙って切り刻んでいく瞬。

両腕も両足も、もう動かなかった。

{おい契約者!なんとかしろ!!}

「バカ剣がぁ・・・どうしろって・・・いうんだよ」

{今、ヤツがこっちに向かっている!もう少しなのだぞ!?}

「ヤツ・・・?」

{この状況を打開できる人物だ!このままヤラれれば、おまえもあの人間もスピリットも死ぬぞ!}

「だからって・・・ぐっ・・・」

体のどの部分に力を入れても、体は動かない。

{諦めるのか!}

「・・・」

{・・・ならいい。そのまま死ぬがいい}

「・・・わぁったよ・・・やれば・・・いいんだろうがぁっ!!」

バカ剣の力を振り絞って、俺は立ち上がる。

「なっ・・・なぜだ!?なぜ立ち上がれる・・・!?」

「んなこと知るかァァァァッ!!」

キィンッ!

ビキィィイッ!!

「ぐっ・・・なんだこの力は・・・!」

瞬が、求めに入っている力に驚く。

「メシフィアも・・・アセリアも殺させない・・・うらああああっ!!」

ビキィィィンッ!!

「なっ・・・」

瞬の手が痺れる。瞬の剣は遥か遠くへと飛ばされていた。

「オラァァァァッ!」

「つあっ!!」

俺はそのまま求めを瞬の腹へもっていった。

 

ピチャ・・・ピチャ・・・!

 

「よくも・・・よくも・・・!」

「ぐっ・・・」

俺はたまらず倒れてしまう。立ち上がったのも奇跡に近かった。

{契約者!}

「んだよ・・・まだヤレってか・・・?」

意識が遠のいて行く・・・。求めの声も、もはや聞きとるのさえ難しかった。

{・・・ダメ・・・なのか・・・!?}

「ちと・・・厳しいわ」

俺の目が霞む。

(ちくしょう・・・ここまでか・・・?)

ピクリとも動かない、メシフィアとアセリア。

余裕の顔でそれを見ているグレイとアレックス・・・。

そして、倒れている俺と、殺そうとしている瞬・・・。

(死にたくねぇ・・・恐い・・・!)

俺の体は震えていた。直視する、死という恐怖。

瞬の足音が一つ・・・また一つ近付いてくる。

(ちくしょう・・・動けッ!動いてくれ・・・!俺は死にたくねぇ!)

体に力を入れようとしても、まるで空気のように抜けて行く・・・。

「ふ、ははは・・・!今殺してやるぞ、悠人ォォォォォォ!!」

「くっ・・・ダメ・・・か・・・」

俺は目を閉じた。

(すまん・・・啓太・・・俺は・・・)・・・

 

 

 

『格好つけてんじゃねぇぞ!!』

 

 

 

(え・・・?)

『最後を格好良く飾り付けるんなら、もっと足掻けやッ!』

(・・・!)

 

 

 

 

『てめぇを・・・殺させてたまるかっ!!』

キィンッ・・・。

 

 

 

 

「な・・・なんだ?」

瞬の剣が、悠人の体の寸前で弾かれた。

悠人の体が光っている・・・。

「うおお!?」

アレックスの声が響くと、アセリアも光っている。

「これは・・・」

メシフィアも光っていた。

 

 

 

 

ゴォォォォ・・・

 

 

 

 

「これは・・・?」

メシフィアが温かな感触に目を開ける。体の傷はみるみる治っていき、悠人もアセリアも同じ状況だった。

「でやぁぁぁっ!!」

グレイがメシフィアを斬ろうと振りかぶる。

(斬られる・・・!)

メシフィアの体がまだ動かない。

グレイは剣を振り下ろした!

 

 

 

 

 

「・・・ん?」

いつまでたっても斬られる感触がないので目を開ける・・・。

「貴様は・・・!」

「あ・・・」

その影は、メシフィアを守るようにしてたっていた。

背中には、あまり残っていないが、きれいな翼が二枚あった・・・。

「け・・・」

おそらく、それはずっとメシフィアが待ち続けていた感動だった。

その姿・・・懐かしさがメシフィアの中で溢れだす。

「・・・」

その影は、苦もなく左手でグレイを掴み、そのまま引き寄せて蹴り飛ばした。

「ぐああああっ!!」

突然、影の隣に白い光が現れた。

「カノン・・・よろしく頼むぜ」

{ふん・・・来るのが遅すぎる}

最終形態のカノンを掴む影。

その回っているふたつの光の玉がバチバチなっている。

カノンを扱えるのは一人しかいない・・・。

「メシフィア、ちょっと待ってろ・・・な?」

「あ・・・ああ」・・・

 

 

 

 

 

「大川ァァァァ!ジャマをするなぁ!!」

「・・・」

「!!」

俺はグレイの剣を片手で受けとめる。

「うおおお!!」

「・・・」

もう一人のグレイの剣を、カノンで受けとめた。

「・・・てやっ!」

「「!?」」

俺が軽く手に力を入れると、二人のグレイは飛んでいった。

俺はそのままカノンを振り下ろし、地面を砕く。

 

ズドォォォォォッ!!

 

「なっ・・・ばかなっ・・・!ぐああああっ!!」

その衝撃波は、一撃でグレイを粉砕した。

「ばかな・・・私を・・・一撃で!?」

震えるグレイ。恐さのためか、ありえない状況を見たためか・・・。

ブンッ!

「っ!?」

俺は一人崩れているグレイに乱舞剣を放った。

ズバババババッ!

ズゴォォオッ!!

「くっ・・・!」

グレイは残劇をすべてかわす。

後ろにあった岩が粉々に砕けた。

「っ!?」

だが、避けた先にはすでに俺がいる。

「マズい・・・!」

俺はそのまま剣を横に振るった。

 

ズザァァァッ!!

 

風の刃がグレイを切り裂く!

「ぐおおおぁぁぁッ!!!がはっ・・・!」

俺は戻すようにして、もう一振りした。

今度は残劇がグレイを切り刻む!

 

ズザァッ・・・!

「ぐぁぁぁっ!!・・・がはっ・・・げほっ!」

グレイは地面に倒れた。

大量の血を吐き、傷からの出血はとまることをしらない。

「貴様ァァァァッ!!」

アレックスがつっこんできた。

相当頭に血が上っている。

 

パスッ・・・。

 

「なっ・・・!?」

俺はその剣を掴むと、逆にカノンでアレックスを突き刺した。

「ぐおっ!!がはっ・・・ぐぅぅぅっ・・!?」

俺はそのまま剣をゆっくり後ろにひいて、思いっきり木に向かって振るった!

アレックスは飛ばされて、木にぶつかって倒れる。

「うおおぉぉぉぉ!!」

最後の瞬がかかってきた。

「・・・!」

「!?」

俺の眼光にびびったのか、一瞬だけ止まる瞬。

ズザァッ!

ズドォォオッ!

「・・・?」

気が付けば、瞬の後ろに俺がいた。

瞬は自分の体を見る・・・。

 

ブシャァァァッ!

 

「ぐおぉぉぉ!?」

いきなりの出血と痛みに倒れる瞬。

「き、貴様ぁ・・・何をした!?」

「・・・」

「ぐっ・・・!」

そのまま倒れて気絶してしまう瞬・・・。

 

 

 

 

 

俺が現れて一分も経っていなかった。

一分前までは、悠人達三人が瀕死だったのが、今では瞬達が倒れている・・・。

「つ・・・強い・・・」

仲間なのに、つい戦慄を覚えてしまう悠人。

最初の「てやっ」以外言葉を発することもなく、三人を倒してしまった事が威圧感を増していた。

 

 

サパァァァンッ・・・!

 

 

「あ・・・」

啓太の翼が綺麗に散った。その白い羽はまるで雪のようにフワフワと散っていく・・・。

三人とも、その幻想的な光景に見惚れていた・・・。

「・・・」

そんな中、俺は三人に剣を向けた。

三人の体が光りだす。

(えーっと・・・アレスティナってどっちだっけ?)

{東だ}

(了解)

俺は東に向かって三人を飛ばした。

あとはアレスティナでなんとかすんだろ?・・・

 

 

 

 

 

「・・・疲れた」

「け・・・ケイタ・・・だよな?」

メシフィアが微妙に距離を取りながら言う。

「そりゃ・・・俺は啓太だけど・・・もぅダメだ」

 

 

 

グギュルルルル・・・

 

 

 

なんだか緊張が一気に解ける音がした。

詳しく言えば、啓太の腹部から。

「・・・」

「実はさ・・・腹減ってんだ。俺」

そんなの、あれだけ大きい音を鳴らせば誰でもわかる。

「・・・」

ポカーンと口を開けたまま固まる三人。

「どしたの?」

「・・・ケイタッ!」

「うおっ・・・」

俺は飛び込んできたメシフィアを抱きとめた。

「心配したんだから・・・!」

目に一杯涙を溜めて、俺にすがりついてくる。

俺は安心させようと頭を撫でた。

「ゴメンな。一人に・・・でもないけど、寂しい思いさせて」

「うん・・・」

「・・・メシフィア」

「なに?」

「・・・あんまり無理しないでくれ。メシフィアが傷つくと・・・その・・・困る」

「・・・なんで?」

「・・・この確信犯が」

俺がどうして困るのか、知ってる顔だ。泣きながら笑顔ってのもすごいが。

「言ってくれないと、わからないよ」

「・・・メシフィアが好きだから。傷ついてる姿を見るのが辛いから・・・だからだよ。恥ずかしいこと言わせんな」

俺はプイッと空を見る。綺麗な青空だ。

「うん・・・だったら、ケイタが傍にいてよ」

「・・・ん?」

「そうすれば、いつだって私が無理しなように見ていられるでしょ?」

「・・・」

「それに、守ることもできるし」

「・・・そんなこと言うと、俺またどこかに言っちゃうぞ?」

「・・・」

「あ〜あ・・・素直に言ってくれないかなぁ」

「・・・確信犯」

今度はメシフィアがそう言う番だった。

「ん?何か言った?」

「・・・もうどこかに行かないで。ずっと傍にいてほしいの」

恥ずかしながらも、ちゃんと俺の目をみて言うメシフィア。

さっきの涙のせいでまだ涙目だ。

とっても強い。いろんな意味で。

「もちろん。あ、でも今回のは仕方なく、だから。だから・・・もし、何かのせいでまた別れちゃったら・・・俺がまたこうやって君を見つける。どこにいても、捜し出してみせる。一番に会いにくるから。それで許してくれ。な?」

「・・・うん」

俺はメシフィアを抱き締めた。

 

 

 

 

 

(なんかさー・・・困るよな、アセリア)

(そうなのか?)

(こうやって見せ付けられる身になってほしい)

(なら、ユートもあーいう風にするか?)

(・・・誰と?)

(私と)

(・・・冗談?)

(メルフィーに習った)

(・・・半分本気になっちまった俺が情けない)

(でも・・・)

(うん?)

(ユートがこうして・・・隣にいてくれるのは嬉しい)

(・・・そう?)

(ん・・・なんだか温かい)

(・・・俺も、こうしてアセリアが隣にいてくれるのは嬉しい)

(そうか?)

(まぁな。それはアセリアだけじゃなくて、みんな・・・だけどな。こう・・・大切な仲間っていうのは、自然とそうなるんだろうな)

(ん・・・この気持ちはそういうものなのか・・・)

(たぶん、そうだと思う。それにしても・・・いつまで抱き合ってるんだ?あの二人)

(なんだか・・・胸がモヤモヤする)

(!?まさか・・・アセリア・・・!啓太を・・・?)

(こぅ・・・食事を取りすぎた時に似ている。なんだか、あの雰囲気を壊したくなってくるぞ?これはなんだ、ユート?)

(・・・そうだよな。まさかアセリアが啓太になんてな・・・ん?なんで俺は安心してんだ?)

(ユート?)

(あぁ・・・たぶん、それは胸焼けだな・・・あの雰囲気を食ったせいで)

(雰囲気とは食えるものなのか!)

(・・・だからって口をバクバクするな。鯉か、おまえは)

 

 

 

 

 

「さて・・・帰るか」

「そうだな」

「あれ?もう口調戻っちゃった」

ちょっとだけ残念。

「どっちの口調でもいいだろ?」

「そりゃそうだ。どっちでも俺の好きなメシフィアに変わりはない」

「!」

「お、赤くなってる」

「そういうケイタこそ・・・」

「・・・まぁね。お〜い、悠人、アセリア、帰ろうぜぃ?」

「・・・さっきまで抱き合ってたくせに、よく言うぜ」

「おまえだって、惚れてるアセリアと長く話できて、快適だったろ?」

「なっ、バカ言え!」

「ユート、私に惚れたのか?」

「黙れーッ!アセリアも本気にすんな!」

「ふぅん・・・アセリアが俺に惚れてなかったって時に安心したのはなぜなんでしょうねぇ?」

「どうなんでしょうねぇ?」

「これはもう決まりですか?」

「決まりですね〜」

まるで打ち合わせでもしていたかのようにスラスラとからかう二人。

「っていうか、おまえら息合いすぎだ」

「話を逸らすな。ま、いいか。アセリア美人だし、惚れてもしょーがねーよなぁ」

「だから、違うッ!!」

「・・・」

「アセリアも赤くなってんじゃねーっ!!」

「はいはい、んじゃ帰りますよ?」

俺は暴れて否定する悠人を三人で押さえて、そのままカオストロへと戻った・・・。

って違う!

「まだ制圧してねーだろうが!」

「そういえばそうだな」

完璧に忘れてたぜ。

俺の格好いい登場シーンのせいか?

「ケイタ、今何か変な事考えてない?」

「べ、別に。さぁて・・・んじゃ、兵のみなさんもいつのまにか消えてるし、さっさと奥へ進みますか」

「怪しい・・・」

「ん?まだ俺を疑ってるの?」

「違う。王のこと」

「へ?」

「そうか、啓太は知らないんだっけ・・・今回オレ達がこうやって動くのをアレスティナに垂れ流したのが、王様だって言ってたんだ、アイツら」

「ふぅん。で?」

「・・・で?って・・・」

淡白な啓太の反応に悠人があっけにとられた。

「今の王様が、オレ達の思うように働いてくれているワケないじゃないか。そんなのとっくの昔にわかってたさ」

「とっくの昔って・・・数ヵ月前だろうが」

「オレは、あの王のために戦うんじゃない。アレスティナから異世界の人を追い出して、元のアレスティナにするために戦うんだ。あの王がジャマすることくらい、最初からわかってたさ」

「意外にすごいな・・・おまえ」

{シルビアがいなくなって、王の非人道的な行いが公になれば、王の次か、同等なくらい国民から人望のある啓太が新しい王になりかねないからな。その不安の種と、まわりの土は取りのぞきたい・・・ってところだろう}

「ま、そゆこと。もちろん、オレは王になるつもりはないし。でも、だからといって王にジャマされたくらいでアレスティナを諦めたりはしない」

「ケイタ・・・ちょっと見なおした」

「見直したなのかよ・・・約束しちゃったからさ」

「誰と?」

「・・・おじいさんとエルーナ・・・それに、バルパス、キャメロン以下ジパングの人達」

「ジパング!?おまえジパングにまで行ってきてたの?」

「ま、その話はオイオイしてやるさ」

 

 

ヒュッ・・・

 

 

「!?」

オレは身構えた。

何かが通った。

「・・・誰?」

「あ、あの・・・」

女性だ。おそらく年上。

それと・・・そのとなりにやけに肝のすわった男・・・そういえば二人は似てる、がいた。

「カオストロの人・・・ですよね?」

「そうですけど」

「いきなりですいません・・・私達を、カオストロにつれていってくれませんか!?」

 

 

 

「「「「・・・はぃ?」」」」

 

 

 

四人揃って間抜けな声をだしてしまう。

見たところ、その女性と男性は、国の仕官っぽい。

「あの高名な・・・大川啓太さんですよね!?」

「・・・あ、ああ」

いきなりオレの手を握って、まるで芸能人を見つけたかのような目をされた。

ズイッ・・・

メシフィアがその手を無理遣りほどいて、間に入った。

素直なヤツだなぁ・・・。

「あなたは!メシフィア・プルーストさんじゃないですか!!」

「あ、ああ・・・」

「お願いです!アレスティナを・・・救ってください」

「「・・・はぁ」」

オレ達は揃って曖昧な返事を返し、アセリアと悠人と顔を見合わせて、とりあえずカオストロにつれていくことにした。

 

 

 

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アペリウス・・・現アレスティナ国王。クーデターの首謀者で、アレックス達を従えて正規軍を倒し、アレスティナ国王の首を取った。

        別に暗君というわけではないが、前国王が死んだ事で国民がバラバラになり、アレスティナは荒んでいった。

        異世界からやってきた人達のリーダーと思われる。